2009年11月 5日

対訳ノート(22):Polka Dots and Moonbeams

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 先週のThe Mainstemには、遠くから近くから、沢山のお客様が駆けつけてくださって、改めてお礼申し上げます。あの晩は、驚くほど黄色く明るい月の夜、月を愛でながら思わずお酒を飲みすぎてしまいました。あの月は十三夜の「栗名月」、前の月の十五夜に対して「後の月」と呼ばれる特別な月だったんです。確かに色も形も「栗」みたい!英語だったら、十三夜は「Waxing Gibbous Moon (背むしのような形で満ちる月)」と情緒なさすぎ!日本人でよかった~!名月に因んで作った「お月見ストロガノフ」は、沢山のお客様に「おいしかった!」と言っていただけて、調理場も大喜びでした!

 この日の2nd セットは、10月のメインステムPart 1と対を成す「お月さまづくし」!中でも素敵だったのは〝Polka Dots and Moonbeams"!前回の"Moonlight Becomes You"と同じJimmy Van Heusen(曲)、Johnny Burke(詞)コンビの1940年作品、元々はトミー・ドーシー楽団の歌手としてデビューしたフランク・シナトラの初ヒット曲でした。

 〝Polka Dots and Moonbeams(水玉模様と月光)"・・・私自身は高校時代に衝撃的だった『インクレディブル・ジャズ・ギター』/ウエス・モンゴメリー(g)で聴いたのが最初です。まもなく誰でもが演る超スタンダードと知りました。緊張感なく演っていて、いつのまにかよく似た〝My One & Only Love〝になっちゃった迷場面に何度か遭遇したこともあります。ヴォーカルでは余り聴く機会がなかったのですが、昨年、ジャズ講座のためにエラ・フィッツジェラルドの歌詞対訳を作って、驚くほど「可愛い」歌詞だったことを知りました。

<20世紀のお伽噺>

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水玉模様のこの人は往年の美人女優、マーナ・ロイ

 この歌の舞台はNYみたいに洗練された都会でなく、アメリカのどこかの田舎町、豪華なジャズバンドやシャンパンもなく、町内会バンドで踊るカントリーダンスのパーティ、ビールにバーベキューやホットドッグの香りが漂ってきます。そんなザワザワしたところで、「僕」は恋をする。相手はパグ・ノーズ(pug-nosed):例えばメグ・ライアンみたいな可愛い女の子、上向きの鼻は日本じゃブサイクみたいだけど、あちらではチャーミングな条件で、ファッション・モデルのプロフィールにも「pug-nose」ってよく書いてあります。その娘のドレスは水玉模様、僕は、彼女の顔と、「お月様」が舞うような水玉模様と、月の光がスパークした一瞬に恋に落ちる。ディズニー的魔法の世界は、12月になったらきっと聴ける「コートにスミレを」と共通していて、デトロイト・ハードバップ・ロマン派を標榜する寺井尚之に打ってつけの素材でした。

 この歌がヒットしたのは真珠湾攻撃の前年ですから、戦争の不安が世の中に影を落とし始めた頃です。戦地に行かずに、愛する人とこのまま幸せに暮らせればどんなにいいだろう・・・そんな人々の想いが、お伽噺のように可愛いバラードを生んだのでしょうか?

 対訳にはヴァースもつけておきました。原歌詞はこちら

<ポルカドッツ&ムーンビームズ:水玉模様と月光>
作詞 Johnny Burke/ 作曲 Jimmy Van Heusen

=Verse=

あり得ないと思うかも知れないけど、

不思議な話を聞いてくれるかい?

こんな映画のシーンを見たら

「ウソに決まってる」と言われるだろうね・・・



=Refrain=

近所の庭でカントリー・ダンスパーティがあったんだ、

不意に誰かがぶつかって、

「まあ、ごめんなさい」と声がした。

突然目に入ったのは、

水玉模様と月光、

照らし出された君は
ツンと上を向いた鼻の女の子、

僕は夢かと思った。



音楽が始まり、

ちょっとまごついたけど、

僕は思い切って、君を誘った、

「次に踊っていただけますか?」

緊張でこわばる僕の腕の中で、

水玉模様と月光が、

君のツンとした鼻先に輝く。



ダンスする他の人達は、

不思議そうな顔で

滑るように踊る僕達を眺める。

皆にとっては疑問でも、

僕は答えを知ってたし、

多分、それ以上のことも判ってたんだ。



今は君と一緒、

ライラックが咲き、笑い溢れる小さな家で、

「ずっと幸せに暮らしましたとさ」、

そんなおとぎ話の文句を実感してる。

これからもずうっと、

水玉と月光が見えるだろうな、

夢みたいに素敵な人

ツンとした鼻の君に

キスするときはいつも。

 私の母は大阪、天満の"こいさん"として生まれた。その頃は何人も女中さんがいたらしい。しかし、戦争で家業は廃業となり、大阪大空襲で実家は全焼した。焼け出された一家は、十代で病死した姉の療養に使っていた浜寺の海辺の別荘に移り住み、母はその町のダンスパーティで父と出会い恋におち、両親の猛反対を押し切って結婚した。"こいさん"から平均的サラリーマン家庭の主婦になり、自分の両親宅の家事まで引き受けていた母の新婚生活がライラックの咲き乱れるものであったかどうかは判らない。でも、The Mainstemの「ポルカドッツ」を聴くと、座敷でビング・クロスビーをかけながらダンスしていた若かりし両親の楽しそうな姿がふと蘇りました。

 21世紀の現在、この歌をそのまま歌っても、当時の共感を客席から得ることは難しいかもしれないけれど、「お伽噺」と同じように、忘れかけている大切なものを思いださせてくれます。

 明日は鉄人デュオ!明日もスタンダード曲に新しい息吹を感じさせてくれることでしょう!一緒に聴こうね!

 水玉バラードと月夜に乾杯!

CU

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