2011年12月15日

White Christmasが愛される理由:対訳ノート(33)

 激動の2011年も残り僅か、皆様いかがお過ごしですか?イルミネーションが灯りクリスマスのムードが漂う大阪の街を歩くと、O.ヘンリーのクリスマス物語「賢者の贈り物」を読みたくなりました。

 今回は、どなたもご存知の歌、「ホワイト・クリスマス」のことを書いてみます。この季節になると、高級ホテルのロビーから下町の商店街まで席巻する定番ソング!ビング・クロスビーのシングル盤は、全世界で少なくとも5000万枚売れたとギネスブックが認定。エルトン・ジョンが故ダイアナ妃に捧げた「Candle in the Wind」を抑え、歴史上最も売れたシングル盤に認定されているそうです。

 クロスビーが最初に録音した原盤('42)は、度重なる再プレスの為に損傷し、5年後に再録音をしたというからスゴイ!

 当初、作詞作曲のアービング・バーリンは、こんなにヒットするとは思ってもみなかったとか...

<歌のお里>

holiday-inn-bing-crosby.jpg "White Christmas"は元々映画の歌、と言えばダニー・ケイ&ビング・クロスビー&ローズマリー・クルーニーの映画「ホワイトクリスマス」('54)がまず思い浮かびますが、実はもっと前、第二次大戦中、'42年の作品「ホリデイ・イン」の為に書かれた歌です。フレッド・アステアのダンスとクロスビーの甘い歌声で繰り広げるラブ・コメディ、クロスビーが最初1コーラス歌い、クリスマス・ツリーのベルや口笛と共に、恋人役のマージョリー・レイノルズと転調してデュエットする名場面はyoutubeで観ることができます。

 このクリスマスのシーンは、大戦中、離れ離れでクリスマスを過ごさなければならない人々の家族愛や望郷の念を強く掻き立て、映画も歌も大ヒット!その余韻を引き継ぐ形で生まれた映画が「ホワイト・クリスマス」です。

 「ホワイト・クリスマス」は、戦後のアメリカを描く映画。戦地から帰り民間人に戻った元上官は風光明媚なヴァーモントにある小さなロッジの経営者、ところがお客さんが来ず、倒産寸前。それを知ったクロスビー&ケイのボードビル・コンビが、閑散としたロッジにかつての戦友たちを呼び集め、飛び切り楽しいクリスマス・ショウを催して危機を救うという涙と笑いの人情話。

<アービング・バーリンとクリスマス>

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 アービング・バーリン(1888-1989)は第二のアメリカ国歌と呼ばれる「God Bless America」「Alexander Rugtime Band」など、作詞作曲した作品は約五千!ジェローム・カーンは「彼こそアメリカン・ミュージック」と賛美しました。

chanukah_large.jpg バーリンは貧しいロシア系移民の2世としてNYのロウワー・イーストサイドに生まれ、チャイナタウンにあるカフェのウエイター兼歌手から超一流へ上り詰めたアメリカン・ドリームの見本のような作家。その本名はイスラエル・バリン、ロシア系ユダヤ人です。ユダヤ教徒の人たちは、キリスト教のクリスマスを祝う習慣はありません。その代りに12月の25日から8日の間、古代ユダヤ人の独立の日を祝うロウソクのお祭りハヌカという行事をします。

 欧米のグリーティング・カードのサイトを観ると、クリスマス・カードと共に、必ず"Happy Chanukah"カードが併載されていますよ。

 町中にクリスマスのイルミネーションが灯っても、人種のるつぼ、米国は文化も宗教も多様です。ユダヤ人ミュージシャンも勿論クリスマス・イベントに出演しますし、非キリスト教徒がクリスマスを否定することはないにせよ、結婚式はキリスト教、お葬式は仏教という日本の寛容さとは別の感があります。

<非宗教のクリスマス>

 さて、映画"Holiday Inn"の仕事の依頼は、新年や独立記念日の花火など、年間の大きな祝日に因んだ曲を書くことでした。その中で、バーリンが一番困ったのが「クリスマス」!何しろ、子供の時から祝ってないし、とにかく家が貧乏だったので、それどころじゃなかった...さっぱりイメージが湧きません。

 そこでバーリンは、NYやLAで近所の人が飾るクリスマス・ツリーや、雪の情景を思い浮かべて、四苦八苦しながら作詞作曲。やっと出来てはみたものの、リアリティに乏しい...作者は全く満足のいくものじゃなかった。ところが、歌い手のビング・クロスビーは「これはイケルぞ!」と太鼓判を押し、それ以上のヒットになったんです。

 それは何故か?

