2016年11月 3日

アキラ・タナ LiveReport=祝ジミー・ヒース90才!

noda_sara_hisauki_n.jpg  お久しぶりです!楽しみにしていたアキラ・タナ(ds)さんをお迎えしたコンサートを10月25日に開催しました。

ここ2年間、春と秋にサンフランシスコから来演していただくアキラさん、圧倒的なドラミングと温かい笑顔、その人柄に、すっかり魅了される仲間が増える一方。寺井尚之とのプログラムは、毎回アキラさんゆかりのジャズ・ジャイアンツへのオマージュが溢れていて、還暦を過ぎたベテラン達が青年時代から持つジャズへの愛情が少しも損なわれていないことが伝わってきます。ユーモアと先人への礼節が溢れるセッションは、そこ抜けに楽しくて、アキラさんの出演には、万難を排して集合してくれる仲間が増えて嬉しい限りです。

jimmyheath.jpg コンサートの10月25日は、ちょうどジミー・ヒース90才の誕生日!米国では、この前後に、NYとワシントンDCで盛大なバースデー・コンサートが開催されています。'70年代終盤、若きアキラさんは、ジミー・ヒースの"ヒース・ブラザーズ"に抜擢され、一躍注目を浴びました。寺井尚之にディジー・ガレスピー直伝のビバップ理論を懇切丁寧に教えてくれた恩師でもあります。二人は、ジミー・ヒースの作品を一杯演奏して、日本からのお祝いにしよう!と固く心に誓っていました。

 そのため、寺井尚之(p)は虎視眈々とプログラムを練りに練り、宮本在浩(b)とじっくり準備を整えていました。コンサートは、アキラさんが繰り出す自由自在のグルーヴで、寺井尚之の豊かな音色のバップの大技を一層スイングさせます。宮本在浩(b)は安定したボトムラインで、ベテラン二人の自由なプレイを支える見事なトリオのコンサートになりました。

 会場には、長年のジミー・ヒースやヒース愛好家も数多く、ジミーの曲がコールされると大拍手、アドリブにGingernread Boyが入ると歓声が!

 終演後は皆で記念写真を撮ってジミー・ヒースご本人に送付。大喜びしてもらいました。折しも来日中だった、巨匠フランク・ウエス(ts,as,fl)の未亡人、サラ・ツツミさん(一番上の写真で寺井尚之の左側の金髪のレディ)がコンサートに来てくださったのも光栄でした。アキラさんと知己のサラさん、この日の演奏を大変喜んで、ジミーさんに電話で報告されたそうです。お客様達もフランク・ウエスの奥さんに会えて大興奮!

=曲目=

 akira_hisayukiP1100734.JPG

 

<1st>

1. Hi-Fly (Randy Weston)
2. Out of the Past (Benny Golson)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. Lament (J.J.Johnson)
5. Commutation (J.J.Johnson)

<2nd>

1. Bro Slim (Jimmy Heath)
2. New Picture (Jimmy Heath)
3. For Minors Only (Jimmy Heath)
4. The Voice of the Saxophone (Jimmy Heath)
5. Project 'S' (Jimmy Heath)

<3rd>

1. What Is This Thing Called Love (Cole Porter)
2. Quietude (Thad Jones)
3. It Don't Mean a Thing (Duke Ellington)
4. Ellington's Strayhorn (Jimmy Heath)
5. A Sassy Samba (Jimmy Heath)

Encore: どんぐりころころ

brotherly_love.jpg

 ジミー・ヒースの録音がある曲には、アルバムにリンクを貼っています。3rd セットのジミーの作品は二曲ともアキラさんがレコーディングに参加しています。ぜひ聴いてみて下さいね。

 アンコールの「どんぐりころころ(リズム・チェンジ)」は、東日本大震災復興支援のために、アキラさんが立ち上げた日本人+日系人バンド音の輪""のレパートリーです。こちらも収録CDがありますのでぜひ!


 

 =家族のドラマ=

akira cousins.JPG 左から:アキラ・タナ、田名尚文牧師、尚文さんのお嬢さん

 そして、客席にはもう一つのドラマがありました。Interludeの読者の皆さんはご存知のように、アキラさんの両親、田名大正師、ともゑさん夫妻は、米国に移民した日本人コミュニティのために、1930年代終盤に北海道から米国に渡り、現在も、たくさんのご親戚が日本に居られます。この日は、まだ会ったことのないアキラさんを訪ねて従兄にあたる方が、SNSではるばるOverSeasにご来店!その方は田名尚文(たな ひさふみ)さん、やはり札幌出身で、退職後、三重県にある日本キリスト教団鳥羽教会の牧師様として活動されています。アキラさんも風光明媚な海街からやって来た従兄に出会えて感無量!温かく穏やかな笑顔はDNAのなせる業なのか、談笑する田名ファミリーの姿に、私もまた感無量でした。 

 初対面のアキラさんの印象はどうだったのでしょう?終始にこやかにコンサートを楽しんでくださった尚文さんに伺いました。
 「地位も名声もあるのに飾らない。山田洋次監督の主人公「とらさん」のように、周りを包み込む温かさを感じました。
米国で育って居るのに日本で育った日本人以上に日本人らしさを感じます。脇役に徹していつも主役を支える役目に喜んで参加する。そんな『ほっこり』型のおじさんに見えました。
 演奏は凄いとしか言い様がありませんが、見ている人を楽しませる術をも自然に表現しているように感じました。」

 尚文さんの印象は、私たちのアキラさんへのイメージを端的に代弁するものですね!

 世界トップクラスの実力と、東北復興支援に努力を惜しまない優しさ、その活動を継続する力と、人間力、巨匠ドラマー、アキラ・タナ!来年4月に再び来日する予定、また一緒に楽しみましょうね!

akira_trioP1100743.JPG 

2016年6月30日

近況報告&中井幸一Plays『Dial J.J.5』のお知らせ

p-nakaikoichi-200.jpg 皆様お久しぶりです!いかがお過ごしですか?

