第33回トリビュート・コンサートの曲目

IMG_3281.JPG 去る11月17日に33回目となるトミー・フラナガンへの追悼コンサートを行いました。
生前のトミー・フラナガンの名演目をメドレーを含め20曲余り、寺井尚之(p)寺井尚之メインステム・トリオ(宮本在浩 bass 菅一平 drums)が演奏しました。

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 トミー・フラナガン・トリビュートは「フラナガンが築いた伝統を、習ったとおりにやる」コンサート、それは寺井尚之の生き方の表現なのかもしれません。

 フラナガンが亡くなって早17年、フラナガンを師匠と仰ぐ寺井尚之も66才になり、こんな風に挨拶していました。

teraiIMG_3025.JPG寺井尚之:「よう新聞で永代供養の広告を見ますけれども、あれは永久やのうて20年やそうです。トリビュート・コンサートは今回で17年目、そやから僕もあと3年はがんばろうと思てます。ありがとうございました。」

 今回も大勢お越しいただき感謝あるのみです!

 次回のトリビュートは2019年3月16日(土)、トミー・フラナガンの誕生日に予定しています。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
 以下は、トリビュートで演奏したフラナガンの名演目の説明です。写真は「トミー・フラナガンの足跡を辿る」でおなじみの後藤誠先生です。後藤先生ありがとうございました。
 

 

1.Bitty Ditty(Thad Jones) ビッティ・ディッティ 

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サド・ジョーンズ
(1923-1986)
 フラナガンが’50年代中盤のデトロイト時代から作曲者であるサド・ジョーンズと愛奏した作品。ヒップ・ホップの流行で、日本でもよく知られるようになった”エボニクス”(黒人英語)は、”Bad!”= “Good!”で逆説的になる。つまり”Bitty Ditty”(ちょっとした小唄)の本当の意味は「とても難しい曲」なのだ。
 「サドの作品は、よほど弾きこまないと、本来あるべきかたちにならない。」-トミー・フラナガン談

*サド・ジョーンズ関連ブログ

2. Out of the Past (Benny Golson) アウト・オブ・ザ・パスト nights_at_the_vv.jpg
 テナー奏者、ベニー・ゴルソンがハードボイルド映画のイメージで作曲したマイナー・ムードの作品。ゴルソンはアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズや、自己セクステットで録音、フラナガンはゴルソンの盟友、アート・ファーマー(tp)のリーダー作『Art』で、後にリーダー作『Nights at the Vanguard』などで録音し、’80年代に自己トリオで愛奏した。
 人気ジャズ・スタンダードが多いゴルソン作品の内では知名度は比較的低いものの、フラナガンがアレンジした左手のオブリガードが印象的で、OverSeasで大変人気がある曲。
3. Rachel’s Rondo  (Tommy Flanagan) レイチェルズ・ロンド

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 フラナガンが美貌で有名な長女レイチェルに捧げたオリジナル曲。明るい躍動感に溢れる曲想は美貌の長女に相応しい。トミー・フラナガンはレッド・ミッチェル(b)エルヴィン・ジョーンズ(ds)とのアルバム『Super Session』の録音が唯一遺されている。恐らく現在愛奏する者は寺井尚之だけかもしれない。
4.メドレー: Embraceable You(Ira& George Gershwin)
   ~Quasimodo(Charlie Parker)
 エンブレイサブル・ユー~カジモド

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 トミー・フラナガンを語る時、「メドレー」の素晴らしさははずせない。近年の調査から、「メドレー」は、戦後から’50年代前半のデトロイトで盛んに演奏された形態だったことが判る。
〈エンブレイサブル・ユー(抱きしめたくなる魅力的なあなた)〉というガーシュインのバラードの進行を基に作ったBeBop作品に、チャーリー・パーカーは、原曲とは真逆の醜い”ノートルダムのせむし男”の名前〈カシモド〉と名付けた。〈カシモド〉はいわれなき差別を受ける黒人のメタファーであったのかもしれない。だが、ヴィクトル・ユーゴーの原作では、カシモドは密かに愛する美貌のジプシーの踊り子と天国で結ばれることになるのだ。フラナガンは、この2曲を組み合わせたメドレーで、深く感動的な物語を語ったのだ。
 *関連ブログ
5. Good Morning Heartache (Irene Higginbotham) グッドモーニング・ハートエイク 4-07-a-billie-holiday.jpg
  フラナガンのアイドルであり、同時に音楽的に大きな影響をうけた不世出の歌手ビリー・ホリディのヒット曲(’46)。フラナガンは「ビリー・ホリディを聴け!」と寺井尚之の顔を見るたびに言った。それから数十年、寺井のプレイはビリー・ホリディを彷彿とさせる。
6. Minor Mishap (Tommy Flanagan) マイナー・ミスハップ

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 フラナガンがライブで最も愛奏したオリジナル曲のひとつで、曲の語意は、「ささやかなアクシデント」だ。その曲名の由来は、初収録した『Cats』(’57)での演奏の出来栄えに隠されたほろ苦い顛末にある。
7. Dalarna  (Tommy Flanagan) ダラーナ sea_changes_cover.jpg
 『Overseas』に収録された幻想的な作品で、厳しい転調をさりげなく用いることによって洗練された美を湛える初期の名品。フラナガンが心酔したビリー・ストレイホーンの影響が感じられる。ダラーナは『Overseas』が録音されたストックホルムから列車で3時間余り離れたスウエーデン屈指のリゾート地。
 『Overseas』に録音後、フラナガンは長年演奏することがなかった曲だが、寺井尚之のCD『ダラーナ』に触発されたフラナガンは、寺井のアレンジを用い『Sea Changes』(’96)に再録した。「ダラーナを録音したぞ!」とフラナガンが弾んだ声で電話をかけてきたのが寺井の大切な思い出だ。
 
8. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller Dizzy Gillespie) ティン・ティン・デオ

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ディジー・ガレスピー
(1917-1993)

 第一部のクロージングは、ディジー・ガレスピーが開拓したアフロ・キューバン・ジャズの代表曲。この曲のように、ビッグバンドの演目を、ピアノ・トリオでさらにダイナミックに表現するのがフラナガン流。
 現在はメインステム・トリオの十八番でもある。


