2010年3月11日

トリビュート・コンサートの前に、スプリング・ソングスの話をしよう!

対訳ノート(26):Spring Is Here

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 春の兆しはあるけれど、今週は雪や雨や雷、それに強風!先日、雨宿りにデパートに寄ったら、ホワイトデーのプレゼントを買う為に並ぶ紳士の行列があちこちに...なんとランジェリー売場にも男性が・・・皆さま、いかがお過ごしですか?

 春のトリビュート・コンサートが近づくと、ウィークデーのOverSeasに沢山のスプリング・ソングが響き、外は寒くても、ウキウキ気分になります。でも、今日はふきのとうみたいに、少しほろ苦いスプリング・ソングを。

Spring Is Here>
 ともすればエバンス派のオハコと思いがちな<スプリング・イズ・ヒア>も、デトロイト・ハードバップ・ロマン派の寺井尚之(p)が演奏すると、一味違う。"The Mainstem"が聴かせるヴァージョンは、冒頭の混合ディミニッシュ・コードの響きだけで、美しくも哀しい歌詞の内容が一瞥できる。かつてトミー・フラナガン3がNYのジャズクラブ「スイートベイジル」で、4月にスプリング・ソングとして演奏したヴァージョンを基にしているのだとか。あの有機的なハーモニーは、紛れもなくデューク・エリントン!エリントン的なるものはトミー・フラナガンや寺井尚之ミュージックの至る所に隠れていますね。
<歌のお里>
 <スプリング・イズ・ヒア>のお里は、1938年のブロードウェイ・ミュージカル『I Married an Angel 私は天使と結婚した』、プレイボーイの銀行家が婚約解消の際に「天使としか結婚しない」と宣言したら、ほんとに美人の天使がやって来て結婚したのはいいけれど...というコメディーです。数年後に映画化されていますが、その際に歌われる<スプリング・イズ・ヒア>は曲想も歌詞も春爛漫のハッピーな歌曲に替わっていて、ちょっとがっかり・・・

Rodgers_and_Hart_NYWTS.jpg 作曲:リチャード・ロジャーズ(左)、作詞:ロレンツ・ハート(右):リチャード・ロジャーズがロレンツ・ハートと出合ったのは16歳の時、そのままコンビでソングライターの世界に入り、25年間の永きに渡って共作を続けましたが、やがて戦争が始まり、ハートの洒落た作風は軟弱と見なされ、時流から外れて行きます。ハート自身もアルコールに溺れて仕事に支障をきたすようになり、42年にコンビ解消、ロジャーズはオスカー・ハマーシュタインⅡ世と『オクラホマ』や『サウンド・オブ・ミュージック』など、健全な名作をどんどん創り、新たな局面に邁進。一方ハートは'43年に48歳の若さで失意のうちに亡くなりました。My Funny ValentineThe Lady Is a Tramp, Blue Moon, Bewitched etc...二人が生み出した名曲は数知れず...どれも甘くてほろ苦い味わいの粋な歌曲ばかりです。ポピュラー音楽の中ではこのコンビが、私の一番のお気に入りかも知れません。

 "春が来たのに私の胸は躍らない、それは誰にも愛されないからかも。" 寂しい心を歌うラインに、一番インパクトの強いせり上がるメロディをつけている辺りが、ロジャーズ+ハートの凄さかな。原歌詞はこちら。

"スプリング・イズ・ヒア"
Richard Rodgers and Lorenz Hart

VERSE

あなたや私がそうだったように

世界中が詩を紡いだ頃、

たしか「春」ってあったよね。

小さなテーブルで差し向かい

二人で春の甘いお酒を飲めば、

男も女も若者は皆高らかに歌ったよね。

4月、5月、6月・・・時が経つにつれ、

寂しい調子に変わる。

人生が、幸せの風船に針をつき刺した。



CHORUS

春が来たよ!

なのに心は躍らないのは何故?

春が来たよ!

ワルツが素敵に思えないのは何故?

欲しいもの、したいこと、

私には何もない。

誰にも必要とされていないせいかな。



春が来たよ!

なのにそよ風が嬉しくないのは何故?

星がまたたき始める、

何故に夜は心を誘わない?

多分誰も愛してくれないせいだよね。



春が来た・・・らしいね!