 ここ最近、珍しいお客様や懐かしいお客様が相次いでOverSeasに来てくれました。一人はジョージ・ムラーツ兄さんの義弟、ラデックさん、チェコでヘアーメイク・アーティストとして一流ホテルにサロンを持ち、気が向くと格安航空券で世界を旅するボヘミアン。大阪でカプセルホテル(!)を楽しむついでに、ムラーツさんゆかりの当店を訪ねてくれました。もう一人は、遥か22年前、香港からの政府交換留学生として大阪大学で勉強していた頃、よくライブを聴きに来てくれた青年チャンさん、現在は、香港中文大学の副学部長になり、学会で来日した際、「寺井さんのピアノを聴かせたい!」と海外の仲間を大勢連れて、滞在先の京都から、メインステムのライブに来てくれました。皆、マナーが良くて、すごく熱心に聴き、生のジャズ・ピアノ・トリオを楽しんでくださった!長い間、ジャズクラブの片隅に居ると楽しいこともあるなあ・・・としみじみ思います。

 さて、どんなに世の中が変わっても、J.J.ジョンソンはトロンボーンの神様で、『Dial J.J.5』が永遠の名盤であることは変わらない。と、いうわけで新企画登場!7月2日にOverSeasでは、トロンボーン奏者であり、ジャズからポップスまで、アレンジャーとして定評のある中井幸一さん、そして岡山のテナー奏者、中務敦彦(なかつかさ あつひこ)さんをお迎えし、中井さん書き下ろしのスコアで、J.J.ジョンソンの名演目をお聴かせします。リズムセクションは、もちろん寺井尚之メインステム(宮本在浩 bass 菅一平 drums)、メインステムにとっては演り慣れたJ.J.の演目、そこに実力派フロント二管が入ると想像するだけでわくわくします。 

=予定演奏曲=
Barbados (Charlie Parker)
Our Love Is Here To Stay (George Gershwin )
Bird Song (Thad Jones)
Old Devil Moon (Burton Lane) etc...

 

中井幸一(tb) 5 Plays J.J.Johnson 

日時:7月2日(土)
メンバー:中井幸一(tb,arr.)中務敦彦(ts),
 寺井尚之(p)、 宮本在浩(b)、菅一平(ds)
Live Charge3000 (学割チャージ半額)

首尾よくJ.J.Johnsonの音霊が蘇りますように。ぜひ一緒に聴きましょう!

 

2016年4月14日

ライブ・レポート:アキラ・タナ at OverSeas

0405P1100284.JPG

 4月4日、寺井尚之の盟友、アキラ・タナのライブ開催しました。アキラさんの今回の滞在は約三週間、その間、様々なフォーマットで、関西、関東、北陸と、ほとんど休みなし、各地で大喝采を受けたようです。ツアー中は、ファンや熱烈なサポーターの皆さんが日々アップロードされる沢山の写真やコメントから、巨匠の演奏を生で観た感動だけでなく、皆に幸せを運ぶアキラさん独特の不思議な力も伝わってきました。この力は、ひょっとしたら、かつての日系社会を、僧侶として束ねた父、田名大正師と、短歌運動を通じて大きな人々の輪を作った母、田名ともゑさんから受け継いだものかもしれません。

 文字通り引っ張りだこの日程を繰り合わせて出演してくださったOverSeasでのコンサートには、なにかと行事の多い新年度4月の第一月曜にも拘らず、新旧のお客様で一杯、加えて、アキラさんの息子さんや、米国から観光を兼ねて日本にやってきた奥さんのマージさん達も!アキラさんがNYに住んでいた頃、お家でマージさんの手料理をご馳走になって以来、20数年ぶりの再会で、私も大感激!寺井尚之は、歳月を経てもちっとも衰えないマージさんの清楚な美貌に、もっと嬉しそう!

 とにかく開演前すでに、会場のムードが、一流アーティストを聴きに来た、というよりも、はるばるアメリカから来てくれた親戚に会いに来たよ、というような感じになるのは、アキラさんのライブならでは!共演する寺井尚之も、アキラさんとの共演のために、「さくら さくら」のアレンジを書き下ろし、宮本在浩(b)と共に、ダイナミックでユーモア溢れるプレイを繰り広げました。

12961216_1159891337367934_5407839327404241921_o.jpg 今回のプログラムは、これまでの4回のコンサートのうちで一番デトロイト・ハードバップ色が濃いものだった。日頃アキラさんが演ることのないフラナガンの愛奏曲は、仕掛けが一杯の難曲揃い。普通ならみっちりとリハーサルをしても、なかなかうまく行かないのですが、却ってアキラさんの集中力と底力を際立たせる結果となって大満足。加えて、アキラさんにゆかりの深いジミー・ヒースやJ.J.ジョンソンの曲、そして春に因んだスプリング・ソングと、彩り一杯のプログラム、スリル溢れるプレイの中に、ユーモア溢れる和気あいあいのインタープレイがポンポン飛び出すと、最高のタイミングで客席から掛け声が入ります。

 アンコールは、日本のうたで魅了する<アキラ・タナ&音の輪>に倣い、日本古来のスプリングソング「さくら さくら」、これが本当に素晴らしく、今も語り草の名演になりました。寺井尚之がアキラさんのために書き下ろしたスペシャル・アレンジは、寺井ならではのふくよかなピアノの響きと、ベースの弓をフィーチャーした、耽美的なルバートで、満開の桜の園を音楽で描いて見せた後は、一転、強烈なバップになだれ込む鮮烈な展開、寺井の研ぎ澄まされたピアノと、ザイコウの妙技、そしてアキラさんの緩急自在のビートで、桜吹雪が舞い散る夢のような世界になりました。素晴らしい演奏の源は、「桜の女王」だったアキラ夫人が来てくれたせいかも...

