2009年9月 7日

生徒会セミナー 満員御礼!

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 寺井尚之ジャズピアノ教室生徒会主催の日曜セミナーが、昨日華々しく開催されました。先週は発表会、今週はセミナーと、寺井門下のエネルギーはすごいです。

 「スタンダード曲をトミー・フラナガンの味わいにするには?」というテーマは講師陣には大変手ごわいものであったと思います。なぜなら、トミー・フラナガンという人は、誰でもがこぞって演るようなスタンダードを好んで弾く人ではなかったからです。

 それでもなお、スタンダード曲をテーマに選んだのはひとえにジャズ初心者の後輩たち想いの心からで、あやめ会長、むなぞう副会長はBeautifulでした。

munazou_lecture.JPG  トミー・フラナガンと個人的に接する貴重な経験を演奏に活かすむなぞう副会長は、アービング・バーリンの永遠の名曲"How Deep Is the Ocean"を取り上げて、フラナガンのピアノは、しっかりと曲の意味を伝えていることを教えてくれました。「音楽は特殊言語」であるということの証明ですね!英語に堪能でスタンダードの歌詞に憧憬深いむなぞうくんの個性が溢れ、後輩たちにも判りやすいレクチュアが大好評でした。

ayame_lecture.JPG  発表会「最優秀賞殿堂入り」の理論派、あやめ会長は、歌詞のあるガーシュインのスタンダード曲"Isn't It a Pity?"と歌詞のないモンク・チューン、"Ruby, My Dear"を取り上げ、エラ・フィッツジェラルドよりも歌詞をよく覚えていたフラナガンのピアノ的音韻の踏み方や、セロニアス・モンクとトミー・フラナガンのアドリブ・コンセプトの違いを、譜例を出して専門的に解説してくれました。初心者にはかなり難しい理論解説もあったけれど、皆一生懸命に耳を傾けノートを取っている姿も印象的でしたね!充実した内容のレクチュアをありがとうございました。私も勉強になりました。

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 今回一番ノリノリで準備をしていたのが真打 寺井尚之で、いつも自分が演奏しないくせに"ベサメ・ムーチョ""サテン・ドール""枯葉"を徹底研究したので解説は舌好調!シンプルで楽しいトークの中に、音楽への愛が溢れていて「今日のテライさんて淀川長治みたいやなあ・・・」ってお客様が笑ってました。

 愛が溢れると、寺井尚之は毒舌もあふれます。ハイブロウなトークの中に、いかりや長助やバキューム・カーも登場して、皆笑い転げてました。

 楽しいセミナーでピアニストたちが学んだことは、「誰でも出来るトミー・フラナガン」みたいなマニュアルはないということです。毎日努力をコツコツと積み重ねるのみ。それを楽しいと思える人、You Are Lucky!

 OverSeas常連の皆様、生徒会にお付き合いくださって、ほんとにほんとにありがとうございます!生徒ではない皆さんがお越しになると、いっそう張り切りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

CU


2009年9月 3日

対訳ノート(19)  東西「枯葉」事情

ph_feuille_jaune_ver_ptp.jpg    発表会が無事終わり、9月6日(日)は生徒会セミナー!教室外のお客様も多数ご予約いただき、生徒会に代わりまして心より感謝します!

 今回のテーマは「スタンダード曲」とあり、日ごろOverSeasでは滅多に聴かない超スタンダード曲、「枯葉」の対訳を色々作るうち、世界中でヒットしたこの曲の歌詞のイメージも、それぞれの文化によってかなり変化することが判って、今までとは違う親近感を持ちました。

<日本の「枯葉」:もののあはれ>

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 日本の「枯葉」は戦後のシャンソン・ブームの代表曲で、その時代の代表歌手、高英夫のシングル盤は、当時破格の10万枚セールスを記録したそうです。さすがに私も、リアルタイムのことは知りませんが、それから数10年後の私の小学生の頃ですら、秋になると「笑点」などのTV寄席で、必ず「枯葉よ~♪ 枯葉よ~♪」と、東西の漫才師や落語家が必ずネタにしているのを、夕御飯を食べながら笑ってました。ジャズ・ファンでなくとも、「枯葉」は超有名な曲だった。
 日本語詞は、イラストレーターとして余りに有名な中原淳一作、高英夫さんの歌唱を聴きとりしたらだいたいこんな感じ。

<枯葉 ジョセフ・コズマ曲/中原淳一詞>
(Verse)

風の中のともしび

消えていった幸せ

底知れぬ闇の中
 
はかなくも呼び返す

・・・

(Chorus)

枯葉よ~ 絶え間なく,

散りゆく 枯葉よ、

風に散る 落ち葉のごと 

冷たい土に・・・ 

 万葉の時代から紅葉狩りを愛でる大和民族の「枯葉」観がここにある。秋風に吹かれる枯葉の散りざまに、恋の終わりを重ね会わせた奇麗な詞ですね。祇園精舎の鐘の声に 諸行無常の響きを聴く私たち日本人にはすごく判りやすい!

