2011年7月14日

トミー・フラナガン・インタビューを読もう!

 暑中お見舞い申し上げます。

 「節電のお願い」CMが流れる大阪、電車に乗ると照明は薄暗いのに、冷房は寒いほど効いていて、不条理感は募るばかり・・・。

 トミー・フラナガンを愛する皆さんが暑さをしのげるよう、日本未公開のインタビューを連載したいと思います。

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 タイトルは「At the Top of His Game」、"ゲームのトップ"とは、「絶好調、絶頂」という意味、カナダのジャズ誌「Jazz Times」1989年8月号に掲載されたインタビュー、聴き手はケン・フランクリング。

 ジョージ・ムラーツ(b)、ケニー・ワシントン(ds)との黄金トリオで録音した"Jazz Poet"が世界中で評価され、「名脇役」から「主役」として真価が認められた時代。あの頃のトミー・フラナガンならではの深い言葉をお楽しみください。

「ただ今絶好調!トミー・フラナガン」(インタビュー:Ken Frankling)

Jazz Times '89年8月号より 訳:寺井珠重

 トミー・フラナガンは、ピアノの妙技を磨くための練習をあえてする必要はないと感じている。毎晩仕事がある時はなおさらだ。彼は、練習しない理由として十の根拠を挙げる。彼の指先は鍵盤上を縦横無尽に疾走する為、硬いタコが出来て、爪は割れている。

 「こういうのが治るには時間がかかるんだ・・・」

 フラナガンは自分の両手をまじまじ眺めながら言う。

 「深夜帰宅し、翌朝起きてこうつぶやく。『ああ、また指に血が逆流してる!』これが痛いんだな!両手に休みをやりたいくらいだよ。私は時々、必要以上に力強く弾いてしまうんだ。それでまた痛くなる。」

 指の損傷は、最近のフラナガンの気合いと、引っ張り凧の仕事ぶりの証明である。彼は現在、ジャズ・ピアニストの最先端だ。ビル・エヴァンス、セロニアス・モンク、バド・パウエル、メアリー・ルー・ウィリアムズ、アール・ハインズというシングル・ノート・スタイルの系譜において、第一人者として安定した地位を保っている。

 1978年、16年間の長期に渡るエラ・フィッツジェラルドとの実り多き共演時代の後、フラナガンは伴奏者の役を辞すことを選んだ。以来、ソロ活動、ジョージ・ムラーツ(b)とのデュオ、ここ2年間のレギュラードラマーであるケニー・ワシントン(ds)を加えたトリオに仕事を絞り込んでいる。

 フラナガンは、どの編成も同等にやりがいがあると語る。

 「ソロ、デュオ、トリオという編成は、どれも気に入っている。私はこれらのフォーマットを交代でやるのが好きなんだ。ミュージシャンは腕が上がれば、それに見合うレベルの高い相手との共演を楽しむべきだ。」

 「我々ミュージシャンは皆、最初は一人で演奏する事から始める。そして、グループで演奏し始めると、音楽的な責任は減少し、共演者と相互に影響し合えるようになる。そしてソロに戻ると、何かが足りないように感じる。そうすると、、自分自身のプレイを、自分で聴く感覚を取り戻して、ソロという形態に自分を落ち着けなくてはならない。例えば、左手でどの位ベースノートを弾くべきかを判断する能力を取り戻さねばならないんだ。」

<ジョージ・ムラーツのこと>

gallery11.jpg 「今の私には現在ジャズ界最高のベーシスト、ジョージ・ムラーツがいる。彼と演る時には、ベース・ノートにあれこれ心を煩わせる必要はない。我々が良い領域、つまり、今迄我々が到達した事の無い高みに上る道筋は色々だ。音楽と言うものはすぐに鮮度が落ちてしまうので、注意しなくてはならない。」

  「ジョージ(ムラーツ)はオスカー・ピーターソンの所を辞めた後、しばらくエラの伴奏をしていた。そこで私は彼がどれほど良いプレイヤーなのかを知ったわけだ。彼は非常に音楽的だ。ベース奏者は、ビートを"感じさせる"のと同時に、ベース・ラインやメロディを含めたプレイを"聴かせる"ことが必要だ。彼は、そういうことを、全く苦にしない数少ないベーシストの一人だ。彼のビートの鼓動は、同時に"聴く"価値がある。また彼のイントネーションは、他の弦楽器遜色のない完璧さを備えている。」

<ジャズの詩人>

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  謙虚で穏やかな、この『ピアノの詩人』は、かつてカウント・ベイシーがシングル・ノート・スタイルのピアニストについて述べた如く、水晶の様に透明なサウンドを持っている。彼のプレイはクリアで活き活きと輝き、リリカルでありながら力強いフレーズは、強烈なバップのアクセントと、微妙なダイナミクス、思いがけなく湧き出るメロディが混ざり合ったものだ。

jackson_eric_600x200.jpg 彼がボストン地方に出演する時は、派手な広告をしなくとも常に満員の盛況だ。ラジオ番組を持つエリック・ジャクソンがWGBH-FMの自分のラジオ番組(Jazz with Eric in the Evening) のオープニングテーマ曲に、フラナガンの演奏する"ピース"を使用しているからだ。

 憂いを含んだその演奏は、フラナガン1978年録音のアルバム、<サムシング・ボロウド、サムシング・ブルー>(ギャラクシー)での、キーター・ベッツ(b),ジミー・スミス(ds)とのトリオのアルバムのものである。だからニュー・イングランド地方では、毎夜フラナガンの演奏がオンエアされ、作曲者ホレス・シルバーは著作料を儲けるという訳である。

(つづく)

 インタビューで「強く引きすぎて爪が割れている」という記述がありますね。Jazz Club OverSeasでも、「神様が降りてきた」ようにハードなプレイで爪を浮かせていたのを見たことがあります。でも、それは決してガンガン弾いたためではなく、最高のタッチで弾くからこそ、指に負荷がかかって爪を傷めていたのです。どんなに長時間弾きまくっても、演奏後のピアノが傷んだことはありませんでしたよ!

 追記 by 寺井尚之

 誤解をまねかいないように、4点付け加えることがあります。

(1) 誰よりもよく練習していました。

(2)指先は柔らかく、タコはありません。

(3)必要以上に「強く弾く」など、感情に左右されることはありません。常にコントロールされていました。

(4)トリオが好み。デュオ、ソロは好みでなかった。

おわり


 さて、7月16日(土)は、寺井尚之The Mainstemトリオ出演!ぜひ皆さんお越しください!

 なおメインステムのDL用新譜『Evergreen2』新発売!ダウンロードよろしくお願いいたします♪

CU

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