対訳ノート(33) Easy Living  あなたの中のビリー・ホリディ(2)

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 トミー・フラナガン・トリビュートで盛り上がった3月も終盤、締めくくりのFlanagania Reunion (3/31土)は残席僅か、必ずご予約ください。
 最近、「トミー・フラナガンの足跡を辿る」のエラの出番が一段落して、久しく「対訳ノート」を書かなくなったら、対訳リクエストのメッセージをいくつかいただきました。ありがたいことです。久しぶりにビリー・ホリディの十八番、同時に、トミー・フラナガンが亡くなった夜、寺井尚之がフラナガニアトリオで、号泣しながら演奏したのが忘れられない名曲、”イージー・リヴィング”について書いてみます。
<歌のお里>
 “Easy Living”の歌のお里は、ジーン・アーサー主演の同じタイトルの映画だったそうです。普通の女の子が富豪の御曹司と結婚するという、シンデレラ的ロマンチック・コメディーで、そのときはオーケストラ演奏のみで、注目されることはありませんでした。
 歌詞のついた「唄」として初演したのは、ビリー・ホリディで、白人優先の当時のレコード業界を考えると、余りもの的な新曲であったのかも知れませんが、テディ・ウイルソンOrch.と録音したBrunswick盤(1937)は大ヒット!それ以降、ビリー・ホリディの十八番として親しまれ、多くのハード・バッパー達の愛奏曲となりました。バッパーは、ビリー・ホリディのフレージングを愛しましたが、この歌には特別な共感を持っていたのかもしれません。
<バッパーに愛された理由>
 <Easy Living>は、そのまま日本語にすれば「安易な生活」、「気楽な暮らし」、唄の主人公にとって「気楽な暮らし」とは、三食昼寝付のマダム主婦でも、独身を謳歌するキャリア・ガールでもない。惚れた男に尽くしても、愛されず、骨の髄まで絞り取られる暮らしこそが、Easyだと歌います。
 世間から、バカとあざ笑われても、構うもんか!貢ぐことが「気楽な暮らし」と開き直るのです。
 なんとアホウな可愛い女!初演のBrunswick盤のビリー・ホリディは、脚韻の踏み方もスパっとしていて、ネチネチぜず潔い。後期のこなれたヴァージョンになるほど、「悲しさ、はかなさ」が、強調されて、媚びたところがないのに、一層深くて愛らしい。
 でも、ビリー・ホリディが歌の中で呼びかける「あなた」は、ほんとうに男性なのか?と聴くものは思う。ビリー・ホリディが歌う“Easy Living”には、普通のラブ・ソングとは少し違った味わいを感じるのです。
 ひょっとしたらホリディが歌いかける「あなた」とは、人間ではなく、自らが深く依存していた「ドラッグ」や「アルコール」ではなかったのかしら・・・ヘロインに溺れ行く人生に悔いがなかったと宣言する壮絶なメッセージのようにも響きます。同時に「あなたは、どんな毒にすがって生きてるの?」と、ホリデイは優しく問いかける。つらいね。
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“Easy Living”
<お気楽暮らし>
改行が誤っていますが、原詞はこちら
詞:Leo Robin 曲:Ralph Rainger

あなたのために生きる、それは気楽な暮らし、
恋をすると、生きているのが楽になる、
だから私の人生はあなただけ、
それほどどっぷり浸ってる。

あなたに捧げた年月を、
後悔なんかするもんか。
惚れているなら、
貢ぐ事など何でもない。
好きなあなたのためならば、
どんな苦労も厭わない。

あなたのおかげで、
正気を失くしているのかも。
あなたは私を意のままに、
操っていると人は言う。
ねえ、あなた、
そこが一番いいのにねえ、
世間は判っていないんだ。

あなたのために生きる、それは気楽な暮らし。
恋をすると、生きているのが楽になる、
私は惚れて、惚れ抜くの、
私の人生はあなただけ、
それが生きがい。

 デクスター・ゴードン、ジミー・ヒース、キャノンボール・アダレイ、フランク・モーガン、チェット・ベイカー・・・ビリー・ホリディと同じものに溺れたハードバッパーたちが残す”Easy Living”の名演の数々を聴くと、ハードバップの高揚感と背中合わせになる、壮絶な”Easy Living”が聞えてきます。
ビリー・ホリディ解説本には、後期ビリー・ホリディの歌詞対訳を掲載しています。機会があればどうぞご一読を!

