2014年5月22日

NYアンダーグラウンド・レジェンド、東出(あずま いづる)さんの思い出

 OverSeas創立35周年、ここまで支えて来て下さった新旧のお客様、本当にありがとうございます。思い起こせば、数えきれない出会いと別れがありました。

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旧店舗にて、東出(as)ピアノは寺井尚之(念のため)

 かつてインターネットもない時代、OverSeasに、東出(あずま いづる)さんというアルト奏者が出演していました。NYと日本を往来しながら活躍していたバッパーで、日米共通のあだ名は"Del /デル"さん。でも私たちは尊敬を込めて東さんと呼んでいた。目にも耳にも、正真正銘のバッパー!1958年頃の生まれだったと思います。現在OverSeasに出演しているアルト奏者、岩田江さんは一世代下の後輩で、20年以上前、OverSeasで東-岩田コンビを聴いたこともあります。岩田さんもすごいプレイヤーになったなあ!

 東さんは、いつもきれいに髪を撫で付け、細身の体にビシっと上等のスーツ姿でバンドスタンドに現れました。カットタイムで足カウントを取りながら、濃密で艶のある音色、疾走感いっぱいプレイは、バップの魔力が一杯で、Now's the Time、Mama Duke、Donna Leeで激しくスイングするかと思えば、"アダルト・タイム~"なんて言ってからBody and Soulで泣かせた。スーツでプレイしていたのは、NYの長老ジャズマンに「バッパーはギグのときはネクタイしてきっちりした格好やないといかん!」と言われたからだそうです。

azumaSCN_0051.jpg 寺井尚之も東さんが大好き!だってバッパーだから!バップの言葉で音楽の会話ができるから。いつも共演するのを楽しみにしていました。その頃はバブル時代で東出(as)さんの出演日はいつも満員!

 日本でのホームグラウンドの京都では、市川修(p)さんと盛んに共演、数々の武勇伝が大阪まで聞こえてきて、とにかく伝説の多い人だった。

 高校中退でNYに飛び出したストリート・スマート、師匠は、"チャーリー・パーカーとオーネット・コールマンの接点"と言われたポスト・バップのアルト奏者、クラレンス"C"シャープ(Cシャープ)。その師匠は「セントラルパークに住んであるねん!」と言っていた。つまりホームレス。一流なのに、おそらくはクスリの問題もあって、アンダーグラウンドの伝説的ミュージシャンだった人。NYでは、フランク・ガント(ds)やフレディ・レッド(p)、ギル・コギンズ(p)、ジャズ通ならあっと驚くような渋いミュージシャンと共演してた。アート・ブレイキーの長女でヴォーカリストのイブリン・ブレイキーが来日公演中、わざわざ東さんを訪ねてOverSeasにやって来たこともあります。

 当然東さんはバイリンガルでしたが、「八百屋」を「野菜屋」と言ったり、日本語のほうが少したどたどしかった。でも噂によれば、お父さんは立派な学者さんらしい。とはいえ、気取ったところはなく、腰が低く、後輩に優しい。ちなみに、お兄さんは京都のTボーン・ウォーカーと言われる伝説のブルーズ・ギタリスト、ますます不思議な人だった。 7月にOverSeasにやって来る名ドラマー、田井中福司さんのNY仲間でもあります。

 どんなに貧乏していても良い音楽さえ出来れば幸せ!そんな彼にとって、日本のジャズ・シーンは少々窮屈なものだったのかも知れない。かぐや姫みたいに、長く日本にいると、元気がなくなるように見え、そうすつとNYに旅だった。そんな事が何度かあって、とうとう阪神淡路大震災の前日、東さんは家族を残しNYに・・・それっきり20年が経ちました。

 東さんのことを懐かしく思うのは私たちだけではなく、実際にNYまで探しに行った人がいた!

1619215_317237571734394_2314342218057315847_n.jpg左:東出さん、中央:写真提供感謝!DJ有田弘慶氏、右:unknown 

 
 関西でDJとして活躍している有田弘慶さんは何度か渡米して、二年越しで東さんを発見!東さんは、あれからずっとNYのディープな場所でセッションし、ストリートで演奏を続けていた!これまでの人生で、今が一番最高の音を出せるようになったと充実しているらしい。

その間に、私も東さんの近況をよく知る方と出会い、とても不思議なめぐり合わせを感じました。

 有田さんがFBにこの写真をアップした数日後、こんどは東さんの奥さんとお会いした!彼女はとても素敵なお顔で、素晴らしい人だった。なんかすごく懐かしく、親戚に出会えた気分になりました!あの頃幼子だった息子さんは、一流大学を卒業後、現在は大きな会社に勤務されていて、何度もNYで家族の再会をしていると伺い嬉しかった!

 この出会いをお膳立てしてくれたのが、東さんのお弟子さんのアルト奏者で時計修理のエキスパート。腕時計と心の時計を同時に修理してもらって感謝するのみです。

 東さんゆかりの方々は、彼がもうすぐ帰ってきそうな予感がすると言います。東さんがインターネットでこの記事を見ることはないでしょうが、もしも帰ってきたらまたOverSeasで寺井と一緒に共演してくれる日が来ますように!

*6/12 更新記録:東さんのご家族に頂いた情報を元に、フリガナ表記(あずま いずる いづる)など若干修正を加えました。東出さんのジャズライフについては、今後も書いていきたいと思います。

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コメント(6)

昔、ジャズを知らなかった頃、オーバーシーズの窓越しに、東出さんの姿を見て、興奮したのを思い出します。

1990年頃、大学生だった私は、住んでいた京都で東さんのライブを聴きに行ったことがあります。一回は、自分の大学の軽音楽部のビッグバンドと共演したもの、もう一回は市内のRAGだったかどこかのライブハウスでのセッションでした。確かに面白い日本語を話す人で、音楽よりもそれを楽しみに聴きに行った覚えがあります。私の仲間内ではしばらく東語録を語ることが流行ってました(笑)。ご健在なんですね~。想像通りのお人柄で、楽しい記事でした。ありがとうございます!

inachangさま、コメントありがとうございました。「inachangのお気楽な投げ釣り覚書」ブログもとても楽しく拝見させていただきました。東さんのファンはまだ周りに多いので、FBで紹介させていただきますね。
いつかinachangさまとご一緒に東さんのライブが聴ける日が来ればいいなあ!

こんにちは!
とても懐かしい東さんの記事に感激しました。ジャズを始めた頃に一緒に居ました。NYに行ってからの情報はありましたが、最近どうしているのか全然分かりません。もし何か
情報があるのでしたら是非教えて頂きたいと思います。
ちなみに、私は今北海道在住です。宜しくお願いします。

DELさんのボーヤでOver Seasに行ったことを懐かしく思い出しました.文中に出てきたお兄さんの演奏がFacebookにあります.
https://www.facebook.com/photo.php?v=638635379545921

DELさんのボーヤでOver Seasに行ったことを懐かしく思い出しました.文中に出てきたお兄さんの演奏がFacebookにあります.
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