 アレック・ワイルダーの著書American Popular Songを読むとこんな風に書いてありました。(p.209)「歌詞もハートらしさが出た秀作、特にクロージング・ライン"Spring is here, I hear!( 春が来た・・・らしいね)"は、彼自身の考え方が、皮肉っぽく凝縮されている。」
 <スプリング・イズ・ヒア>はロジャーズ+ハート共作期終盤の作品、ロレンツ・ハートが亡くなる5年前に書かれたものだそうです。戦争が影を落とす世の中に、調子を合わせることが出来ないハートの苦しみが見え隠れして、一層この曲が身近に感じられます。

 第16回トリビュート・コンサートは3月27日(土)、その時分にはもっと春めいているかしら?

 13日(土)のジャズ講座は、リリアン・テリー&トミー・フラナガンの名盤、『A Dream Comes True』登場!ビリー・ストレイホーンの名曲など対訳どっさり作りました。リリアン・テリーはイタリア人だけど、ちゃんと歌詞解釈があるのがエライです!

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 当日はビーフストロガノフを作ってお待ちしています!

CU

2010年2月18日

対訳ノート(25)Speak Low

 寒い日が続きますが、日差しは春が近くに来ていることを教えてくれます。東京方面は雪だったそうですが、皆様いかがお過ごしですか?先週のジャズ講座は、とっても盛り上がりました。『The Magnificent』(トミー・フラナガン3)には別テイクが沢山公開されていて、テイク数の推理は寺井尚之ならではの説得力がありました。師匠への愛に溢れる激辛トークがどうにもとまらなくなって、あやうく最終新幹線に乗り遅れそうになったお客様も...間に合ってよかった!

speak low.jpgジョージ・ムラーツ(b)、アル・フォスター(ds)時代のトミー・フラナガン3の作品、"The Magnificent"は「品格あるもの」という感じかな?日本盤のタイトルは"Speak Low"です。

<Speak Low 歌のお里>
 "スピーク・ロウ"は、OverSeasのライブの定番として長らく聴いてきました。時たま、バーや居酒屋と間違えて来られたお客様たちが演奏中にワイワイ騒ぐと、寺井尚之がこの曲を演奏して「小声で話してや~!」とアピールしていたので、長年の常連様にはとっても馴染み深いナンバーですね!

 クルト・ワイル作曲、オグデン・ナッシュ作詞の<スピーク・ロウ>のお里は、1943年のブロードウエイ・ミュージカル、『ヴィーナスの接吻 One Touch of the Venus』、美術館のヴィーナス像の薬指に床屋の青年が婚約指輪をはめると生身の美女に変身して・・・というロマンチック・ドタバタ・コメディーで、48年にきれいなエヴァ・ガードナー主演で映画化されています。ブロードウェイではヴェーナス役としてマレーネ・ディートリッヒに白羽の矢が立ったのですが、俗っぽくてお色気過剰で、舞台で脚線美をモロ出しするのは娘の教育に悪いと言って断ったらしい。

 作詞のオグデン・ナッシュは「アメリカ最高の小唄作詞家」としてつとに有名ですが、ブロードウェイでヒットしたのはこの『ヴィーナスの接吻』だけ・・・この作品では脚本も担当しています。クルト・ワイルは皆さんもよくご存知、『三文オペラ』で有名ですね。ドイツで活動していましたが、ナチのユダヤ人迫害を逃れ米国に移住した人です。数年前にInterlude に書いたことがありますが、この歌詞の冒頭、"Speak Low, When you speak love"はシェークスピアの有名な喜劇『空騒ぎ: Much Ado About Nothing 』の名セリフ、一目惚れした女性に恋を告白できない内気な親友の為、貴族ドン・ペドロが、仮面舞踏会の夜、親友になりすまし、このセリフで彼女を口説きます。

 ミュージカルについてあれこれ相談をしているとき、クルト・ワイルが何気なく引用したシェークスピアの台詞にヒントを得たナッシュが一気に詞を書き上げたと言われています。A-A-B-A形式なんだけど、小唄どころか56小節の長い歌、Aの部分が各16小節で、サビのB部分はたった8小節しかない変形サイズ。

 『The Magnificent』では冒頭の"Speak Low..."のところを、わざと朗々と歌い上げてみせるところが、いかにもフラナガン流ジョークに思えます。まるで、内緒話を大声で言ってびっくりさせようとしているみたいで可愛い!原曲はゆったりしたハバネラだけど、フラナガンはin two4beatを駆使してメリハリのある楽しい演奏解釈でした!