20th トリビュート・コンサートありがとうございました!

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 3月17日(土) 第20回トリビュート・コンサート開催!拍手や掛け声、お供えや激励メールなどなど、温かい応援は値千金!私の心もポカポカして涙腺がゆるくなりました。
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 生前のトミー・フラナガンの名演目は、どなたもご存じのスタンダード・ナンバーはないけれど、一度聴いたら忘れられない、強烈な個性を持つ名曲ばかり!
 演奏した寺井尚之The Mainstem(宮本在浩 bass, 菅一平 drums)は、それぞれの演目の持ち味をスカっと出して魅せてくれました。耳を澄ませたくなるピアニッシモから、壁が一緒に振動するようなフォルテッシモまで一糸乱れぬダイナミクス、新しいアイデアも各所にちりばめられて、音楽をよくご存じのお客様たちの瞳がキラリ!
 今回、私が個人的に驚いたのは、通常、満員のコンサートでマイク音量を最小限にしていると、一番後ろででは、どうしても音量が微妙にしぼんでしまうのですが、今回は、奥までバランスの良いピアノ・トリオのサウンドがビシビシ届いて来たことです。
 コンサートを重ねても、演奏内容が煮え詰まって濃くならないのは、プレイヤーの努力か、聴き手の心意気か・・・芸術は片方だけでは成り立たないものと、最近つくづく感じます。前回から、お客様のひとことがきっかけで、トリビュート・コンサートにMCが沢山入るようになりました。トミー・フラナガンが亡くなってからジャズに興味を持った若いお客様のためにもよかった~♪
 なお、コンサートCD3枚組がもうすぐ出来上がります。ご希望の方はJazz Club OverSeasまでお申し込みください。演奏曲目の詳しい解説は後日HPに掲載予定です。
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<演奏曲目>

1. Bitty Ditty ビッティ・ディッティ (Thad Jones)
2. Beyond the Bluebird ビヨンド・ザ・ブルーバード (Tommy Flanagan)
3. Thelonica- Minor Mishap セロニカ~マイナー・ミスハップ (Tommy Flanagan)
4. Embraceable You- Quasimodo エンブレイサブル・ユー~カジモド (George Gershwin- Charlie Parker)
5. Sunset and the Mocking Bird サンセット&ザ・モッキンバード (Duke Ellington)
6. Eclypso エクリプソ (Tommy Flanagan)
7. Dalarna ダラーナ (Tommy Flanagan)
8.Tin Tin Deo ティン・ティン・デオ (Chano Pozo, Dizzy Gillespie, Gill Fuller)

1. That Tired Routine Called Love ザット・タイヤード・ルーティーン・コールド・ラブ (Matt Dennis)
2. They Say It’s Spring ゼイ・セイ・イッツ・スプリング (Bob Hayms)
3. Rachel’s Rondo レイチェルズ・ロンド (Tommy Flanagan)
4. Celia シリア (Bud Powell)
5. If You Could See Me Now イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ (Tadd Dameron)
6. Mean Streets ミーンストリーツ (Tommy Flanagan)
7. I’ll Keep Loving You アイル・キープ・ラヴィグ・ユー (Bud Powell)
8. Our Delight アワー・デライト (Tadd Dameron)
Encore:
With Malice Towards None ウィズ・マリス・トワード・ノン (Tom McIntosh)
Ellingtonia Medley 
A Flower Is a Lovesome Thing  ア・フラワー・イズ・ア・ラブサム・シング
Chelsea Bridge チェルシーの橋
Passion Flower パッション・フラワー
Black and Tan Fantasy 黒と茶の幻想

 24日の土曜日は、トリビュートの原点、寺井尚之ミュージックの原点とも言える、トミー・フラナガン黄金トリオ(ジョージ・ムラーツ bass, アーサー・テイラー drums)の、伝説的コンサートの秘蔵音源を聴く会開催!
 トミー・フラナガン渾身のプレイとアナウンス、涙腺のゆるくなった私と一緒にオイオイ泣きましょう!
CU

4/7(土) 東海のバディ・リッチ 林宏樹(ds)トリオ!

