4/10(金)アキラ・タナ、楽しかった!すごかった!

hisayuki_terai_akira_tana_zaikou_miyamoto_ippei_suga1.JPG   待ちに待ったアキラ・タナ(ds)ライブ。4月に不似合いな冷たい雨でしたが、昨年に引き続き、「楽しい!」「すごいっ!」の歓声が口々に漏れる最高の演奏が聴けました。

akiraP1090110.JPG アキラ・タナさんと寺井尚之のお付き合いは、もう30年になります。でも、最初に彼の演奏を聴いたのはもっと前、寺井も私も二十代でした。大学時代の寺井の盟友ギタリスト、現在マレーシアでギター・レジェンドとして活動し、あちらの音大で教鞭を取る布施明仁さんが、その頃ボストンのニューイングランド音大に留学中で、「同じクラスにソニー・スティットと一緒に演っている奴が居ます。」といって彼の地のジャズクラブでライブ録音したカセット・テープ(!)を送ってくださったのがアキラさんとの最初の出会いでした。

 初めてOverSeasにお招きしたのは、Walter Bishop Jr.のトリオで’80年代中盤、それからコンサートで、プライベートで何度演奏していただいたか数えきれません。

 今回の来日も公私ともに超多忙スケジュールの合間を縫っての出演でしたが、譜面を一瞥した途端に、曲の構成がズバッと頭に入る感じ、イントロなしで寺井の首振りから始まる曲、超変則のBeyond the Bluebirdなど、どの曲もリラックスしてこなれた印象に。やっぱりアキラさんが加わったジミー・ヒース作品は、格別の味わいです。

 アキラさんを聴きにきてくれたロック・ミュージシャンのお客様を紹介すると、次のセットではすかさず8ビートでソロを取る茶目っ気も素敵でした。寺井尚之(p)は得意のポーカーフェイスですが、とっても気持ちよさそうにアキラさんと音楽でジョークを言い合っているし、宮本在浩(b)も本当に楽しそう!「ザイコウ、最高!」と声が掛かるソロを出してベテラン二人に強烈アピールしています。


ippeiP1090120.jpg  ラスト・チューンのA Sassy Sambaでは、アキラさんの傍らで食いつくように聴いていたメインステムの菅一平(ds)さんが、隠し持っていたパーカッションでジョイント、すると会場に居た先輩ミュージシャン達の応援が甲子園の外野席のようで、場内は興奮の坩堝に!

 アンコールは前回大好評の「どんぐりころころ=リズムチェンジ」に続き、今回は「七つの子」ジャズヴァージョン。最近大阪環状線が駅ごとに発車メロディーを鳴らすのにインスパイアされた寺井が、ここぞとJRのホームで耳にした色んなメロディーを、最高のピアノタッチで繰り出すのに、皆大爆笑。最後まで笑顔の絶えないライブになりました。 

 「楽しい」を生み出すためには日頃の厳しい修練が必要なんだ!改めて実感したコンサート。またの再会を約束し、アキラさんは明日帰国の途につきます。

 アキラ・タナ(ds)ライブ、次回も宜しくお願い申し上げます!

terai_akiraP1090117.JPG=演奏曲目=

<1st Set>

1. Ladybird (Tadd Dameron)

2. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)

3. Mean What You Say (Thad Jones)

4. If You Could See Me Now  (Tadd Dameron)

5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)

<2nd Set>

1. Suddenly It’s Spring (Jimmy Van Heusen)

2. They Say It’s Spring (Bob Haymes)

3. Bro’ Slim (Jimmy Heath )

4. The Voice of the Saxphone (Jimmy Heath )

5. Rifftide (Coleman Hawkins)

<3rd Set>

1. What Is Thing Called Love? (Cole Porter)

2. Quietude (Thad Jones)

3. Stablemates (Benny Golson)

4. I’ll Keep Loving You (Bud Powell)

5. A Sassy Samba  (Jimmy Heath )

Encore: 七つの子:環状線メドレー

トリビュート・コンサート!

mainstem_26thtribute.jpg

第26回トミー・フラナガン・トリビュート・コンサート、おかげさまで盛況で開催することができました。

 今年でフラナガン没後14年、客席に生前の勇姿を生で知るお客様は少なくなっていきますが、新旧のお客様に支えられ、26回のコンサートが出来たと思うと感慨もひとしおです。

zaiko_miyamoto_26th.jpg 寺井尚之のレギュラー・トリオも、当初のフラナガニア・トリオ(宗竹正浩-bass、河原達人-drums)から、現在のザ・メインステム (宮本在浩-bass、菅一平-drums )に衣替えして、今回で14回目、トリビュートの過半数のコンサートをメインステムで演ったことになります。稽古が三度のご飯より好きな寺井がこれまで8年の歳月をかけてトリオとしてのサウンドを磨いてきたわけですから、メンバーはさぞ大変だったろうと思いますが、長年の常連様から「いやあ、よくなったねえ。」声をかけられると、疲れも吹っ飛んだのではないでしょうか。

 トリビュート・コンサートのプログラムは、毎回、フラナガンが愛奏した名演目と呼ばれるものから、寺井がセレクトして起承転結のあるひとつのコンサートにまとめていきます。今回は、故郷デトロイト時代からフラナガンが大きな影響を受けたサド・ジョーンズ作品で始まり終わるプログラム。ippei_suga_26thtribute.jpgその間にフラナガンが理想としたデューク・エリントン+ビリー・ストレイホーン作品、バド・パウエル、タッド・ダメロンなどのビバップの名曲、フラナガンが春になると奏でたスプリング・ソングたち、それにフラナガン・ライブの最大の聴きどころだったメドレーを織り交ぜ、このコンサートがひとつのフラナガン音楽史というか、読み応えのある「物語」になったと、初めて感じることが出来ました。

 ピアノの鳴りは息を呑むほど美しかったし、 宮本在浩(b)、菅一平(ds)のふたりも存在感を見せつけてくれました。お客様からもらったコンサートの感想メールを引用させていただきます。

「ザイコーさん、一見控えめに見えて、実はしっかり師匠のピアノに絡みつつ、菅さんとはお互いに支え合って、というのがよく見えました。」

「菅さんのプレーは、師匠から次から次に来る暗黙の要求に穏やかな表情で応えられている姿がカッコ良かったです。」

 「冒頭のLet’sが始まった途端、2000年の大阪ブルーノートのフラナガン・トリオの演奏を思い出して涙が出た。」と言ってくれた人も居ました。

 前回のフラナガン・インタビューにこんな発言があったのを覚えていますか?

