本当のジャズを目指して!
ユニークな発表会
 1998年、巨匠トミー・フラナガンンが病気に倒れた事から、デトロイトバップ伝承の熱意に燃えた寺井尚之が開いたジャズピアノ教室も、早いもので開講以来足掛け7年。
「巨匠達が遺してくれた音楽の遺産を埋もれさせてはならん!」こんな寺井尚之の熱意に応え、昨今、生徒達の演奏と音楽的理解の進歩には驚異的なものがあります。

  本発表会の出場資格は“自分で創ったアドリブをする事”。そして、美しい音色で演奏できるようになること。これらが、他の教室と一線を画するころです。生徒達は、生活環境や年齢も本当に色々ですが、目標はひとつ、寺井尚之の指導の下、日夜ピアノに向かって邁進中!また、寺井メソッドを学びたいと、他の楽器で学びたい熱心なミュージシャンにも門戸を開放しています。
 
 発表者達の頼りになるサポート役は、寺井尚之"フラナガニア"トリオに於ける寺井尚之のミュージカルパートナー、宗竹正浩(b)河原達人(ds)の一流プレイヤーの二人。各ピアニストの実力を充二分に引き出そうと、温かいミュージシャン魂で待ち構えます。

 また発表会の熱演、名演の模様は、名エンジニア、モトドラ氏の厚意によりライブ録音されています。モトドラさん、ありがとう!

 発表会は毎年1月と8月最終日曜日に開催されます。今日は寒い一日でしたが、会場OverSeasは熱気でむんむん。さて、どんな演奏が繰り広げられたのでしょうか?

 発表会にお越しに成れなかった皆さん、どうぞこのレポートで熱演の模様をお楽しみください。

発表者および発表曲目

(発表者名は、本名または本人の希望するニックネームです)

第1部

1.ユミ
There Will Never Be Another You (Mack Gordon/Harry Warren)
2.さーや
There Will Never Be Another You (Mack Gordon/Harry Warren)
3. かおりん
There Will Never Be Another You (Mack Gordon/Harry Warren)
4. イバちゃん
Love You Madly (Duke Ellignton)
5. のんこ
Well, You Needn't (Thelonious Monk)

第2部
 
1. 児玉勝利
Blues for“K” (Walter Norris)
2. “め”
Stella by Starlight (Victor Young)
3. あーちゃん
Whisper Not (Benny Golson)
4. りんりん
Pannonica (Thelonious Monk)

第3部
 
1. イガラシ
Dewey Square (Charlie Parker)
Stablemates (Benny Golson)
2. むなぞう
Body & Soul (Johnny Green)
Confirmation (Charlie Parker)
3. アクビ
Strictly Confidential (Bud Powell)
I'll Keep Loving You (Bud Powell)
Off Minor (Thelonious Monk)

第4部
 
1. 橋本会長
Night & Day (Cole Poter)
2. あやめ
Mean What You Say (Thad Jones)
For Heaven's Sake (Sherman Edwards/Elsie Bretton/Donald Meyer)
Scrapple From The Apple (Charlie Parker)
3. 松本誠
Will You Still Be Mine? (Matt Dennis)
Some Other Spring (Irene Kitchings)
Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)
 
寺井尚之"フラナガニア"トリオ ミニLIVE
1. Jes' Fine (Tommy Flanagan)
2. Pssion Flower (Billy Strayhorn)
3. A Night in Tunisia(Dizzy Gillespie)


サポートメンバー

宗竹 正浩(ベース)
Masahiro Munetake

河原 達人(ドラムス)
Tatsuto Kawahara
1967年2月22日生まれ。19歳から今日まで寺井と演奏を共にする。天性のリズム感と躍動感溢れるビートの逸材である。クラシックなど他ジャンルにも造詣が深く、卓抜なアルコの演奏にも唸らせられる。層が厚いと評判の関西のベース界に於いても宗竹の存在は傑出している。男の色気を演奏に感じることのできる数少ないベーシスト。 1957年11月8日生まれ。寺井尚之と同じ関西大学軽音楽部に入部した18歳よりジャズを始める。27年以上にわたって寺井のグループで活動を共にしただけあって、繊細でバッピッシュなドラミングで抜群のサポートを聴かせる。よく歌うドラミングには定評があり、スタンダードナンバーでは歌詞はすべて覚えている。

第9回寺井尚之ジャズピアノ教室発表会受賞者

 ★最優秀賞: あやめ
 ★構成賞: あやめ
 ★AD-LIB賞:むなぞう
 ★テクニック賞:松本誠
 ★努力賞:イガラシ
 ★ピアノ・タッチ賞 あやめ
 ★パフォーマンス賞:アクビ
 ★スイング賞:あやめ
 ★新人賞:かおりん 

(松本誠は基本的に全ての賞から除外されています。)

発表会開催ご協力ありがとうございました!