 東大寺のお水取りが終わると関西に春が来る!とはいえ、地震多発で、なかなかウキウキできません。皆様、いかがお過ごしですか?
 3月17日(土)は、トミー・フラナガン生誕を記念して、第20回目のトリビュート・コンサート開催します。チケットはお求めになりましたか?今回もCDを作りますので、OverSeasまでお申し込みください!今月はトリビュートの後も「トミー・フラナガン3の秘蔵音源公開イベント」、「フラナガニアトリオ・リユニオン」など、関連イベントを行いますので、ぜひお立ち寄りください。
 先日、渋い中年の紳士がおひとりでお越しになりました。ライブの休憩時間にお話を伺うと、約30年前の学生時代に、トミー・フラナガンが好きだったので、OverSeasに来られたことがあるそうです。その時、「僕のような若造は似合わない落ち着いた店だ。50になったらまた来よう!」と決意、50歳になったので、その決意をしっかり実行されたとか。「いやあ、楽しかったです。また来よう!」ですって!自分が年寄りの中古女になったのを実感しましたが、学生時代のことをずっと覚えていてくださってとても嬉しかったです。・・・とにかく店があってよかった!
 その紳士は、卒業してから仕事一筋だったけど、これからは音楽や芝居を楽しむ人生に方向転換するんだと、おっしゃっていました。寺井尚之の学生時代の音楽仲間たちも、子供さんが成人され、クローゼットに仕い込んでいた愛用楽器をチューン・アップして練習を始めたという話をよく聞きますし、寺井尚之ジャズピアノ教室も社会人バンドで活動するミュージシャンの入門が多いです。
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 英語では、ミュージシャンの昼間の仕事を” day gig” なんて言いますが、昼も夜もgigをこなして○十年、昼は会社のエラいさんとして時には中国まで駆け回り、夜は実力派ドラマーとして、三重県を本拠に全国で演奏を続けるアマチュア・ミュージシャンのヒーローがいます!「東海のバディ・リッチ」と謳われる林宏樹さんです。
 髪は白いけど、心は少年みたいに無垢で明るい林さんは、私の母校でもある、大阪府立泉陽高校、関西大学が誇りとする大先輩。とにかくドラムのテクニックが凄い!だからハイパワーのドラムソロのキレが良くて、ちっともうるさくないんです。林宏樹のプレイに鼓舞されて、最近ジャズ・ライフを再開した先輩方も!
 来る4月7日(土)、林宏樹(ds) OverSeasに出演!共演は盟友、寺井尚之(p)と、林先輩お気に入りベーシストの宮本在浩(b)です。
 今回は林トリオに、サプライズな仲間たちも参加予定。熟年のオーラとパワーに元気もらえますよ!
 ぜひ一度、ハイテク&ハイパワー・ドラマー、林宏樹(ds)を聴きに来てください!
4月7日(土) 林宏樹(ds)トリオ!
寺井尚之(p)
宮本在浩(b)
Music: 7pm-/8pm-/9pm- (入替なし)
ライブ・チャージ:¥2,625(要予約)

 では、トリビュート・コンサートでCU!