<2部>

1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis) ザット・タイアード・ルーティーン・コールド・ラヴ

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マット・デニス
(1914-2002 )

 作曲者マット・デニスは、フランク・シナトラのヒット曲を数多く作曲、自らも弾き語りの名手として活躍した。JJジョンソンは、’55年、セレブ御用達のナイト・クラブ”チ・チ”でデニスと共演後、この曲を《First Place》に収録、ピアニストはフラナガンだった。自然に口づさめるメロディーだが転調が頻繁にある難曲で、そのあたりがバッパー好みだ。それから30年後、フラナガンは自己トリオで名盤《Jazz Poet》(’89)に収録。その際、「私以外にこの曲を演奏するプレイヤーはいない。」と語った。録音後もライブで愛奏を続け、数年後には録音ヴァージョンを凌ぐアレンジが完成させた。トリビュート・コンサートでは、寺井尚之が受け継ぐ完成形で演奏する。
2. Smooth As the Wind  (Tadd Dameron) スムーズ・アズ・ザ・ウィンド

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  一編の詩のような曲の展開、吹き去る風のようなエンディングまで、文字通りそよ風のように爽やかな名曲。
 ビバップの創始者の一人、タッド・ダメロン(ピアニスト、作編曲家)の耽美的な作品をフラナガンはこよなく愛した。〈スムーズ・アズ・ザ・ウィンド〉曲は、麻薬刑務所に服役中のダメロンがブルー・ミッチェル(tp)のアルバム「Smooth As the Wind」の為に書き下ろした作品で、アルバムにはフラナガンも参加している。
 
「ダメロンの作品には、オーケストラが内包されているから、弾きやすい。」-トミー・フラナガン

*タッド・ダメロン関連ブログ

 

3. When Lights Are Low (Benny Carter) ホエン・ライツ・アー・ロウ

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ベニー・カーター
(1907-2003)

 フラナガンが子供の頃に親しんだベニー・カーター(as.tp.comp.arr)のヒット作。フラナガンは ’80年代終りにカーネギー・ホールでカーターの特別コンサートに出演している。尊敬するカーターに選ばれたことを意気に感じたフラナガンは、この曲を盛んに演奏、今夜のように<ボタンとリボン>を引用して楽しさを盛り上げた。
4. Eclypso (Tommy Flanagan) エクリプソ eclypso.jpg
 フラナガンの代表曲、<エクリプソ>は”Eclipse”(日食や月食)と”Calypso”(カリプソ)を合わせた造語。ジャズメンは昔から言葉遊びが大好きだ。
 フラナガンは《Cats》、《Overseas》(’57)、《Eclypso》(’77)、《Aurex’82》、《Flanagan’s Shenanigans》(’93)《Sea Changes》(’96)と、多くのアルバムで録音を重ね、ライブでも愛奏した。
 寺井にはこの曲に特別な思い出がある。’88年にフラナガン夫妻の招きでNYを訪問した時、フラナガン・トリオ(ジョージ・ムラーツ.b、ケニー・ワシントン.ds)はヴィレッジ・ヴァンガードに出演中で、毎夜火の出るようなハードな演奏を繰り広げた。フラナガンは寺井を息子のようにもてなし、昼間は色んな場所に案内してくれて、あっという間に10日間が過ぎた。最後の夜の最終セットのアンコールで、フラナガンが寺井に捧げてくれたのがこの曲。
5. If You Could See Me Now (Tadd Dameron) イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ sarah_basie.jpg
 1946年、売り出し中の新人だったサラ・ヴォーンのためにタッド・ダメロンが書き下ろしたバラード。フラナガンは、ヴォーンのフレージングをセカンド・リフとしてピアノ・トリオ・ヴァージョンを作り上げた。しかし、寺井が師匠よりさきに『Flanagania』に収録してしまったために、フラナガン自身はレコーディングしなかった痛恨のナンバーだ。
6. Mean Streets (Tommy Flanagan) ミーン・ストリーツ

suga_IMG_3195.JPG菅一平(ds)

 『Overseas』(’57)では、”Verdandi”というタイトルで初演、その後、’80年代の終わりに、トリオに抜擢されたケニー・ワシントン(ds)のフィーチュア・ナンバーとして、彼のニックネーム “ミーン・ストリーツ”に改題された。トリビュート・コンサートでは菅一平(ds)のフィーチャー・ナンバー。
7. I’ll Keep Loving You (Bud Powell) アイル・キープ・ラヴィング・ユー Bud_Powell_Jazz_Original.jpg
 バド・パウエルの美学を象徴する、静謐な硬派のバラード。
トミー・フラナガンがパウエル作品を演奏すると、曲も持ち味を失うことなく、一層洗練された美しさが醸し出される。トリビュート・コンサートでは、寺井のフラナガンに対する想いが滲み出る。
6. Our Delight (Tadd Dameron) アワ・デライト tadd_dameron1.jpg
タッド・ダメロン
(1917-1965)

 タッド・ダメロンがビバップ全盛期’40年代半ばにディジー・ガレスピー楽団の為に書いた作品。
ビッグバンド仕様のダイナミズムを、ピアノ・トリオに取り入れるフラナガンの音楽スタイルがここでも顕著に表れる。
フラナガンがこの曲をMCで紹介する決まり文句は、「ビバップはビートルズ以前の音楽、そしてビートルズ以後も生き続ける音楽である!」だった。そで歓声が沸くと、プレイに一層気迫がこもった。

