J.J.ジョンソンのアドリブ学:「論理性と明瞭さ」

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  3月9日(土)、「新トミー・フラナガンの足跡を辿る」に永遠の名盤 『Dial J.J.5』が登場!

 もしも、J.J.ジョンソンが科学者であったら、ノーベル賞をもらったかも・・・ 怖いほど冷静沈着でありながら悠々とスイングし、緻密な構成でも息苦しくならない。生前のフラナガンは、J.Jのコンボについて「言われる通り、粛々と演奏していただけ。」と言ったけど、メンバーたちは清流の鮎の如く、フリーにプレイしているように感じます。何度聴いても飽きない演奏!

 講座で配布用の資料として、講座の為にJ.J.ジョンソンの、インタビュー(1995年)の日本語訳を作ってみました。そこで何度も登場する言葉は、「論理的で明瞭であること」〔with logic and with clarity ]  『Dial J.J.5』でも「論理性」と「明瞭性」が、そのまま音符になってスイングしてますよね!ディジー・ガレスピーの依頼で作編曲した大作『Perceptions』にせよ、スモール・コンボにせよ、曖昧さを徹底的に排除する「論理性」&「明瞭性」は終始一貫しています。

 足跡講座で映写する、寺井尚之特製「構成表」を見ても、J.J.ジョンソンの音楽が、とても複雑でありながら、実にすっきりした幾何学的な美しさを持っていることが判ります。

 J.Jの発言は、先月の足跡講座で配布したソニー・ロリンズ・インタビューでの、トランス状態至上主義と対照的で、とても興味深く読みました。

 J.Jは、自分の目指すのは、決して「超絶技巧」などではない!と言い切ります。トロンボーンを始めてから、アドリブのアプローチで、最も影響を受けたのがレスター・ヤングであるというのが鍵のようです。

 J.J.が最も忌み嫌うのが「あいまいさ」。エルヴィン・ジョーンズ(ds)を、「リズム・キープができない(!?)」と解雇したのも、ボビー・ジャスパーをレギュラーに起用したのも、なんとなく納得。

 彼が何度もジャズjjimages.jpegサヨナラし、転業したのも、そしてライフル自殺をしたのも、理に合わないことには我慢が出来ない完全主義のせいだったのかも・・・私のようなチャランポラン人間は軽蔑されたろうな・・・

 これほどクリアでクリーンな天才、それにもかかわらず、というべきか、それゆえ、なのか、チャーリー・パーカー、ソニー・スティット、ロリンズ、ジミー・ヒース、マイルズ・・・彼の仲間と同様に、J.J.ジョンソンもジャンキーだった。

 そのため、当局からキャバレー・カードを剥奪され、NYのクラブ出演は極端に制限されていた。『Dial J.J.5』でフラナガンが共演していた頃は、NYではマフィア経営の”カフェ・ボヘミア”に土壇場のライブ予告という形で、不定期出演するのみ、通常はNYの川向う、ニュージャージーの『Red Hill Inn』を本拠にしていました。

 まっとうに仕事をこなし家族をきちんと養っていたJ.J.ジョンソン、ジャンキーとはいえ、スタン・ゲッツのように窃盗をしたわけでもない、キャバレーカードを取り上げるのは論理に合わない!とばかりにNY地方裁判所に告訴!1959年には、首尾よくカードを取り戻します。この裁判が契機となり、警官汚職の温床でもあったキャバレー法が改正。この徹底的な姿勢が、彼のプレイにも作品にも反映されているように感じます。

 寺井尚之が音楽とその構成、プレイと人間性を徹底解説する「新トミー・フラナガンの足跡を辿る」、Dial J.J.5は3月9日(土)に!

 CU

 

「J.J.ジョンソンのアドリブ学:「論理性と明瞭さ」」への2件のフィードバック

  1. 毎度、興味深い話、ありがとうございます。
    Cafe Bohemia に捜索令状出しましょう。
    来月現地調査にも行ってきます。
    55年春に出来たCafe Bohemia
    どうやらここがマイルズの本拠地だったし、色々出てきそうですね。

  2.  ボヘミアのあった場所はおそらく現在も居酒屋かも。マイルズ・デイヴィス、アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズ、カーメン・マクレエ、色んな人が出ていたけど、その頃のEヴィレッジはうらぶれた街で、この店もゴージャスではなかったとフラナガンの奥さんが言うてはりました。http://jazzclub-overseas.com/blog/tamae/2007/09/21/

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