2017年5月30日

翻訳ノート〈スモーキン・イン・シアトル - ライヴ・アット・ザ・ペントハウス 1966〉

Smokin_seattle.jpg

  4月29日発売以来、ウェス・モンゴメリー&ウィントン・ケリー・トリオが遺した歴史的未発表音源、〈Smokin' in Seattle Live at the Penthouse〉(Resonance/ キングインターナショナル)が、米国のみならず、各方面で大きな話題を呼んでいます。

 ジャズギターの金字塔アルバム〈Smokin' at the Half Note〉の僅か7ヶ月後のライヴ録音、ウィントン・ケリーは体調不良で降板したポール・チェンバースに代り、ロン・マクルーアをレギュラー・ベーシストに起用し、ウェス・モンゴメリーと共に9週間のツアーに出ました。この録音はツアー開始後まもなく、シアトルにあった人気ジャズ・クラブ《ペントハウス》から生中継されたラジオ音源を、世界の発掘男と呼ばれる名プロデューサー、ゼヴ・フェルドマンが熱血手腕によってアルバム化したものです。ウィントン・ケリー・トリオ、ウェス・モンゴメリー共に絶好調、理屈抜きにジャズの楽しさとが伝わってきて、'66年の西海岸にタイムトリップしてラジオを聴いているような気持ちになります。

 日本盤に付いている、原田和典さん書き下ろしの、とても判りやすくて興味深いライナーノートは必読! 
 そして《Resonance》の専売特許である貴重写真と豊富な資料の付録ブックレットの日本語訳は、CDに付いている応募ハガキを送るともれなく返送されるという楽しい趣向になっています。日本語版のスペシャル・ブックレットは同時リリースされて、これまた大ヒットを記録しているジャコ・パストリアスのNYでの歴史的コンサートのライヴ盤〈Truth, Liberty & Soul〉の付録資料とペアになっています。

 〈Smokin' in Seattle Live at the Penthouse〉のブックレット資料翻訳は、不肖私が担当しました。現存する参加ミュージシャン、ジミー・コブ(ds)とロン・マクルーア(b)の証言、ケニー・バロン(p)によるウィントン・ケリー論、パット・メセニーのウェス・モンゴメリー礼賛文などなど、ジャズ史に興味ある者なら、あっと驚く秘話の宝庫。そして、メセニーのまっしぐらなウェス愛にすごく共感しました!翻訳中、マクルーアさんから、色々なお話を伺うこともでき、私にとって一層光栄な仕事になりました。公民権法が制定されたとはいえ、この当時、黒人であるウィントン・ケリーが白人ベーシストであるロンさんを起用すること自体が、大英断であったそうです。

511FHBodjqL._SY355_.jpg〈Truth, Liberty & Soul〉の翻訳は『ジョン・コルトレーン「至上の愛」の真実』や『マイルス・デイヴィス「カインド・オブ・ブルー」創作術』などのアシュリー・カーンの著作を初め錚々たるジャズ・ブックのベストセラーを手がけてこられたプロ中のプロ、川嶋文丸さんが担当されました。充実した内容もさることながら、翻訳のペエペエにとって、すごく勉強になりました!

 現在のジャズの世界で、異例ともいえる日本語版スペシャル・ブックレットの実現は、キングインターナショナルの敏腕A&Rディレクター、関口滋子さんの熱意によるものでした。関口さんの盟友である《Resonance》の名物プロデューサー、ゼヴ・フェルドマン氏が集めたジャズの貴重な歴史証言の数々を、「一人でも多くの日本のリスナーと共有したい!」という思いに駆られ、編集、制作をやってのけたのだそうです。「インターネットで気軽に何でも調べられるように思える時代でも、知り得ることのできなかった真実、関係者が語ったからこそ伝わる浮かび上がるドラマ。それらを一つの作品として、ポリシーを以って伝えようとするゼヴ・フェルドマン氏の仕事は、多少の困難があってでも、きっちり伝えて行きたい!」とおっしゃっています。 

  ゼヴさんがその仕事ぶりを絶賛してやまない関口ディレクターは、おっちょこちょいの私とはまるっきり対照的な女性といえるでしょう。普段は知的で物静かですが、仕事モードになると強力なパワーを発揮します。少女のように華奢で小柄な彼女のどこにこれほどのエナジーが秘められているかは不明ですが、面白い小冊子が出来あがりました。〈Smokin' in Seattle Live at the Penthouse〉〈Truth, Liberty & Soul〉-2017年出荷分のどちらのアルバムにも梱包されている応募ハガキを送るともれなくもらえるそうです。発売後1ヶ月あまり、予想を遥かに越える応募ハガキが毎日どっさり届き、嬉しい悲鳴を挙げておられるようです。

 ジャズの現場に立ち会った人々の生々しい証言は、音楽の感動に新たな彩りを添えてくれます。興味の尽きないジャズ史の断片が垣間見えるブックレット、ぜひ読んでみてくださいね!(了)

DSCN0143.JPG

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://jazzclub-overseas.com/cgi-bin/mt/torakkubakku.cgi/1898

コメントする