「Eclypso」 ジャズ講座:片隅感想文


一昨日は『Eclypso』ジャズ講座!お越し下さった皆さん、本当にありがとうございました。
 
 録音スタジオに煙るパイプ煙草の香りが伝わるような解説に、大笑いしたり頷いたり…、楽しい気分がOverSeasの中に溢れると、パイプをくわえたトミーの大きな瞳がギョロっと動いた。あれは幻覚だったのか?
 
 勤務先の北京からは常連KD氏から、ボストンからは鷲見和広(b)さんの一番弟子しょうたんちゃんから、「僕も参加したかった…」とメールを頂戴しました。いずれ講座本シリーズに収録されますので、どうぞお楽しみに!
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講座の当日はパ・リーグ・クライマックス初戦と重なって、オリックス応援と講座ダブルヘッダーのツワモノも!
 OverSeasのBBSには、若きピアニスト達から詳細な感想が数多く書き込まれているし、今さら片隅から私が書くのも何ですが、ちょっと一筆書いておこう。
 『Eclypso』が録音された1977年当時、トミー・フラナガンは、まだエラ・フィッツジェラルドの音楽監督時代で、録音直前にトミーがジョージ・ムラーツ、エルヴィン・ジョーンズと組んでギグをした記録もない。恐らくリハーサルも当日スタジオ入りしてからやったのではないだろうか? 
 リリース時に、ジャズ・ベーシスト達がこぞってコピーした歴史的名演、“Denzil’s Best”は、なんと当日トミーから渡された譜面を初見で演ったのだと、ムラーツ兄さん本人から聞きました。初見であれほど輝きのあるプレイをするムラーツ(当時32歳)の凄さは当然ですが、共演者の資質を看破し初見の曲でフィーチュアしたフラナガンの「眼力」の凄さ!アルバム・カヴァーのパイプをくゆらすポートレートそのままですね。
ジョージ・ムラーツ公式HPギャラリーより
   ところで、最近、TVで黒澤明の『七人の侍』を数十年ぶりで観ました。日本人であることを幸せに思わせてくれる映画史上に残る傑作だから、皆さんもご存知でしょうが、島田勘兵衛という初老の浪人が、自分を含めてたった七人のチームを急ごしらえし、綿密な作戦を立てて、農民を脅かす野武士集団を退治する時代劇です。
 20世紀を代表する名優、志村喬演じる島田勘兵衛の、温厚さと厳しさを併せ持つ奥の深い人格や、まなざしの輝き、ふと見せる雄弁な表情が、トミー・フラナガンの思い出と重なりました。レギュラー・トリオでなく、限定された条件で録音した『エクリプソ』の仕上がりを鑑賞していると、何度も『七人の侍』の名シーンを思い出してしまいました。
 G先生によれば、プロデュース側のアイデアは、「トミー・フラナガンとエルヴィン・ジョーンズのリユニオン」であったそうですから、“Relaxin’ at Camarillo”は、プロデューサーのリクエストであったのかも知れません。それに対して、ジャズ・スタンダードと言うには知名度の低い“Cup Beares”(トム・マッキントッシュ)、“A Blue Time”(タッド・ダメロン)といったあたりは、明らかにトミー・フラナガン自身の選曲に違いない。
 次回、11月8日(土)のジャズ講座には、キーター・ベッツ(b)、ボビー・ダーハム(ds)からなる当時のレギュラー・トリオのライブ録音、『Montreux ’77』で『Eclypso』と好対照を成します。
 トム・マッキントッシュ、タッド・ダメロン、サド・ジョーンズ、デューク・エリントン、トミー・フラナガンのレパートリーの源流(mainstem)を作った作曲家たちのことは、トリビュート・コンサートまでに、少しでも書きたいなと思っています。
 CU

「「Eclypso」 ジャズ講座:片隅感想文」への2件のフィードバック

  1. いつも楽しく、興味深見させて頂いてます。
    トミー・フラナガン(敬称は略させていただえきます。全然関係ない遠い人におもえてしまいそうなので。)をかつて聴きに行ったときに、
    聴衆から「志村喬!」という声がかかったのは忘れられません。風貌といいそれまでの位置(?)といいい、我々みんなそのように感じてましたせいかその時に違和感は感じませんでした。

  2. 石井様
    山中湖はもう寒いことと思いますがお元気ですか?
     志村喬さんも3月生まれのうお座です。
    同じ黒澤の「生きる」という映画で、志村喬さんが、物凄い笑顔を見せるシーンがあるんですけど、その顔を見るたびに、3月に、トミーが来たとき、ピアノ型のバースデイケーキを出したときの、笑顔がオーバーラップしてしまうんです。
     二人とも、20世紀を代表する芸術家ということで、一緒ですね!

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