2012年7月12日

対訳ノート(35) 虹色 Misty

 九州は未曾有の大雨、いつもは穏やかで美しい白川が氾濫、熊本市でトミー・フラナガン特集ライブの快挙を行ったベーシスト、古荘昇龍さんのご近所も水害に見舞われていると伺いました。心よりお見舞い申し上げます。

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 大阪のJazz Club OverSeas、土曜日は「トミー・フラナガンの足跡を辿る」開催!『Ella in Japan』佳境に入ってきました。

 解説用の構成表や対訳もやっと一揃い出来上がって、ほっと一息... 今回作った対訳は全15曲。『パーディド』や『A列車で行こう』など、有名スタンダード曲でも、全く違う歌詞を歌ってから、スキャット(エラは"Bop"と呼びます。)で聴かせたりするので、全て一から聞き取りです。

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 東京オリンピック・イヤー、1964年お正月の来日公演、一番大きな拍手があったのは"ミスティ"でした。"ミスティ"は、OverSeasでもリクエストが多く、プログラムの都合でお応えできない時の為に、寺井尚之とThe Mainstemがダウンロード用CD、『Evergreen 2』に収録しているので、ぜひ一度聴いてみてくださいね!

 皆さんご存知のように、"Misty"は、天才ピアニスト、エロール・ガーナーの1954年の作品。2年後に"ポルカドッツ&ムーンビームズ"や"バット・ビューティフル"などでおなじみの作詞家、ジョニー・バークが歌詞を後付けし、人気歌手ジョニー・マチスのレコードで大ヒット、ジャズの世界ではサラ・ヴォーンの十八番として世界的に有名になりました。"Misty"は、日本語では、よく「霧の中」的に訳されるけれど、「霧」は"Fog"で、"Mist"は「靄(もや」。"Mist"の語感の方が、潤いと透明感があります。米国の国語辞典サイトを読むと「甘美で感傷的な気分に満たされる」という語意があるのが判ります。エイゴはムズカシイ!

 ★左の公演ポスターは、ジャズ評論家で「Ella In Japan」のリリースに尽力された後藤誠氏の提供です。

<飛行機から観た虹の曲>

 ただし、エロール・ガーナー自身は、もっとシンプルな理由から、『Misty』と名付けたのでした。作曲の経緯については諸説あるけど、アーサー・テイラー(ds)のインタビュー集、"Notes and Tones"には、ガーナ―自身の決定的な証言が載ってます。ガーナ―の言う『Misty』は、水滴で潤む飛行機の窓ごしに観た虹のことだったんです。ガーナ―はこんな風に語ってます。

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 「"Misty"は、サンフランシスコーシカゴを飛行中、美しい虹に出会って作った曲なんだ。まだジェット機がない時代で、フライトはデンバー経由だった。デンバー空港に向かって高度を下げて行くと、きれいな虹が出た。それは見事な虹だった。長さは短めく幅広だったので、あらゆる色彩が見えた。飛行機の窓は雨で濡れていたので、虹は潤んで(misty)いた。それで、"Misty"と名付けたのさ。僕は自分の膝をピアノに見立てて、必死で思い浮かんだ曲を弾いていた。目を閉じてハミングしながらね。すると隣に座っていたおばあさんが、てっきり僕の具合が悪くなったと思い込み、客室乗務員を呼んでくれた。シカゴに着くころには、曲は出来上がっていた。うまいことに、目前にレコーディングが控えていたので、そこで録音したんだ。つまり、その飛行機で僕の隣に座っていたおばあさんが、"Misty"の初演を聴いた人なんだ!」

 譜面が読めないことで有名なガーナーですが、作った曲は、写真のような形で脳内に記憶することが出来たのでしょう。

 ジャズの世界では、クインシ―・ジョーンズのアレンジで壮大に歌い上げるサラ・ヴォーンの名唱が有名ですが、『Ella in Japan』のヴァージョンも素晴らしい!
 たたき上げのバンドシンガーであったエラ・フィッツジェラルドは、全然関係のないレパートリーで、何かのトラブルがあったとき、で、この"Misty"の冒頭フレーズを、秘密の暗号コードとして時々使ってました。アドリブで、いろんなフレーズを挿入しすぎて、コーラス中のどこに居るのか判らなくなってしまった時、冒頭のフレーズを歌詞のないメロディ・スキャットで繰り返すんです。"Look at me! look at me!" つまり「私を見て!首振りするから、ちゃんと見て、コーラスの頭に戻ってね!」そうすると、ビシっとうまく収まります。あの有名な『Ella in Berlin』でも聴けますよ。

Misty

Eroll Garner/ Johnny Burk

ねえ、私ったら、

木の上で途方に暮れてる子猫みたい、

雲につかまるように頼りな気。

何が何だかわからない、

うっとり、ぼんやり、

あなたと手をつなぐだけで。

ねえ、私のところに歩いて来て、

すると、沢山のヴァイオリンが音楽を奏でる、

それは、あなたのハローの声かも。

うっとり、恋の気分、

あなたといっしょにいるだけで。

だまされていてもいいの、

あなたになら、だまされたい。

私はおろおろするだけで、

あなたについて行くだけ。

一人では、

この不思議な世界は歩けない。

右も左も、

何がどうだか判らない、

あんまり、うっとり、

恋の気分に浸りすぎ。

 「足跡講座」今回のおすすめ料理は「賀茂なすスペシャル」

 「トミー・フラナガンの足跡を辿る」Ella in Japanは、今週土曜日6:30pm開講!(チャージ 2,625yen) 学割チャージ半額です。

 「足跡講座」 ぜひぜひ Look At Me!

CU

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