<アンコール>

With Malice Towards None (Tom McIntosh) ウィズ・マリス・トワード・ノン tommyflanagan-balladsblues(1).jpg
 ”ウィズ・マリス”はフラナガン流のスピリチュアルと言うべき名品。フラナガンージョージ・ムラーツ・デュオによる『バラッズ&ブルース』に収録されている。今は寺井尚之の十八番としても知られている。
 作曲はトロンボーン奏者、トム・マッキントッシュ(tb)、メロディーの基は、讃美歌「主イエス我を愛す」で、曲名はエイブラハム・リンカーンの名言の引用。
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  Chelsea Bridge (Billy Strayhorn) チェルシーの橋
whistler_old_butter.jpg   ”チェルシーの橋”はビリー・ストレイホーンの傑作、そしてフラナガンが『Overseas』(’57)、『Tokyo Ricital』(’75)と、繰り返し録音した名演目。フラナガンは晩年「ビリー・ストレイホーン集」の録音企画を進めていたが、実現を待たずに亡くなってしまったことが、残念だ。
 フラナガン同様、美術を愛したストレイホーンが印象派の画家、ホイッスラーの作品に霊感を得て作った曲と言われている。
  Passion Flower (Billy Strayhorn)パッション・フラワー  
   これもビリー・ストレイホーン作品で、花を愛したストレイホーン自身が最もよく演奏した曲。日本でトケイソウと呼ばれるパッション・フラワーは、欧米では磔刑のキリストに例えられる。
フラナガンの名パートナーだったジョージ・ムラーツの十八番としてよく知られている。今回は、宮本在浩の弓の妙技が特に好評だった。 
zaiko_passion.jpg宮本在浩(b)
  Black and Tan Fantasy (Duke Ellington)ブラック&タン・ファンタジー  
black-and-tan-29-photo-arthur-whetsel-fred-washington-duke-ellington-1.jpg   晩年のフラナガンは、BeBop以前の楽曲を精力的に開拓していた。ひょっとしたら、自分のブラック・ミュージックの道筋を逆に辿ってみようと思っていたのかもしれない。その意味で、禁酒法時代、エリントン楽団初期の代表曲「ブラック&タン・ファンタジー」は非常に重要なナンバーだ。
フラナガンがOverSeasを来訪したとき、寺井が「Black & Tan Fantasy」を演奏すると、フラナガンが珍しく絶賛してくれた思い出の曲でもある。
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ご無沙汰です!ブログ復活

39thlogo.jpg ご無沙汰しています。

 家業と家事と翻訳、3月のトミー・フラナガン・トリビュート…仕事の合間に、ちょっとゆっくりしていたら、あっという間に半年が経過していました。

休載している間も、既刊の記事にコメントいただき、本当にありがとうございました。

 体調と相談しながらぼちぼちとリスタートしていきますので、宜しくお願い申し上げます。

Jazz Club OverSeasも、今年で開店39周年、5月の連休5/2-5/5に記念ライヴを開催します。

初日は、巨匠ドラマー、アキラ・タナ、そして寺井尚之の爆笑スタンダード集、最終日は、OverSeasが誇る中井幸一クインテットによるJ.J.ジョンソン特集という、超おすすめの3日間です。

 旅行で大阪に立ち寄られる皆様、旅行に行かない大阪の皆様、ぜひこの機会にご来店宜しくお願い申し上げます。

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 詳細はhttp://jazzclub-overseas.com/GW_jazz__events_2018.html

トリビュート・コンサートの前に:「トミー・フラナガン語録」

 土曜日はTribute to Tommy Flanagan=トミー・フラナガン追悼コンサート開催!

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 2001年11月16日にトミー・フラナガンが亡くなって以来、誕生月3月と逝去月11月に行なってきたトリビュート・コンサート、早いもので31回目となりました!

 トミー・フラナガンを一途に敬愛する寺井尚之(p)と宮本在浩(b)、菅一平(ds)のメインステム・トリオが精魂込めて演奏する名演目の数々。

 トミー・フラナガンがお好きな皆様も、まだ聴いたことのない皆様も、ぜひ一度トリビュート・コンサートに来てみてくださいね。

  OverSeasでは、毎月第二土曜に、トミー・フラナガンのディスコグラフィーを年代順に解説する講座「新トミー・フラナガンの足跡を辿る」を続けています。  今回は、講座の下調べに使った様々な書物から、トミー・フラナガンの名言をピックアップ。数々の名盤に参加し、名伴奏者の誉れ高いトミー・フラナガン。歴史的レコーディングの一翼を担ったフラナガンの深い言葉の数々、トリビュート・コンサートのウエルカム・ドリンク代わりにどうぞ!

「サイドマン稼業:’50sを回想して」

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 「サイドマンのほうがずっと気楽に録音の仕事が出来る。…だが’50年代にやった多くのレコーディングはそれ程簡単ではなかったがね、何故なら頭の中で全部アレンジしなければならない。イントロもエンディングも考えて、自分のソロの心配までしなくちゃならない。だが演奏に没頭できて、自分にとっては良い時代だった。トップミュージシャン達の共演が目白押しで、凄い量の演奏をこなした。それで毛がごっそり抜けちゃったんだよ。(笑い)

   リハーサルなんて殆どないさ。録音の場で全てが行われ、大抵が1セッションだった。今と大違いだ。ミュージシャンのアドリブ重視のポリシー(フラナガンがSロリンズの『サクソフォン・コロッサス始め多くの歴史的名盤に参加したレーベル、Prestigeの謳い文句)なんて関係ない!予算の問題だ。潤沢な予算のある録音の見込みなどないとわかっていたしね。(笑)

  製作側も、完璧なサウンドを要求することは、あまりなかったんだ。例えば、「どこまで完璧にソロを録音するか」といった目標はなかった。今じゃ気にいらないところは編集でカットできるが、その頃の録音は、ミスも何もかも全部聞こえてしまう。だが当時はその方が好きだった。

=若いときから頑固者=
Collector’s Items / Miles Davis (Prestige ’56)

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  『コレクター・アイテムズ』は、マイルス・デイビスとの共演だ。<ノー・ライン>と<ヴィアード・ ブルース>というブルースを2曲と、デイブ・ブルーベックのバラード<イン・ユア・オウン・スウィート・ウエイ>を録音した

 トミー・フラナガン:「録音は私の誕生日だった。26才の誕生日、3月16日だ。マイルスはコルトレーンやフィリー・ジョー・ジョーンズとクインテットを結成する以前、デトロイトに数年間住んでいたんだ。(麻薬中毒治療のため)

  その時期、デトロイトにあるクラブ《ブルーバード・イン》で彼と共演していた。私は、ビリー・ミッチェル(ts)がリーダーのハウス・バンドの一員で、マイルスは、そこにゲストとしてで数ケ月入っていた。