「演奏するからには、しっかり準備をして、そこに或る思いを込めたい。」

 そんなフラナガンの心は確かに受け継がれているなあ。そんな風に感じることができました。

mc_terai.jpg


<曲目>

《第Ⅰ部》

1. Let’s /Thad Jones

 作曲者はコルネット奏者としても、バンドリーダーとしても天才的な手腕を発揮したサド・ジョーンズ。ジョーンズの作品は一筋縄ではいかない難曲が多いために、沢山の演奏者に取り上げられるスタンダードは少ない。だがフラナガンは終生彼の作品を掘り下げた。

 「サド・ジョーンズ作品には強力なパワーを内蔵していて、演奏すると、自然にそのパワーが発散する。彼の作品を演奏できるならば、演奏者として順調な道を歩んでいる証だ。」トミー・フラナガン

 

 

let's.jpg

2.Beyond the Blue Bird /Tommy Flanagan

 青年時代のフラナガンがサド・ジョーンズ(cor.tp)と共に、毎夜、デトロイトの黒人居住地で熱い演奏を繰り広げた場所《ブルーバード・イン》を偲んで作ったオリジナル。本曲は若き日へのノスタルジーに溢れている。

 生前のフラナガンは、《ブルーバード・イン》と《OverSeas》の雰囲気は、よく似ていると言ってくれた。

 デトロイトのお家芸である左手の”返し”が印象的、親しみやすいメロディでありながら、、転調が多く弾くのは大変むずかしい。寺井尚之はリリース前に、この曲を写譜して、演奏を許されたことが誇りだ。

beyond_the_bb.jpg
3. Mean What You Say  /Thad Jones

 ゆったりしながら、爽快なスピード感が味わえるサド・ジョーンズ作品、サド・メルOrch.の十八番でもあった。’Mean what you say(ズバっと、相手に伝わるように言え!)’はジョーンズの口癖らしいが、デトロイト・ハードバップのモットーとも言えるだろう。

thad-jones-during-his-the-magnificent-thad-jones-session-hackensack-nj-february-2c2a01957-photo-by-francis-wolff.jpg


4.メドレー: Embraceable You  
/George Geshwin

        Quasimodo /Charlie Parker

 ガーシュインの有名なバラード(抱きしめたくなるほど愛らしい君)、そのコード進行を基にして作ったバップ・チューンに、チャーリー・パーカーは「カジモド」という醜い「ノートルダムのせむし男」の名前を付けた。原曲とバップ・チューンを絶妙な転調で結ぶ意表をついたメドレーには、パーカーの真意を読み解いたフラナガンの深い洞察力が見える。 ライブで、フラナガンのメドレーは最高の聴きどころだったが、これは数あるメドレーの内でも白眉だった。残念なことにレコーディングは遺されておらず、トリビュート・コンサートでその素晴らしさを偲ぶしかない。関連ブログ

quasimodo-dial.jpg

 

5. Sunset & the Mockin’ Bird / Duke Ellington, Billy Strayhorn

  エリントン&ストレイホーン作品、エリントン・ミュージックはフラナガン終生の理想だった。この曲はフラナガン67才のバースデイ・コンサートのライブ盤(右写真)のタイトルになっている。エリントンの自伝『Music
is my mistres』によれば、フロリダ半島をハリー・カーネイ(bs)運転の車で移動中、夕焼けの中で耳にした不思議な鳥の鳴き声に霊感を得て、瞬く間に書き上げた曲とある。後にエリントンは、この曲を含めた「女王組曲」を収録し、たった一枚プレスして英国のエリザベス女王に献上品とした。フラナガンは、FMラジオのジャズ番組のテーマ・ソングとして毎週流れるのを聴き覚え(!)レパートリーに加えたと言う。

 トリビュート・コンサートでは息を呑む寺井尚之のピアノタッチの至芸で。

 

albumcoverTommyFlanagan-SunsetAndTheMockingbird-TheBirthdayConcert.jpg
6.Raincheck  / Bily Strayhorn

 ビリー・ストレイホーンが第二次大戦中、カリフォルニアで作ったと言われている作品。雨雲を吹き飛ばすような颯爽とした雰囲気に溢れている。

  フラナガンは、ジョージ・ムラーツ(b)、ケニー・ワシントン(ds)との黄金トリオで、名盤『Jazz Poet』に収録している。スピード感と品格を併せ持つフラナガン流ヴァージョンで。

 

Jazz-Poet.jpg
7. Dalarna / Tommy Flanagan  

 ”ダラーナ”は、『Overseas』を録音したスウェーデンの風光明媚な地域の名前を冠した初期のオリジナル。転調の奥義や印象派的な曲想に、心酔していたビリー・ストレイホーンの影響が垣間見える。

 『Overseas』以降、フラナガンが演奏することはほとんどなかったが、寺井尚之のアルバム『ダラーナ』(’95)の演奏に触発され、寺井のアレンジを使って『Sea Changes』(’96)に再収録した。

 

sea_changes_cover.jpg
8. Tin Tin Deo / Chano Pozo, Dizzy Gillespie, Gill Fuller

 フラナガンは、ビッグバンドの演目を、コンパクトなピアノ・トリオ編成でダイナミックに料理するのを得意にしていた。この曲は、哀愁に満ちたキューバの黒人音楽と、ビバップの洗練されたイディオムが見事に融合したブラック・ミュージックだ。

 ディジー・ガレスピー楽団がこの曲を初録音したのはデトロイトで、フラナガンの親友、ケニー・バレル(g)が参加した。フラナガンにはその当時の特別な思い出があったのかもしれない。

 現在は寺井尚之The Mainstemがそのアレンジをしっかりと受け継いでいる。

 関連ブログ

Flanagans_shenanigans.jpg
  

 《第Ⅱ部》

1. Eclypso  /Tommy Flanagan

 フラナガン作品中、最も有名なのがこの曲かも知れない。『Overseas』(’57)や『Eclypso』(’75)を始め、フラナガンは繰り返し録音している。、”Eclypso”は「Eclypse(日食、月食)」と「Calypso (カリプソ)」の合成語。トミー・フラナガンを含めバッパーは、言葉の遊びが好きで、そんなウィットがプレイにも反映している。

  フラナガンが寺井尚之をNYに呼び寄せ、別れの夜にヴィレッジ・ヴァンガードで寺井のために演奏してくれた思い出の曲。

eclypso.jpg 

 2. They Say It’s Spring  / Bob Haymes

 フラナガンが”スプリング・ソングス”と呼んで愛奏した季節の演目。

 ’50年代中盤に、ブロッサム・ディアリーのキュートな歌声でヒットした。彼女の夫は、当時J.J.ジョンソンのバンド仲間であったボビー・ジャスパー(ts.fl)であったことから、フラナガンはディアリーのライブで、この曲を聴き覚えレパートリーに加え、フラナガンの演奏を聴いたダグ・ワトキンス(b)も愛奏するようになったという。NYのジャズシーンでは口コミで音楽が広まっていったのだ。

