2012年8月16日

足跡講座で映画イングリッシュ (The Blues Brothers)

 お盆休みも今日までという方が多いようですね!今年は、夏休みを利用してOverSeasに来られるお客様が多かったです。懐かしい再会♪ 新しいお客様♪ お客様のおかげで、毎日楽しく仕事をすることができました。

 一方、本ブログ、「寺井珠重のInterlude」開設以来早5年!!貯金は貯まらないのに、コンテンツが貯まり過ぎ、ここ数か月間、個々のエントリーをアーカイブできなくなってしまいました。検索しても見つからないとお叱りを頂き申し訳ありません。

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 さて、今回はジャズでなく英語のお話を。先日「トミー・フラナガンの足跡を辿る」で番外鑑賞した『Blues Brothers』のアレサ・フランクリンやキャブ・キャロウエイの名シーン、文句なしに楽しかったですね!監督のジョン・ランディスはマイケル・ジャクソンのPV「スリラー」も監督していて「音楽を見せる」達人!映画の舞台になったシカゴの出身だから、荒唐無稽なストーリーにリアルな街のムードが出ています。

 私が印象に残ったのは、ソウルフード食堂のおかみさん(Mrs.マーフィー)役のアレサが、お客を装い亭主をバンドに勧誘して、自分たちを育ててくれた孤児院を救済するためにやって来たジェイク&エルウッド(ブルース・ブラザーズ)の注文を取る短いシーン、"Think"の名唱直前のとても短い会話です。私自身ウエイトレスですから、レストランの会話はいつも興味津々。『Blues Brothers』って、ゴキゲンな音楽の聴けるドタバタ喜劇のように思われているけど、人種のるつぼであるアメリカとその文化を理解するのにうってつけの教材なんですよ。

blues_brothers_aretha.jpg 前半のエルウッドのご注文はこんな感じ。

Mrs.マーフィー: May I help you boys? (お二人さん、ご注文は?)
エルウッド: You got any white bread? (白パンあります?)
Mrs.マーフィー: Yes.
エルウッド: I'll have some toasted white bread please. (じゃあ、白パンをトーストで)
Mrs.マーフィー: You want butter or jam on that toast, honey? (お兄さん、バター?それともジャム・トースト?)
エルウッド: No ma'am, dry. (いいえ、何もつけずドライでお願いします。)

 和訳も不要な簡単イングリッシュ。アメリカのベーカリーで注文する時に役立ちそうです。でも、ここには寓意があります。「白パン (White Bread)」は、中流階級の普通の白人やWASPを表現する隠語なんです。そしてジャムもバターもない「ドライ」は「退屈」っていう意味。ヒップな黒人の経営するソウル・フード食堂にやってきた無骨な白人、エルウッドを食べ物に象徴しているんですね。

 一方、兄貴分のジェイクはムショ帰り、言葉は汚いわ、ムサクルシイ肥満体、でもダンスがめちゃくちゃ上手!ヒップなジェイクは、黒人の家庭料理の代名詞、フライド・チキンを注文するんですが、これは日本人の私たちに、「数詞」の面白さを教えてくれる英語教材です。

ジェイク: Got any fried chicken? (フライドチキンある?)
Mrs.マーフィー: Best damn chicken in the state. (うちのチキンは、この州じゃあ一番よ。)
ジェイク: Bring me four fried chickens and a Coke. (それじゃフライトチキンを4つとコークをくれ。)
Mrs.マーフィー: You want chicken wings or chicken legs? (4つって...ウイング?モモ?どの部位にしましょうか?)
ジェイク: Four fried chickens and a Coke. (丸ごと4羽分のフライとコーク。)
エルウッド: And some dry white toast please. (それと白パンのドライ・トーストね。)
・・・
Mrs.マーフィー: Be up in a minute.(すぐにご用意します。)

 日本語には、名詞に冠詞も付かないし、単複形もないし、不加算名詞、可算名詞の区別もありません。それは、日本語と英語の「数」に対する意識が根本的に違うせいで、思わぬドツボにはまることも。たとえば、犬が好き、猫ちゃんが好きと言うつもりで、"I like dog!""I like cat!"と冠詞なしの単数形を使うと「犬の肉」「猫の肉」を意味してしまい、思わぬゲテモノ好きと思われるのでご注意ください。