 手に汗握るスリルとユーモアが共存したプレイに、お客さん達は大笑いの連続。会場に家族的で温かい空気を満ち溢れてました。こういう空気を創り出すのも、アキラさんの稀有な才能の一つかもしれません。コンサートの後、これほど沢山の方に「次も絶対聴きに来ます!」と言ってもらうのも、アキラさんらしい!

otonowa01-720x405.jpg アキラさんが次回来日するのは10月、在米邦人、日系人の腕利きを率いる<アキラ・タナ&音の輪>で東日本大震災支援ツアーを行う予定。またOverSeasでアキラさんのプレイを聴くことができますように!

 音楽とは別に、アキラさんのご両親、田名大正、ともゑさんの軌跡と、日系米人の歴史を、これからもじっくり調べて、みなさんにお伝えしていこうと思っています。どうぞよろしく!

12901192_979036528850340_7937487507875822472_o.jpg写真:左から:寺井尚之、アキラ・タナ、宮本在浩、アキラ夫人Marjorieさん、アキラさんの親友、ギタリスト、樫本優さん/前列:アキラさんの愛息、Ryanさん、お母さまを連れて来てくれてありかとう!!

2016年4月4日 Hisayuki Terai piano trio featuring Akira Tana on drums, Zaiko Miyamoto on bass,

=曲目= 

<1st>
1. Eclypso (Tommy Flanagan)
2. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. Sunset and the Mocking Bird (Duke Ellington, Billy Strayhorn)
5. For Minors Only (Jimmy Heath)

<2nd>
1. Yours Is My Heart Alone (Franz Lehár)
2. They Say It's Spring (Bob Haymes)
3. Bro' Slim (Jimmy Heath)
4. Lament (J.J.Johnson)
5. Commutation (J.J.Johnson)

<3rd>
1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)
2. A Sleepin' Bee (Harold Arlen)
3. Elora (J.J.Johnson)
4. Passion Flower (Billy Strayhorn)
5. A Sassy Samba (Jimmy Heath)

Encore: さくら さくら /Sakura: Cherry Blossoms (Traditional)

2016年2月18日

2/16(火)田井中福司Live

0217taiP1100227.jpg ルー・ドナルドソン(as)が全幅の信頼を寄せるレギュラー・ドラマー、NYで大活躍する田井中福司(ds)さんをお招きしたライブは、寺井尚之(p)、宮本在浩(b)、末宗俊郎(g)のハウス・ミュージシャン3人が、がっちり一枚岩となって送る熱いリスペクトに応えるドラミング、ハイパワー、ハイボルテージの演奏になりました。

 強烈にスイングする田井中さんのシャキッと切れの良いビート、ブルージーに泣く末宗俊郎のギター、持ち前の美しいタッチのバップ・フレーズで切り込む寺井尚之のピアノ、縦横無尽なボトムラインでエナジー・チャージする宮本在浩、4人のバランスは最高。

  「僕が渡米して36年、OverSeasが開店して37年です。」と田井中さんのMCに感慨ひとしお!

 お客様の声援にも愛が一杯で、ジャズクラブ冥利のライブに。

tainaka12671798_969468189813323_1147800649037097107_o.jpg

 遠くからも近くからもご来店、誠にありがとうございました!!

 

=曲目=

<1st>

1. Sonnymoon for Two (Sonny Rollins)
2. Just Friends ( John Klenner )
3. Polkadots and Moonbeams (Jimmy Van Heusen)
4. I'll Remember April ( Gene de Paul)

<2nd>

1. Unit 7 (Sam Jones)
2. Don't Get Around Much Anymore (Duke Ellington)
3. Body and Soul (Johnny Green )
4. Yardbird Suite (Charlie Parker)

<3rd>

1. What Is This Thing Called Love? (Cole Porter)
2. I'm Just a Lucky So and So (Duke Ellington)
3. Portrait of Jenny (J.Russel Robinson)
4. Anthlopology (Charlie Parker)

Encore: Billie's Bounce (Charlie Parker)

 

2015年12月 3日

第27回Tommy Flanagan Tribute

27th_Tommy_Flanagan_tribute2.JPG

 第27回トミー・フラナガン追悼、トリビュート・コンサート、色んな土地からFlanagania同志大集合!ここ数年で一番の盛況になりました。80代から中学生までの皆さんが、フラナガンの往年の名演目を全力で演奏する寺井尚之、宮本在浩、菅一平のThe MainstemTrioを強力バックアップして下さいました。

 終演後は「トリオのバランスが良かった!」「楽しかった!気分がすっきりした!」「きれいだ~」「神業!」って嬉しいお言葉を!また、お供えや差し入れもありがとうございました。

 一方、私は、新しいエプロン持ってくるのも忘れ、ずるずるのエプロンで必死のパッチ、写真一枚撮る余裕もなく、キッチンであたふた、じっくり演奏を聴く余裕が全くなくて、The Mainstemの3人のバランスが完璧に、ふくよかに響いていることだけしかわかりませんでした。CDができたらゆっくり聴こうと思っています。

 この日は、沢山の方々のおかげで、自分たちが今ここに存在しているということを、このコンサートが一層深く実感させてくれました。

 応援してくださった皆様に感謝あるのみです。

 演目の曲説は後日HPにUPしますので、またご一読いただければと思います。

 ほんとうにありがとうございました。

=演奏曲目=

<1st Set>

1. Beats Up (Tommy Flanagan)

2. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)

3. Epistrophy (Thelonious Monk)

4. Embraceable You (George Gershwin)- Quasimodo (Charlie Parker)

5. If You Could See Me Now (Tadd Dameron)

6. Rachel's Rondo (Tommy Flanagan)

7. Dalarna (Tommy Flanagan)

8. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)

<2nd Set>

1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)

2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron)

3. Thelonica- Minor Mishap (Tommy Flanagan)

4. Mean Streets (Tommy Flanagan)

5. I Cover the Waterfront (Johnny Green)

6. Eclypso (Tommy Flanagan)

7. Easy Living (Ralph Ranger)

8. Our Delight (Tadd Dameron)

 