録音、CD制作:モトドラ様
写真撮影:You-non様
記念品:グレイスピアノ サービス
ピアノ調律:川端定嗣様
調律とピアノに関するお問い合わせはグレイス ピアノサービスへ!0725-33-9808
美しい花束:マダム・パノニカ

まずは選手宣誓!

発表会のオープニングに欠かせないのが、橋本生徒会長の「選手宣誓」!これがなければ始りません。
「寺井尚之ジャズピアノ教室冬の発表会は、大阪国際女子マラソンと並ぶ2大イベントに成長しました。我々は、この発表会に参加できる事を誇りとし、実力を余すところなく発揮する事を誓います!!」

橋本会長の大真面目な表情とユーモアのある口調で、満員の会場が笑いと歓声に包まれ、出場前のピンと張り詰めた緊張感が、一瞬ほぐれました。

<フレッシュ!第一部>

 さて、いよいよ一部の演奏の始まりです。
 発表会の幕開けを飾るのは、3人の初出場者の“Another Youから。あやめ副会長の落ち着きのある司会で最初に登場したのは、カジュアルな服装がチャーミングな、小柄で可愛い女の子、ユミちゃん、入門10ヶ月で発表会出場に漕ぎ付けました。演奏前はそんなにアガっていないとのことでしたが、アドリブに入ってから、何だか緊張したと言うことでした。しかし、ちゃんとリズムをキープできたし、エンディングの合図もクリアに出来て成功しました。ユミちゃんの感想は、「トリオで演奏できて、楽しかった!」、その通り!楽しむのが一番です。それが上達への何よりの栄養になることでしょう。

 初出場の2番目は、おっとり、にこやかな美少女サーヤちゃん、ニットのドレスが素敵です。彼女も演奏前はアガっていないと、いつもどおりにっこりしていましたが、演奏を始めると、自分の足カウントとピアノの音が聴こえ難くなって、急に緊張してしまったそうです。とは言うものの、ちょっとしたコードのミスも自分で修正できたし、宗竹正浩(b)と河原達人(ds)の完璧なサポートのおかげもあり、素敵な演奏をすることが出来ました。ジャズをもっと知らなければと、思ったサーヤちゃん、どんどんライブにも来て楽しんでください。

 美女が続きます。“Another Youのトリを務めるのは、ピアノの先生をしているカオリンちゃん、いつもはカジュアルなファッションですが、今日はブラック&シルバーで華やかな出で立ち、クラシック演奏経験の豊かさを感じます。お母様の応援のおかげで、合図もきっちりと出来て、落ち着いた演奏が出来たように思いましたが、実はとっても緊張していて、普段よりゆっくりしたテンポで出てしまったそうです。普通のクラシックの発表会と違って、当発表会は「ピリピリした雰囲気で、聴いてる人まで緊張しているみたい!」でした。そうです、当発表会は客席の真剣な態度でも定評があるんですよ。

 初陣のフレッシュな三人娘に続き、いよいよ自由曲の演奏です。グッと成熟した大人の雰囲気を醸し出すのは、イバちゃんことイバラキさん、エレガントなブラウンタフタのロングドレスに身を包み、にこやかなお辞儀だけで、まず会場を魅了しました。今回の演奏曲、デューク・エリントンの“Love You Madly”は生徒会主催セミナーで、むなぞう若頭が採譜した譜面を勉強して決めたそうです。お辞儀に続いて演奏を始める間合いにも、余裕を感じます。体の中からリズムが湧き出てくるプレイ、今迄練習を重ねた自信が音の中に投影され、スイング感となって表れます。客席もリズムに合わせて体がスイング!ピアノのリフにかぶさるドラムソロもゴキゲンに入り、河原達人(ds)がにっこり!ベースソロのバッキングもピタリと決まって最後までスインギーな演奏でした。師匠は「リズム感ばっちり!特にアドリブに満足した!」と嬉しそう。日頃の練習の成果が実を結び、本当に良かった!!