 映画『ヴィーナスの接吻 One Touch of the Venus』の"Speak Low"のシーンはyoutubeで観れます。オリジナル歌詞はネット上にありますが問題が多い。歌詞を勝手に載せるといけないので、こちらを三行目から読んでみてください。

Speak Low スピーク・ロウ
Ogden Nash/ Kurt Weill

恋を語る時は

小声で囁いて。

夏の日は

瞬く間に色褪せる。

恋を語る時は

ひそやかに。

二人の時は駆け足で過ぎ、

海に漂う舟の如く、

あっと言う間に離れ行く。


愛しい人よ、

ひそかに甘く囁いて、

恋は一瞬の火花、

すぐに闇へと消え去るもの。

どこにいようと、

すぐに明日は来る。



時はあまりに速く、

恋はあまりに短い。

恋は輝く純金で、

時は泥棒のように恋を奪う。


愛しい人よ、

私たちは遅れているよ、

カーテンが降りると、

全てが終わる。


私はじっと待っている、

愛しい人よ、

お願いだから囁いて、

愛の言葉を

さあ早く!


 当店の演奏中は、恋愛でも経済問題でも、常にスピーク・ロウでお願いいたします。

 土曜日のメインステムをおたのしみに!私は赤身の多い特上三枚肉と、大きな白花豆でポーク・ビーンズを作ってお待ちしています。

CU

2010年2月11日

春のトリビュート・コンサート 3月27日開催!

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 暖かくなったり寒くなったり、三寒四温というには余りに暴力的なダイナミクスですね。NYやワシントンDCは大雪で大変みたいですが、皆さんお元気ですか?今週の月曜日には昨年亡くなったディック・カッツさんの告別セレモニーがNYセント・ピーターズ教会で行われ、参列したダイアナから「ディックはNYに出て来て初めて知り合ったピアニストで友達だった。寂しい~!!こんな気持ちを判ってくれるのはあんただけ、今夜は眠れないの・・・」と涙の電話がかかってきて、私も寂しい~ 冬は心まで寒くなるのかな?春よ来い!早く来い!

 というわけで、トミー・フラナガンが誕生した3月を祝し、今年も心をこめて開催します。

『第16回トミー・フラナガン追悼ライブ Tribute to Tommy Flanagan』

日時:3月27日(土) 7pm- /8:30pm- (入替なし)

演奏:寺井尚之ピアノトリオ The Mainstem

前売りチケット3,150円(当日3,675円)

 春のNYでフラナガンが愛奏したスプリング・ソングの数々は甘さとほろ苦さが溶け合って、アップビートな春ならではの感動をもたらしてくれます。春野菜みたいにアクの強いバップ・チューンはフラナガン流に、アクを流し去り、素材の繊細な持ち味が出るように聴かせてくれます。
 演奏は寺井尚之The Mainstem、宮本在浩(b)、菅一平(ds)の演奏はJazz Club OverSeasでしか聴けません。内容は前回よりさらにスケールが大きく充実したものになるでしょう!

 チケットはOverSeasでのみ取り扱っております。お早目にお求めください!

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CU

2010年2月 4日

対訳ノート(24) Ev'ry Time We Say Goodbye / Cole Porter

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 節分から大阪も冷えてます。OverSeasは加湿器+ガスコンロでお湯を沸かしてピアノに潤いを与えているのですが、大きなポットのお湯があっという間に減っていきます。こんな時は風邪ひきやすいので皆さんも気を付けてくださいね。

 先週の寺井尚之The Mainstemのライブは、大向こうから絶妙の掛け声も入って大いに盛り上がりました!どうもありがとう!

 The Mainstemが今回一番力を入れた新曲は、ジミー・ヒース(ts,ss,fl)作、知る人ぞ知るオリジナル曲、"A Sassy Samba"、元々ホーン入りのコンボかビッグバンド用の作品ですが、ピアノ・トリオ用にアレンジ、宮本在浩(b)、菅一平(ds)のパワフルなリズムが炸裂するバッパーのサンバになって、ラスト・チューンにぴったりのかっこよさ!Sassyというのはサラ・ヴォーン(vo)のニックネーム。そのせいで、3rd Setは、サラ・ヴォーンゆかりの曲がズラリ。サラ・ヴォーンの伴奏者であったハナさんがトリビュートしたバラード"Souvenir"も懐かしかったです!