<Encore>

1. With Malice Towards None (Tom McIntosh)

2. Ellingtonia
  Chelsea Bridge (Billy Strayhorn)
  Passion Flower (Billy Strayhorn)
  Black and Tan Fantasy (Duke Ellington)

2015年9月10日

ライブ・レポート:Akira Tana at OverSeas, 2015 9/8

0908P1090699.JPG

左から:寺井尚之(p)、アキラ・タナ(ds)、宮本在浩(b)

 東日本大震災復興チャリティのために結成した日系人+在米邦人のスーパーバンド、「音の輪」を率いて第三回東北応援ツアーを敢行した後、関西、東京と、様々なフォーマットで連日演奏、各地で大きな感動を巻き起こしたドラムの巨匠、アキラ・タナ。

 9月8日は、OverSeasに詰めかけた沢山のアキラ・タナ・ファンのために、寺井尚之(p)、宮本在浩(b)とのトリオで出演!OverSeasのライブ史に残る名演奏になりました。

 口コミで評判が広がり場内は超満員、中には遥か熊本からのお客様も。現在、外務省の招聘教員として、神戸で

rp_primary_Tana_UAA_2-24-14.jpg教鞭をとるアキラさんの愛息、Ryan さんがジャズピアノ修行中の友人達を伴って、応援にやってきました! トランペット奏者でもあるRyan Tanaさんはアジア系アメリカ人 アスリートの名鑑に載っていて、ついこの間まで、全米有数の名門校NYU(ニューヨーク大)の強豪バスケ・チームの主将として大活躍していた名選手です! 

 

 <ドラムは歌う>

0908P1090697.JPG

 さて、今夜の演奏曲目は、ピアニスト、寺井尚之ゆかりのデトロイト・ハードバップ、アキラさんと共演したジミー・ヒース、J.J.ジョンソン、ベニー・ゴルソンたちのオリジナル、それに緩急自在のスタンダード曲、そしてアンコールは「音の輪」に因んだ日本のメロディー。アキラさんの実力をよーく知っている寺井尚之が、一夜限りの自由闊達な即興演奏のグラウンドになるようなプログラムを虎視眈々と組み立てていました。

  過密スケジュールで約3週間、ゆっくりする間のないアキラさんの為にリハーサルは一切しません。だって、並のプレイヤーなら崩壊不可避のややこしい小節の曲もノー・プロブレムの名手ですからね。「ドラムが演奏を作る」というマイルズの言葉通り、各人にスーパープレイ続出、笑顔でプレイするアキラさんの度肝を抜いたろう、とばかりに、演奏曲に因んださまざまなリフを入れて仕掛ける寺井尚之、返す刀で悠々と続きを叩くアキラさん、倍音に満ちたフォルテッシモから、ピアニッシモの囁きまで、ダイナミクスも三位一体!子犬のようにじゃれ合っていたずらを繰り返す二人の会話は、往年の浪速のお笑い芸術、やすきよ漫才を思わせる歯切れの良さ、華麗なドラミングの最中にも、ピアノのほんとうに小さな一音もかき消されることなくクリアに聴こえてくるのがミラクル!ベテランの間に挟まれたベーシスト、宮本在浩ならではのクールな仕切りも見事で、久々に来てくださったお客様は、彼の成長ぶりに舌を巻いていました。

 今回、最も印象に残ったナンバーは、3rd Setの"It Don't Mean a Thing (スイングしなけりゃ意味が無い)"、意表を突く超スロー・テンポでスタートして、倍ノリ⇒倍テンポ⇒4倍ノリ⇒4倍テンポから逆方向へ、次から次へのシフト・チェンジ、まるでスイング感のジェット・コースター!満員の客席がどよめきました。

akira_tana_ippei_suga98_n.jpg 一方、ドラムに一番近い席で見ているメインステムの菅一平(ds)さんの横顔は、表情のデパート。演奏テクニックとドラムの"耳"の使い方、音楽の組み立て方・・・どれほど沢山学べたことでしょう。今回一番お得だったのはイッペイさんかも・・・(左写真)

 ""Project S"や"Sassy Samba" といったヒース・ブラザーズのナンバーがコールされるだけで大拍手、それはジミー・ヒースの音楽を聴きこむお客様。ミュージシャンが多いOverSeasならでは!ということで、私もちょっぴり鼻が高いです。(下右の写真は。ヒースBros時代のアキラ・タナ)

 アンコール"どんぐりころころ"は、「リズムチェンジで演るとおもしろいんだよ~!」というアキラさんの一言からレパートリーになった曲、寺井は「こういう曲こそ、大阪ならではのヴァージョンにせないかん。」と、歌詞が大阪弁に聞こえるメロディーになるよう少し修正して音楽劇に仕立ててしまいました。"どんぐり"=宮本在浩(b)、"どじょう"=アキラ・タナ(ds)、"横で見てるおっちゃん"=寺井尚之(p)という配役で、ベースの弓が"どんぐりころころ どんぐりこ"とおごそかに歌い出すと、会場は大爆笑!テーマが終わると、ピアノのシングルトーンが真珠の粒のように転がりだして、切れのよいドラムのビートが噴出、童謡の世界が、ビバップのロマン派世界に一変!コンサートもめでたし、めでたしでした。

 最後に "OverSeasはHome Away from Home"とアナウンスをしてくれたアキラさんに喝采は止まず。

 次回は来年の4月頃にまたOverSeasで名演奏が聴けそうです。次回もどうぞ宜しくお願い申し上げます。 

 

=演奏曲目=

<1st>heathMI0001406918.jpg

  • Bitty Ditty (Thad Jones)
  • Out of the Past (Benny Golson)
  • Epistrophy (Thelonious Monk)
  • Lament (J.J.Johnson)
  • Eclypso (Tommy Flanagan)

<2nd>

  • Beats Up  (Tommy Flanagan)
  • Beyond the BlueBird  (Tommy Flanagan)
  • For Minors Only (Jimmy Heath)
  • If You Could See Me Now (Tadd Dameron)
  • Project 'S' (Jimmy Heath)