  それは、マイルスは自分を立て直そうとしていた時期で、当時はチャーリー・パーカーの共演者として有名だった。… 

  そういうことがあって、私にお呼びがかかったんだ。録音セッションでは、終始いい感じで演奏した。ブルーベックの1曲(In Your Own Sweet Way)以外はね。その曲は変なきっかけで録音することになったんだ。マイルスの尻のポケットにその曲の簡単なコードのメモが入っていた。イントロのボイシングをマイルスが僕に指示したのを覚えているよ。彼は、自分が求めるものを常に正確に把握していたから、僕にこんな感じで囁いた。  (マイルスのしゃがれ声を真似て・・)「’ブロックコードを弾いてくれ。ミルト・バックナー風ではなくて、アーマッド・ジャマールみたいにな。」… でも、私はそういう弾き方が余り好きになれなかったんだ。一方、レッド・ガーランドがその奏法に飛びついた。アーマッドのプレイは大好きだけど、自分は彼のように弾きたいとは思わなかったんだ。」

=Saxophone Colossus / Sonny Rollins (Prestige ’56)=
ホーキンスの次に好きなサックス奏者

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 質問:歴史的名盤『サクソフォンコロッサス』でソニー・ロリンズと共演された時、スタジオ内にエクサイティングな雰囲気はありましたか?

 トミー・フラナガン:「演奏曲がエクサイティングだったかどうかは覚えていない。ただ、ソニー・ロリンズとレコーディングで共演することで私は興奮していた。コールマン・ホーキンスを別にすれば、ロリンズは私が当時最も好きなサックス奏者だったから。

質問:<ブルー・セブン>が絶賛を受け、その後のロリンズは一時引退しましたが、それについて、あなたは困惑されましたか?

 トミー・フラナガン:「全然!ソニーはほとんどシャイといっていい人間だったからね。だから音楽からも、バンドスタンドからも離れた。彼をインタビューに引っ張り出そうとしても凄く難しいと思うよ。彼はステージでも、イナイナイバーみたいに顔を隠して上がるくらいシャイな人だった。聴衆に余り近付きたがらなかった。

 まあ、あれほど素晴らしいミュージシャンなのだから、例え<ブルー・セブン>が絶賛されても、どうってことはないさ。(笑) 実際の彼はあの演奏よりもっとすごいのだから。

=The Incredible Jazz Guitar / Wes Montgomery (’60)=
西洋音楽の教義に縛られないミュージシャン

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  トミー・フラナガン:「ウエスの噂はよく聞いていた。レコーディングする前から伝説的存在だった。ピックを使わずに親指だけでプレイするギター弾きとして、噂は良く聞いていた。コーラス毎に次々とコードを付けをして、同じ事は二度と繰り返さないとね。このセッションでも、彼は正にその通りだった。それほどインクレディブルだったんだ。

  録音でのウエスは、噂に聞いていたことは全て実際にやってのけた。それにもかかわらず、ウエスは自分の腕前についてとてもシャイなところがあった。

 『Wow! 凄いや!もう一度聞いてみようよ!』『Wow! 本当に君が弾いてるのかい!信じられない!』…そんな風に誉められるのを嫌がった。自分の超絶技巧やプレイについて話をしたがらなかった。

   おかしな奴だった。「譜面が読めない」という理由だけで、自分を良いミュージシャンだと思っていなかった。読めないミュージシャンには良くあることなんだ。素晴らしいミュージシャンなのに、読めないからといって、自分を卑下してしまう。エロール・ガーナーもその一人だ。彼等は言わばその分野の第一人者なのに!だって殆どのミュージシャン達は西洋音楽を勉強し、理論に束縛される。アカデミックな教義に縛られていないというのは、素晴らしい事なのに。

=Giant Steps / John Coltrane (Atlantic ’60)=
ジャイアント・ステップスは録音用の曲だった。

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 トミー・フラナガン  「コルトレーンは、”自分の創ったシステムを用いてレコーディングし、成果を挙げたい。”と私に録音コンセプトを説明してくれた。その言葉どおり、彼は“ジャイアント・ステップス”と同種の進行を用い、何曲も録音した。だがその内の何曲かは収録すらされなかった。我々が全く出来なかったからだ。曲のテンポがどれもこれも速過ぎて、到底1セッションで様になるものではなかった。」

 「何故、レコード会社はたった1回のセッションでアルバム一枚全部作ってしまおうとするのかね?理解できないよ。あのようなハードな音楽を1日8時間もぶっ続けに演るのは、死ぬほど大変なんだ。それに自分のやっていることをきちんと把握していなければ命取りだ。勿論、トレーンはちゃんとわかっていたがね 。」

 「私はコルトレーンが“ジャイアント・ステップス”をライブで演ったのを聴いたことがない。“ジャイアント・ステップス”は録音のための曲だったのだ。彼はそのシステムを他の曲にも応用した。それは少し変則的なもので、おおむねマイナー7th~メジャー7th~メジャーとつながる。つまりメジャー~メジャー~メジャーという音楽をやろうとしたのだろう。

 「そういう音楽は演奏者の考え方を変えてくれる。考えを変えないと演奏できないからだ。もし自分に用意ができていなかったり、テンポが早すぎれば考えることすらできない。”ジャイアント・ステップス”とはそういう音楽なんだ。演奏者をエキサイトさせてくれる。そしてトレーンに“OK,おまえもなかなかやるな!“と言ってもらえれば、なおさらだ!」

 トミー・フラナガンは無口な人でしたが、時たま、外交辞令以上のドキっとするような発言が様々な文献に残っています。今回のエントリーは、”Jazz Spoken Here”(Wayne Enstice, Paul Rubin共著)と ”Jazz Lives”(Michel Ullman著)を参考にしました。どちらも、ジャズ講座準備の際、ジャズ評論家、後藤誠先生にお借りしたもの。後藤先生、ありがとうございます!

 ウエス・モンゴメリーを「アカデミックな教義に縛られない」アーティストという発言が出てきます。ヨーロッパ西洋音楽に対するフラナガンの複雑な思いは、トリビュートで聴くデューク・エリントン音楽や、トミー・フラナガンのブラック・ミュージックへの憧憬とリンクしていきます。

 では土曜日のトリビュート・コンサート、寺井尚之メインステムの演奏をお楽しみに!

