2008年5月30日

ジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」Vol.5が出来ました。

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「トミー・フラナガンの足跡を辿る」編集委員会のG委員長や、貴重な時間を割いて、毎月、講座の度にテープ起こしに多大な労力を費やしてくれる寺井尚之ジャズピアノ教室のあやめ副会長、そして、講師、寺井尚之、皆の苦労の5番目の結晶が、やっととなりました。

 今回は'61年~’64年の全録音アルバムを網羅しています。読みどころは、何と言ってもコールマン・ホーキンス(ts)の一連のアルバムについての解説だ!
 コールマン・ホーキンス(1904-69)


 ありとあらゆるジャズの巨匠と共演し尽くした感のあるフラナガンが脇に回った歴史的名盤は、数限りなくあるのですが、コールマン・ホーキンスとの共演作は、少し意味合いが違います。
 トミー・フラナガンが、ボスとして、人間として最も敬愛した人は、J.J.ジョンソンでもエラ・フィッツジェラルドでもなく、勿論マイルスやコルトレーンでなく、ホーキンスだったのです。
昨日、ダイアナ・フラナガンと講座本について色々話したのですが、彼女はこう言っていた。「Good Old Broadway, No Strings,…ほんとにいいアルバムよね!トミーは、ホークと録音したブロードウェイの作品集をほんとに気に入っていて、いつもその話をしていたわよ。あんた、早く講座本を英語に訳しなさいよ。忙しいって?何がそんんなに忙しいのよ?」

  『テナーサックスの父』と呼ばれるコールマン・ホーキンス(1904-69)、フラナガンがレギュラー・ピアニストとして共演していた晩年の60年代。実は一般の評論界では、音色も衰えた下降期と言われており、本書に収録しているアルバム群は、全く正当な評価を受けていません。フラナガンは、そういうステレオタイプに対して、真っ向から反対していました。

 「生」ジャズ講座に出席された皆さんの間でも、コールマン・ホーキンスのブームが起こって、今も懸命に原盤を集めている人がいる。

 寺井尚之の解説は、音楽的な楽しみどころを判りやすく教えてくれるし、これらのアルバムが、全く準備なく、スタジオ入りしてから、レコード会社が提示する曲目のメモと市販の譜面だけを元に、ホーキンスがその場でどんどんアレンジして、簡潔にメンバーに意図を伝え、録音した様子を見せてくれます。
 会社の企画に従ってスタジオでプレイするだけ、そして演奏後は何を演ったのかも忘れてしまう。普通なら、コマーシャルな演奏になって当然の「お仕事」です。

 デューク・エリントンは、お客様の顔を見ずにやっつけ仕事をする、心のこもらないスタジオ・ワークを「音楽の売春行為」とさえ呼び糾弾しました。ところが、ホーキンスの、一連のブロードウェイ・ミュージカル集は、手塩にかけたお気に入りの楽曲に対するのと同じ温かみと品格が感じられる。

 何故なんだろう?

寺井尚之の解説からは、コールマン・ホーキンスという巨人の持つ、音楽に対するの余りある愛情というものが浮き彫りになっていく。

常に音楽的に演奏することしかできない。誠意ある演奏しかできない!高潔なミュージシャンの魂が見えて来る。トミー・フラナガンはホークのそういう点を愛し、敬ったのに違いない!

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 寺井尚之がトミー・フラナガンから直接聞いたホーキンスのエピソードに加え、特別付録として、ホーキンス・カルテットの同期生、名ドラマーエディ・ロック(ds)のインタビューの日本語訳が付いています。エディさんに直接インタビューをすることも考えたのですが、締め切りに間に合わなかったのと、ハーレムのジャズ・ミュージアムの講演会で、このインタビュアーのローレン・ショーンバーグさんが、私達が訊きたかったことを殆ど全て質問していました。ショーンバーグさんは名テナー奏者であり優れたジャズ史家です。ですから、エディさんも本音で応えている。ジャズ・ファンでなくとも、とっても面白くて為になる事が沢山見つかりますよ!原文はこちらです!
サー・ローランド・ハナ(p)3のコンサートで意気投合!寺井尚之とエディ・ロックさん(ds)

   Bean & the Boys
左からフラナガン、コールマン・ホーキンス、メジャー・ホリー(b)、エディ・ロック(ds)

 コールマン・ホーキンスは、テナーサックスという楽器を、音楽の世界で初めて主役にした偉人だけど、創始者の地位に安住することはなかった。ホーキンスの蒔いた種から育ったビバップ革命に身を投じ、クラシックにも造詣深い真の音楽家だった。そんなホークが晩年、心から愛したのがデトロイトのミュージシャン達で、メジャー・ホリー(b)も、エディ・ロック(ds)もデトロイト出身、トミー以外にホーキンスがよく使ったハンク・ジョーンズもサー・ローランド・ハナも勿論デトロイトの水に洗われたピアニストなんです。ホーキンスは『デトロイトのピアニストの美点は、ピアノを“打楽器”でなくて、ちゃんとピアノとして弾くことだ。』と言っている。
 寺井尚之のジャズピアノ教室も、ピアノをピアノとして弾けるように指導しているから大変です。

 対訳係りの私は、エディさんのインタビュー以外にも、パット・トーマスという女性歌手の希少盤の歌詞を作りました。この作品には、伴奏者のクレジットがないのですが、他の演奏者達の謎解きもお楽しみ!
 アルバムには、 サド・ジョーンズの名盤、Detroit-New York Junctionの<Blue Room>や、当ピアノ教室の課題曲(Ⅰ)<There Will Never Be Another You>などのスタンダード曲の歌詞対訳が掲載されています。パット・トーマスの歌詞解釈はとっても素直なので、音源が聴けなくても参考になると思います。

 
有名盤としては、強烈なインパクトのあるマルチ・リード、ローランド・カーク参加の『Out of the Afternoon/Roy Haynes』の章は、レコードを聴きながら、順番に読んで欲しいです。ローランド・カークが次々繰り出す、各トラックに登場する色んな楽器をちゃんと順番に解説している本も、余りないのではないかしら?

 渋いところでは、'60年代、ハーレムのブラック・ジャズ・シーンで最もお客の入ったテナー奏者、ブラック・ジャズ・ソサエティの“杉さま”と言える、Willis "Gator" Jacksonの『Shuckin' 』。私的講座ヒット作です。ウィリス・ジャクソンは、私の好きなへヴィー級歌手ルース・ブラウンの夫君でもあり、サラ・ヴォーンとも親交深かった。

 いずれコールマン・ホーキンスのことは、機会を改めてInterludeでゆっくり書きたいと思っています。

 ジャズ講座新刊は、今のところJazz Club OverSeasで販売中。特別価格\3,000です。
 来週には、ジャズの専門店、ミムラさんや、ワルティ堂島さんにも置いていただく予定です。大阪まで買いに来れない方は、OverSeasまでどうぞお気軽に

 明日は、長年皆様にご愛顧頂いたフラナガニアトリオの最後のコンサート! 
 心を込めて皆さんをお迎え申し上げます。

CU

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