J.J.ジョンソン北欧ツアー秘話

無題.png 今週の土曜日、「トミー・フラナガンの足跡を辿る」は”J.J. Johnson Live in Sweden 1957″が登場!レギュラー・バンドの演奏の緻密さ、すごさと共に、トミー・フラナガン・ファンにとっては、『OVERSEAS』録音直前の貴重な記録でもあり、講座にあたって、このヨーロッパ・ツアーのことを調べていると、色々面白い事実を発見したので、ここに書き留めておきます。
<初めてのヨーロッパ・ツアー!>
 このツアーは、スウェーデン政府の招聘によるもので、J.J.ジョンソン初めてのヨーロッパ・ツアーでした。故郷インディアナポリスの新聞“The Indianapolice Recorder “(’57 6/22付)には「地元出身トロンボニスト、スウェーデンを席巻!」と大見出しで報道されています。当時、J.J.はジャズ史上最悪の条例、NYキャバレー法のトラブルで、正式なNYでのクラブ出演に制約があったのですが、素晴らしいミュージシャンであることを海外が認めてくれたわけで、J.J.も「よっしゃ!」と気合が入ったに違いありません。何事も緻密に計画するJ.J.はツアーの前年に、まずエルヴィン・ジョーンズを誘い、エルヴィンが、タイリー・グレン(tb, vib)のバンドで一緒だったトミー・フラナガンを誘い、J.J.のバンドに参入。”J Is for Jazz”や”Dial JJ5″など、レコーディングを重ね、出発直前にはカフェ・ボヘミアに出演し、レギュラーとして体裁が十分に整ってからツアーに臨みました。トミー・フラナガンが、スウェーデンからNYに派遣されていたプロデューサー、ダールグレン氏に録音の要請を受けた後、「OVERSEAS」のアイデアを練る時間も十分あったのかも知れません。
<豪華客船の旅と新兵器!>
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 1957年6月、J.J.ジョンソン、ボビー・ジャスパー、トミー・フラナガン、ウィルバー・リトル、エルヴィン・ジョーンズ一行はNY港から船で北欧に向かいました。アルバム・ライナーでは「6月13日首都ストックホルムに到着後、翌日の14日にさっそくラジオ出演(本作1~5の演奏)」と書かれていますが、国立アメリカ歴史博物館所蔵のエルヴィン・ジョーンズの証言では「コペンハーゲンからツアーをスタートし、数日後ストックホルムへ向かった。」 とありました。とにかく、昔のことなので記憶があいまいなのかも知れません、でも、はっきりとエルヴィンが覚えているのは船旅の快適さ!数日の船旅の間はごちそう三昧で、「ヨーロッパ旅行は船に限る!」と思ったとか。
cbf5c97e6727066b97bbe8f21d397107.jpg また、このアルバムでは、トロンボニウムという耳慣れない名前の楽器が使われています。これは、J.J.の言葉を借りれば、「バリトン・ホーンとフリューゲル・ホーン、あるいはユーフォニウムとかメロフォンを足して二で割ったような楽器。」。ツアーの前年に、カイ・ウィンディングと、金管楽器メーカー「KING」の工房を訪問した際、ひょんなことから「これ持ってって使ってみなよ。」ということになり、二人で一生懸命練習して、ツアー前年にJ & Kaiで”Piece For Two Tromboniums”をレコーディングしています。スライド・トロンボーン主体で、元々ヴァルヴ楽器奏者でなかったJ.J.にとって、トロンボニウムを吹きこなし、まして自由にアドリブをするというのは「かなりの根性と稽古が必要だった。」と言いますから、折角自分の思いのままに動くようになった楽器を、このツアーで使ってみようと思っても不思議はないかも知れませんね。それとも、何らかの事情で、スライド・トロンボーンよりも使い勝手が良かったのかも知れません。
<ジャズの巨人 蚊に泣く>
 ツアーは、デンマーク、スウェーデン、フランス、オランダ、それにボビー・ジャスパーの故国、ベルギーと約3か月の長期にわたって各国を回るものでした。当時のダウンビート誌には、どこに行っても景観ばかりで、J.J.ジョンソンが「バンドのメンバーが皆で使えるように3台のカメラを購入し、毎日フィルム10本分パシャパシャと撮影し、イーストマン・コダック社(!)の利益に貢献した。」と書かれていて、時代を感じます。今なら、TwitterやFacebookのJJのアカウントに、沢山観光やグルメの写真がアップされていたかも知れませんね!
