2013年1月24日

ソニー・ロリンズのアドリブ哲学

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 2月9日(土)開催の「新トミー・フラナガンの足跡を辿る」は、巨匠ソニー・ロリンズの名声を決定的にし、トミー・フラナガンを「名盤請負人」と言わしめるきっっかけとなった初期の最高傑作『Saxophone Colossus』から始まります。


 

Saxophone20Colossus.jpg  "Blue Seven"のテーマから一貫するアドリブの素晴らしさが発表当初から絶賛されたアルバム、『サクソフォン・コロッサス』。プレスティッジ・レーベルのセールスポイントだったブロウイング・セッション、つまりアルバム企画より、即興演奏を重視(?)する低予算のジャムセッション形式で、少々ミスがあっても1テイクぽっきり、編集なしのレコーディングで制作されました。とはいえ、ぶっつけ本番のアクシデントが予想外の効果を生んで行くプロセスが鮮やか謎解きしてみせた寺井尚之の解説は、演奏の迫力とともに、手に汗握るスリルと楽しさを味あわせてくれます。

 私の方は、講座の資料として、ソニー・ロリンズの数々のインタビューをチェック中。

 後進のミュージシャンたちのために、どんな質問にも誠実に答えようとするロリンズの言葉は、「現存する最高の即興演奏芸術家」に相応しいものばかりですが、現在のロリンズに、26才で録音した『サクソフォン・コロッサス』を最高傑作であるかのよう言うインタビュアーには、さすがに、辟易した印象が感じられます。

 

  今回、講座で配布するのは、エラ・フィッツジェラルドの伝記作家としても有名なスチュワート・ニコルソンによるソニー・ロリンズ・インタビュー、後進のミュージシャンたちのために、自分のアドリブ哲学について語っています。

 

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 ロリンズの目指すジャズの即興演奏感は「禅」ともいえる精神性重視のものでした。

 ロリンズによれば、アドリブとは絵を描くのと同じで、「潜在意識とのコミュニュケーション」と言います。楽曲のメロディやハーモニーを徹頭徹尾学習した挙句、一旦すべての情報を意識から追い払った無我の境地、トランス状態で、潜在意識から出てくるサウンドに従って表現するというのです。ロリンズが麻薬に耽溺した時代があったのは、他の理由があったにせよ、ドラッグはやはり彼の音楽哲学に影響を与えているように感じました。

  「より高度な即興演奏」を突き詰める姿勢は、明らかに、彼が師と仰ぐチャーリー・パーカーを見習ったものでしょう。

 

 チャーリー・パーカー達が創造したビバップという音楽の形は、絵画でいうなら、ピカソやブラック達が展開したキュビズムと少し似ているように思えます。キュビズムは、描く対象を完璧に理解した上で、一旦解体し、再構築することによって絵画的真実を追求するというものですから、楽曲の骨組みだけ残して、鮮やかに疾走する音楽を作り上げたバッパー達の手法と似ていると常々感じていたのですが、ロリンズのインタビューを読んで、一層納得しました。一方、キュビズムのアーティストたちが、アフリカ芸術や楽器に霊感を得たというもの、偶然なのか、必然なのか、興味がつきません。

 

 音楽は自然界を見習って想像する芸術ではありませんが、芸術家の視点は似ているんだと改めて感じました。キュビズムのさきがけとなったのはセザンヌの不自然な静物画だということになっていますが、ジャズのセザンヌは誰だったのでしょうか? 

 "St.トーマス"に見られる、ロリンズのルーツであるカリブ海の要素も、ロリンズ自身は、潜在意識に備わっていると信じていたのかもしれません。豪快な演奏の裏には、自分自身を追及する哲学のまなざしがあるんだな・・・インタビューを読むと、ロリンズの真摯な気持ちが伝わってきます。

 

 新足跡講座は2月9日(土)に!ぜひご参加ください!