 さて、第一部のトリは、自称“万年一部トリ”のんこちゃん、明るさと思いやりで、周りを楽しくしてくれるムードメイカーです。年末パーティののんこちゃんのピアニカ演奏は、私にとって紅白歌合戦よりも楽しみなものでした。発表会を盛り上げてくれる、のんこちゃんの応援団が、今日も沢山来られています。でものんこちゃんの楽しいプレイも、今日から2年間お休み、高倍率のNGO試験に合格し、もうすぐ海外青年協力隊の一員として、モンゴルに飛び立ってしまうのです。イバラキさんの好演奏から、急に緊張したというのんこちゃん、今日の演奏曲はセロニアス・モンクの“Well, You Needn't”、大きな瞳で共演者にも挨拶して、演奏を始めました。テーマから3コーラスのアドリブも快調、4バースも慣れたものスイスイスイング、足と手のバランスがうまく行っているからです。応援団も「だんだんうまくなっている!大満足!」と絶賛。演奏した後は、あっはっは!とおなじみの笑い声で、会場も一層楽しさに包まれます。師匠は「合図◎!」と満足そうな反面、別れがちょっと寂しそう…のんこちゃん、日本の若者を代表する任務頑張ってね!復帰の日を待っていますよ!!

<個性の花満開!第2部>

 休憩時間、出番が終わった人達は、緊張がほぐれてほっとした表情です。お客様もどんどん増えて100%の入りで、雰囲気は一層高まります。気が付くと、北海道のコンサートから帰ってきたベーシスト鷲見和広さんの姿も見えます。関西でも最も多忙なプレイヤーですが、常日頃応援してくれる児玉さんの演奏を逆に応援しに来てくれました。ありがとう!
 
 2部の司会は、明るいのんこちゃんにバトンタッチ!トップバッターはテナーサックスで入門している児玉さんです。演奏曲は“Blues for ‘K’”、これは一昨年の秋にベルリンからOverSeasにやって来たピアノの巨匠、ウォルター・ノリスが、日本滞在中、深い交流をした児玉さんの為に書き下ろしたGmのブルースです。最高のミュージシャンに曲を贈られるとは、なんと幸せな事でしょう。ノリスとOverSeasで共演した鷲見和広(b)と寺井尚之(p)のデュオライブで愛奏されているので、水曜にOverSeasに来ている方にはスタンダードと言って良いおなじみの曲です。児玉さんは、楽器の調整がうまく行かずに、最初音を出すのに苦しみましたが、諦めず持ち直して、力強く最後まで吹き切りました!児玉さんのガッツに会場全員大拍手、鷲見和広さんもにっこり! 会場に、爽やかな風が吹きました。

 続いて登場するのはフランスの女優さんの様にシックな“め”ちゃん、コンピューターのインストラクターとして、沢山の受講生の前で講義をするのがお仕事、人前に出るのは慣れているはずですが、ピアノの発表会は別だそうです。いつもたおやかで優しく、思いやりのある女性で、現在死語になりつつあるヤマトナデシコの美しさを持っています。今シーズンは、トミー・フラナガンのEclypsoを稽古していましたが、無理に仕上げるのを嫌い、スタンダードの“Stella by Starlight”を発表会の曲としました。末宗俊郎(g)がOverSeasでこの曲を演奏していたのを気に入って選んだそうです。彼女の持ち味は、吟味に吟味を重ねた和音の色合いの変化と、心の琴線にそっと触れるような美しいタッチです。幻想的なイントロから、おなじみのテーマに入って、皆うっとり。末宗ヴァージョンとは全く異なる、“め”ちゃん自身のヴァージョンが出来上がりました。予約したレッスンにアクシデントで来れない事もある“め”ちゃんですが、音楽への愛情が一杯籠った演奏に大満足!これからも、うっとりするハーモニーを聴かせて下さいね。

 三番バッターは、今回の最年少出場者、大きなピオニーの髪飾りがチャーミングな美少女あーちゃん。大学でも音楽を専攻する彼女は年齢に似合わず、いつも礼儀正しいお嬢さんで、客席に向かって深々とお辞儀をする姿がとっても素敵です。発表曲は、自由曲として初めて取り組んだベニー・ゴルソンのハードバップ、
“Whisper Not”です。すっくとピアノに座る姿勢からは、子供のときからのピアノのキャリアを感じます。演奏前の緊張した表情とは裏腹にプレイには落ち付きが感じられ、セカンド・リフのマーチになる部分もトリオの息はぴったり!グリスも華麗で、とても2回目の出場と思えない出来栄えになりました。とっても緊張していたあーちゃんは、師匠の講評を聴きくと、緊張がほぐれ涙ぐむ一場面もあり、華麗な演技と、あどけなさが魅力一杯の発表になりました。