CU

アキラ・タナ LiveReport=祝ジミー・ヒース90才!

noda_sara_hisauki_n.jpg  お久しぶりです!楽しみにしていたアキラ・タナ(ds)さんをお迎えしたコンサートを10月25日に開催しました。

ここ2年間、春と秋にサンフランシスコから来演していただくアキラさん、圧倒的なドラミングと温かい笑顔、その人柄に、すっかり魅了される仲間が増える一方。寺井尚之とのプログラムは、毎回アキラさんゆかりのジャズ・ジャイアンツへのオマージュが溢れていて、還暦を過ぎたベテラン達が青年時代から持つジャズへの愛情が少しも損なわれていないことが伝わってきます。ユーモアと先人への礼節が溢れるセッションは、そこ抜けに楽しくて、アキラさんの出演には、万難を排して集合してくれる仲間が増えて嬉しい限りです。

jimmyheath.jpg コンサートの10月25日は、ちょうどジミー・ヒース90才の誕生日!米国では、この前後に、NYとワシントンDCで盛大なバースデー・コンサートが開催されています。’70年代終盤、若きアキラさんは、ジミー・ヒースの”ヒース・ブラザーズ”に抜擢され、一躍注目を浴びました。寺井尚之にディジー・ガレスピー直伝のビバップ理論を懇切丁寧に教えてくれた恩師でもあります。二人は、ジミー・ヒースの作品を一杯演奏して、日本からのお祝いにしよう!と固く心に誓っていました。

 そのため、寺井尚之(p)は虎視眈々とプログラムを練りに練り、宮本在浩(b)とじっくり準備を整えていました。コンサートは、アキラさんが繰り出す自由自在のグルーヴで、寺井尚之の豊かな音色のバップの大技を一層スイングさせます。宮本在浩(b)は安定したボトムラインで、ベテラン二人の自由なプレイを支える見事なトリオのコンサートになりました。

 会場には、長年のジミー・ヒースやヒース愛好家も数多く、ジミーの曲がコールされると大拍手、アドリブにGingernread Boyが入ると歓声が!

 終演後は皆で記念写真を撮ってジミー・ヒースご本人に送付。大喜びしてもらいました。折しも来日中だった、巨匠フランク・ウエス(ts,as,fl)の未亡人、サラ・ツツミさん(一番上の写真で寺井尚之の左側の金髪のレディ)がコンサートに来てくださったのも光栄でした。アキラさんと知己のサラさん、この日の演奏を大変喜んで、ジミーさんに電話で報告されたそうです。お客様達もフランク・ウエスの奥さんに会えて大興奮!

=曲目=

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<1st>

1. Hi-Fly (Randy Weston)
2. Out of the Past (Benny Golson)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. Lament (J.J.Johnson)
5. Commutation (J.J.Johnson)

<2nd>

1. Bro Slim (Jimmy Heath)
2. New Picture (Jimmy Heath)
3. For Minors Only (Jimmy Heath)
4. The Voice of the Saxophone (Jimmy Heath)
5. Project ‘S’ (Jimmy Heath)

<3rd>

1. What Is This Thing Called Love (Cole Porter)
2. Quietude (Thad Jones)
3. It Don’t Mean a Thing (Duke Ellington)
4. Ellington’s Strayhorn (Jimmy Heath)
5. A Sassy Samba (Jimmy Heath)

Encore: どんぐりころころ

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 ジミー・ヒースの録音がある曲には、アルバムにリンクを貼っています。3rd セットのジミーの作品は二曲ともアキラさんがレコーディングに参加しています。ぜひ聴いてみて下さいね。

 アンコールの「どんぐりころころ(リズム・チェンジ)」は、東日本大震災復興支援のために、アキラさんが立ち上げた日本人+日系人バンド音の輪””のレパートリーです。こちらも収録CDがありますのでぜひ!

 

 =家族のドラマ=

akira cousins.JPG 左から:アキラ・タナ、田名尚文牧師、尚文さんのお嬢さん

 そして、客席にはもう一つのドラマがありました。Interludeの読者の皆さんはご存知のように、アキラさんの両親、田名大正師、ともゑさん夫妻は、米国に移民した日本人コミュニティのために、1930年代終盤に北海道から米国に渡り、現在も、たくさんのご親戚が日本に居られます。この日は、まだ会ったことのないアキラさんを訪ねて従兄にあたる方が、SNSではるばるOverSeasにご来店!その方は田名尚文(たな ひさふみ)さん、やはり札幌出身で、退職後、三重県にある日本キリスト教団鳥羽教会の牧師様として活動されています。アキラさんも風光明媚な海街からやって来た従兄に出会えて感無量!温かく穏やかな笑顔はDNAのなせる業なのか、談笑する田名ファミリーの姿に、私もまた感無量でした。 

 初対面のアキラさんの印象はどうだったのでしょう?終始にこやかにコンサートを楽しんでくださった尚文さんに伺いました。
 「地位も名声もあるのに飾らない。山田洋次監督の主人公「とらさん」のように、周りを包み込む温かさを感じました。
米国で育って居るのに日本で育った日本人以上に日本人らしさを感じます。脇役に徹していつも主役を支える役目に喜んで参加する。そんな『ほっこり』型のおじさんに見えました。
 演奏は凄いとしか言い様がありませんが、見ている人を楽しませる術をも自然に表現しているように感じました。」

 尚文さんの印象は、私たちのアキラさんへのイメージを端的に代弁するものですね!

 世界トップクラスの実力と、東北復興支援に努力を惜しまない優しさ、その活動を継続する力と、人間力、巨匠ドラマー、アキラ・タナ!来年4月に再び来日する予定、また一緒に楽しみましょうね!

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近況報告&中井幸一Plays『Dial J.J.5』のお知らせ

p-nakaikoichi-200.jpg 皆様お久しぶりです!いかがお過ごしですか?