<3rd Set>
1. Tenderly  テンダリー(Walter Gross )
2. Ev'ry Time We Say Goodbye  エブリタイム・ウイ・セイ・グッバイ(Cole Porter)
3. 46th & 8th (by サラ・ヴォーンの元夫Waymon Reed tp. )
4. Souvenir スーヴェニール(Sir Roland Hanna)
5. A Sassy Samba サッシー・サンバ( Jimmy Heath)

afterhours.jpg  ピアノ・タッチの変幻で聴かせた2曲目の"Ev'ry Time We Say Goodbye "は、'50年代のライヴ盤"After Hours"での、まだピチピチしたサラの歌唱が有名ですよね!
 エラ・フィッツジェラルドも歌っていて、この間出た「「トミー・フラナガンの足跡を辿る」第7巻に『Ella In London』での解説と歌詞対訳が載っています。ロンドンのエラは、「この歌は英国でしかウケないから、たまにしか歌わないの。歌詞間違えたら言ってね。」とMCして、(多分わざと)最初の名文句をハズしています。でも、ロンドンっ子は誰も教えてくれないのがご愛敬・・・

 アレック・ワイルダーは名著「American Popular Song」の中で、『最もコール・ポーターらしさのない、端正(Neat)な曲。』と評しています。

 こんな歌詞です。メインステムは歌詞の聴こえる演奏で、「寂しさ」と「楽しさ」のカラーチェンジが秀逸でした!原詩はこちら

Ev'ry Time We Say Goodbye / Cole Porter
エブリタイム・ウイ・セイ・グッバイ

さよならを言うたび

私は少し死んでしまう、

さよならを言うたび、

私はちょっぴり不満、



神さまたちは、

空から何でもお見通し、

なのに気配りしてくれない、

あなたを行かせて知らんぷり。



あなたが近くにいると、

心地よい春風が吹き、

ヒバリの歌声が聞こえてくる。



それは最高のラブソング!

でも、不思議・・・

明るい歌も単調に変わってしまう、

「さようなら」を言うときはいつも。

 「さようなら」の寂しさと、一緒にいる幸せのコントラストを、寺井ならではのニュアンスに富むピアノ・タッチで聴かせてくれました。ラブソングにも関わらず、私は母親のことを想う。実家の母は、年末からうつ病がひどくなり、今年からケア・ハウスと呼ばれる高齢者向けの施設にいる。

 父が亡くなってから、母はずっと不眠症に苦しんでいたのだけど、だだっ広い日本家屋で独り住まいしながら、けっこう明るく暮らしていた。ところが病気入院したのが引き金になり、ひどい鬱になってしまった。今は住みなれないコンクリート建築の一室で、音楽も聴かず、新聞もとらず、歌舞伎も観ず、時の過ぎるのを身を固くして必死に耐えている。

 母は「本物は時が経っても古臭くならない」ことや、「一生懸命料理して、おいしく食べてもらう幸せ」を教えてくれた。料理上手だった母が、今は給食を食べている。それも砂を噛むようにちょっぴりしか食べない。母はすっかり痩せた。見舞いに行って帰る時は、私の手をしっかり握りながら、今まで見たこともない哀しそうな目でいつも言う。「もうそんなに来なくてもええねんよ。じゃあね。」って。

Ev'rytime we say good-bye, I die a little.

 お母さん大丈夫、きっと私が元気にしてあげるからね!

 コール・ポーターに母の姿を思うなんてなあ・・・やっぱりこの曲はコール・ポーター的でないのかも知れないです。

 2月のThe Mainstemは20日(土)と26日(金)の2回出演、弾みをつけて3月27日のトリビュート・コンサートにつなぎます。チケットが出来ましたので、どうぞお早めに!

CU

2010年1月18日

対訳ノート(23) Never Let Me Go

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 16日(土)の新春The Mainstemの演奏は楽しかったですね!寒い中沢山お越し下さってどうもありがとうございました!

 この日は、バド・パウエル、サド・ジョーンズ、タッド・ダメロンなど、伝家の宝刀デトロイト・ハードバップに加えて、レナード・バースタイン作"Lonely Town"や、古い佳曲"If I Had You"、など、ホロリとするような情感のこもった名演も聴けて、新春に相応しいライブになりました。

 今月のジャズ講座からは、正調(!)"I Hear a Rhapsody"と、JRモンテローズとのデュオアルバムから"Con Alma"、"Theme for Ernie"、"Never Let Me Go"の4曲が取り上げられて、講座に来ていたお客様はニッコニコ!