 

CU

 

 

2013年1月10日

オスカー・ペティフォード(1922-60):アメリカ先住民とジャズ

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 今週の新「トミー・フラナガンの足跡を辿る」は、『Oscar Pettiford in Hi-Fi』から、フィル・ウッズ(as)『Pairing Off』、超人気盤、ソニー・ロリンズ『Saxophone Colossus』(前篇)まで。3枚とも、主役、脇役、双方が強烈な輝きを発散し合う名盤ばかり!

 『Oscar Pettiford in Hi-Fi』は、ハープやフレンチ・ホルンを完璧にジャズに取り込むジジ・グライス(as)達編曲陣のスゴ技も聴き所!ペティフォードは自らが主催するジャムセッションに参加したNY進出直後のトミー・フラナガンの実力に、いち早く着目し起用したのでした。そのころペティフォード34才、フラナガン26才!

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<チェロキー!>

AI03.jpg オスカー・ペティフォードはアメリカ先住民が多く住むオクラホマ州、オクマルギー群に生まれた。母はチョクトー族、父はチェロキー族とアフリカ系アメリカ人の混血、そんな彼の血脈は親しい仲間しか知らなかった。昔は「先住民の血筋は隠すべき事柄」だったとか・・・とはいえ、『In Hi-Fi』に収録されているジジ・グライスの颯爽とした作品"Smoke Signal"は先住民のコミュニケーション手段、「のろし」です。
 
 イリノイ・ジャケー、ミルドレッド・ベイリー、チャーリー・パーカーなど、先住民の血を引くと言われるジャズメンは多い。トミー・フラナガンの祖母も先住民との混血だったそうです。フラナガンによれば、黒人と先住民の結婚はごく一般的なことだった。だとすれば、ジャズという音楽は、アフリカ大陸のDNAとヨーロッパ音楽の融合と言われているけれど、アメリカ先住民の音楽的要素も含まれているのではないでしょうか?
 どうやらペティフォードは、同じ4/4拍子でも、ヨーロッパ音楽、アフロアメリカン、インディアンのタイム
はそれぞれに違うということを深く理解して音楽を作ったらしい。
 何百曲というペティフォードのオリジナル曲にも、ネイティブ・アメリカン的ば要素があるのだろうか?その辺りのことを研究している人はまだまだ少ないようですね。ペティフォードのチェロやベースのサウンドは、どれほど凄い技巧を駆使しても、木の持つ温かみの奥に熱い鼓動が脈打つ独特の手触りを感じます。あれはペティフォード個人の魅力なんでしょうか?それともネイティブ・アメリカンのDNAなんでしょうか?
  

 

 ペティフォードは10人兄弟の大家族、幼少から高校卒業する頃まで、父親をリーダーとするファミリー・バンド"ドク・ペティフォード楽団"一員としてミネアポリスを本拠に演奏活動をしていました。幼い時は歌と踊り、12才でピアノ、14才でベースを始めた。兄弟全員が複数の楽器に習熟する凄い家族。例えば、姉、レオンタインはピアノや編曲もこなす才女で、あのレイ・ブラウン(b)を教えたこともあった!兄のアロンツォは後にトランペット奏者としてライオネル・ハンプトン楽団に入団。他にもコールマン・ホーキンスばりのテナーを吹く兄や、美形の姉妹がドラムを担当していた。

 40年代初め、キャブ・キャロウエイ楽団がミネアポリスを訪れた際、ベーシストのミルト・ヒントンが地元のクラブで"ドク・ペティフォード楽団"を発見し、オスカーの余りのうまさにびっくり仰天、バンマスのキャブ・キャロウエイまでオスカーをたいそう気に入ってヒントンはあやうくクビになりかけた。以来、ヒントンとペティフォードの交流は続き、一時オスカーがベースを辞めようと真剣に考えた時に、続けるよう励ましたのもヒントンでした。ミネアポリスの雄、ペティフォードの噂は広まり、チャーリー・バーネット楽団に入団、チャビー・ジャクソンとダブル・ベース・コンビでブレイクするものの、闘志むき出しのアグレッシブな性格が軋轢を生み退団。'43年からNYに定住し、ビバップ・ムーヴメント最前線のベーシストとして活躍、デューク・エリントンやウディ・ハーマンなどの一流楽団で人気を博しました。

