2013年10月10日

トランペッター人生いろいろ(その1):ルイス・スミス

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いつまでたっても扇風機がしまえない大阪、ライブで「枯葉」も聴けないむし暑さです。

  毎月第二土曜日は「新トミー・フラナガンの足跡を辿る」、10月12日(土)は名盤揃いでおすすめです!
  J.J.ジョンソンが新編成のコンボで録音した『J.J. in Person』を頂点に、クリフォード・ブラウン亡き後、彗星の如く現れて消えたトランペット奏者、ルイス・スミスのブルーノート・デビュー作『Here Comes Louis Smith』と、チャーリー・パーカーがマイルス・デイヴィスの後任者として迷わず白羽の矢を立てたトランペット奏者、レッド・ロドニーのアルバム『Red Rodney』の豪華三本立!

  ルイス・スミスとレッド・ロドニーは、とりわけ若いジャズ・ファンの皆さんにあまり馴染みがない名前かも知れません。二人の芸風もその人生も全く対照的!
 音楽性は寺井尚之が講座でズバリ納得の行く解説をしてくれますので乞うご期待!Interludeでは、全く違う人生模様を覗いてみよう!

<その1:ジャズより家族:ルイス・スミス>
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 日本ではルイ・スミスという呼び名が一般的なようですが、ここでは実際の表音に近い「ルイス」と綴ることにします。ルイス・スミスは1931年、南部テネシー州メンフィス生まれ、トミー・フラナガンよりひとつ年下になります。
 従兄弟に23才でこの世を去った夭折のトランペッター、ブッカー・リトルがいます。10代でトランペットを始め、学業にも優れていたため、奨学生としてテネシー州立大学で音楽を専攻、天才ピアニスト、フィニアス・ニューボーン・ジュニアとともに、大学の選抜バンドで活躍しました。卒業後さらにアナーバーにあるミシガン州立大の大学院に進みます。その時同じミシガンのデトロイト勢と交友を持ち、NY進出後、ケニー・バレルとも共演しました。

<ジュリアン・アダレイ先生と>

  1954年から2年間の兵役後、南部で音楽教師として教職に就き、昼は公立高校の教師、夜はジャズミュージシャンの生活。

 フロリダ州のリゾート都市、フォート・ローダレールの公立高校の同僚が、今回のアルバムに覆面参加しているキャノンボール・アダレイでした。二人で高校バンドの顧問をを担当したいたというのですから羨ましい話ですね!

 『Here Comes Louis Smith』の録音当時、アダレイはマーキュリー・レコードの専属アーティストだったので、"Buckshot La Funke"という不思議な偽名で参加しているのですが、爆発的な「火の玉」サウンドは隠しようがありません!実際にスミス夫妻にインタビューされたジャズ評論家、後藤誠氏によれば、この名前は、二人が顧問をしていた楽団名に因んだものだったそうです。さらに余談ですが、アルバム・ジャケットのユニークなチャイニーズ・ルックは、「たまたま来ていた部屋着」だったことも後藤インタビューで明らかになりました。

<さよなら、ジャズ界>

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 スミスは、奥さんのLuluに捧げたアルバム、『Ballads for Lulu』を'90年代にリリース

 

『Here Comes Louis Smith』は、もともと"Transition"という別のレーベルの作品だで録音後倒産、ブルーノートが買い取って、スミスを逸材と見込んだアルフレッド・ライオンが専属契約をして、更にもう一枚『Smithville』というリーダー作をプロデュースしています。それにもかかわらず、ルイスは、1958年にあっさりとジャズの第一線から引退!理由は「家族を養うため」でした。モダンジャズの黄金時代でも、ジャズだけで食べていけるミュージシャンは、ほんの一握りであったんですね!

 引退後、ルイスはミシガン州の学園都市アナーバーに戻り、古巣のミシガン州立大やアナーバーの公立高校で後進の指導に専念し、ジャズ・ヒーローだった伝説的音楽教師として生徒たちに愛されました。

 '70年代になってからは、レコーディング・アーティストとして復帰し、教職の傍ら"Steeplechase"に10枚近いアルバムを録音しています。

 2005年に、脳卒中に見まわれ失語の後遺症が残りましたが、2011年には、アナーバーで「地元のジャズ・レジェンド」の80才の誕生日を祝うイベントが盛大に行われた模様です。

 後輩トランペッター、元ジャズ・メッセンジャーズのブライアン・リンチは、ルイス・スミスに捧げた""'Nother Never""(唯一無比)を作曲、スミスのオリジナル曲"Wetu"と共に、自己アルバム『Unsung Heroes』に収録しているのが泣けます。

 第一線としては、わずか数年間のジャズライフに終わったルイス・スミス、でもこの人の表情からは、志半ばで道を諦めた屈折感は、どこにも感じられません。

 

 明日は、スミスと対照的に起伏の激しい人生を歩んだトランペッター、レッド・ロドニーのお話を!

 

CU

 

 

 


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