2009年5月 3日

GW にバリエットはいかが? 連載 "PRES" (第一回)

ホイットニー・バリエット著 『アメリカン・ミュージシャンズⅡ』より

Pres7.jpg 

《プレズ PRES》 (1)

lester-young.jpg サックス奏者レスター・ヤングが独創性に欠ける点はほぼ皆無だ。腫れぼったい瞼と飛び出し気味の目、少し東洋的で角ばった顔、飛び切り小さな口髭、歯の隙間が見える笑顔。彼は内股で軽やかに歩き、話し声はソフト、何かしらダンディなところがあった。スーツとニット・タイにカラー・ピン、踝(くるぶし)丈のレインコート、それにトレードマークのポークパイ・ハットを、若い時には後頭部に軽くのせ、年を取ると目深にかぶった。性格は内気、話し掛けられた場合に限り、しばしば自分も話す。演奏中は前方斜め45°にサックスを構え、まるで水中に櫂(かい)を漕ぎ入れるカヌー乗りの様に見えた。その音色は空気の様に軽くしなやか、それまで耳にした事もないようなフレーズは、何とも言えず抒情的で捉えどころのないものだった。

  サックス奏者がこぞってコールマン・ホーキンスに追従した時代、ヤングは二人の白人奏者を模範とした:Cメロディのサックス奏者フランキー・トランバウアーとアルトサックスのジミー・ドーシー、両者とも一流ジャズ・プレイヤーではない。だが1959年にレスター・ヤングが没した時、彼は白人黒人両方の無数のサックス奏者の模範となっていた。優しく親切な男で、人をけなした事はない。




ftrumbouer.jpgjimmy_dorsey.jpg  左から:Frankie Trumbauer(1901-56), Jimmy Dorsey (1904-57)


 そして彼は暗号のような言葉を使った。

<レスター・ヤング的言語について>

 レスター・ヤングの暗号化された言語についてジミー・ロウルズ(p)はこう語る。
p_rowles.jpg



 「彼の言う事を理解するためには、暗号の解読が必要だった。それは辞書を暗記するようなもので、私の場合は判るようになるまで約3ヶ月はかかったと思う。」

 ヤングの言語は大部分が消滅してしまったが以下はその一例である。

  • ビング(クロスビー)とボブ(ホープ)= 警察 
  • 帽子(Hat)= 女性 中折れ帽 orソンブレロ= 女性のタイプを表す。      
  • パウンドケーキ = 若く魅力的な女性 
  • グレーの男の子 = 白人男性 
  • オクスフォードグレイ= 肌の白い黒人、つまりレスター自身も意味する。      
  • 「目玉が飛び出る」=「賛成する。」
  • カタリナの目orワッツの目 =どちらも非常に感嘆した時の表現
  • 「左の人たち」 =ピアニストの左手の指
  • 「召集令状が来る気分だ。」= 人種偏見を持った奴が間近にいる。      
  • 「お代わりを召し上がれ。」=(バンドスタンドでメンバーに対して)「もう1コーラス演れ。」
  • One long, Two long = 1コーラス、2コーラス
  • 「耳元がざわざわする」=人が彼の陰口を言っている。
  • 「ちょいパチをもらう。」= 喝采を受ける。
  • ブンブンちゃん = たかり屋      
  • ニードル・ダンサー = へロイン中毒者
  • アザを作る =失敗する。
  • 種族=楽団      
  • トロリー・バス =リハーサル
  • マダムは燃やせるかい? =お前の奥さんは料理が上手か?
  • あの人たちは12月に来る。=2人目の子供が12月に出来る。(因みに彼は3回結婚し2人の子供を持った。)
  • あっと驚くメスが2時。 =美女が客席右手"2時"の方角に座っている。



<旅芸人>

LesterYoungonaltoJoJones.jpg 奇人変人は往々にして、混雑しつつ秩序ある場所に棲息する。ヤングが人生の大半を過ごしたのは、バスや鉄道の中、ホテル、楽屋、車の中やバンドスタンドであった。

  彼は1909年ミシシッピー州ウッドヴィルに生まれ、生後すぐに家族でニュ―オリンズの川向こうの街、アルジャーズに移った。10歳の時に両親が離別、レスターは、弟のリー、妹のイルマと共に父に引き取られ、メンフィスからミネアポリスへと移り住む。父親はどんな楽器でも演奏することが出来、家族で楽団を結成し、中西部や南西部をテント・ショウの一座として巡業した。ヤングは最初ドラムを演奏し、後にアルトサックスに転向した。初期の写真を見ると、彼のサックスの構えは後年と同様非常にヴォードヴィル的なものだ。

 「自分は譜面を読める様になるのが人より遅かった。...」かつて彼は語った。
 
レスター・ヤング : 「ある日、父がバンドのメンバー全員に各自のパートを吹くよう言った。父は僕が出来ない事を百も承知で、わざとそう言ったんだ。僕の小さなハートは張り裂け、オイオイ泣きながら思った。家出して腕を磨こう!あいつらを追い抜かして帰ってきてやる...帰って欲しけりゃな。覚えてろ!そして僕は家を出て、たった一人で音楽を学んだ。」

(明日につづく)

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