 バーリンの思い描いたファンタジーが思いがけず、人々の心を打ったのです。

<心を打つ歌詞>

 人々の心を掴んだのは、まず冒頭ライン、

 I'm dreaming of a white Christmas, Just like the ones I used to know.(私は白銀のクリスマスを夢に見る、前によく知っていた、懐かしいクリスマス。)家を離れ従軍する兵士たち、愛する家族や恋人を戦地に送った人たち、双方にとって、宗教も民族も関係なく、"皆が前に知っていた"ホワイトクリスマスは「平和」の象徴だった!"と気づかされたんです。

 クロスビーは述懐しています。「戦時中、内外の基地に慰問に行くと、真夏でも、必ずこの曲がリクエストされ、どんなラブ・ソングよりも兵士たちに受けたのがホワイト・クリスマスだった。」

 同時に、「別に自分でなくとも、どんなひどい歌手が歌っても必ずヒットしただろう」と、冗談ぽく述べています。

 キリスト教を超えた愛のお祭りとしてのクリスマス・ソング、そこにあるのは、白銀のイメージと、トナカイのソリの音を待ち焦がれる子供たちの生き生きした情景、そして、結びの言葉は、平和な日が来るようにという一般市民すべての願いでした。

"May your days be merry and bright,And may all your Christmases be white."(明るく楽しい日々が来ますように。皆さんに白銀のクリスマスが訪れますように。)


White Christmas by Irving Berlin

私は白銀のクリスマスを夢に見る、

昔懐かしいクリスマス。

木々の頂は雪にきらめき、

子供達はトナカイのベルに耳を澄ます。

白銀のクリスマスを想いながら、

クリスマスカード全てに添え書きしよう。

「あなたに明るく楽しい日々と、

白銀のクリスマスが来ますように。」

 だから、「ホワイト・クリスマス」は、宗教も文化も関係なく、世界中で愛され、今夜の報道ステーションでもBGMで流れていました。

 災害、原発、不況、色々大変だった私たち、今年聴く「ホワイト・クリスマス」は、より一層、深く胸に響きますね。

Evergreen_cover.JPG  チャーリー・パーカーは「ホワイト・クリスマス」をBebopで演奏し、トミー・フラナガンはそれを更に洗練させたヒップなハードバップ・ヴァージョンを創りました。フラナガン・トリオの演奏はレコードとして残っていませんが、寺井尚之とThe MainstemのEvergreenにフラナガン・ヴァージョンが収録されています。iTuneでしたら、僅か150円ダウンロードできますので、ぜひ聴いてみてください!そして「明るく楽しい日々と、スイングするハードバップなクリスマス」を!


CU

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コメント(4)

tamae さん、こんばんは。

こちらは雪が降っており、まさにホワイトクリスマスといったシチュエーションです。

阪本順治監督の映画「この世の外へ クラブ進駐軍」で、ダニーボーイを聴いた米兵が涙を流すシーンがありました。ホワイト・クリスマスが真夏でもリクエストされたのはアメリカ人にとって郷愁を誘うメロディだったのかもしれませんね。

日本ではこの時期にしか聴かれませんが、ロマンを呼ぶメロディです。雪が降ってくる速度は桜の花びらが落ちる速度と同じといいます。ロマンティックですね。

Dukeさま、いらっしゃいませ!

札幌の雪景色はどんなに美しいことでしょう!

 寺井尚之は「桜と雪の舞い散る速度が同じなのか~」としみじみ感慨深気でおります。

 ホワイト・クリスマスは「あの頃の」クリスマス、ベトナム戦争の時、教会の牧師さんが、「休戦中とはいえ、戦場にいるベトコンと米兵に祈りを」と説教されたのを、今も覚えています。

 土曜日のホワイト・クリスマス、デュークさまにも届きますように!

北の国のDukeさんと同じように、冬になると雪が降って嗚呼~冬が来たと感じます。しかし近年はその雪が降らなくなりました。30年以上前はトロントでも膝よりも上になるくらい積雪があってえらい所にやってきたものだと思いましたが。現在は温暖化の影響をヒシヒシと感じます。

この曲を聴くとまた一年が終わったと実感します。そして歌と共に何故か自分の置かれている環境がいかに幸せで恵まれているかと言う事を感じずにはおれません。

特に今年は色々な災害が重なり被災された方々も多く心が痛みました。2012年は少しでも復興が進み少しでも住みよい状態になる事を祈ってホワイト・クリスマスを聴きたいと思います。

tamae様、そして寺井様、Overseas の皆様にとって2012年が良い年でありますように!

 トロントから、日本に紹介されない貴重なニュース、ブログいつも楽しく拝読しています!

大阪は白銀のクリスマスは夢でしか見れませんが、今夜のThe Mainstemの演奏がクミさんに届きますように!

来年は日本中がより良い年になりますように!

クミさんにも楽しい一年でありますように!

大阪より心を込めて!

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