<3rd>

  • Perdido (Juan Tizol, Duke Ellington)
  • It Don't Mean a Thing (Mercer Ellington)
  • Commutation(J.J,Johnson)
  • In a Sentimental Mood (Duke Ellington)
  • A Sassy Samba (Jimmy Heath)

Encore: どんぐりころころ@大阪 version:2015 9/8

2015年7月24日

アキラ・タナ:「音の輪」 と東日本大震災被災地支援ツアー

otonowa01-720x405.jpg『音の輪』:左からマサル・コガ(マルチ・リード)、アート・ヒラハラ(p)、アキラ・タナ(ds)、ケン・オカダ(b)

 9月にOverSeasにやってくるアキラ・タナ、来日の目的は、在米日系人のスーパー・バンド『音の輪』を率い、日本の懐かしい歌を『音の輪』流にアレンジして福島、岩手、宮城の被災地の方々に音楽の贈り物を届けて回ることです。

 2週間近い連日のツアー日程は大変な強行軍。日本への渡航費用は本拠地のサンフランシスコ・ベイエリアでコンサートやセミナーを重ねることによって調達、文字通りの「手弁当」!「音楽を聴かせてあげる」というような上から目線なところは微塵にもありません。自分たちのできることをして、大切なものを失った仲間になにかをしたい。そして、現地の人々に喜んでもらうことができれば、逆に、自分たちも元気をもらえる!そんな交流に感謝の気持ちを持っていることが伝わってきます。

 震災直後、米国の地で、何かできることはないかとベネフィット・コンサートを始めたのがきっかけで結成した『音の輪』、だんだん、実際に被災地で音楽交流をしたいという思いが募り、2013年に初めての『音の輪』ツアーを敢行しました。

 かつて自分たちの町があった場所に集まった被災地の方々の前で演奏を披露して、喜んでいただけた。涙を流している人もいた。ミュージシャン冥利で、自分がもっと泣いてしまった、感動してしまったと、アキラさんは演奏体験を語ります。J.J.ジョンソンやヒース・ブラザーズなど、超一流のバンドで世界を華々しくツアーしてきた巨匠ドラマーの心を、これほどまでに突き動かした心の交流って素晴らしい!それは、第二次大戦中、米国市民でありながら敵国人として、住み慣れた場所や生活、財産、全てを没収され、「戦時敵国人抑留所」に収監された日系人の方々の歴史、アキラさんの家族の歴史と決して無関係ではないように思えます。

 今回が3回目となった『音の輪』ツアー、ぜひ、私たち皆で、おもてなしと応援をしたいものですね!

『音の輪』の日本語サイトはこちら

ツアーは、8/20から9/3まで、東京と河口湖でも出演を予定しています。ツアー・スケジュールはこちら

 アキラ・タナさん単独のライブ@OverSeasは9/8(火)  我らが寺井尚之(p)+宮本在浩(b)との、底抜けに楽しい共演も、どうぞお楽しみに!

2015年4月13日

4/10(金)アキラ・タナ、楽しかった!すごかった!

hisayuki_terai_akira_tana_zaikou_miyamoto_ippei_suga1.JPG   待ちに待ったアキラ・タナ(ds)ライブ。4月に不似合いな冷たい雨でしたが、昨年に引き続き、「楽しい!」「すごいっ!」の歓声が口々に漏れる最高の演奏が聴けました。

akiraP1090110.JPG アキラ・タナさんと寺井尚之のお付き合いは、もう30年になります。でも、最初に彼の演奏を聴いたのはもっと前、寺井も私も二十代でした。大学時代の寺井の盟友ギタリスト、現在マレーシアでギター・レジェンドとして活動し、あちらの音大で教鞭を取る布施明仁さんが、その頃ボストンのニューイングランド音大に留学中で、「同じクラスにソニー・スティットと一緒に演っている奴が居ます。」といって彼の地のジャズクラブでライブ録音したカセット・テープ(!)を送ってくださったのがアキラさんとの最初の出会いでした。

 初めてOverSeasにお招きしたのは、Walter Bishop Jr.のトリオで'80年代中盤、それからコンサートで、プライベートで何度演奏していただいたか数えきれません。

 今回の来日も公私ともに超多忙スケジュールの合間を縫っての出演でしたが、譜面を一瞥した途端に、曲の構成がズバッと頭に入る感じ、イントロなしで寺井の首振りから始まる曲、超変則のBeyond the Bluebirdなど、どの曲もリラックスしてこなれた印象に。やっぱりアキラさんが加わったジミー・ヒース作品は、格別の味わいです。

 アキラさんを聴きにきてくれたロック・ミュージシャンのお客様を紹介すると、次のセットではすかさず8ビートでソロを取る茶目っ気も素敵でした。寺井尚之(p)は得意のポーカーフェイスですが、とっても気持ちよさそうにアキラさんと音楽でジョークを言い合っているし、宮本在浩(b)も本当に楽しそう!「ザイコウ、最高!」と声が掛かるソロを出してベテラン二人に強烈アピールしています。


ippeiP1090120.jpg  ラスト・チューンのA Sassy Sambaでは、アキラさんの傍らで食いつくように聴いていたメインステムの菅一平(ds)さんが、隠し持っていたパーカッションでジョイント、すると会場に居た先輩ミュージシャン達の応援が甲子園の外野席のようで、場内は興奮の坩堝に!