 作曲者、ボブ・ヘイムズは人気歌手ディック・ヘイムズの弟、俳優、歌手、TV番組タレントとしても有名だった。

 ’70年代にジョージ・ムラーツ(b)との名デュオ・アルバム『Ballads & Blues』に収録されている。
  関連ブログ

 ballads_and_blues_0.jpeg
 3. Rachel’s Rondo  /Tommy Flanagan

 最初の妻、アンとの間に生まれた美しい長女レイチェルに捧げた作品。フラナガンは『Super Session』(’80)に収録したが、ライブでは余り演奏することはなかった。

 一方、寺井はこの曲を大切にして長年愛奏し、『Flanagania』(’94)に収録している。

 冴え渡るピアノのサウンドがこの曲の気品を遺憾なく発揮する。

0407supersession.jpg 

 4. A Sleepin’ Bee  / Harold Arlen
 これも、春にNYでフラナガンがよく演奏したスプリング・ソング。Aペダルの軽快なヴァンプが春の浮き浮きした気分にぴったりだ。ライブで演奏していくうちに、’78『ハロルド・アーレン集』に収録したヴァージョンからどんどんアップデートしていて、トリビュートで演奏するのは進化ヴァージョンだ。

 元々「A House of Flowers」というハイチを舞台にしたブロードウェイ・ミュージカルの劇中歌。「蜂が手の中で眠ったら、あなたの恋は本物」というハイチの言い伝えを元にした可愛らしいラブ・ソング。 

関連ブログ

arlen.jpg 
 

5.Passion Flower  / Bily Strayhorn

 フラナガンがジョージ・ムラーツ(b)の弓の妙技をフィーチュアして盛んに演奏したビリー・ストレイホーンの名曲。ムラーツはフラナガン・トリオを離れてからも、自分のグループで愛奏し続けている。

 パッション・フラワーはトケイソウのこと。ビリー・ストレイホーンは花を題材にした作品を好んで作っているが、その中でも、この曲を最も愛奏している。

 今夜は、宮本在浩が秀逸な演奏で大きな存在感を示した。

gallery11.jpg 

6. Mean Streets  /Tommy Flanagan

  元々”Verdandi”という曲名で、エルヴィン・ジョーンズのドラムソロをフィーチュアし『Overseas』(’57)に収録、20年後、レギュラー・ドラマーに抜擢したケニー・ワシントン(ds)のフィーチュア・ナンバーとして盛んにライブで演奏し、ケニーのニックネーム、”ミーンストリーツ”と改題し『Jazz Poet』に収録。

 トリビュートでは、菅一平(ds)が細部まで神経の行き届くダイナミックなドラムソロで、大きな成長ぶりを見せつけた。

Jazz-Poet.jpg 

 7. I’ll Keep Loving You  /  Bud Powell

   バド・パウエルが歌手の女友達の持ち歌に書き下ろしたとされる作品で、凛とした美しさがみなぎる硬派のバラード。フラナガンは、ビバップのアンソロジー集、『I
Remember Bebop』(’77)に収録。フラナガンを愛し続ける寺井尚之の心が溢れる名演となった。

Various-Jazz-I-Remember-Bebop-523681.jpg 
 8.Our Delight  / Tadd Dameron

 

 ビバップの立役者の一人、ピアニスト、作編曲家、タッド・ダメロンの代表作。フラナガンはダメロン作品には「オーケストラの要素が内蔵されているので非常に演りやすい。」と言い、ライブを最高に盛り上げるラスト・チューンとして盛んに愛奏した。それにもかかわらず、レコーディングはハンク・ジョーンズとのピアノ・デュオしか残されておらず、バップの醍醐味が炸裂するスリリングなフラナガンのアレンジを再現できるのは寺井しかいない。

 

dameron_tadd.jpg 
   
 

collar.jpg《アンコール》

1. With Malice Towards None  / Tom McIntsh

  フラナガンが、真の「ブラック・ミュージック」として愛奏したトム・マッキントッシュ初期の作品。

 「誰にも悪意を向けずに」という題名は、エイブラハム・リンカーンの名言で、メロディは賛美歌を基にしたスピリチュアルな曲。

 この曲が生まれた頃、マッキントッシュとフラナガンは住まいが近所で親しく行き来しており、フラナガンはこの曲の創作過程に立ち会って、自分のアイデアを盛り込んだ。様々な編成で多くの録音があるものの、フラナガンのスピリチュアルな演奏解釈が傑出している。その中でも最も心を打たれるのは、フランク・モーガン名義のアルバム『You Must Believw in Spring』に収められたソロピアノの演奏だ。

 

関連ブログ

 frank_morgan.jpg
2. Like Old Times  / Thad Jones

 

 フラナガンがアンコールで頻繁に演奏した作品。サド・ジョーンズ名義の『Motor City Scene』(’59)や、ヴィレッジ・ヴァンガードのライブ盤(’87 右写真)に収録されている。「昔のように」は、デトロイトの《ブルーバード》のアフターアワーズの楽しさを指すのかもしれない。

 今夜のコンサートでは、昔のフラナガンのように、寺井が隠し持っていたホイッスルを、絶妙のタイミングで吹き鳴らし大喝采を浴び、文字通り「昔のように」笑いが溢れる楽しい締めくくりとなった。

 image4.jpg
 

トリビュート・コンサートの演奏を演奏をお聴きになりたい方へ:3枚組CDがあります。

OverSeasまでお問い合わせ下さい。

3月28日(土) 恒例春のトミー・フラナガン・トリビュート開催!

f_005d71.jpg

     写真は Jazzpar賞のフラナガン:フォトグラファーJan Perssonのサイトより

 今年はトミー・フラナガン生誕85周年、亡くなってからも、「ああ、あの時のプレイはそういう意味だったのか、あの言葉はそんなに深い意味があったのか・・・」と新しいことが判るのが巨匠!何年も経ってから、改めて笑っちゃう落語の名人のオチみたいです。

 そんな我らがトミー・フラナガンを偲んで開催するJazz Club OverSeas春秋の定例コンサート《Tribute to Tommy Flanagan》、今年の春は3月28日(土)に決定しました。

 在りし日の勇姿を思い出す名演目の数々を、寺井尚之(p)が名リズム・チーム 宮本在浩-bass, 菅一平-drums を擁する「The Mainstem」で、心技体整えてお聴かせいたします。初めてのお客様も大歓迎!どうぞみなさまお待ちしています。