 フライド・チキンは、KFCでも1ピース、2ピースと書いてあるでしょう。冠詞のないchikenは、もちろん鶏肉の意味です。なのに"four fried chickens"と複数形で注文するところがオモシロイんです。ジェイクにそう注文されたアレサ、最初は、"four fried chicken wings"や"four fried chicken legs"のつもりだと思うんですが、実は「ニワトリ4羽分丸ごと揚げろ」というとんでもない注文!このやりとり、英語を母国語とする人たちには、最高に笑える会話で、この映画の中でも、最も有名な名台詞で、"Four fried chickens and a Coke"というロックン・ロールバンドもあるらしいです。 映画のシーンを観てない方はこちらをdouzo

 ジャズ歌詞の対訳を作る時も、冠詞や数詞をはっきり解釈して、正しいニュアンスを出す訳文を作ることが肝要です。逆に英訳をする場合は、単複のない日本語の単語を、原文作者に確認しないと、とんでもない英訳になる危険も・・・

 というわけで、夏休みの英語講座でした。

 夏休みが終わっても、OverSeasのライブ、引き続き宜しくお願い申し上げます。

CU

2012年8月 9日

アレサ・フランクリン礼賛

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 土曜日の「トミー・フラナガンの足跡を辿る」に"クイーン・オブ・ソウル"ことアレサ・フランクリン登場!イェーイ!
何で?と不思議に思われる皆さん、トミー・フラナガンとアレサ・フランクリンは、'60年代、コロンビア時代と'90年代に映画音楽で2度も共演しているんです。
まだ信じられないの?そんなら、土曜の「トミー・フラナガンの足跡を辿る」に来てみてください。
 でも気品溢れる珠玉のピアノがお好きな方は、ひょっとしたら、アレサのことをあまりご存じないかも...というわけでちょっと紹介。

<デトロイト私立ノーザン高校 2年B組>
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 フラナガンとフランクリンの共通キーワードはデトロイト。フラナガン(1930-2001)はデトロイトに生まれのデトロイト育ち、アレサ(1942-)はメンフィス生まれですが5歳でデトロイトに移り住み、現在もデトロイト市民です。フラナガンと年齢一回り違いますが、二人とも市立ノーザン・ハイスクールの卒業生です。ご存じのように、サー・ローランド・ハナ(p)やシーラ・ジョーダン、モータウンの重鎮、スモーキー・ロビンソンも同じノーザン高卒業生でした。

aretha-franklin-c-l-franklin-1040kc032111.jpg アレサの父親は米国では歴史に残るバプティスト教の宣教師、C.L.フランクリンで、デトロイトの人種差別撤廃に貢献し、キング牧師と共に公民権運動を推進した偉人でで、講話の達人としても有名です。ダイナミックに呼びかける強烈な説法は、英語が判らなくても感動できる音楽的な魅力に溢れており、何と75枚もの講和のレコードを遺しました。最初の一音から瞬時に聴く者の心を掴むアレサの歌声は、この父から受け継がれたものに違いありません。

 幼いころ両親は別居、子供たちは父のフランクリン師に育てられました。小学校のときから、師がデトロイトに建立したベセル・バプティスト教会で讃美歌を歌い、あの圧倒的な歌声が育まれていきました。黒人社会を代表する名士を持つアレサの環境は、貧しい家庭で、幼いころから売春宿の使い走りをしたビリー・ホリディやエラ・フィッツジェラルドとは少し違います。ただしフランクリン師はキリスト者でありながら、娘たちが世俗的な音楽を楽しむことには寛容で、街で聴こえてくる流行歌を、自宅のピアノで弾き語りしても怒られるどころか、内外からやって来る客人たちの耳を楽しませる役割を務めていました。その中には、マーティン・ルーサー・キング牧師や、ゴスペルの女王、マヘリア・ジャクソン、サム・クックなど著名人が沢山おり、やがてデトロイトのフランクリン師の歌の上手い娘さんの評判が広まって、コロンビア・レコードの大プロデューサー、ジョン・ハモンドに目に留まり、コロンビアの初期の一連のアルバムで一挙スターダムに乗ります。マネージメントは父のフランクリン師でした。