kungsan.jpg マシュマロ・レコードの上不三雄氏から、スウェーデンの公演は、ほとんどが野外だったと教えていただきました。エルヴィン・ジョーンズの証言では、スウェーデンでは、どの町にも必ず大きな公園があり、いろんなイベントが公園で開催されていたそうです。北欧の短い夏でもやはり蚊はいるようで、メンバーはどこに行っても蚊の襲撃に悩まされ続けたそうですが、どこも満員の大盛況!ストックホルムのヴぇニューは、”Kungstrad garden”(王様の公園)というところで、J.J.ジョンソンクインテットの単独公演に、なんと2万人の聴衆が詰めかけました。大群衆を前にしたエルヴィン・ジョーンズは「今夜ばかりは、スティックを落っことしちゃいけない…」と肝に銘じたそうです。
 当時J.J.ジョンソン33才、ボビー・ジャスパー31才、エルヴィン・ジョーンズ、ウィルバー・リトル29才、トミー・フラナガン27才、皆若いですから、コンサートがハネるとジャム・セッションで盛り上がりたいところ…でもストックホルムにはジャズクラブがなく、現地のミュージシャンが待つレストランでセッションが行われたそうです。ですからシンデレラのように、閉店時間の零時には解散し、NYで蓄積した睡眠不足の解消に役立ったとか…J.J.ジョンソンはその時、印象に残ったミュージシャンにスウェーデンのトロンボーン奏者、オキ・ペルソンを挙げています。
 一行は更に各地を回り、アムステルダムの名ホール、”コンセルトヘボウ”の音響の素晴らしさにJ.J.は感動!ステージで囁くと、最後部で同じように聞こえる。マイクなんて必要ない!と絶賛しました。そのコンサートの模様も、最近リリースされたので、来月の講座で解説予定です。
<クビになったエルヴィンとソニー・ロリンズの名盤>
 J.J.ジョンソンとトミー・フラナガンのファンなら、ボビー・ジャスパーとエルヴィン・ジョーンズを擁する、バランスのよいこのクインテットと、その後『J. J. in Person 』などで聴ける、弾けるようなナット・アダレイ(cor)とアルバート”トゥティ”ヒース(ds)のクインテットと、どちらが好きかで話題が盛り上がりますよね。
 寺井尚之はかねてからこんな風に断言していました。
 「J.J.みたいなきっちりしたタイプやったら、エルヴィンのドラムはリズムが流れるところがあるから、絶対アル・ヒースの方が好みやと思う。今やったらルイス・ナッシュ(ds)が好みやろうな。」これをぴったり裏付ける事実をエルヴィン・ジョーンズのインタビューに発見してびっくり仰天!
 J.J.ジョンソンは、この輝かしい楽旅が終わった途端、アルバート”トゥティ”ヒースに共演を約束し、エルヴィンにはクビを言い渡したというのです。その理由は「君はタイムキープができない。」というもので、激怒したエルヴィンは、帰国後フィラデルフィアとNJのクラブ”Red Hill Inn”のギグを消化した後、さっさと辞めてしまうのです。
 恐るべし寺井尚之!ジャズ講座の実績はダテじゃない!
sonnyrollinsvillagevanguard.jpg 1957年11月3日、「君はタイムキープができない。」ドラマーにとって最悪の言葉でクビにされたエルヴィンがNYに戻り、兄のトム(9人兄弟です)と一緒に昼間からダウンタウンでヤケ酒を飲んでいると、ベースのウィルバー・ウエアがやって来て「ソニー・ロリンズがお前のことを捜してるぞ!」と告げます。
 誘われるままヴィレッジ・ヴァンガードに行くと、ロリンズが出演中、誘われるまま、丸一日遊びで一緒に演奏してしまいました。そうしたら、その日はなんとBlue Noteのライブ・レコーディングの日だった!本来のドラマー、ピート・ラロッカではなんとなくサマにならなかったので、エルヴィンを捜していたんです。出来上がったのが、なんと、古典と謳われる『A Night At The Village Vanguard』でも、エルヴィンは遊んだだけなのでギャラは1セントもなし!
ロリンズは“Oh, man thank you.”とお礼を言っただけ、エルヴィンは“Oh, man shit!”って悪態をついただけだったんですって!
 エルヴィンがJ.J.にクビにされていなければ、ロリンズの人気アルバムも生まれてなかったというウソのような話ですが、スミソニアン歴史博物館にしっかり所蔵されています。同じアーカイブにあるJ.J.ジョンソンのインタビューや、以前ジャズ史家アイラ・ギトラーさんに教えていただいた、J.J.ジョンソンの評伝「The Musical World Of J.J. Johnson」などから、色んなことを根掘り葉掘り・・・
 というわけで、今回のLive in Swedenの後にライブ録音された『Live in Amsterdam』や『OVERSEAS』のこぼれ話は、また機会を改めて!
 土曜日は「トミー・フラナガンの足跡を辿る」にお待ちしています!
 おすすめ料理は「チキンの春野菜ソース」にします!
CU