 OverSeasでチケット好評発売中! (お問い合わせ Eメール info@jazzclub-overseas.com:TEL 06-6262-3940)

tribute_mainstem.JPG トリビュート to トミー・フラナガンHP

日時:2015年 3月28日(土) 
会場:Jazz Club OverSeas 
〒541-0052大阪市中央区安土町1-7-20、新トヤマビル1F
TEL 06-6262-3940
チケットお問い合わせ先:info@jazzclub-overseas.com

出演:寺井尚之(p)トリオ ”The Mainstem” :宮本在浩(b)、菅一平(ds)
演奏時間:7pm-/8:30pm-(入替なし)
前売りチケット3000yen(税別、座席指定)
当日 3500yen(税別、座席指定)

年末ディナー@OverSeas

今年も開催!
12月17日(水)~27日(土): 特別価格 お一人様¥3000(ライブ・チャージ、税別)にてコース・ディナーをご用意いたします。必ず前日までにご予約ください。
 <メニュー>

chrismas_dinner1.jpg

christmas2P1070255.JPGchristmasP1070083.JPG

 

  • オードブル
シュリンプ・カクテル
  ブルスケッタ
  生ハム 
  • チキンと蕪のクリーム・パスタ
  • サラダ
  • 特製ビーフ・パイ
  • アイスクリーム、コーヒー
 お一人様 :¥3000 (税金、ライブ・チャージ別)
ディナー営業日:12/17(水),19(金),20(土), 24(水),26(金),27(土)
ご注意: 前日までに必ずご予約ください。
キャンセルやご人数の変更も前日までにお願いいたします。ライブ・チャージはHPでご確認ください。
info@jazzclub-overseas.com TEL 06-6262-3940

第25回トリビュート・コンサートにありがとうございました。

1115mcP1080693.JPG 11/15(土)、第25回となるトミー・フラナガン追悼コンサート(Tribute to Tommy Flanagan)を無事開催することが出来ました。

25thflowers.jpg 生前のトミー・フラナガンとOverSeasで親交を重ねた長年の常連様から、フラナガンの音楽は初めてという若者まで沢山OverSeasに集まって、寺井尚之(p)、宮本在浩(b)、菅一平(ds)によるThe Mainstemの演奏でフラナガンの演目を一緒に楽しみました。

 常連様達が旧交を温めるのを眺めるのも楽しいし、トリビュートめがけてはるばる来てくださるお客様にご挨拶するのも、このコンサートならではの楽しみです。いつも多忙な中時間を繰り合わせて駆けつけてくださってありがとうございます。激励メッセージや色々お供えも!

演奏後も嬉しい感想のメール一杯、本当にありがとうございます。まだ全部にお返事できていないこと、どうぞお許し下さい。

1115P1080689.JPG寺井尚之The Mainstemは、今回もすごい熱演を聴かせてくれました。

 寺井は45日間毎日6時間練習したせいで、また歯が取れちゃった!と威張っているけど、全ては師匠への愛のため、何より自分が練習大好きなんだから当然。それより私はザイコウ、イッペイのリズムチームが、親子ほど年の違うピアニストを全身全霊で盛り立てる演奏ぶりに感動しました。

 そしてもうひとつ、寺井を盛り立てたのがピアノの鳴り!トリビュートのピアノの鳴りは調律師の川端さんが怖がるほど非現実的な美しい音色で、OverSeasの容れ物と一緒に鳴る感じがライブならではの快感です。ご参加くださった皆さんの体も一緒に共鳴していたのかもしれません。

 この夜聴いた曲目は、サド・ジョーンズの名作やビリー・ホリディゆかりの愛の曲、そしておなじみエリントニアなどなど、どれもこれも、私にとってはフラナガンの思い出が一杯で、胸が一杯になりました。このところ、色んな御縁があって、デトロイト以外のジャズシーンのリサーチをする機会を頂いたのですが、勉強していくうちに、サド・ジョーンズとフラナガンが切磋琢磨した《ブルーバード・イン》というジャズ・クラブは、黒人のトップ・ミュージシャンが、黒人居住区にある演奏場所で、地元の黒人のお客様の前で、最高に洗練されたブラックミュージックを聴かせていた。それは本当に稀有なことで、全米を探しまわっても本当に特別な場所だったということを改めて感じました。

 応援してくださる皆様への感謝の気持ちを込めて、今回の曲説をHPに書いたところです。ご興味があれば覗いてみてください。トリビュートで演る曲は数十曲に限られているのですが、回を重ねるたびに新しい発見があるのは、きっとトミー・フラナガンのお導きなのかも知れません。 http://jazzclub-overseas.com/tribute_tommy_flanagan/tunes2014nov.html

 ダイアナ・フラナガンもお越しくださった皆様に心より感謝しますとのことです。

  次回は来年3月、フラナガンの誕生月に再びトリビュート・コンサートを開催します。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

tommy1984.jpg

アキラ・タナ Live at OverSeas!

fourplayP1080647.jpg

左から:David Flores(ds), Zaiko Miyamoto(b),Akira Tana(ds),Hisayuki Terai (p)

 この夏、日系米人オールスター・バンド”音の輪”を率い、東日本大震災被災地の応援ツアーを敢行、各地で感動の渦を巻き起こした巨匠ドラマー、アキラ・タナさん、そのときに「ぜひ今度はOverSeasで寺井尚之(p)と一緒に!」というお願いが叶い、10月27日(月)、寺井と宮本在浩(b)とのトリオでライブが実現!素晴らしいゲストの参加、素晴らしいお客様達のおかげで、忘れられない思い出になりました!
忙しい週明けにも関わらず、コンサートに駆けつけてくださった皆様に感謝あるのみ!

 寺井との共演、 「どんな曲を演ったの?」「どんなライブだった?」と興味を持ってメッセージを下さった皆様もありがとうございます。次回はぜひOverSeasに!