 アンコールは前回大好評の「どんぐりころころ=リズムチェンジ」に続き、今回は「七つの子」ジャズヴァージョン。最近大阪環状線が駅ごとに発車メロディーを鳴らすのにインスパイアされた寺井が、ここぞとJRのホームで耳にした色んなメロディーを、最高のピアノタッチで繰り出すのに、皆大爆笑。最後まで笑顔の絶えないライブになりました。 

 「楽しい」を生み出すためには日頃の厳しい修練が必要なんだ!改めて実感したコンサート。またの再会を約束し、アキラさんは明日帰国の途につきます。

 アキラ・タナ(ds)ライブ、次回も宜しくお願い申し上げます!

terai_akiraP1090117.JPG=演奏曲目=

<1st Set>

1. Ladybird (Tadd Dameron)

2. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)

3. Mean What You Say (Thad Jones)

4. If You Could See Me Now  (Tadd Dameron)

5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)

<2nd Set>

1. Suddenly It's Spring (Jimmy Van Heusen)

2. They Say It's Spring (Bob Haymes)

3. Bro' Slim (Jimmy Heath )

4. The Voice of the Saxphone (Jimmy Heath )

5. Rifftide (Coleman Hawkins)

<3rd Set>

1. What Is Thing Called Love? (Cole Porter)

2. Quietude (Thad Jones)

3. Stablemates (Benny Golson)

4. I'll Keep Loving You (Bud Powell)

5. A Sassy Samba  (Jimmy Heath )

Encore: 七つの子:環状線メドレー

2015年4月 4日

トリビュート・コンサート!

mainstem_26thtribute.jpg

第26回トミー・フラナガン・トリビュート・コンサート、おかげさまで盛況で開催することができました。

 今年でフラナガン没後14年、客席に生前の勇姿を生で知るお客様は少なくなっていきますが、新旧のお客様に支えられ、26回のコンサートが出来たと思うと感慨もひとしおです。

zaiko_miyamoto_26th.jpg 寺井尚之のレギュラー・トリオも、当初のフラナガニア・トリオ(宗竹正浩-bass、河原達人-drums)から、現在のザ・メインステム (宮本在浩-bass、菅一平-drums )に衣替えして、今回で14回目、トリビュートの過半数のコンサートをメインステムで演ったことになります。稽古が三度のご飯より好きな寺井がこれまで8年の歳月をかけてトリオとしてのサウンドを磨いてきたわけですから、メンバーはさぞ大変だったろうと思いますが、長年の常連様から「いやあ、よくなったねえ。」声をかけられると、疲れも吹っ飛んだのではないでしょうか。

 トリビュート・コンサートのプログラムは、毎回、フラナガンが愛奏した名演目と呼ばれるものから、寺井がセレクトして起承転結のあるひとつのコンサートにまとめていきます。今回は、故郷デトロイト時代からフラナガンが大きな影響を受けたサド・ジョーンズ作品で始まり終わるプログラム。ippei_suga_26thtribute.jpgその間にフラナガンが理想としたデューク・エリントン+ビリー・ストレイホーン作品、バド・パウエル、タッド・ダメロンなどのビバップの名曲、フラナガンが春になると奏でたスプリング・ソングたち、それにフラナガン・ライブの最大の聴きどころだったメドレーを織り交ぜ、このコンサートがひとつのフラナガン音楽史というか、読み応えのある「物語」になったと、初めて感じることが出来ました。

 ピアノの鳴りは息を呑むほど美しかったし、 宮本在浩(b)、菅一平(ds)のふたりも存在感を見せつけてくれました。お客様からもらったコンサートの感想メールを引用させていただきます。

「ザイコーさん、一見控えめに見えて、実はしっかり師匠のピアノに絡みつつ、菅さんとはお互いに支え合って、というのがよく見えました。」

「菅さんのプレーは、師匠から次から次に来る暗黙の要求に穏やかな表情で応えられている姿がカッコ良かったです。」

 「冒頭のLet'sが始まった途端、2000年の大阪ブルーノートのフラナガン・トリオの演奏を思い出して涙が出た。」と言ってくれた人も居ました。

 前回のフラナガン・インタビューにこんな発言があったのを覚えていますか?

「演奏するからには、しっかり準備をして、そこに或る思いを込めたい。」

 そんなフラナガンの心は確かに受け継がれているなあ。そんな風に感じることができました。

mc_terai.jpg


<曲目>

《第Ⅰ部》

1. Let's /Thad Jones

 作曲者はコルネット奏者としても、バンドリーダーとしても天才的な手腕を発揮したサド・ジョーンズ。ジョーンズの作品は一筋縄ではいかない難曲が多いために、沢山の演奏者に取り上げられるスタンダードは少ない。だがフラナガンは終生彼の作品を掘り下げた。


 「サド・ジョーンズ作品には強力なパワーを内蔵していて、演奏すると、自然にそのパワーが発散する。彼の作品を演奏できるならば、演奏者として順調な道を歩んでいる証だ。」トミー・フラナガン

 

 

let's.jpg

2.Beyond the Blue Bird /Tommy Flanagan

 青年時代のフラナガンがサド・ジョーンズ(cor.tp)と共に、毎夜、デトロイトの黒人居住地で熱い演奏を繰り広げた場所《ブルーバード・イン》を偲んで作ったオリジナル。本曲は若き日へのノスタルジーに溢れている。


 生前のフラナガンは、《ブルーバード・イン》と《OverSeas》の雰囲気は、よく似ていると言ってくれた。

 デトロイトのお家芸である左手の"返し"が印象的、親しみやすいメロディでありながら、、転調が多く弾くのは大変むずかしい。寺井尚之はリリース前に、この曲を写譜して、演奏を許されたことが誇りだ。

beyond_the_bb.jpg
3. Mean What You Say  /Thad Jones

 ゆったりしながら、爽快なスピード感が味わえるサド・ジョーンズ作品、サド・メルOrch.の十八番でもあった。'Mean what you say(ズバっと、相手に伝わるように言え!)'はジョーンズの口癖らしいが、デトロイト・ハードバップのモットーとも言えるだろう。
thad-jones-during-his-the-magnificent-thad-jones-session-hackensack-nj-february-2c2a01957-photo-by-francis-wolff.jpg