<シビれる歌声>
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 その時代の代表作が『The Electrifying Aretha Franklin』 (1962) で、フラナガンは、マンデル・ロウ(g)やジョー・ワイルダー(tp)とともにスタジオ・ミュージシャンとして参加しています。 Electrifyingとは、感電したみたいにシビレルことです。まだ18才の若さでどこまでもワープするパワフルな歌声と、清らかな歌詞解釈が素晴らしく、無限の伸びしろを感じさせてくれます。

 ちょうど、このレコーディングの頃、アレサは父の反対を押し切って最初の結婚をし、夫がマネージャーとなります。ところが私生活では、彼女に暴力をふるい、女遊びを繰り返す典型的なひどい夫であったようす。そのことを売り物にせず隠し続けていたアレサはエライね。でも、この試練が彼女の歌唱に深みを与えたと言う人も多い。事実、その夫の勧めで移籍したアトランティック・レコードで、アレサは本格的な"クイーン・オブ・ソウル"として大きく開花します。

 公民権法を勝ち取った黒人のパワーを代弁するかのようなオーティス・レディングの作品"Respect"('68)から、バート・バカラックの"小さな祈り"('68)、南アフリカでアパルトヘイトに苦しむ人々にとって文字通りゴスペルとなった"明日に架ける橋"('70)まで、アレサ・フランクリンでしか表現できない音楽世界、ヒットソングが山のように生まれました。ちょうど、私がアレサを好きになったのもこの頃です。まず歌声にシビれ、簡単な単語だけ聞き取れれば、アレサの全てが理解できたように感じられる歌唱は、まさに、お父さんの説教と同じような説得力があるのかも知れません。

<映画二本立て>

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 やがて時代はディスコ・ミュージックへと移り変わり、アレサに新たな試練が訪れます。父のフランクリン師は'79年に強盗に銃撃され、5年間も続くこん睡状態に、アレサは父を見守るためにデトロイトに定住しますが、どっこい、1980年の映画『ブルース・ブラザーズ』にカメオ出演し、"Think"の名唱で、新しいファン層をわしづかみ!アメリカ白人の黒人文化への憧憬一杯の名作映画、名場面の数々は土曜日にしっかりお見せしますよ!

 米国ブラック・ミュージックを代表するアレサの歌声の魅力は、その色合いの多様さです!勿論、エラ、サラ、ビリー・ホリディと言う我らがジャズ界の大歌手も、ヴォイスのカラーパレットは負けずに大きいのですが、色合いが違っていて、ソウル系の明確な転調したときの色彩変化が強烈です。

White_men_cant_jump.jpg 土曜日もう一つ登場するのは、1992年の映画『ハードプレイ』(原題White Men Can't Jump)の挿入歌、"If I Lose"、これがまた素晴らしい!『サヨナラゲーム』や『タイカップ』など、ひねりの効いたスポーツ映画を得意とする監督、ロン・シェルトン作品、音楽担当がテナー奏者ベニー・ウォレスという面白い映画です。

 テーマになるのはストリート・バスケットボール、1対1あるいは2対2でやる賭けバスケット・ボールのプレイヤーの話で、黒人達が「白人にはまともなバスケはできない(White Men Can't Jump)という逆人種的偏見を逆手にとって、稼ぐ白人と黒人の二人のプレイヤーたちの泣き笑い物語。そのストーリーにぴったりの歌詞とメロディ、ウォレス作曲、監督のシェルトン作詞、もちろん映画のための書き下ろしで、アレサのふくよかなヴォイスとフレージングが堪能できます。

 というわけで、土曜日はアレサの名唱や、映画の名場面集、それに、クラーク・テリー(tp, flg)の『One on One』では、フラナガンと共に、サー・ローランド・ハナ、モンティ・アレキサンダーとの名演奏も紹介します!


 「トミー・フラナガンの足跡を辿る」
 日時:8/11 (土) 6:30pm-
 受講料:¥2,625

 おすすめ料理は、ソウルフルな名唱に相応しく、グレービー一杯のビーフ・カツレツをお作りします。

CU