OverSeasオーナー兼ジャズピアニスト 寺井尚之より ウォルター・ノリス氏は、サド・ジョーンズ&メル・ルイス・オーケストラにサー・ローランド・ハナの後任として参加した頃より、その研ぎ澄まされたテクニックと、変幻自在のタッチで私の長年のアイドルです。 今秋、故郷のアーカンソー州において、音楽の殿堂入りを果たされたのを受け、日本においても関係者内で祝賀会を催す事となりました。 ついてはその際、演奏もしていただきます。一般のファンの方々にも開放しますので、ぜひともノリス氏の素晴らしい演奏をお楽しみください。 |
ウォルター・ノリス氏経歴 1931年、アーカンソー州リトルロックに生まれる。5歳からクラシックを学び、10才から人種混合の楽団で活動、兵役後、LAでズート・シムス、ソニー・クリスなど西海岸の名手達と共演、'58年にオーネット・コールマンの初レコーディングに参加。'59年にNYに移り、当時一流ジャズメンが名を連ねていたプレイボーイクラブの音楽監督を務める。 また、サド・ジョーンズ&メル・ルイスOrch.のピアニストとしても活躍、楽団と初来日。ジョージ・ムラーツや、アラダー・ペゲとコンビを組み数々の名盤を録音する。 退団後渡欧し、レッド・ミッチェル、デクスター・ゴードン等と活動、ベルリン・ラジオOrch.を経て、ベルリン芸術大学の非常勤教授として教鞭を執る傍ら、アメリカのファンの要望で、度々帰国し、演奏と録音活動を続ける。 2003年度アーカンソー州の「音楽の殿堂」入りし、来日前にリトルロックで授賞式が行われる。 非常にモダンでありながら、チャーリー・パーカーとアート・テイタムを背景とする精神性を決して失わない。アート・テイタム譲りの完璧なテクニックと、研ぎ澄まされたタッチは、ピアノを愛する者は必聴! 現在もベルリンに在住。 |
about Walter Norris 「ウォルター・ノリスは90年代のアート・テイタムである。」 「彼のタッチは、均一にして軽やか、余りあるテクニックをうまく使いこなす。バネとうねりのある彼のアルペッジオには論理性と流れがある。倍テンポの疾走感がところどころに挿入されると、その周りが灯りで照らされたようになる。シングルノートによる長いパッセージには息遣いの"間"が感じられ、ノーテンポになると、彼の明瞭な語り口がさらに饒舌になる、そこには、私的で歌いかけるような情感が伝わってくる。」 「20世紀後半に於て、ウォルター・ノリスが最も重要なソロ・ピアニストである事は明白である。溢れるアイデアと傑出したピアノの妙技は、ジャズ界では他に見当たらない。彼の作曲と即興演奏には、バッハのシャープな対位法と、ショパンのロマン派的な素晴らしさが統合され、又、セルゲイ・プロコイエフの知的なハーモニーの凄さに、アート・テイタムの名人技が加わったようなものだ。」 「彼は悪魔的な超絶技巧と、類まれなハーモニーの想像力を兼ね備え、虹色に変幻する和声感覚で我々を幻惑するオリジナル曲と、独特の演奏解釈で一段上のレヴェルに磨き上げられたスタンダードナンバーという、2本立ての演奏構成で聴く者を魅了する。」 「もしもクラシックの鍵盤楽器奏者が、過去の世紀と同様に即興演奏をする事を求められていれば、ウォルター・ノリスのようなピアニストがもっと出現していただろうに。」 「ウォルター・ノリスは完全無欠な運指の驚くべき技量で音楽を創造する。わざとらしい作り直しなど全くない、生気に溢れる素晴らしい演奏だ。しいて言うならばモーツァルトとバルトークの間を行くピアニストだ。」 「ウォルター・ノリスの事を特別なピアニストだと言うのは、決して誇張ではない。同時のスタイルとサウンドを持ったピアニストは大勢いる。しかしながらノリスは、ピアニストとしても、作曲家としても、理想を追求する音楽家としても、いかなるカテゴリーをも超越した存在だ。」 |