And_a_little_pleasure.jpg  その中でも、私が好きだったのは、"ケ・セラ・セラ"など、パラマウント映画のヒット・ソングを沢山書いた黄金コンビ、ジェイ・リヴィングストン&レイ・エヴァンス作品、"Never Let Me Go"

 昭和の歌謡曲みたいな切ない歌詞と、ドラマチックなメロディで一度聴いたら忘れられない歌ですね。でも演奏解釈の懐が深い曲。マロングラッセみたいに、甘くて上品な正調ナット・キング・コールもあれば、この間聴いたJRモンテローズのように、胸をかきむしられるように切ないものまで、プレイヤーの解釈の仕方は千差万別。愛されている人の歌にも聞えるし、かつて愛されていたけど、今は愛されていない人の哀しい歌にも聴こえて、大変間口が広い。


live_at_century_plaza.jpg 私が印象に残っているのは、昔ジャズ講座でカーメン・マクレエをやった時に知った『Live at Century Plaza』、ここでカーメンは、別れ話を切り出された女の歌という風に解釈して歌っています。抑制された歌唱ですが、歌い終わったら相手の男性をピストルでズドンとやっちゃうのでは・・・という位切羽詰まった女の凄味、深くやるせない情感が伝わってきて、強いショックを受けました。

monty_alexander_in_tokyo.jpg  それと対照的な意味で好きなのがモンティ・アレキサンダー(p)トリオの演奏解釈、ジャマイカ出身の巨匠らしく、テーマの歌い方が「ネーバレッミーゴー」っとジャマイカン・イングリッシュでハッピーそのもの!ストリート系のカッコよさと正統派のピアノの素晴らしさでバンザーイしたくなるバージョン、モンティ・アレキサンダーって誰やねん?と思う人はぜひ、『In Tokyo』を聴いてみて欲しい。トミー・フラナガンと自宅に遊びに来てくれた'90代当時、モンティ自身も一番気に入っているアルバムだと言っていたので、ジャケットにサインしてもらいました。今はもっと良いアルバムも沢山あります。

 日本語にするとこんな歌詞。因みにカズオ・イシグロのベストセラー小説「Never Let Me Go」の表題曲とは違いますからね。

Never Let Me Go
ネバー・レット・ミー・ゴー
by Jay Livingston / Ray Evans
私を離さないで、
愛しすぎるほど愛して。
あなたに捨てられたら、
生きている実感はなくなる。
あなたなしでは、どうしようもない。
私の居場所はどこにもなくなる。

私を捨てないで、
あなたがいなくなれば、
途方に暮れる。
一日が千時間にも思えて、
どうしていいか判らなくなるに決まってる。

たった一度の抱擁で、
私の人生はすっかり変わった。
最初から恋の炎が燃え盛り、
もう元には戻れない。

私を捨てたりしないよね。
ボロボロに傷つけたりしないよね。
どうか私を離さないで。

 あなたはハッピーエンド派?それともズドン?寺井尚之The Mainstemはもっちろんロマンチックでハッピーエンドのヴァージョンで魅せました。私は、寺井ヴァージョンやキングコールも好きだけど、ビリー・ホリディに通じるマクレエも捨てがたい・・・でも毎日聴くならハッピーな方がいいですね。マクレエのは怖くて毎日聴けないです。

 次回のThe Mainstemは1月29日(金)、ぜひお越しください!

CU

2009年12月10日

第15回トリビュート曲説できました。

  皆さん、先日はトリビュート・コンサートで色々お世話になりました。またトリビュート以降、師走のお忙しい中、横浜フラナガン愛好会幹部が相次いでOverSeasに激励に来てくださいました。
 書記長スドー先生、石井ご夫妻、この場を借りて心よりお礼申し上げます!ほんまにおおきに!