 ここ最近、珍しいお客様や懐かしいお客様が相次いでOverSeasに来てくれました。一人はジョージ・ムラーツ兄さんの義弟、ラデックさん、チェコでヘアーメイク・アーティストとして一流ホテルにサロンを持ち、気が向くと格安航空券で世界を旅するボヘミアン。大阪でカプセルホテル(!)を楽しむついでに、ムラーツさんゆかりの当店を訪ねてくれました。もう一人は、遥か22年前、香港からの政府交換留学生として大阪大学で勉強していた頃、よくライブを聴きに来てくれた青年チャンさん、現在は、香港中文大学の副学部長になり、学会で来日した際、「寺井さんのピアノを聴かせたい!」と海外の仲間を大勢連れて、滞在先の京都から、メインステムのライブに来てくれました。皆、マナーが良くて、すごく熱心に聴き、生のジャズ・ピアノ・トリオを楽しんでくださった!長い間、ジャズクラブの片隅に居ると楽しいこともあるなあ・・・としみじみ思います。

 さて、どんなに世の中が変わっても、J.J.ジョンソンはトロンボーンの神様で、『Dial J.J.5』が永遠の名盤であることは変わらない。と、いうわけで新企画登場!7月2日にOverSeasでは、トロンボーン奏者であり、ジャズからポップスまで、アレンジャーとして定評のある中井幸一さん、そして岡山のテナー奏者、中務敦彦(なかつかさ あつひこ)さんをお迎えし、中井さん書き下ろしのスコアで、J.J.ジョンソンの名演目をお聴かせします。リズムセクションは、もちろん寺井尚之メインステム(宮本在浩 bass 菅一平 drums)、メインステムにとっては演り慣れたJ.J.の演目、そこに実力派フロント二管が入ると想像するだけでわくわくします。 

=予定演奏曲=
Barbados (Charlie Parker)
Our Love Is Here To Stay (George Gershwin )
Bird Song (Thad Jones)
Old Devil Moon (Burton Lane) etc…

 

中井幸一(tb) 5 Plays J.J.Johnson 

日時:7月2日(土)
メンバー:中井幸一(tb,arr.)中務敦彦(ts),
 寺井尚之(p)、 宮本在浩(b)、菅一平(ds)
Live Charge3000 (学割チャージ半額)

首尾よくJ.J.Johnsonの音霊が蘇りますように。ぜひ一緒に聴きましょう!

 

ライブ・レポート:アキラ・タナ at OverSeas

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 4月4日、寺井尚之の盟友、アキラ・タナのライブ開催しました。アキラさんの今回の滞在は約三週間、その間、様々なフォーマットで、関西、関東、北陸と、ほとんど休みなし、各地で大喝采を受けたようです。ツアー中は、ファンや熱烈なサポーターの皆さんが日々アップロードされる沢山の写真やコメントから、巨匠の演奏を生で観た感動だけでなく、皆に幸せを運ぶアキラさん独特の不思議な力も伝わってきました。この力は、ひょっとしたら、かつての日系社会を、僧侶として束ねた父、田名大正師と、短歌運動を通じて大きな人々の輪を作った母、田名ともゑさんから受け継いだものかもしれません。

 文字通り引っ張りだこの日程を繰り合わせて出演してくださったOverSeasでのコンサートには、なにかと行事の多い新年度4月の第一月曜にも拘らず、新旧のお客様で一杯、加えて、アキラさんの息子さんや、米国から観光を兼ねて日本にやってきた奥さんのマージさん達も!アキラさんがNYに住んでいた頃、お家でマージさんの手料理をご馳走になって以来、20数年ぶりの再会で、私も大感激!寺井尚之は、歳月を経てもちっとも衰えないマージさんの清楚な美貌に、もっと嬉しそう!

 とにかく開演前すでに、会場のムードが、一流アーティストを聴きに来た、というよりも、はるばるアメリカから来てくれた親戚に会いに来たよ、というような感じになるのは、アキラさんのライブならでは!共演する寺井尚之も、アキラさんとの共演のために、「さくら さくら」のアレンジを書き下ろし、宮本在浩(b)と共に、ダイナミックでユーモア溢れるプレイを繰り広げました。

12961216_1159891337367934_5407839327404241921_o.jpg 今回のプログラムは、これまでの4回のコンサートのうちで一番デトロイト・ハードバップ色が濃いものだった。日頃アキラさんが演ることのないフラナガンの愛奏曲は、仕掛けが一杯の難曲揃い。普通ならみっちりとリハーサルをしても、なかなかうまく行かないのですが、却ってアキラさんの集中力と底力を際立たせる結果となって大満足。加えて、アキラさんにゆかりの深いジミー・ヒースやJ.J.ジョンソンの曲、そして春に因んだスプリング・ソングと、彩り一杯のプログラム、スリル溢れるプレイの中に、ユーモア溢れる和気あいあいのインタープレイがポンポン飛び出すと、最高のタイミングで客席から掛け声が入ります。

 アンコールは、日本のうたで魅了する<アキラ・タナ&音の輪>に倣い、日本古来のスプリングソング「さくら さくら」、これが本当に素晴らしく、今も語り草の名演になりました。寺井尚之がアキラさんのために書き下ろしたスペシャル・アレンジは、寺井ならではのふくよかなピアノの響きと、ベースの弓をフィーチャーした、耽美的なルバートで、満開の桜の園を音楽で描いて見せた後は、一転、強烈なバップになだれ込む鮮烈な展開、寺井の研ぎ澄まされたピアノと、ザイコウの妙技、そしてアキラさんの緩急自在のビートで、桜吹雪が舞い散る夢のような世界になりました。素晴らしい演奏の源は、「桜の女王」だったアキラ夫人が来てくれたせいかも…

 手に汗握るスリルとユーモアが共存したプレイに、お客さん達は大笑いの連続。会場に家族的で温かい空気を満ち溢れてました。こういう空気を創り出すのも、アキラさんの稀有な才能の一つかもしれません。コンサートの後、これほど沢山の方に「次も絶対聴きに来ます!」と言ってもらうのも、アキラさんらしい!

otonowa01-720x405.jpg アキラさんが次回来日するのは10月、在米邦人、日系人の腕利きを率いる<アキラ・タナ&音の輪>で東日本大震災支援ツアーを行う予定。またOverSeasでアキラさんのプレイを聴くことができますように!

 音楽とは別に、アキラさんのご両親、田名大正、ともゑさんの軌跡と、日系米人の歴史を、これからもじっくり調べて、みなさんにお伝えしていこうと思っています。どうぞよろしく!

12901192_979036528850340_7937487507875822472_o.jpg写真:左から:寺井尚之、アキラ・タナ、宮本在浩、アキラ夫人Marjorieさん、アキラさんの親友、ギタリスト、樫本優さん/前列:アキラさんの愛息、Ryanさん、お母さまを連れて来てくれてありかとう!!