 

 <破天荒なカリスマ>

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 ウディ・ハーマン楽団時代は、野球の試合で腕を骨折、ほぼ一年の静養中にチェロに習熟したそうです。ギブスをはめて平然のすごいプレイしていたとか・・・酔うと、お金がないのに、いいかっこしてタクシーで遠距離ドライブ、そのたびにハーマンがタクシー代を払いに行ってたとか。

  喧嘩はめっぽう強くて、バイオレントなことでは負けないチャーリー・ミンガスを一発でKOしたとか・・・今なら大スキャンダルになる逸話には事欠かない天才でした。
 

  「神から与えられたお役目」として音楽にひたすら打ち込むひたむきな姿に、「この人の為ならギャラなんて要らない!」という子分が多かった人。

 『In Hi-Fi』を聴いていると、緻密でクールな音楽性の中に、あふれ出る音楽への情の深さが感じられて、心が洗われるように感じます。でも、天才ペティフォードにとっても経済的に楽団を維持するのは並大抵のことではなかった。バンドが経済的に破たんした後渡欧し、38才を目前にコペンハーゲンで客死しています。

 以前、NY在住のYAS竹田君が、地下鉄の72丁目駅でベースを抱えて降りていくと、駅員さんがオスカー・ペティフォードの甥っこだったそうです。奇遇ですね!

 

 土曜日はペティフォードのカリスマ性を感じながら、ハードバップのサムライたちに一緒に乾杯しましょう!

 

 お勧め料理はハーレム風、ポーク・ビーンズを炊いておきます。

 

CU

2013年1月 3日

1/14(月、祝)「楽しいジャズ入門講座」開催します。 

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 あけましておめでとうございます!皆様のお正月はいかがでしたか?

 寺井尚之は、正月も練習&講座の準備、夜は時代劇で過ごしています。The Mainstemの宮本在浩(b)&菅一平(ds)はスキー三昧のお正月、新年は雪の結晶のようにクリア・クリスタルなプレイが聴けそうですね!昨日は一日オフラインでゆっくりさせていただきました。
 
 ライブは1月5日(土)の寺井尚之(p)+坂田慶治(b)デュオ(Live Charge ¥1,575)から平常通りお楽しみいただきます。ぜひお待ちしています!

<新春特別企画>
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 ネット上でも、「ジャズが大好き!」という気持ちが伝わる楽しいブログを見つけてうれしい気持ちになることがあります。私たちをこんなに惹きつける「ジャズ」はどんな風にして生まれたのでしょうか?アフリカからアメリカに奴隷として連れてこられた黒人たちが創造した音楽ということは、みなさんどなたもご存じですが、何故アフリカにジャズは生まれなかったのでしょう?

 そんな素朴な疑問から、さまざまなジャズ・スタイルの変遷までを、わかりやすく簡潔に!新年14日祝日の正午より、寺井尚之が面白く楽しく解説するイベントを開催いたします。

 ジャズ発展の背景にある激動の現代史と共に聴くジャズは、また違った印象になるかもしれません。


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 特別価格でどなたでもご参加になれます.。特に学生証をご提示くださると受講料はたったの¥525!ぜひこの機会に覗いてみてください!


「楽しいジャズ入門講座」

it_music.gif2013年 1/14(月、祝) 正午~2pm

講師:巨匠トミー・フラナガンの随一の弟子 寺井尚之(てらい ひさゆき)

受講料:(特別価格) ¥1,000 (税別:学割チャージ半額)

申し込みの締め切りは 2013年 1月10日までとさせていただきます。