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 さて、師走のドタバタの中、やっと先日のトリビュート・コンサートの曲目説明が出来ました。トリビュートの演目というのはかなり限定されているのですが、どれもこれも深い作品なので曲説の種はつきません。

arthur whetsol fredi washington duke ellington black and tan fantasy.jpg"Black and Tan"より。


 今回は、アンコール:『ELLINGTONIA』の大トリ、"Black and Tan Fantasy"の元になった、デューク・エリントン楽団の短編映画<Black & Tan>の映像をネット上で発見、フラナガンが生まれる前の1929年のもので、デューク・エリントンと彼の楽団にとって初の映画出演です。エリントンの相手役をしているライトスキンの美女は、フレディ・ワシントン、エリントン楽団の名トロンボーン奏者、インディアンの血を引いた二枚目、ローレンス・ブラウンの奥さんで、エリントン楽団を有名にした禁酒法時代のハーレムの名店、「コットン・クラブ」の名華といわれたコーラス・ガール。ブラウン夫妻がハーレムを歩くと、余りのカッコよさに皆が注目したそうです。一説には、余りに白人ぽいのでハリウッドでスターダムに上り損ねたとも言われています。映像からは、初期のエリントン・サウンドの魅力やハーレム・ルネサンスの香りが伺えます。

 トリビュート曲説はこちら。http://jazzclub-overseas.com/tribute_tommy_flanagan/tunes2009nov.html

 トリビュート・コンサートは三枚組CDとして、ご希望の方にお分けしています。詳しくはOverSeasまでお問い合わせください。

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 目が充血して真っ赤になっちゃったので、本日はこれまで。

明日の荒崎3で会いましょう!サングラスかけてるかも・・・(?)

CU

2009年11月30日

寺井尚之より:「トリビュート」御礼

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 トリビュート・コンサートに多数来ていただいて、誠にありがとうございました。

 師匠が亡くなった悲しみが先に立った第一回から、師匠の偉大な業績を讃え、後世に伝えようとがんばってきて、十五回目のトリビュートを演ることができました。

 これも、常に満席になるほどの多くのお客様の応援があるからこそと感謝しています。

 次回、第十六回目のトリビュート・コンサートは2010年3月27日(土)です。万障繰り合わせてご参加ください。

ありがとうございました。

寺井尚之

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速報:第15回トリビュート・コンサート

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 3月と11月にお送りする"Tribute to Tommy Flanagan"を11月28日(土)に開催しました。

 お忙しい中駆けつけてくださった常連様、初めてのお客様、2時間半の長丁場、最後までお付き合い下さってありがとうございます!それに沢山の激励メールや、差し入れ、お供えなどなど、心より感謝しています!

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第15回トリビュート・コンサート曲目
<1部>
1. Out of This World (Johnny Mercer / Harold Arlen) 
2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron)
3. Minor Mishap (Tommy Flanagan)
4. Embraceable You(Ira& George Gershwin)~Quasimodo(Charlie Parker)
5. Easy Living ( Ralph Rainger /Leo Robin)
6. Rachel's Rondo(Tommy Flanagan)
7. Sunset and the Mockingbird (Duke Ellington)
8. Tin Tin Deo (Chano Pozo,Gill Fuller,Dizzy Gillespie)


<2部>曲説
1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)
2. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. Thelonica (Tommy Flanagan) ~Mean Streets (Tommy Flanagan)
5. If You Could See Me Now (Tadd Dameron)
6. Eclypso (Tommy Flanagan)
7. Dalarna (Tommy Flanagan)
8. Our Delight (Tadd Dameron)


Come Sunday (Duke Ellington) ~With Malice Towards None (Tom McIntosh)

Ellingtonia: エリントン・メドレー
 Warm Valley (Duke Ellington)
 ~Chelsea Bridge (Billy Strayhorn)
 ~Passion Flower (Billy Strayhorn)
 ~Black & Tan Fantasy (Duke Ellington)

 トリビュート・コンサートのプログラムは、生前フラナガンがライブで聴かせた名曲、名メドレーを集めた特別なもの。いわば「歌舞伎十八番」!今回もデトロイト・ハード・バップの根幹(Mainstem)を象徴するようなレパートリーが並びました。フラナガン音楽をよく知っている方も、初めてジャズを聴かれる方も、お楽しみいただけたようで、とても嬉しいです。HP掲示板にも沢山メッセージありがとうございました。

teraiP1020916.JPG  コンサートのひと月前から、猛稽古に明け暮れた寺井尚之(p)、その気迫を真正面から受け止めて、同じテンションで、しっかり支えてくれた宮本在浩(b)、菅一平(ds)のThe Mainstemの演奏は、これまでのトリビュート史上、最高だったのではないかな。

 お客様の掛け声も最高!アンコールのメドレーで、「With Malice・・・」や「チェルシー・ブリッジ」が始まると、拍手が湧いて、OverSeasのお客様ってすごいな!と今更ながら誇りに思いました。

