寺井尚之の旅立ち:初演

 6月28日(土)、寺井尚之の新ユニット、<The Mainstem>が初めてのライブを開催しました。
看板
 ベース:宮本在浩(みやもと ざいこう)、ドラム:菅一平(すが いっぺい):ここ何年も、寺井と腕を磨いてきましたが、この日は特別な夜。唄の文句じゃないけれど、First-Nightingには心踊る魔法があります。二人とも口には出さないけど、今日の為に多くの時間と稽古を費やしたことは、音を聴けばすぐにわかった。
 

今夜の曲目:

1. Bitty Ditty (Thad Jones)
2. Out of the Past (Benny Golson)
3. A.T. (Frank Foster)
4. If You Could See Me Now (Tadd Dameron)
5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)

1. Almost Like Being in Love( Frederick Loewe, Alan Jay Lerner)
2. I Can’t Give You Anything But Love (Jimmy McHugh,Dorothy Fields)
3. I Never Knew (Gus Kahn,Ted Fiorito)
4. If I Had You (Ted Shapiro/ Jimmy Cambell/ Reginald Connelly)
5. It’s All Right with Me (Cole Porter)

1. Let’s (Thad Jones)
2. A Blue Time (Tadd Dameron)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. I Want to Talk About You (Billy Eckstein)
5. Raincheck (Billy Strayhorn)
アンコール: Cherokee (Ray Noble)

 First-Nightingは、じめじめした日本の梅雨だった。こういう日は鍵盤が重く、太鼓のチューニングは下がり、ベースも鳴りが悪くなりますが、新ユニットは雨も湿気もなんのその!プレイヤーの気迫と楽しさが伝わってきて、片隅で聴く私の心も日本晴れ!
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 <The Mainstem>の初セレクションはデトロイト・ハード・バップ!サド・ジョーンズで始まりビリー・ストレイホーンに終わるという、逃げのない王道を突き進みました。
 オープニングの“ビッティ・ディッティ”に入る前のイントロで、寺井が聴かせたのは、朗々としたガーシュイン・ナンバー“フロム・ディス・モーモント・オン”、どうやら即興で入れたらしい。つまり、「このときから、わしはメンステムで演って行く!」というアナウンスの替わりだったんですね!
 演奏に溢れる季節の趣、“Out of the Past”のルバートで、さりげなく聴こえて来た“Here’s That Rainy Day”は「やっぱり雨になってしもたなあ…」という、ピアニストの洒落たモノローグだったのかな?
寺井尚之
 寺井初演の曲<A.T.>は初演? A.T.とは勿論アーサー・テイラー(ds)のこと!ケニー・バレル(g)のアルバム、『All Day Long』の収録曲でフランク・フォスター(ts)のオリジナルです。今夜の為に、寺井が譜面を新しく書き直していました。憧れの巨匠のフィーチュア・ナンバーをプレゼントされた菅一平(ds)は、水を得た魚のように、活きのいいドラムソロを聴かせ、大喝采を浴びました。河原達人さんのMean Streetsのように、これから、この曲が彼のおハコになるのだろうか?
菅一平     宮本在浩
 ジャズ講座でフラナガンのアルバム解説をするうちに、自然にレパートリーに取り込んでしまった名曲も登場!
 エラ・フィッツジェラルドが歌った-2や5は、最近の私的ヒット曲!コール・ポーターの“It’s All Right…”のイントロとして、『モントルー’75』や『カーネギー・ホール』でエラが歌った“ビッグ・ノイズ・フロム・ウィネトカ”がピアノソロに挿入されていてニンマリ! -3,4のスタンダードは、モントルーのJATPオールスターズで、クラーク・テリー(flg,tp)やトミーのソロが印象に残るけど、解説をするだけじゃなくて、自分のプレイの栄養にしているのはさすがです。宮本在浩(b)もそんな寺井に応えて予習十分、良いラインを作って、ハーモニーがヒットします。
 
 ラストセットは、大胆にもサド・ジョーンズの極めつけ、“Let’s” から始まった。あの悪魔的なテーマが一糸乱れぬユニゾンで決まると、在浩、一平の顔に快心の笑みが浮かび、片隅から聴く私の心に爽やかな風が吹きました!えっ?寺井の顔はどうだったかって?隅から聴いていたから、顔は見えないけど、きっと表情は変わってないと思います… とにかくトリオはどんどんスイングして、色んな色合いを見せてくれた。!
 
 6月の名歌は、ビリー・エクスタインのバラード、I Want to Talk About You、この唄が何故6月の唄かというと、爽やかな初夏の夜、好きな人と月明かりに照らされる公園を、散歩しながら、こんな文句で愛を告白する唄なんです。
『6月の夜が素敵だとか、
月光に照らされる神秘的な小道、
そんな話はもうやめて。
僕は君の事が話したいんだ。…』

 そして、プログラムの最後は日本の梅雨のじめじめを払拭してくれる、ビリー・ストレイホーンのRaincheck! Rain Checkというのは、元々野球のゲームが雨で流れた時に配る振替券、『雨切符』のことなんです。ストレイホーンがカリフォルニアで作った曲を言われ、雨の曲なのに、どこまでも明るく軽快なスインガーで締めくくりました。
 アンコールは、想定外の“チェロキー”で客席の度肝を抜きました!ノロシの上がるのを見たインディアン達が雄叫びを上げながら攻めてくる。雄叫びが近づいたり、峠の向こうに遠ざかったり…ダイナミクス溢れるトリオのコンビネーションで、聴く者の心をわし掴みにしたまま、ライブが終わりました。
<The Mainstem>…初の船出は雨だったけど、明るい船出だった!次回は7月19日(土)、CU

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