=演奏プログラム=

tommy_flanagan_detroit_free_press.JPG

 <1st>
1. Beats Up (Tommy Flanagan)
2. Out of the Past (Benny Golson)
3. Mean What You Say ( Thad Jones )
4. Pannonica (Thelonious Monk )
5. Our Delight ( Tadd Dameron )

j.j.johnson.jpg

 <2nd>
1. Almost Like Being in Love (Frederick Loewe )
2. Smooth as the Wind  ( Tadd Dameron )
3. Elora ( J.J.Johnson )
4. Lament  ( J.J.Johnson )
5. Commutation  ( J.J.Johnson )

jimmy_heath_master.jpg

 <3rd>
1. Bouncing with Bud ( Bud Powell )
2. With Malice Towards None ( Tom McIntosh )
3. For Minors Only ( Jimmy Heath )
4. Ellington’s Strayhorn  ( Jimmy Heath )
5. A Sassy Samba   ( Jimmy Heath )
(with Special Guest: drummer David Flores )

 Encore 

 どんぐりころころ (Dongri- Bebop)

 

   アキラさんは、ジャズの歴史的巨匠が魅了された「超一流」日系ミュージシャンのパイオニア的存在。名門ニュー・イングランド音楽大学在籍中すでに、レナード・バーンスタインからにソニー・スティットまで、あらゆる分野の音楽家との共演歴がありました。ジミー・ヒースやJ.J.ジョンソン、アート・ファーマーといった巨匠達が、こぞって彼をレギュラーに迎え入れた。そして、彼に音楽的、人間的に大きな信頼を寄せたことが、後進の日本人に大きな門戸を開く結果になりました。
 一方、旧友アキラさんとの共演を待ち望む寺井尚之(p)、久々の顔合わせだからといって、スタンダード曲で安全策を取るつもりは全くなし。お互いの持ち味を爆発させてOverSeasでしか聴けないプレイにしたる!と虎視眈々。寺井流「三本の矢」のプログラムを練っていました。結果は世界レベルの巨匠ドラマーのプレイ、それに心意気の良さが最高に堪能できるセッションに。

happinessP1080642.jpg

 会場にはドラマー達もたくさん来ていて、この夜は、店内に5つのスネア・ドラムが鎮座。丁度休暇で京都旅行を楽しむ友人のドラマー、デヴィッド・フローレス夫妻がアキラさんに同行し、やっぱりスネア持参!皆がアキラさんに自分のドラムを叩いて欲しいんですよね。結局、スネアはフローレスさん持参の「Brooks」のものを、その他のセットは菅一平さんの所蔵品で演奏することになりました。メキシコ系アメリカ人のフローレスさんは小柄でボクサーみたいに精悍な人、西海岸ベイエリアを拠点に、ランディ・ブレッカーからドナ・サマー・・・、ジャズ、ソウル、R&B、ヒップ・ホップとあらゆる分野で活躍中です。サウンドチェックは、テーマとエンディングの打ち合わせで、僅か10分。この辺りが超一流!

hisayuki_terai_akira_tana_P1080623.JPG
<やめられないとまらない♪>

 1セット目は寺井ならではのトミー・フラナガン愛奏曲集で、アキラさんにとって初めての曲も!オープニングは超速の”Beats UP”、ドラムはにこやかに悠然とスイング、お客様達が気持ちよさそうにカウントを取っていますが、どうやら一番気持ち良かったのはピアノの寺井尚之で、最初3コーラスと予定していたのに、アキラさんのドラムが余りにもスイングして、気持ちよくなってアドリブがどうにも止められない!結局倍の6コーラス弾いてしまったそうです。
 フラナガンの演目は、どれも仕掛けが沢山あるのですが、アキラさんは瞬時に合わせます。仕掛けをクリアするのがとても楽しそう!どんな凄技も笑顔でやってのけます。トリオのボリューム・バランスも最高、グルーヴもダイナミクスが三位一体!寺井が入れるちょっとしたフレーズにすぐ反応してピッタリ合わせるののは、音楽をよく知っていて、引き出しが多くて、全体の構成を読み取る力がすごいからですね!

<歌うドラムス>

 2セット目は、’90年代にはアキラさんがレギュラーを務めたトロンボーンの神様、J.J.ジョンソンのオリジナル中心。緻密で蟻の這い出る隙もないJ.J.のバンドの決め事は、アキラさんの頭にちゃんとメモリーされていた。ご存知のように、フラナガンは’50年代にJ.J.のバンド在籍しています。2-1はフラナガン時代からの演目で、寺井が同時代に他の曲で使われたセカンドリフを入れると、アキラさんはすぐさま答えます。ツーカーだ!その瞬間、寺井に満面の笑み、客席からは「ほうっ」っと歓声!やっぱりフラナガン通ですね!そして宮本在浩(b)さんのフィル・インが決まると今度はアキラさんがワ~オ!寺井尚之の軽妙なMCと共に、音楽の楽しさが増していきます。

 2-2″Smooth As the Wind”では、ベース・ソロでザイコウさんが”Gone with the Wind”を引用すると、ドラム・ソロからザイコウさんと同じメロディーが聞こえてきて、客席はさらに笑顔と歓声!美バップっていいな。
 一方、奥の席でフローレスさんが立ち上がって真剣にトリオの動きを凝視。皆のリズムの捉え方を観察しているみたい。これは何か起こりそうな雰囲気です。

 休憩中は、CDにサインしてもらおうとお客様が大行列。アキラさんと知り合った頃、彼は英語しか話さなかったけれど、それから勉強して今はバイリンガル、親切で温かい彼の人柄に皆が魅了されていくのがわかりました。

 <ゲスト登場~どんぐりビバップ>

David_AkiraP1080638.JPG

 3セット目は、アキラさんがブレイクするきっかけになったザ・ヒース・ブラザーズのリーダー、ジミー・ヒースの作品を中心に。ジミーさんはこのコンサートの2日前が88才の誕生日で、お祝いの気持ちもありました。 

sassyP1080640.JPG 3-3でのトリオの疾走感が素晴らしく、今も心に響いています。ラスト・ナンバーは、ジミーがサラ・ヴォーンに捧げたA Sassy Samba! アキラさんが参加したヒース・ブラザーズの名盤、『Live at the Public Theater』(’80)のオープニング・ナンバーです。アルバムでは、名優、テッド・ロスのごきげんなMCで導かれるこの曲、初めて聴いた時は、「世の中に、こんなかっこいい音楽あったんだ!」と度肝を抜かれました。アキラさんのコールでバンドスタンドに登場したデヴィッド・フローレスさん、2人で一台のドラム・セットをシェアするといいます。サッシー・サンバのヒップなテーマから、クライマクスはアキラ+デヴィッド・チームによるリズムの饗宴!立ち上がって歓声を上げるお客様たち!ジミー・ヒースの誕生祝いは2人のドラマーがおいしいところをごっそりと持って行きました。

 鳴り止まない歓声にアキラさんがご挨拶してからアンコールに!