2016年4月4日 Hisayuki Terai piano trio featuring Akira Tana on drums, Zaiko Miyamoto on bass,

=曲目= 

<1st>
1. Eclypso (Tommy Flanagan)
2. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. Sunset and the Mocking Bird (Duke Ellington, Billy Strayhorn)
5. For Minors Only (Jimmy Heath)

<2nd>
1. Yours Is My Heart Alone (Franz Lehár)
2. They Say It’s Spring (Bob Haymes)
3. Bro’ Slim (Jimmy Heath)
4. Lament (J.J.Johnson)
5. Commutation (J.J.Johnson)

<3rd>
1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)
2. A Sleepin’ Bee (Harold Arlen)
3. Elora (J.J.Johnson)
4. Passion Flower (Billy Strayhorn)
5. A Sassy Samba (Jimmy Heath)

Encore: さくら さくら /Sakura: Cherry Blossoms (Traditional)

2/16(火)田井中福司Live

0217taiP1100227.jpg ルー・ドナルドソン(as)が全幅の信頼を寄せるレギュラー・ドラマー、NYで大活躍する田井中福司(ds)さんをお招きしたライブは、寺井尚之(p)、宮本在浩(b)、末宗俊郎(g)のハウス・ミュージシャン3人が、がっちり一枚岩となって送る熱いリスペクトに応えるドラミング、ハイパワー、ハイボルテージの演奏になりました。

 強烈にスイングする田井中さんのシャキッと切れの良いビート、ブルージーに泣く末宗俊郎のギター、持ち前の美しいタッチのバップ・フレーズで切り込む寺井尚之のピアノ、縦横無尽なボトムラインでエナジー・チャージする宮本在浩、4人のバランスは最高。

  「僕が渡米して36年、OverSeasが開店して37年です。」と田井中さんのMCに感慨ひとしお!

 お客様の声援にも愛が一杯で、ジャズクラブ冥利のライブに。

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 遠くからも近くからもご来店、誠にありがとうございました!!

 

=曲目=

<1st>

1. Sonnymoon for Two (Sonny Rollins)
2. Just Friends ( John Klenner )
3. Polkadots and Moonbeams (Jimmy Van Heusen)
4. I’ll Remember April ( Gene de Paul)

<2nd>

1. Unit 7 (Sam Jones)
2. Don’t Get Around Much Anymore (Duke Ellington)
3. Body and Soul (Johnny Green )
4. Yardbird Suite (Charlie Parker)

<3rd>

1. What Is This Thing Called Love? (Cole Porter)
2. I’m Just a Lucky So and So (Duke Ellington)
3. Portrait of Jenny (J.Russel Robinson)
4. Anthlopology (Charlie Parker)

Encore: Billie’s Bounce (Charlie Parker)

 

第27回Tommy Flanagan Tribute

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 第27回トミー・フラナガン追悼、トリビュート・コンサート、色んな土地からFlanagania同志大集合!ここ数年で一番の盛況になりました。80代から中学生までの皆さんが、フラナガンの往年の名演目を全力で演奏する寺井尚之、宮本在浩、菅一平のThe MainstemTrioを強力バックアップして下さいました。

 終演後は「トリオのバランスが良かった!」「楽しかった!気分がすっきりした!」「きれいだ~」「神業!」って嬉しいお言葉を!また、お供えや差し入れもありがとうございました。

 一方、私は、新しいエプロン持ってくるのも忘れ、ずるずるのエプロンで必死のパッチ、写真一枚撮る余裕もなく、キッチンであたふた、じっくり演奏を聴く余裕が全くなくて、The Mainstemの3人のバランスが完璧に、ふくよかに響いていることだけしかわかりませんでした。CDができたらゆっくり聴こうと思っています。

 この日は、沢山の方々のおかげで、自分たちが今ここに存在しているということを、このコンサートが一層深く実感させてくれました。

 応援してくださった皆様に感謝あるのみです。

 演目の曲説は後日HPにUPしますので、またご一読いただければと思います。

 ほんとうにありがとうございました。

=演奏曲目=

<1st Set>

1. Beats Up (Tommy Flanagan)

2. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)

3. Epistrophy (Thelonious Monk)

4. Embraceable You (George Gershwin)- Quasimodo (Charlie Parker)

5. If You Could See Me Now (Tadd Dameron)

6. Rachel’s Rondo (Tommy Flanagan)

7. Dalarna (Tommy Flanagan)

8. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)

<2nd Set>

1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)

2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron)

3. Thelonica- Minor Mishap (Tommy Flanagan)

4. Mean Streets (Tommy Flanagan)

5. I Cover the Waterfront (Johnny Green)

6. Eclypso (Tommy Flanagan)

7. Easy Living (Ralph Ranger)

8. Our Delight (Tadd Dameron)

 

<Encore>

1. With Malice Towards None (Tom McIntosh)

2. Ellingtonia
  Chelsea Bridge (Billy Strayhorn)
  Passion Flower (Billy Strayhorn)
  Black and Tan Fantasy (Duke Ellington)

ライブ・レポート:Akira Tana at OverSeas, 2015 9/8

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左から:寺井尚之(p)、アキラ・タナ(ds)、宮本在浩(b)

 東日本大震災復興チャリティのために結成した日系人+在米邦人のスーパーバンド、「音の輪」を率いて第三回東北応援ツアーを敢行した後、関西、東京と、様々なフォーマットで連日演奏、各地で大きな感動を巻き起こしたドラムの巨匠、アキラ・タナ。

 9月8日は、OverSeasに詰めかけた沢山のアキラ・タナ・ファンのために、寺井尚之(p)、宮本在浩(b)とのトリオで出演!OverSeasのライブ史に残る名演奏になりました。

 口コミで評判が広がり場内は超満員、中には遥か熊本からのお客様も。現在、外務省の招聘教員として、神戸で

rp_primary_Tana_UAA_2-24-14.jpg教鞭をとるアキラさんの愛息、Ryan さんがジャズピアノ修行中の友人達を伴って、応援にやってきました! トランペット奏者でもあるRyan Tanaさんはアジア系アメリカ人 アスリートの名鑑に載っていて、ついこの間まで、全米有数の名門校NYU(ニューヨーク大)の強豪バスケ・チームの主将として大活躍していた名選手です! 