4.メドレー: Embraceable You  
/George Geshwin

        - Quasimodo /Charlie Parker


 ガーシュインの有名なバラード(抱きしめたくなるほど愛らしい君)、そのコード進行を基にして作ったバップ・チューンに、チャーリー・パーカーは「カジモド」という醜い「ノートルダムのせむし男」の名前を付けた。原曲とバップ・チューンを絶妙な転調で結ぶ意表をついたメドレーには、パーカーの真意を読み解いたフラナガンの深い洞察力が見える。 ライブで、フラナガンのメドレーは最高の聴きどころだったが、これは数あるメドレーの内でも白眉だった。残念なことにレコーディングは遺されておらず、トリビュート・コンサートでその素晴らしさを偲ぶしかない。関連ブログ


quasimodo-dial.jpg

 


5. Sunset & the Mockin' Bird / Duke Ellington, Billy Strayhorn


  エリントン&ストレイホーン作品、エリントン・ミュージックはフラナガン終生の理想だった。この曲はフラナガン67才のバースデイ・コンサートのライブ盤(右写真)のタイトルになっている。エリントンの自伝『Music
is my mistres』によれば、フロリダ半島をハリー・カーネイ(bs)運転の車で移動中、夕焼けの中で耳にした不思議な鳥の鳴き声に霊感を得て、瞬く間に書き上げた曲とある。後にエリントンは、この曲を含めた「女王組曲」を収録し、たった一枚プレスして英国のエリザベス女王に献上品とした。フラナガンは、FMラジオのジャズ番組のテーマ・ソングとして毎週流れるのを聴き覚え(!)レパートリーに加えたと言う。

 トリビュート・コンサートでは息を呑む寺井尚之のピアノタッチの至芸で。

 

albumcoverTommyFlanagan-SunsetAndTheMockingbird-TheBirthdayConcert.jpg
6.Raincheck  / Bily Strayhorn

 ビリー・ストレイホーンが第二次大戦中、カリフォルニアで作ったと言われている作品。雨雲を吹き飛ばすような颯爽とした雰囲気に溢れている。

  フラナガンは、ジョージ・ムラーツ(b)、ケニー・ワシントン(ds)との黄金トリオで、名盤『Jazz Poet』に収録している。スピード感と品格を併せ持つフラナガン流ヴァージョンで。

 

Jazz-Poet.jpg
7. Dalarna / Tommy Flanagan  


 "ダラーナ"は、『Overseas』を録音したスウェーデンの風光明媚な地域の名前を冠した初期のオリジナル。転調の奥義や印象派的な曲想に、心酔していたビリー・ストレイホーンの影響が垣間見える。

 『Overseas』以降、フラナガンが演奏することはほとんどなかったが、寺井尚之のアルバム『ダラーナ』('95)の演奏に触発され、寺井のアレンジを使って『Sea Changes』('96)に再収録した。



 
sea_changes_cover.jpg
8. Tin Tin Deo / Chano Pozo, Dizzy Gillespie, Gill Fuller



 フラナガンは、ビッグバンドの演目を、コンパクトなピアノ・トリオ編成でダイナミックに料理するのを得意にしていた。この曲は、哀愁に満ちたキューバの黒人音楽と、ビバップの洗練されたイディオムが見事に融合したブラック・ミュージックだ。

 ディジー・ガレスピー楽団がこの曲を初録音したのはデトロイトで、フラナガンの親友、ケニー・バレル(g)が参加した。フラナガンにはその当時の特別な思い出があったのかもしれない。

 現在は寺井尚之The Mainstemがそのアレンジをしっかりと受け継いでいる。

 関連ブログ
Flanagans_shenanigans.jpg
  

 《第Ⅱ部》

1. Eclypso  /Tommy Flanagan

 
フラナガン作品中、最も有名なのがこの曲かも知れない。『Overseas』('57)や『Eclypso』('75)を始め、フラナガンは繰り返し録音している。、"Eclypso"は「Eclypse(日食、月食)」と「Calypso (カリプソ)」の合成語。トミー・フラナガンを含めバッパーは、言葉の遊びが好きで、そんなウィットがプレイにも反映している。

  フラナガンが寺井尚之をNYに呼び寄せ、別れの夜にヴィレッジ・ヴァンガードで寺井のために演奏してくれた思い出の曲。


eclypso.jpg 

 2. They Say It's Spring  / Bob Haymes

 フラナガンが"スプリング・ソングス"と呼んで愛奏した季節の演目。

 '50年代中盤に、ブロッサム・ディアリーのキュートな歌声でヒットした。彼女の夫は、当時J.J.ジョンソンのバンド仲間であったボビー・ジャスパー(ts.fl)であったことから、フラナガンはディアリーのライブで、この曲を聴き覚えレパートリーに加え、フラナガンの演奏を聴いたダグ・ワトキンス(b)も愛奏するようになったという。NYのジャズシーンでは口コミで音楽が広まっていったのだ。

 作曲者、ボブ・ヘイムズは人気歌手ディック・ヘイムズの弟、俳優、歌手、TV番組タレントとしても有名だった。

 '70年代にジョージ・ムラーツ(b)との名デュオ・アルバム『Ballads & Blues』に収録されている。
  関連ブログ

 ballads_and_blues_0.jpeg
 3. Rachel's Rondo  /Tommy Flanagan

 最初の妻、アンとの間に生まれた美しい長女レイチェルに捧げた作品。フラナガンは
『Super Session』('80)に収録したが、ライブでは余り演奏することはなかった。

 一方、寺井はこの曲を大切にして長年愛奏し、『Flanagania』('94)に収録している。

 冴え渡るピアノのサウンドがこの曲の気品を遺憾なく発揮する。


0407supersession.jpg 

 4. A Sleepin' Bee  / Harold Arlen
 これも、春にNYでフラナガンがよく演奏したスプリング・ソング。Aペダルの軽快なヴァンプが春の浮き浮きした気分にぴったりだ。ライブで演奏していくうちに、'78『ハロルド・アーレン集』に収録したヴァージョンからどんどんアップデートしていて、トリビュートで演奏するのは進化ヴァージョンだ。