 この夏、「音の輪」ツアーでは、日本のポップスや童謡をジャズっぽくアレンジした演目が東北で大好評でした。ツアー後OverSeasに立ち寄った彼が「ヒサユキさん、『どんぐりころころ』をリズムチェンジで演るとカッコイイよ~!」って何気なく言ったんだそうです。それを覚えていた寺井が打ち合わせなしにルバートで弾き始めた「どんぐりコロコロ」にアキラさんはにんまり!テーマが終わると”Rhythm Change!“と掛け声をかけアドリブに入ろうとしますが、その瞬間、寺井がポーカーフェイスでおもむろにストップ、再びマイクを握りました。
「どんぐりころころ、このメロディーは標準語ですわ。大阪人はこんなイントネーションで言いません。僕は大阪人やからこう歌います。“どんぐりころころどんぶりこ、お池にはまってエラいこっちゃ!…ぼん、一緒に遊びまひょ♪” 」って詠唱、そのまま、ピアノで大阪編「どんぐりコロコロ」を弾き始めたから、もう大笑い!テーマが終わるや否や、そのままビバップのリズム・チェンジに変身して強烈にスイング!みんな大喜び!沢山の「楽しい気持ち」が一つになりました。

 アキラ・タナ@OverSeas、「音楽は皆を幸せにする!」という一番大切なことを、身を持って教えてもらいました!

 アキラさん、デヴィッドさん、素晴らしい音楽をありがとうございました。また会える日を楽しみにしています。OverSeas

寺井門下、きんちゃんのベニー・ゴルソン・ライブ・レポート

00_RQT_0251.JPG 関学ジャズ研の伝説的学生ピアニストで寺井門下、サー・ローランド・ハナの演目を大学時代ガンガン弾いていた金ちゃんは、OverSeas長年のお客様ならどなたもご存知の好青年!現在は東京で敏腕営業マンですが、当ブログの「軍師ゴルソン」に興味を覚え、先日東京ブルーノートに出演したTHE QUARTET LEGEND featuring KENNY BARRON, RON CARTER, BENNY GOLSON & LENNY WHITEに行ったよ!とライブ・レポートを送ってきてくれました。

 さすがは寺井門下生、なかなか面白いレポートで私も一緒に聴きに行きたかった!

ということで、本人の許しを得てここに転記させていただきます。

kin-chan.JPG<きんちゃんのライブ・レポート>

・・・先日のInterludeで軍師ゴルソンの功績を紹介されてましたが、
とてもタイムリーでこれは行かねばということで1st&2ndセット通しで楽しんできました。

1. Stablemates
2. Sonia Braga (featuring K.B.)
3. Someday, My prince Will Come (piano trio)
4. L’s bop (featuring Lenny White)
5. You’re My Sunshine (featuring Ron Carter)
6. Cut and Paste (R.Carter作のrhythm change)
7. Whisper Not
Encore. Blues March

 これが1stの演目でしたが、2ndはまさかの1stと全く同じ!!というオチ(笑)
さすがに2ndのアンコールでI’ll Remember Cliffordが出てくるかと期待しましたが、そんな期待をよそに、Blues marchで大団円を迎えたのでした。
 でも、考えてみれば一晩に作曲者本人による1管でのBlues marchを2回も聞けることなんて有り難いなぁとの思いも湧いてきて、85歳を迎えてもゴキゲンに吹きまくるゴルソンの姿を見れて楽しかったです。

 1st&2nd共にほぼ満席で、客層も30代-70代の男女が幅広く駆けつけて大盛り上がりでした。
 (ゴルソンによる次曲のコールで湧き起こる拍手や、各プレーヤーのソロ後にすぐに起こる拍手は、オーバーシーズに匹敵していたと思います!!)

  そして何より、ゴルソンのステージでの立ち居振る舞いが見れたのはとても勉強になりました。
MCのうまさ、ソロ後のバンドメンバーを労う姿には、名バンマス、名マネージャーとしての風格が滲み出ていて、人望の厚さを如実にうかがえました。

 ゴルソンが完全に休んだのは、3と5。2はK.B.をイントロでフィーチャーしといてテーマから加わってました。

 3を始める前のMCでは、「客席のみんなには、マイルスや&コルトレーンの演奏が印象的だろうけども、
このステージにいるメンバーも負けちゃいないよ。聞かせてあげよう! でもワシ抜きのピアノトリオでね。」と言って笑わせてました。

それと、ブルースマーチのイントロではドラムのフィルに合わせて、客席に敬礼をして茶目っ気たっぷりでした。

 あの元気な姿を見てると来年も来日してくれないかなと期待しております。

ところで、オーバーシーズでは田井中さんを迎えられてのライブが凄かったようですね。ブログを読んだだけで、シビれました。無理やり大阪に仕事を作って見に行こうと試みたのですが叶いませんでした(泣)
目下、今度の西の横綱 アキラ・タナさんを迎えられてのライブに行けないか画策中です。

それと、銀太も元気な姿を見せたんですね。(銀太は在NYのベーシスト、田中裕太君、きんちゃんの後輩で、きんちゃん、ぎんちゃんコンビでした。)もう随分彼のプレーを聞いてないので、今どれだけ化けてるのかとても興味深いです。

 長くなりましたが、今年はまだ一度もそちらに顔を出せてないので、年末までになんとか伺いたいです。
季節の変わり目でも何があってもバッパーは体を壊さないでしょうから心配はしておりませんが、お体ご自愛ください。

14.jpgきんちゃん、名レポートどうもありがとう!ご家族と一緒にまた遊びに来てね!寺井尚之ライブのレポートも今度来た時は頼みます!何よりも金ちゃんのプレイがまた聴きたいです。

バップ・ドラマー田井中福司 礼賛 :Live at OverSeas

fukushi_tainaka_solo.JPG 海外のジャズ・シーンでは”Fuku”というニックネームで知られる田井中福司さん、NYを本拠に”The Master!” “Amazing!” “Brilliant!” と最大級の賛辞で形容されるバップ・ドラムの巨匠です。バップ語法を自由自在に操る強烈なドラム・ソロにはフィリー・ジョー・ジョーンズから受け継いだヒップで危険な魅力が一杯!ライブで感動した人たちの口コミでファンがネズミ算のように増え、お里帰りには日本全国各地のジャズ・クラブから引っ張りだこ、そんな超過密スケジュールの合間を縫って、OverSeasで寺井尚之(p)とのピアノ・トリオが実現しました。ベテラン2人の間に入るベーシストはお馴染み宮本在浩、今回のライブをお膳立てしてくれたのは、田井中さんのプレイと人柄に心酔するザイコウさんでした。

 ジャズ界の人間国宝、ルー・ドナルドソン(as)のレギュラーを努めてほぼ30年、NYの第一線で34年といいますから、もう完璧なNew Yorker!とはいえ、久々にお目にかかった田井中さんは、熱い湯の風呂から上がったばかりの粋な江戸っ子みたいな颯爽とした出で立ち、折り目正しくて、調子よく喋らない。黙っていても発散されるプロ中のプロのオーラに身が引き締まります。

 寺井尚之は田井中さんより2才上、今日の共演をとても楽しみにしていました。あっという間にドラムをセッティングして、簡単な打ち合わせの後、じゃあちょっとだけサウンドチェック、ということでOverSeasではおなじみの、”Mean What You Say”を。日頃からドラムのフィル・インをフィーアチュアするサド・ジョーンズのナンバーで、田井中さんがこの曲を演るのは初めてだったそうですが、そのブラシの切れとコントロールの良さ、フィル・インの華やかさ、集中力の凄さに鳥肌がたちました。 

 平日にも関わらず、客席はミュージシャン、常連様、田井中ファンで満員、「田井中さんと演ると、いつもと違う寺井さんが聴けるのかな?」「ガチで演ったらどないなるんやろ?」色々な声が聞こえてきます。数日前に熊本で共演した古荘昇龍(b)さんや、NYで薫陶を受けるベーシスト、田中裕太君の姿も!

