2013年11月14日

トミー・フラナガン:名演目のレシピは?

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Tommy Flanagan (1930-2001)

 
<フラナガンの演目はマニアックか?>
 このところ、トミー・フラナガンの名演目といわれる曲の、ごく一部を紹介してきました。 
 
 「フラナガンの名演目」と言われてもなあ・・・マニアックな曲ばっかりじゃん」と言うなかれ。馴染みのない曲でも、心にすっと入ってくる違和感のなさには驚くばかり!それにも拘らず、演奏する者がほとんどいない理由は、ひとつに「難曲」であること。もうひとつは、「譜面が入手できない」ことが、とりあえずの原因です。今はスマホでも、リアルブックと呼ばれる膨大なジャズ・スタンダード譜面集がダウンロードできますが、メロディーもコードも惨憺たるもので、そのまま演奏しても格好がつかない。
 
  フラナガンは昔気質で、譜面を見せないミュージシャンだったし・・・というか、真正のスコアはあの立派な禿頭の中にしっかり格納されていた。だからフラナガン・トリオの歴代の共演者達も、レコーディングすら譜面なしでやっているものが殆どなのです。それがほんとのジャズ・ミュージシャン。だって五線紙に音楽に必要なデータを完全に書き入れることはできないのだから。 フラナガンは一応、演奏場所には、譜面の入った茶封筒を持参してはいたけれど、実際の演奏とはだいぶ違っていたのかもしれません。でも寺井尚之には、書きおろしの新曲を写譜させていたこともありました。その原本ににもあっと驚く「書き間違え?」があって、「こんなん初めてのベーシストに渡したらエラいことになるやろな。」と寺井は呆れてた。むしろ、フラナガンの方が寺井の書いた譜面を持って帰ったりしていたくらいです。
 
 往年のデューク・エリントン楽団でも、譜面台に立てられたスコアと、実際の演奏はずいぶん食い違っていて、(恐らく何度もヴァージョン・アップがなされていて)、「ぽっと楽団に入ると全然どこを演ってるのかわけがわからない!」とディジー・ガレスピーがボヤいていたから、ジャズってそんなものなんだ!
 
 
 
<フラナガン流ブラック・ミュージック> COVER.jpg  
 エリントニア、モンク、ダメロン、バド・パウエル、それにチャーリー・パーカー!そこから派生するサド・ジョーンズ、トム・マッキントッシュという辺りがフラナガン好みの作曲家です。
 フラナガン的選択基準は"ブラック"であること。
 「ジェームズ・ブラウンのようなソウル・ミュージックのことなのか?」と、インタビューで質問されると、「そんなもんワシは知らん!」と気色ばんだことがあった。
 
   フラナガンの言うブラック・ミュージックってなんだろう?
 
 そのヒントになるのが、"Something Borrowed, Something Blue"というフラナガンのオリジナル曲。グローヴァー・ワシントンJrが録音して、たくさん印税をもらったらしい。エレクトリック・ピアノで演奏されたことは別にして、気になるのは、この曲の題名。  元は英国に伝わる花嫁さんの幸せを約束する縁起のよいもので、全体はこんな詩。
 
Something old, something new,
  Something borrowed, something blue,,
And a silver sixpence in her shoe,
古いものと新しいもの、,
 借りものとブルーなもの、,
そして花嫁の靴の中には銀貨を入れて。
  ここで連想するのが、前々回に紹介したトム・マッキントッシュの作品を取り上げたディジー・ガレスピーのアルバム『Something Old, something New』(1963年)。新旧の名曲がうまく組み合わされたこのアルバムに収録されたマッキントッシュ作品のうち"Cup Bearers"と"The Day After"はトミー・フラナガンのレパートリーになっている。
 
 "Something Borrowed, Something Blue"という曲は、ディジーとマッキントッシュへのリスポンスではなかったのだろうか?
 
 そんな風に前提を立ててから、もう一度このフレーズを訳してみると・・・
 

"Something Old (自分のルーツを自覚して), 

Something new (革新の心を持ちながら),,

Something Borrowed (先人や西洋音楽のアイデアを借り),

Something Blue (ブルース・フィーリングを保て)"

 

  花嫁に向けた格言には、トミー・フラナガン流、ブラック・ミュージックの極意が隠されていたのかも知れませんね。 

 と、いうわけで、これからもトミー・フラナガンの名演目がマニアックなもので終わらぬように、紹介していきたいと思います。

 え?私のブログがすでにマニアックって?テへへ・・・わかる奴だけわかればいいの。

 

 

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 何よりも、フラナガンの背中を見て盗み、フラナガンの教えを受けた寺井尚之と、彼が手塩にかけた宮本在浩(b)、菅一平(ds)とのメインステムの演奏を、トリビュート以降も愛していただけますように!どうぞよろしくお願い申し上げます。

CU

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