 元々「A House of Flowers」というハイチを舞台にしたブロードウェイ・ミュージカルの劇中歌。「蜂が手の中で眠ったら、あなたの恋は本物」というハイチの言い伝えを元にした可愛らしいラブ・ソング。 

関連ブログ

arlen.jpg 
 

5.Passion Flower  / Bily Strayhorn

 
フラナガンがジョージ・ムラーツ(b)の弓の妙技をフィーチュアして盛んに演奏したビリー・ストレイホーンの名曲。ムラーツはフラナガン・トリオを離れてからも、自分のグループで愛奏し続けている。


 パッション・フラワーはトケイソウのこと。ビリー・ストレイホーンは花を題材にした作品を好んで作っているが、その中でも、この曲を最も愛奏している。

 今夜は、宮本在浩が秀逸な演奏で大きな存在感を示した。

gallery11.jpg 

6. Mean Streets  /Tommy Flanagan

  元々"Verdandi"という曲名で、エルヴィン・ジョーンズのドラムソロをフィーチュアし『Overseas』('57)に収録、20年後、レギュラー・ドラマーに抜擢したケニー・ワシントン(ds)のフィーチュア・ナンバーとして盛んにライブで演奏し、ケニーのニックネーム、"ミーンストリーツ"と改題し『Jazz Poet』に収録。

 トリビュートでは、菅一平(ds)が細部まで神経の行き届くダイナミックなドラムソロで、大きな成長ぶりを見せつけた。

Jazz-Poet.jpg 

 7. I'll Keep Loving You  /  Bud Powell



   バド・パウエルが歌手の女友達の持ち歌に書き下ろしたとされる作品で、凛とした美しさがみなぎる硬派のバラード。フラナガンは、ビバップのアンソロジー集、『I
Remember Bebop』('77)に収録。フラナガンを愛し続ける寺井尚之の心が溢れる名演となった。

Various-Jazz-I-Remember-Bebop-523681.jpg 
 8.Our Delight  / Tadd Dameron

 

 ビバップの立役者の一人、ピアニスト、作編曲家、タッド・ダメロンの代表作。フラナガンはダメロン作品には「オーケストラの要素が内蔵されているので非常に演りやすい。」と言い、ライブを最高に盛り上げるラスト・チューンとして盛んに愛奏した。それにもかかわらず、レコーディングはハンク・ジョーンズとのピアノ・デュオしか残されておらず、バップの醍醐味が炸裂するスリリングなフラナガンのアレンジを再現できるのは寺井しかいない。

 
dameron_tadd.jpg 
   
 

collar.jpg《アンコール》

1. With Malice Towards None  / Tom McIntsh



  フラナガンが、真の「ブラック・ミュージック」として愛奏したトム・マッキントッシュ初期の作品。

 「誰にも悪意を向けずに」という題名は、エイブラハム・リンカーンの名言で、メロディは賛美歌を基にしたスピリチュアルな曲。

 この曲が生まれた頃、マッキントッシュとフラナガンは住まいが近所で親しく行き来しており、フラナガンはこの曲の創作過程に立ち会って、自分のアイデアを盛り込んだ。様々な編成で多くの録音があるものの、フラナガンのスピリチュアルな演奏解釈が傑出している。その中でも最も心を打たれるのは、フランク・モーガン名義のアルバム『You Must Believw in Spring』に収められたソロピアノの演奏だ。

 

関連ブログ

 frank_morgan.jpg
2. Like Old Times  / Thad Jones

 

 フラナガンがアンコールで頻繁に演奏した作品。サド・ジョーンズ名義の『Motor City Scene』('59)や、ヴィレッジ・ヴァンガードのライブ盤('87 右写真)に収録されている。「昔のように」は、デトロイトの《ブルーバード》のアフターアワーズの楽しさを指すのかもしれない。

 今夜のコンサートでは、昔のフラナガンのように、寺井が隠し持っていたホイッスルを、絶妙のタイミングで吹き鳴らし大喝采を浴び、文字通り「昔のように」笑いが溢れる楽しい締めくくりとなった。
 image4.jpg
 

トリビュート・コンサートの演奏を演奏をお聴きになりたい方へ:3枚組CDがあります。

OverSeasまでお問い合わせ下さい。

2015年2月19日

3月28日(土) 恒例春のトミー・フラナガン・トリビュート開催!

f_005d71.jpg

     写真は Jazzpar賞のフラナガン:フォトグラファーJan Perssonのサイトより

 今年はトミー・フラナガン生誕85周年、亡くなってからも、「ああ、あの時のプレイはそういう意味だったのか、あの言葉はそんなに深い意味があったのか・・・」と新しいことが判るのが巨匠!何年も経ってから、改めて笑っちゃう落語の名人のオチみたいです。

 そんな我らがトミー・フラナガンを偲んで開催するJazz Club OverSeas春秋の定例コンサート《Tribute to Tommy Flanagan》、今年の春は3月28日(土)に決定しました。

 在りし日の勇姿を思い出す名演目の数々を、寺井尚之(p)が名リズム・チーム 宮本在浩-bass, 菅一平-drums を擁する「The Mainstem」で、心技体整えてお聴かせいたします。初めてのお客様も大歓迎!どうぞみなさまお待ちしています。

 OverSeasでチケット好評発売中! (お問い合わせ Eメール info@jazzclub-overseas.com:TEL 06-6262-3940)

tribute_mainstem.JPG トリビュート to トミー・フラナガンHP

日時:2015年 3月28日(土) 
会場:Jazz Club OverSeas 
〒541-0052大阪市中央区安土町1-7-20、新トヤマビル1F
TEL 06-6262-3940
チケットお問い合わせ先:info@jazzclub-overseas.com

出演:寺井尚之(p)トリオ "The Mainstem" :宮本在浩(b)、菅一平(ds)
演奏時間:7pm-/8:30pm-(入替なし)
前売りチケット3000yen(税別、座席指定)
当日 3500yen(税別、座席指定)