 キレのある田井中さんのドラムスの音量は、想像していたよりずっと小さく、しかも超明瞭、ドラムと同じようにソフトタッチを身上とする寺井尚之のピアノの美しさを際立たせてくれます。故にダイナミクスが大きくて、クライマックスは夏の夜空の大輪の花火が上がったように華やかで、聴く者を酔わせます。ベースソロでは、田井中さんの掛け声が絶妙に入り、宮本在浩のプレイが冴え渡りました。ザイコウがあんなに陶然とした表情をしたことあったかしら?

tainaka_sanP1080254.JPG 店の奥では、ギターの末宗俊郎さんが冷蔵庫の前で、喜んで踊りっぱなしです。おしぼりの小さなかごを両手で握りしめて必死で聴いてるお客さまもいましたよ。伝説のドラムソロが聴ける”Cherokee”では、冒頭のインディアンの雄叫びが客席に飛び火して場内騒然!

 お客様の熱気と対照的に、丁々発止のベテラン2人は音楽でジョークを飛ばし合いながら、汗ひとつかかず涼しい顔。これが田井中福司、寺井尚之という2人のバッパーの似ているところです。

 田井中福司さんのドラミングはOne and Onlyの田井中さんならではのアート!真正バップの磨きぬかれた技量は勿論ですが、その技量の見せ方は、”Cool”と英語で言うよりも、「美」「技」「心」が一皿に盛られた一流割烹の和食のような清々しさを感じました。本場NYで長年愛されている秘訣は、案外、ドラミングの中に光る「日本の美」にあるのかも知れません。

 田井中さんは8月24日まで日本全国で演奏予定です。まだ聴いたことのない人は、ぜひ足をお運んでみてくださいね。

田井中福司2014夏季日本ツアー予定表はこちら

 tainakaP1080274.jpg

=セットリスト=

<1>
1. Crazy Rhythm
2. Out of the Past
3. Mean What You Say 
4. If You Could See Me Now
5. Scrapple from the Apple

<2>
1. What is This Thing Called Love?
2. All the Things You Are
3. Lament
4. Just One of Those Things

<3>
1. Lady bird
2. It Don’t Mean a Thing
3. In a Sentimental Mood
4. Cherokee 

Encore: A Night in Tunisia 
      Dry Soul

 

GW35周年記念LIVEレポート

35th_overseas_jazzclub_osaka.JPG

 may_3_overseas_jazzclub_osaka.JPG

 ゴールデン・ウィークはリラックス?静養?それともお仕事?皆様、いかがお過ごしでしたか?
 Jazz Club OverSeasは創立35周年を記念し、色々な趣向でライブ3連投、オフィス街の路地裏に、全国から新旧のお客様が演奏を聴きに来てくださいました。

 第一夜は、寺井尚之(p)メインステム・トリオ(宮本在浩 bass, 菅一平 drums)のスタンダード集!
 ”二人でお茶を“や”スターダスト“、寺井が超ブラックに魅せる圧巻”モーニン”など、通常のデトロイト・ハードバップとはガラリと違うスタンダード・オンリーのプログラム!美しいピアノ・タッチと、ザイコウ&イッペイ阿吽の呼吸のトリオ・プレイで、ひと味も二味も違ったスタンダードの夕べになりました。

 
 アンコールは当ブログで予告していたように、“As Time Goes By”に乗せて、ナット・キング・コールに始まり、ビリー・エクスタイン、若きビリー・ホリディ、晩年のホリディ、微妙なフレージングのアニタ・オディ、朗々たるトニー・ベネット、トミー・フラナガンとコラボしたエラ・フィッツジェラルドまで、ピアノで聴かせる声帯模写に、会場大爆笑!
 
 余りにウケたので、「ベースは宮本在浩、ドラムは菅一平、そしてピアノは桜井長一郎でした。」なんて自己紹介して超ゴキゲンでした。あれっ?桜井長一郎って知らない?若い皆さんは無理ないですよね。昭和の偉大なモノマネ芸人で、長谷川一夫や美空ひばりさんのモノマネを得意としていたレジェンドです。

 第二夜は、浪速のケニー・バレルという異名を持つバップ・ギタリスト、末宗俊郎とメインステムが繰り広げる最高にブルージーなジャズの世界。
ギタリストのお客様が沢山詰めかけて、末宗俊郎さんの持ち味であるスイング感のブルース・フィーリングが全開!
 ホスト役のメインステムと、寺井尚之の爆笑MCで、超絶技巧のギター・プレイが一層冴えました。

 セカンド・セットは”Four on Six” ”Road Song” ”Unit Seven”と、ウェス・モンゴメリーの名演目がズラリ!OverSeasは歓声に溢れました。ウェスの曲は下手に演ると目も当てられないほどダサいのですが、この夜のプレイの輝きは天からジャズの神様が微笑んでくれたみたい!

 あんまり楽しかったので、今も鼻歌でロード・ソングを歌いながら台所に立ってます。

 アンコールは、サド・ジョーンズの”Like Old Times”、学生時代から気心知れた寺井と末宗俊郎!やっぱデトロイト・ハードバップすきやねん!とばかりの名演になりました。(末宗俊郎さんと宮本在浩さんの演奏写真は、お客様のカツミ・イワタ氏撮影)

 第三夜は、本格派ビバップ・アルト奏者として寺井尚之が惚れこむ岩田江の出番。”Parker’s Mood”や”Begin the Biguine”といったバードゆかりの名曲が一杯!艷やかな岩田さんの音色で翼を得た感じ!関東から来てくれた若いミュージシャン達も真剣に耳を傾けてくれました。

 35周年のライブでは、懐かしい方々と思いがけない再会も多かった!旧店舗のおとなりにあった牛乳屋さんで家庭教師をしていた学生さんが、なんと30年ぶりに、ご家族で来てくださった!また以前は学割でよく聴きに来てくれた学生君たちが、立派な紳士になった今もジャズを愛し、お互い名刺交換していたり・・・

 長年経ってもジャズを楽しんでくださる姿を見ていると、オバンになるって、そんなに悪いことじゃないな・・・という気持ちになりました。
 
 お祝いのお花を下さったNさんご夫妻、3日通しの常連様、大学時代(!)のクラスメート、GWライブに来てくださった全ての皆様のおかげで沢山元気をいただくことができました!
 