トミー・フラナガン誕生の3月です!

 トミー・フラナガンの誕生月、3月到来!大阪城の梅の花も咲き始めました。皆様、風邪や花粉症は大丈夫ですか?
 今月OverSeasではトミー・フラナガン関連のイベントを数多く行います。トミー・フラナガン・ファンはもちろん、「トミー・フラナガンってイギリス人の俳優でしょ?」と半信半疑な方も、ぜひ一度お越しください!
① 3/10(土) 「トミー・フラナガンの足跡を辿る」
6:30pm開講 受講料 2,625yen

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 長年、トミー・フラナガンの録音歴に沿って、アルバム紹介や音楽の解説を続ける大河ドラマ講座、誕生月に相応しく、トミー・フラナガン3の初期の名盤『OVERSEAS』を録音した時のJ.J.ジョンソン5でのスエーデン公演の模様を収録したアルバム『J.J. JOHNSON In Sweden 1957 』(マシュマロ・レコード)を一緒に楽しみます。
 上不三雄氏のライナーノートによれば、このツアーは1957年の6月から2か月にわたってスエーデン~オランダ~ベルギー~ドイツと続く長旅だったとのこと。『OVERSEAS』は、スエーデンのブッキング終了のオフ日に録音されたようですね。
 メンバーはJ.J.ジョンソン、ボビー・ジャスパー、リズム・セクションは勿論『OVERSEAS』のトミー・フラナガン、ウィルバー・リトル、エルヴィン・ジョーンズという鉄壁クインテット!優雅なアンサンブルと圧巻のソロ・プレイで強烈にスイングします。取り直しのきかないライブ録音にもかかわらず、顕微鏡で見てもシミひとつ発見できない完璧なパフォーマンス!それなのに石橋を叩いて渡る安全策なんて皆無!スリルいっぱいの大胆プレイにシビれます。
 ジャズ界のパトロン、パノニカ男爵夫人の有名な質問「三つの願いは?」J.J.ジョンソンの答えは「思いのままに演奏できるようになりたい。」でした。これが「思いのまま」でなかったとしたら、J.J.ジョンソンの目指す音楽はどんなだったんでしょう?
 『OVERSEAS』時代のトミー・フラナガン(27歳)に思いを馳せながら、寺井尚之の解説を一緒に聴きましょうね!
②3/17(土) <第20回 Tribute to Tommy Flanagan>
演奏:寺井尚之(p) メインステム:宮本在浩(b)、菅一平(ds)
7pm-/8:30pm-
前売りチケット 3,150yen
当日 3,675yen

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 当店の「法事」とも言うべき年2回のコンサート、今年はフラナガン誕生日の翌日に開催いたします。
 先週和訳したピーター・ストラウブのライナーにもあるとおり、往年のトミー・フラナガン・3はハイパワー・大型マシンと言うべき物凄いもので、「エレガント」や「控えめな」という決まり文句を遥かに超えたものでした。
 寺井尚之、宮本在浩(b)、菅一平(ds)のThe Mainstemの渾身のトリオ・プレイで、その雰囲気をほんの少しでも感じて頂ければ本望!
 おいしいお料理や飲み物と共に、ひとときご一緒いただければ私も本望です!
③3/24(土) <伝説のトミー・フラナガン・トリオ 秘蔵音源を聴く会>
開演:7pm~
参加料2,625yen

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 トミー・フラナガン生誕82周年を祝し、OverSeasの家宝音源を初公開。時は1984年12月14日、トミー・フラナガン3、日本初のクラブ・ギグ!ジョージ・ムラーツ、アーサー・テイラーとの超大型トリオの伝説のコンサートにタイムマシンでワープしましょう!
 このトリオの録音は『Thelonica/Enja』のみ。OverSeasの伝説のコンサートの曲順は以前書きました が、この上なくハードなプログラム!中でもⅠ部(セロニアス・モンク)とⅡ部(デューク・エリントン)のメドレーが圧巻です。
 このコンサートが終わった後、寺井尚之は正式にトミー・フラナガンの弟子となりました。ピアニスト、寺井尚之の原点がどういうものなのか、このコンサートを聴くと判ります。
 あの時に生まれてたあなたも、影も形もなかった君も、皆で一緒に聴きましょう!
④3/31(土) <Flanagania Trio Reunion!>
出演:フラナガニアトリオ
寺井尚之(p)
宗竹正浩(b)
河原達人(ds)
Live Charge 2,625yen 

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 寺井尚之は今年還暦!WOW! Young at Heartで今年もやりますリユニオン!
 今日もオーストラリアから、一日中『Yours truly,』を聴きながら過ごしているよと、オージー・ガールからメールが来ました。ベテランだからって枯れてませんよ。ギンギンギラギラの演奏をお聞かせします。
 フラナガニア・ファン全員集合!
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 3月の土曜日は、ぜひOverSeasでお過ごしください!
 どなたさまも心よりWELCOME!
CU