2012年8月 2日

作曲家のキモチ: ベニー・ゴルソン

 暑中お見舞い申し上げます♪

 先週からOverSeasのライブを聴きに来日されていたフィオナさん、寺井尚之の演奏と大阪の街を満喫したウルルンな滞在でした。来日中、寺井尚之のデュオやトリオ、全ライブを心の底から楽しんで、共演ミュージシャン達にも最高の応援をいただきました。

 お忙しい中、はるばる来てくれた彼女にHelloと挨拶に来てくださったお客様、ほんとにありがとうございます。彼女も大喜び!その分別れはさびしかったですね。本日早朝、無事帰国、「夢のような一週間だった」とメッセージを頂きました。私も初めてNYに行った時、トミー・フラナガンやジミー・ヒースといった巨匠の奥さんたちに、たいへんお世話になったので、少しでも同じようにしてあげられたのだったら、最高です。

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 さて、ヘッポコ観光ガイドがお払い箱になり、私も再び日常の業務に。コルトレーン評論家の藤岡靖洋氏とのプロジェクトで、フィラデルフィア時代のジョン・コルトレーンの仲間、ベニー・ゴルソン(ts)の原稿がやっとのことで仕上がりました。ベニー・ゴルソンと面識はありませんが、Five Spot After Darkは高校時代から好きだったし、寺井尚之の愛奏曲も多いし、フラナガン参加の『Blues-Ette』はピアノ教室の必聴盤だし、とても身近な存在です。藤岡氏も何度かインタビューをされていますが、書物やネット上にも膨大な肉声の証言があるので、それらを網羅するのに時間がかかりました。とはいえ、ゴルソンは、演奏に負けないほど話が上手く、どれもこれも面白くてためになるものばかり!それにゴルソンを調べ始めたら、DVD講座でも登場する機会が多くなり、寺井尚之の解説が大変役立ちました。

 明日の「映像で辿るジャズの巨人」ジャズ・ドキュメンタリー、A Great Day Harlem でもベニー・ゴルソンの証言が沢山登場しますから、ぜひチェックしてみてくださいね。ゴルソンは、ホレス・シルヴァーとのトーク場面の冒頭に、こんな面白い話をしています。

 「僕は、よく名曲を作曲する夢を見るんだ。だが翌朝目覚めると、どんな曲だったかすっかり忘れてる。でも或る夜、そんな夢を見た途端に目が覚めた。それで、夜中に慌てて五線紙に走り書きして、それかたまた寝たんだ。次の朝一番に、その曲を弾いてみたら、何となくどこかで聞いたことがあるなと思って...よく考えてみたら"スターダスト"だったよ・・・(笑)」

front1041.jpg "アイ・リメンバー・クリフォード" "アウト・オブ・ザ・パスト" "ウィスパー・ノット" "ステイブルメイツ"...ゴルソンの曲は、どれもメロディが覚えやすいし、口づさみ易い。ところが、長調なのにマイナー・コードから始まったり、基本的な和声進行のルールとは違うものが多いし、コーラスのサイズも変則的なものが多いのですが、聴き手にはとても自然に響きます。

 ゴルソン自身、作曲するうえで一番の基本は和声でなく「メロディ」と言い切っているのも、なるほどと頷けますし、実際に歌詞が付いて沢山の歌手に歌われている曲もあります。

 例えば"アイ・リメンバー・クリフォード"は、ジョン・ヘンドリクスが歌詞を後付して、ダイナ・ワシントンやヘレン・メリル、それにイタリアの歌手、リリアン・テリーがフラナガンの名演と共に録音していますよね。Whisper Notは大評論家レナード・フェザーが歌詞を後付けし、メル・トーメ、アニタ・オデイ、エラ・フィッツジェラルド達が名唱を残しています。この2曲はゴルソン自身が歌詞を付けることを承諾したのですが、基本的に自分の曲に歌詞は不要という主義。『Freddie Hubbard & Benny Golson』の中のドラマチックな作品"Sad to Say"は、大歌手トニー・ベネットが、あの有名なビル・エヴァンスとのデュオ・アルバムを録音する際に「歌詞を付けて歌いたい」と頼んだそうですが、「エヴァンスはイメージに合わん!」と一蹴したそうです。

 それどころか、男性ジャズ・ヴォーカリスト、ケヴィン・マホガニーが"ファイブ・スポット・アフター・ダーク"に無断で歌詞を付けて録音したときには、出来上がったCDを市場から回収させたというから、ハンパじゃありません。トミー・フラナガンもそうでしたが、納得のいかないことは絶対に許さないというのがハード・バッパーなんですね。

 すでに芸術として完結している作品には、余計な付属品は不要なのでしょう。ゴルソンは自作以外のジャズのオリジナルに歌詞がついたのも好きじゃないし、何よりも嫌いなのは、ジャズのアドリブに歌詞を付けるヴォーカリーズなんだそうです。

 とにかく、「向こうは歌詞をつけて歌ってもらって名誉なことだろ。」と言う人も多いけど、ゴルソン自身はまっぴらごめん。熟年になってからは、どうしても必要ならと、自分で作詞作曲しています。

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 というわけで、明日の「映像で辿るジャズの巨人:A Great Day In Harlem」は真夏のハーレムで撮影されたジャズメンの写真を基に作られたとても面白いドキュメンタリー!ぜひお越しください!

 おすすめ料理は「ビーフのパイ包み焼」です!CU

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