 2部のトリを飾るのは、スリムで清潔感に溢れた妖精のような女の子、りんりんちゃんです。可憐な容姿に似合わぬダイナミックなリズム感と豊かなイマジネーションを神様が与えてくれました。看護士という激務なので、レッスンに頻繁に来れない為、師匠からは「不良」と呼ばれ、才能ある故に「ええ音楽を聴いて。もっと練習せんか!」とガミガミ言われています。その甲斐があったのか、最近練習しようと欲が出てきたようです。曲はOverSeasの火曜日のライブによく聴く事の出来るセロニアス・モンクのバップ・バラード、“Pannonica”を選びました。バップに挑戦するようになってから、ソフトタッチと、音遣いを洗練させる事を心がけて来た彼女ですが、今日はその成果が見事に出ました。水を打ったように静まり返った会場に、朝露を含んだ真っ赤な椿の花が、ほろほろと零れ落ちるようなヴィヴィッドな印象を与えるルバートから始り、クリアなタッチで、モンク的なカウンターメロディが所々に挿入されて、モンクを援助しジャズ界屈指の貴婦人と賛美された、パノニカ夫人の華やかさと気品を余すところなく表現しました。次の練習曲もバップ・スタンダードの王道を行く“Star Eyes”と、早々予告、成長に期待が膨らみます。


<渋さで勝負!第3部>

あっという間に2部の演奏も終了し、宗竹正浩(b)、河原達人(ds)のサポート陣も今のうちに休憩。満員の会場は、生徒達がゲストに挨拶したり、激励や反省のなごやかなおしゃべりが溢れ、パーティ会場のようです。一方、テナーサックスで出演するイガラシ君は、サックスのウォームアップに余念がありません。一週間前から緊張しているというイガラシ君、私もなんだかドキドキして落ち着かない気分になって来ます。

 いよいよ午後三時、定刻どおり3部が始まりました。優しさ溢れる司会は“め”ちゃんです。ピアノに向かう寺井尚之、とうとうイガラシ君の出番です。彼は山形県出身、金沢の大学に在学中から寺井尚之の演奏を聴きに来てくれていた好青年、立派にバンドスタンドでフラナガニアトリオを従えているのを見ると、感慨深いものがあります。今回はサックス奏者が作曲したストレイト・アヘッドな二つの名曲を選びました。まずは軽快なチャーリー・パーカーの“Dewey Square”です。ウォームアップ充分の楽器が滑らかなテーマを繰り出し、フラナガニアトリオの生み出すグルーヴに乗って快調にスイングしていきます。続いてベニー・ゴルソンの変則小節の難曲“Stablemates”、前の曲より勢いのあるテンポで、名手河原達人がラテンリズムをにこっりしながら挟むと、ハードバップのムードも最高潮!バックの鮮やかなギアチェンジに触発され、かっこ良いフレーズをどんどん繰り出す事が出来、とても2回目の出場とは思えない演奏になりました。コテコテ大阪の気風にとまどう事もあるかも知れませんが、ひるまずに、バップの険しい道を登って下さい。

 2番目は生徒達の若頭として皆に慕われ、温かみのある演奏解釈で人気のあるむなぞう君の登場です。前回の発表会以降、更に大きな飛躍を目指し、師匠から沢山の課題を与えられ、大変な五ヶ月間だったろうと察します。1曲目はアート・テイタムの流れを汲むピアニスト達の主要レパートリーであるバラード、“Body & Soul”、ルバートの導入部分から場内はうっとり、一音一音が心に染みるソフトタッチの音使い、デトロイト・バップのお家芸、倍ノリに持って行く息の間合いも完璧です。饒舌になりすぎず、静かに語りかけるような演奏解釈で、聴く者の心を捉えました。拍手が鳴り止むのを待って、次は対照的にスインギーなアップテンポのバップ・チューン、“Confirmation”が始ります。この作品は大師匠であるトミー・フラナガンが、生前OverSeasで、今ここで彼と共演している宗竹正浩(b)河原達人(ds)と演奏した事もあり、フラナガンのお世話をしてくれた事のあるむなぞうくんにとって思い出深い曲です。リフもスカっと決まり、演奏に落ち着きが加わった感じです。初めて取り組んだビバップ・チューンでしたが、フラナガン直系のエンディングでスカっと終り、大きな進歩が見られた演奏でした。