<祖国フランスは「死せる葉」>

 それでは、元祖のシャンソンの「枯葉」はどうなんだろう?この曲は元来ジョセフ・コズマ作のバレー音楽で、大戦直後のフランス映画「夜の門」('45)の挿入歌に使うため、脚本を担当していたジャック・プレヴェールが歌詞を後付けしたもの。この映画で主役に抜擢されデビューを飾ったイヴ・モンタンが歌ったものの映画も歌もヒットせず、後にジュリエット・グレコが歌い世界的にヒットしたそうです。「夜の門」の枯葉のシーンはYoutubeで観ることが出来ますが、円熟期の歌唱とは比較にならない青臭いものです。

prevert.jpgJacques Prevert (00-'77)

 フランス映画が殆どロードショーされない現在ではジャック・プレヴェールを知る人も少ないかも知れない。ピカソ、マチス、シャガールなど20世紀美術の旗手たちと交わり多くの美術書を編纂したプレヴェールは、詩人であるだけでなく仏映画史上を代表する脚本家、ピカソの「青の時代」を彷彿とさせるような映像と名セリフに溢れる名画「天井桟敷の人々」や、OverSeasでは皆が知ってるあのカシモドの「ノートルダム・ド・パリ」の脚本家でもあります。

  詩人としてのプレヴェールの視線は、階級社会にありがちな「上から目線」ではなく、常に庶民と共にあるストリート系。
 原題は「Les Feuilles Mortes」、直訳すれば「死んだ葉」の複数形。日本の「枯葉」というネーミングは、この題名のニュアンスをうまく表現していますよね。でもプレヴェールの書いた「枯葉」は「散りゆく葉」ではなく、ゴミとしてシャベルで集められた落ち葉の塊。普通ならイケていない情景を一遍の詩に仕立て上げた非凡なものだった。原詩はこちら。

<Les Feuilles Mort by Jacques Prevert>

Verse

どうか君よ、覚えていておくれ、

僕たちが恋していた幸せな日々を。

あの頃の人生は美しく、

太陽はもっと輝いていた。

死んでしまった落ち葉がシャベルで積まれ、

道の片隅に捨てられている。

積もる枯葉は、

僕の追憶と後悔の姿(後略)・・・

 歌詞の中の過去の情景には色彩と光が溢れている。逆に、シャベルで積まれた現実の落ち葉には、紅葉の鮮やかさなど無縁なモノクロの風景しか聞こえてこないのです。日本人なら、色のない「枯葉」はまず詩にはしないでしょう。

 私のフランス人の友は、かねてからパリの男は絶対に浮気をするからケシからんと言い、ベルギー人の誠実な男性と結婚しました。それが本当だとすると、この詞に登場する「追憶」も「後悔」も「あんたが悪いんでしょ!」と言いたくなるけど、セミナーで聴く円熟期のイヴ・モンタンの歌唱を聴くと、そんな批判力が吹っ飛ぶ位説得力がありますから、どうかセミナーではトイレに行かず聴いてね。

<マーケティング重視の米国版>
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 生徒会セミナーで、色んなヴァージョンが聴けるアメリカ版の「枯葉」の詞は、偉大なるジョニー・マーサーの作詞。セミナーでは、マーサーがやはり歌詞を後付けして大ヒットした「サテン・ドール」も登場します。
 英語のタイトルは「Autumn Leaves (秋の葉)」と改題し、原作のヴァースの部分は大胆にカットして、コーラスの部分だけにして、ビング・クロスビーやナット・キング・コールでヒット('52)!数年後、ポピュラー・ピアニストのロジャー・ウィリアムスが、はらはら落ちる葉っぱのイメージのイントロをつけて爆発的にヒットして、ジャズの世界でも大いに演奏されたんですね。

Autumn Leaves by Johnny Mercer>

落ち葉が窓辺を漂う。

赤や黄金に染まる秋の木の葉。

僕は君を想う、

夏の日に交したキスや、

僕がいつも握っていた

陽焼けした君の手を。

(中略)

でも君がいないことが何よりつらい、

枯葉の落ちる季節になると。

johnny_mercer.jpgJohnny Mercer(09-76)  自らうまい歌手だったマーサーの歌詞は、歌い手に実力があれば最高の素材。

 ここで懐かしむ「恋」はひと夏の情事、上の2作に比べて、秋の葉がとてもカラフルに表現され「つらさ」もほどほどといった感じ。

 ゆえに、シャンソン派からは、英語詞はヴァースを一刀両断にし、プレヴェールに比べ芸術性が低い、感傷的に過ぎると厳しく批判されているけれど、J.マーサーらしい自然で丸いサウンドと、実力のある歌手なら歌い上げるのに便利な長い詩節で、なかなか良い歌詞だと思います。
 ヴァースを削り原作のニュアンスを変えたのは、あくまでキャピトル・レコードの重役としてのマーサーの判断かも・・・収益第一のハリウッド映画と同じ発想かな?

 と、言う訳で秋の枯葉の色は、お国柄で色々違う、そしてジャズの演奏歌唱はそれ以上に十人十色です。対訳は、もっとちゃんとしたものを作ってあるので当日お楽しみください!

日曜日の生徒会セミナー、ほとんど満席ですが、参加ご希望の方はOverSeasまでお問い合わせください。(TEL 06-6262-3940)

 なお、牛すじは前回以上の上物を入手したので、給食のカレーもさらにおいしく出来そうです!

CU