 これからも、OverSeasが続けられますように、どうぞ応援宜しくお願い申し上げます。

 ありがとうございました!

 

 35th_terai03.JPG

sakurai968da32e.jpg

 may_5_overseas_jazzclub_osaka_toshiro_suemune.JPG
 35th_overseas_osaka_suemune.JPG
 35th_iwataP1080003.JPG
 may_5_overseas_jazzclub_osaka_iwata_kou.JPG

再掲:楽器演奏と歌詞の関係:Jimmy Heath

  米国議会図書館の音楽部門で上級図書館員としてジャズ史の資料保存に貢献し、ジャズ評論家として、ブロガーとして情報発信するLarry Appelbaumさん、先日ひょんなことからFBを通じて、有益な情報を色々教えていただきました。

 そのきっかけになったのがアッペルバウムさんのジミー・ヒース・インタビュー on Youtube、面白かったので再掲します。

 ジミーのトークは、いつでもこんな感じでスイングしてます。ラッパーよりもクールだし、話し方がビバップ・フレーズでしょ!

  冒頭、巨匠ベン・ウェブスターの「歌詞を知らないラブソングは演らない」主義はきわめて有名な話、デクスター・ゴードン主演のジャズ映画『ラウンド・ミッドナイト』でも、このエピソードが巧みに使われていた・・・

 たいへん判りやすい英語ですが、念のため和訳を作りました。ジミーの話し言葉みたいにヒップじゃないけどゴメンネ。


  

<Jimmy Heath: Why Ben Webster Learned the Lyrics>
(ジミー・ヒース:ベン・ウェブスターが歌詞を覚えた理由。)
2011年2月  Mid-Atlantic Jazz Festival(メリーランド州)にて。
司会:ラリー・アッペルバウム

「訳」ben_webster.jpg

 ベン・ウェブスターはテナーサックス史上、最高のバラード・プレイヤーだ!ほら今流れているプレイを聴いてくれ。Crying! 泣けるぜ!

  じゃあベン・ウェブスターの話をしよう。昔、ベンが住んでいた街、コペンハーゲンに行ったときのことだ。ベンは僕が歌詞を知ってると見込んで、「”For Heaven’s Sake”を演奏したいから教えてくれ」と言った。ビリー・ホリディで有名なあの歌だ。「ラブ・ソングは、かならず歌詞を覚えてから演る。」と彼は言った。つまりサックスで歌詞を歌うというわけだ。判るかい?

 だが僕の友達のジョニー・グリフィンは全く違う意見だ。「歌詞は要らない。俺はサックス奏者、サックスは歌詞でなく音符を吹くんだからな!」まあ、人それぞれだ。

Billie+Holiday.jpgのサムネール画像

  私の場合はどうするか?ビリー・ホリディの「Lover Man」というバラードで説明してみよう。(歌詞がなく)音符だけなら、こんな風に吹くだろう。(スキャットしてみせる)OK?

 じゃあ次は、歌詞をつけて歌ってみるよ♪ “I don’t know why but I’m feelin’ SO sad…(なぜだかとっても寂しい)・・・「ソー・サッド」じゃなく自然に「ソ~~・サア~ッド」となるじゃないか。大違いだろう!(次の節)“I long to try something I NE~EVER had. (決して知らなかったものに憧れる。)” 歌詞がつくと抑揚が出て、メロディに表情が生まれる!僕の求めるのはそこだよ!もともと楽器は「ヴォイス」を出すように作られている。どんな楽器も、人間の声の真似なんだ。

 ジョニー・ホッジス、ポール・ゴンザルベス、そしてベン・ウェブスター!彼らのバラードは格別で、聴く者の胸を打つ。だがサックスはこんなこともできる。(スキャット)ブラブラバリバリ○×△☆…こんなのはテクニックをひけらかしているだけなんだよ。見せびらかしから感動は生まれない。

Yusef+Lateef.jpg

マルチ・リード奏者、ユセフ・ラティーフ

 今日聴いたものとは少し毛色が違うけど、グローヴァー・ワシントンJrにも、ぐっとくる歌心があるよ。

 僕の親友、マルチ・リード奏者、ユセフ・ラティーフは、ソウルフルなブルースが得意だ。弟のTootie(ドラマー、アルバート・ヒース)から聞いたんだが、あるとき、彼がブルースを演奏すると、店のオーナーに苦情を言われたそうだ。

 「おいおい!そんな風にブルースを吹かないでくれ!お客が聴くことに専念して、ちっとも酒が進まねえじゃないか!売り上げが減るんだよ!」(爆笑)

 音楽は面白いね!時にはエクサイテンィグに演奏することもできる。どんな場合も、おおむね、心や頭から湧き出るものを演奏しているわけだ。

 僕は「Three Ears: 3つの耳」というシンフォニーを作曲した。音楽は耳で聴く、その耳はいろんな場所にあるという曲だ。心にも、ケツにも、脳にも耳があるんだ。だから音楽はこれほど好まれる。ごきげんなビートならどうだい?ビートは強力だ。身体が勝手に動く。(お尻を指差して)つまり身体で聴くわけさ。クラシック音楽なら?例えばこんな交響曲(スキャットする)いいねえ!心に響くねえ。沢山の音楽家が、こういうクラシック的なものをポップ・ソングに作り変えたんだ。

 それじゃ僕がずっと聴き続けるディジー・ガレスピーはどうか?例えば、『Woodyn’ You 』という曲、あのコード・チェンジ、メロディもまた格別だ。彼の音楽の何か特別なものが、僕の心を強く揺さぶるんだ!

billyx_sarah.JPG

サラ・ヴォーン&ビリー・エクスタイン

  歌手はどうだい?サラ・ヴォーン、いいなあ!僕は彼女に恋してる!いや、音楽的にということだが…。サラは僕の心を打つ。カーメン・マクレエ、いいなあ、ビリー・エクスタイン、いいなあ!僕はサックス奏者の代わりに歌手になりたかった!だけど、もしそうだったら、誰も僕が歌うのを聴いてなかったかも知れない・・・だって女の子達は大きくてハンサムな歌手が好きだから、背が高くてハンサムじゃないとなあ!(ジミーの身長は160センチ程度で、Little Giantと呼ばれている。)ビリー・エクスタインみたいにね!WOW!

 (あなたもジャイアントですよ!)(笑)

<了>


  アッペルバウムさんのジャズ・ブログ(英文)”Let’s Cool One : musings about music“はこちらに!