 3部のトリは、前回の発表会で一躍注目を集めた若手アクビちゃん、バップ・チューンを追求し、あどけない容姿に似合わない、辛口の選曲と、切れ味の良いプレイに、沢山のファンがいます。今日の選曲も、硬派のバップチューン3曲で、曲名だけでも泣く子が黙る程のインパクトがあります。「アクビちゃん」というニックネームは、寺井師匠がアニメ<ハクション大魔王>にでてくる妖精に似ている事からつけたあだ名ですが、今日は、ロングへアーにブラックにシルバーラメの入ったパンツスーツのシックなスタイル、長いまつげがキュートで、水森亜土のイラストのよう!1曲目の“Stlictly Confidential”は、折り目正しくたたみ掛けるようなスイング感が身上、ランの巧みさが際立ち、清清しい風が会場を吹き抜けました。3部になると、デトロイトバップ特有の倍ノリフレーズを皆会得しているようで、甘さを控えた精神性の高いバラード、“I'll Keep Loving You”も、倍ノリでドラマチックに盛り上がります。バド・パウエルの冴え冴えとしたエンディングも決まって強さと清らかさがうまく表現されました。
ラストの“Off Minor”はセロニアス・モンクの作品、モンク独特のトリッキーなリズムを強い切り込みで弾きこなして行くアクビちゃん、見学していたけんいちくんも大満足の出来になりました。
 緊張の為に手が震えてしまい、日頃の実力を充分には発揮できなかったという事ですが、これだけの難曲をものに出来たのは猛練習の成果、流石です!体は小さいけれど大きな可能性を秘めたアクビちゃんは大きな声援を受けました。

<緊迫の名演!第4部>

名演奏が続き、会場の興奮も最高潮、狭い店内は、人、人、人の熱気で溢れかえっています。いよいよベテラン達が登場する第4部になりました。司会は、穏やかで情のある司会者、むなぞうくんで締めました。

 先ず登場したのは、橋本生徒会長!赤いベストに、バックスキン風のブラウンのパンツがとってもおしゃれです。今日の曲目は、コール・ポーターのスタンダード、“Night & Day”ですが、橋本ヴァージョンはラテンと4ビートのリズムの切り替えが面白いユニークなものです。今回が一番稽古が足りているという前評判どおりに、ゆったりとベース&ドラムのリズムに乗りながら躍動感溢れる演奏を披露、リズムの切り替えとトップシンバルがうまくハモり、ふわっと膨らむサウンドが、アーマッド・ジャマールを彷彿とさせます。ダンディな服装と曲想がぴったりで、素晴らしいプレイに満場大拍手!師匠も「今迄の橋本さんの演奏で一番良かった!」と絶賛のパフォーマンスでした。

 次はいよいよ真のアドリブの演奏に初めて挑むあやめ副会長の出番です。当教室の生徒達は自分自身が学んだ音楽理論を生かしながら、最初はアドリブのパートを作曲し、楽器を美しくサウンドさせ、スインギーな演奏が出来るように練習をして行きます。あやめちゃんは、じっくりと効率的に勉強に取り組み、「努力の殿堂入り」を果たしました。今回は稽古の甲斐あって、アドリブ譜を書かずに真の即興演奏で発表会に臨みます。才色兼備と後輩達から賞賛されていますが、彼女の実力は天から与えられのではなく、日夜惜しまず努力をした結果でしょう。時にはイヴニングドレスで発表会に出場した事もありましたが、今日はジーンズにスニーカー姿、演奏に負担がかからないパーフェクトな出で立ちで、逆に今日の演奏への気合いの大きさを感じます。
 先ず一曲目は、トミー・フラナガンが愛奏したサド・ジョーンズの“Mean What You Say”、ドラムをフィーチュアしながらピアノの妙技を一層際立たせる名曲です。師匠に伝授された演奏の間合いもうまく取ることが出来、ピックアップもうまく決まり、3コーラスのアドリブも眼前に譜面があるかのように狙いが定められたパーフェクトなものです。寺井尚之ばりのトレモロも美しく、会場は感嘆。2曲目は打って変わって、ビリー・ホリディの名唱でおなじみの、激しい求愛のラブ・ソング、“For Heaven's Sake”、ヴォーカルもたしなむだけあって、歌詞の息の間合いが感じられるテーマから、ピアニストがランと呼ぶ、連続の美しいパッセージにも唸りました。彼女のタッチには美しさと同時に強さの溢れるもので、当ピアノ教室の生徒である事がよく判る素晴らしいものです。ラストは、チャーリー・パーカーのバップ・チューン、“Scrapple from the Apple”で、ベースとユニゾンでスイングし、アドリブも変幻自在の4コーラス、最後のグリスも元気一杯で、あやめちゃんの初アドリブ挑戦は大成功!全ての曲が良く準備され、狙い定められた音使いは完璧。松本誠に次ぎ、OverSeasで初ライブを演る大きな賞品も出ました。他の生徒達が一層やる気を出すきっかけとなるでしょう。