 演奏後、寺井尚之は「師匠へのリスペクトがあるからこそ・・・」と言っていた。口で言うのは簡単だけど、人生を賭けて「リスペクト」を貫こうとすると、多くの犠牲を伴う。トミー・フラナガンが亡くなった夜、涙で奏した"Easy Living"は、10年の歳月を経て、いっそう優しく切ない。現在は寺井の人生を象徴するレパートリーになったのかもしれません。

 年2回のトリビュート・コンサートは私にとっても「節目」の行事、想いは一杯ですが、お客様には、「楽しかった!」と思ってもらえれば、すごく幸せです。そして、トリビュートをきっかけにトミー・フラナガンや寺井尚之の演奏に一層興味を持っていただければ、もう最高です。

 次回のトリビュート・コンサートは、来年、3月27日(土)予定。誕生月のトリビュートは、きっと、また違った色合いになるでしょう。

 明日からトリビュート曲目解説に取り掛かりますので、出来上がったらお知らせします。

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BRAVO!

CU

2009年11月26日

トミー・フラナガンの思い出:「七つの子」

musculine_fingers_tribute.JPG  土曜日はいよいよ15回目のトリビュート・コンサート!
寺井尚之はトリビュート・コンサートに向けてAll Day Longの稽古・・・指先の筋肉が膨れ上がってます。

zaiko_ippei.JPG The Mainstem、ベースのザイコウさんは、今週はOverSeasにフル出場!万全のコンディションを期します。

 ドラムの一平さんは、火曜日に、元トミー・フラナガン3のメンバー、ピーター・ワシントン(b)、ケニー・ワシントン(ds)のコンサート(ベニー・グリーン4)に行き、トリビュートのチラシを見せて二人に「おひかえなすって!」と仁義を切って来ました。

 ケニーとピーターは、現在ジャズ界最高のリズム・チーム、二人とも若い時から物凄い勉強家でした。今は押しも押されもしない巨匠ですね!

 トリビュート・コンサートは、大変込み合っていますが、現在少しだけ残席があります。来ようかなと思って下さったらまずお電話で残席をお確かめください。(OverSeas TEL 06-6262-3940)
 お薦めメニューは、「黒毛和牛の赤ワイン煮」と、冬の限定メニュー、「ポーク・ビーンズ」、黒豚と北海道の大きくておいしい白花豆を柔らかく煮込んだアメリカの家庭料理です。演奏を聴きながら、ぜひご賞味ください。

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<私が観たフラナガンの稽古>

 トミー・フラナガンは、インタビューで「私はもう稽古(practice)はしていない。」と語っていました。でもそれは、「指を動かす」プラクティスなのでは?例えば、「指慣らしに、バルトークのミクロコスモスを弾く。」と言ったりするのは「粋じゃない」と思っていたからでしょう。

 自宅の居間にあるスタインウエイと、その周りにも「稽古三昧」の状況証拠が一杯あった。寺井尚之には、「稽古は『頭』でするもんや。」と常々言ってましたし、先輩のハンク・ジョーンズさえ、ツアーに折りたたみ式のキーボードを携行し、ホテルの部屋で稽古していると言っていたのを覚えています。

 フラナガンが「頭」でやるという稽古がどういうものなのか?今日は、滅多に見れないその姿についてお話したいと思います。

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 それは '97年、10人のピアニストが集まる楽しいコンサート「100Gold Fingers」のツアー中、ラッキーなことに、オフ日を大阪公演の前日に設定してもらい、OverSeasでトミーのソロ・コンサートをした夜のことでした。

 その日、トミーは寺井にこんな相談をしました。
 "今回の「Gold Fingers」では、出演者が順番で、何か日本の曲を一曲演奏する企画になっていて、明日が私の番なんだ。「五木の子守唄」を演ったらどうかと言われているんだが、日本の曲はよく知らない。ヒサユキ、譜面を書いてくれないか・・・"

 寺井は即座に言いました。
 "師匠、五木の子守唄もええけど、ヘレン・メリルがもう歌ってるし、マイナー・チューンやし、大阪の土地柄に合わんのちゃいますか?師匠が演るならジャズで先例がなく、しかも、皆が知ってる曲がええわ。そうや!"七つの子"はどやろ?絶対、お客さんは大喜びですわ!」

 OverSeasコンサートの終演後、トミーは晩御飯を食べながら、ヒサユキの書いた「七つの子」の譜面を見て、山に残した可愛い子供を想って鳴くカラスの歌詞の意味を頭に入れています。元グリークラブのG先生がボーイソプラノ(?)で「カ~ラ~ス、なぜ鳴くの~♪」歌うと、目を丸くしてたっけ・・・

photo6.jpg そしてデザートを楽しんで一段落してから、トミーは譜面と共に、ピアノに向いました。初めて弾く「七つの子」に寺井尚之も興味津々!