 初々しい演奏から実力派まで、長丁場の発表会もとうとう最後のプログラム、松本誠に出番が回って来ました。すでにOverSeasや他のライブハウスで、ベースの若きホープ宮本在浩と何度もライブを行っている松本誠ですから、発表会はゲストと言ってもよい扱いですが、今迄繰り広げられた数々の素晴らしい演奏の締めくくりをする重責を負っています。また日頃の松本ファンにとっては、師匠寺井尚之のフラナガニアトリオのベース、ドラムとの共演が聴ける絶好の機会です。他の生徒達同様、緊張していると言っていた彼ですが、一体どんなプレイになるのでしょうか?
 演奏は、マット・デニスのユーモアに溢れる洒落たラブ・ソング、“Will You Still Be Mine?” から始りました。第一回目の発表会で、彼の音色をオレンジやレモンの柑橘系と表現しましたが、最近の彼の音色は、そこに苺やラズベリーの甘さが加わり、一層深みと大きさを感じます。師匠寺井尚之の「花」の香りとは異なるフルーティな魅力のある音です。宗竹、河原の安定したビートと三位一体となり、流れるようなスイング感を生み出します。常に渋好みの松本君の選曲は、一つ間違えると暗く地味に成ってしまうリスクをはらんでいるのですが、名手二人とがっちりタッグを組んだピアノトリオに、命が宿りはじける様な楽しさを感じます。2枚目半のひょうひょうとした曲想が、彼の音色と相まり、歌詞を思い出し、何度もニヤっとさせられました。
 バラードは、トミー・フラナガンが愛奏した、恋に傷ついた大人のバラード、 “Some Other Spring”、朗々と歌い上げ過ぎれば野暮になる難曲が続きます。松本誠は、甘い音色で囁くようなルバートから入り、ベース、ドラムが加わった所に、心情の変化を表現して見せます。当一門のお家芸倍ノリは、痛んだ心を癒すような光を与え、心の奥に秘めた感情を告白していきます。最後はトミー・フラナガン直系のエンディングできっちりと起承転結が決まり、抑制した音楽表現に会場を唸らせました。
 渋い2曲の後、ラストチューンは、フラナガンや寺井尚之がラストの切り札とする壮大なスケールの“Tin Tin Deo”で一気に勝負を賭けます。今迄のデュオライブでも演った事はありますが、宗竹正浩、河原達人とのトリオでは無論初めてです。松本君のプレイが共演者のミュージシャン魂に火を浸けます。宗竹正浩の揺さぶられるようなアフロキューバンのビートと、河原達人ならではの繊細かつダイナミックなスティックさばき、二人ともさきほど迄の優しいサポート役ではなく、対等の共演者として本来のプレイをするモードに変わっています。Manteca や Birk's Works などお馴染みのフラナガンゆかりのフレーズを引用しつつ、展開する素晴らしいソロ。名手二人のプレイからエネルギーを吸収し自分のアドリブに昇華させた見事なプレイで、トリの大役をがっちりと果たしました。

 発表者の演奏の後は、フラナガニアトリオによるミニライブ、長時間手抜き一切なしのプレイで協力してくれた、宗竹正浩(b)河原達人(ds)本当にありがとう!お疲れさまでした。

 外はすっかり暗くなり、最後は審査委員長寺井尚之より各賞の発表が行われました。4時間以上の生徒達のプレイを一音も聴き漏らす事無く講評をする発表会は、他に例がないのではと、密かに誇りに思います。

 各賞発表と同時に、休日返上で、素晴らしい音響技術を駆使し、発表会の演奏を毎回録音して下さっているモトドラ氏に生徒会より感謝のプレゼントの贈呈式も行われました。
 
 日頃の稽古の成果を発揮できた人も、緊張してしまって、実力どおりの演奏が出来なかった人も、素晴らしいミュージシャンと共演でき、熱心な聴衆の前で演奏する事を楽しんでくれた事でしょう!
これからも、皆プラクティス、プラクティス!

<予告>
第9回寺井尚之ピアノ教室発表会は

2005年8月28日(日)