 フラナガンはまずイントロから弾き始めました。子供がいる山に戻ろうとするカラスの大きな羽ばたきを思わせるオーケストラ的な前奏です。テーマに入ると、何人ものストリングスに負けない左手の分厚いパターン、初めて弾いてみる曲なんて信じられません。トミー・フラナガンの頭の中には、画家のデッサンのようなものが、すでに何パターンも出来ていたんです!虹色に変幻するヴォイシングは、ブルージーになったり、印象派的になったり、・・・色んなヴァージョンの「七つの子」が、あっという間に出来上がっていきました。途中で、"バイバイ・ブラックバード"を入れてみたりして、「七つの子」と遊ぶトミーの顔つきは「芸術家の産みの苦しみ」なんてどこ吹く風のポーカーフェイス。ただ、たくさんのヴァージョンを作るだけでなく、どの演奏解釈にも、大きな夕空や、鳥の羽ばたき、家族や故郷への憧憬が色んな形で表現されているのが、何よりすごいことでした。


 深夜、ホテルまでの車中、ゴキゲンで鼻歌を歌ってる巨匠に、私は思わず言いました。「トミー、さっき私は『神の御業(The works of God)』を観ました。あなたは天才です!」

 トミーは少し鼻を膨らませてから、いつもと変わらない淡々とした口調でつぶやいたのを覚えてます。「わたしは常にそうあるよう努力してる。」って。

 さて、翌日の大阪公演はシンフォニー・ホール、寺井が楽屋見舞に行くと、トミーはピアノ付きの一番大きい楽屋で「七つの子」を練習中、傍らにはジュニア・マンスがいました。ピアノの上に何があったと思います?森永のチョコボールが、譜面の上に、ちょこんと置いてあったんですって!

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では、トリビュート・コンサートでCU!

2009年11月10日

北国からの贈り物:Super Potato!

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 トリビュート・コンサートが近くなり、寺井尚之は稽古、稽古の毎日です。The Mainstemの宮本在浩(b)さんは一層スリムに、菅一平(ds)さんは禁酒して稽古に励んでいるようです。  私だけ何にも切磋琢磨してなくて申し訳ないなあ・・・そんな中、摩周湖のフラナガン・ファン、寺井ファン、ジャック・フロスト氏から大きな段ボールが届きました。 super_potatoes.JPG  昨年、私のジャガイモ観が一変した黄金色のじゃがいもがどっさり! Mr.ジャック・フロスト、北国のハーベストのお供えをありがとうございます!トミーの写真にも、ジャガイモを見せてあげました。  今週(土)のジャズ講座には、このジャガイモを揚げたり蒸したりして、おいしさを閉じ込めて、スぺシャル・メニューを作ろう!地鶏と合わせて、できるだけシンプルな味付けにしよう!おいしい料理を作ろう! bonne_femme-2.JPG  で、週末のジャズ講座のお薦めにはフランスの田舎料理、「ボン・ファム」("おばちゃん"という意味です。)を作ることにしました。  今日はポテト・サラダにしてみたけど、水分が多いからあっと言う間に茹であがってクリーミー、甘くて最高! heart_to_heart.jpg  今週の講座は、トリビュート・コンサートを聴くと思いだすデトロイトのクラブ"ブルーバード・イン"でレギュラー共演していたテナー奏者、ビリー・ミッチェルとのリユニオン・アルバム『De Lawd's Blues』(Xanadu)、同じく"ブルーバード・イン"時代から、『Overseas』を経て公私ともに、フラナガンが大好きだったドラマー、エルヴィン・ジョーンズ、リチャード・デイヴィス(b)との超ヘヴィー級アルバム、数か月前に再発された『Heart to Heart』(Denon)など、スーパー・ポテトに相応しいラインナップです。  ジャズ講座は、11月14日(土)6:30pm開講、受講料2,500yen ご予約はOverSeasまで。(tel 06-6262-3940) CU