 

 <ドラムは歌う>

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 さて、今夜の演奏曲目は、ピアニスト、寺井尚之ゆかりのデトロイト・ハードバップ、アキラさんと共演したジミー・ヒース、J.J.ジョンソン、ベニー・ゴルソンたちのオリジナル、それに緩急自在のスタンダード曲、そしてアンコールは「音の輪」に因んだ日本のメロディー。アキラさんの実力をよーく知っている寺井尚之が、一夜限りの自由闊達な即興演奏のグラウンドになるようなプログラムを虎視眈々と組み立てていました。

  過密スケジュールで約3週間、ゆっくりする間のないアキラさんの為にリハーサルは一切しません。だって、並のプレイヤーなら崩壊不可避のややこしい小節の曲もノー・プロブレムの名手ですからね。「ドラムが演奏を作る」というマイルズの言葉通り、各人にスーパープレイ続出、笑顔でプレイするアキラさんの度肝を抜いたろう、とばかりに、演奏曲に因んださまざまなリフを入れて仕掛ける寺井尚之、返す刀で悠々と続きを叩くアキラさん、倍音に満ちたフォルテッシモから、ピアニッシモの囁きまで、ダイナミクスも三位一体!子犬のようにじゃれ合っていたずらを繰り返す二人の会話は、往年の浪速のお笑い芸術、やすきよ漫才を思わせる歯切れの良さ、華麗なドラミングの最中にも、ピアノのほんとうに小さな一音もかき消されることなくクリアに聴こえてくるのがミラクル!ベテランの間に挟まれたベーシスト、宮本在浩ならではのクールな仕切りも見事で、久々に来てくださったお客様は、彼の成長ぶりに舌を巻いていました。

 今回、最も印象に残ったナンバーは、3rd Setの”It Don’t Mean a Thing (スイングしなけりゃ意味が無い)“、意表を突く超スロー・テンポでスタートして、倍ノリ⇒倍テンポ⇒4倍ノリ⇒4倍テンポから逆方向へ、次から次へのシフト・チェンジ、まるでスイング感のジェット・コースター!満員の客席がどよめきました。

akira_tana_ippei_suga98_n.jpg 一方、ドラムに一番近い席で見ているメインステムの菅一平(ds)さんの横顔は、表情のデパート。演奏テクニックとドラムの”耳”の使い方、音楽の組み立て方・・・どれほど沢山学べたことでしょう。今回一番お得だったのはイッペイさんかも・・・(左写真)

 ””Project S”や”Sassy Samba” といったヒース・ブラザーズのナンバーがコールされるだけで大拍手、それはジミー・ヒースの音楽を聴きこむお客様。ミュージシャンが多いOverSeasならでは!ということで、私もちょっぴり鼻が高いです。(下右の写真は。ヒースBros時代のアキラ・タナ)

 アンコール”どんぐりころころ”は、「リズムチェンジで演るとおもしろいんだよ~!」というアキラさんの一言からレパートリーになった曲、寺井は「こういう曲こそ、大阪ならではのヴァージョンにせないかん。」と、歌詞が大阪弁に聞こえるメロディーになるよう少し修正して音楽劇に仕立ててしまいました。”どんぐり”=宮本在浩(b)、”どじょう”=アキラ・タナ(ds)、”横で見てるおっちゃん”=寺井尚之(p)という配役で、ベースの弓が”どんぐりころころ どんぐりこ”とおごそかに歌い出すと、会場は大爆笑!テーマが終わると、ピアノのシングルトーンが真珠の粒のように転がりだして、切れのよいドラムのビートが噴出、童謡の世界が、ビバップのロマン派世界に一変!コンサートもめでたし、めでたしでした。

 最後に ”OverSeasはHome Away from Home”とアナウンスをしてくれたアキラさんに喝采は止まず。

 次回は来年の4月頃にまたOverSeasで名演奏が聴けそうです。次回もどうぞ宜しくお願い申し上げます。 

 

=演奏曲目=

<1st>heathMI0001406918.jpg

  • Bitty Ditty (Thad Jones)
  • Out of the Past (Benny Golson)
  • Epistrophy (Thelonious Monk)
  • Lament (J.J.Johnson)
  • Eclypso (Tommy Flanagan)

<2nd>

  • Beats Up  (Tommy Flanagan)
  • Beyond the BlueBird  (Tommy Flanagan)
  • For Minors Only (Jimmy Heath)
  • If You Could See Me Now (Tadd Dameron)
  • Project ‘S’ (Jimmy Heath)

<3rd>

  • Perdido (Juan Tizol, Duke Ellington)
  • It Don’t Mean a Thing (Mercer Ellington)
  • Commutation(J.J,Johnson)
  • In a Sentimental Mood (Duke Ellington)
  • A Sassy Samba (Jimmy Heath)

Encore: どんぐりころころ@大阪 version:2015 9/8

アキラ・タナ:「音の輪」 と東日本大震災被災地支援ツアー

otonowa01-720x405.jpg『音の輪』:左からマサル・コガ(マルチ・リード)、アート・ヒラハラ(p)、アキラ・タナ(ds)、ケン・オカダ(b)

 9月にOverSeasにやってくるアキラ・タナ、来日の目的は、在米日系人のスーパー・バンド『音の輪』を率い、日本の懐かしい歌を『音の輪』流にアレンジして福島、岩手、宮城の被災地の方々に音楽の贈り物を届けて回ることです。

 2週間近い連日のツアー日程は大変な強行軍。日本への渡航費用は本拠地のサンフランシスコ・ベイエリアでコンサートやセミナーを重ねることによって調達、文字通りの「手弁当」!「音楽を聴かせてあげる」というような上から目線なところは微塵にもありません。自分たちのできることをして、大切なものを失った仲間になにかをしたい。そして、現地の人々に喜んでもらうことができれば、逆に、自分たちも元気をもらえる!そんな交流に感謝の気持ちを持っていることが伝わってきます。

 震災直後、米国の地で、何かできることはないかとベネフィット・コンサートを始めたのがきっかけで結成した『音の輪』、だんだん、実際に被災地で音楽交流をしたいという思いが募り、2013年に初めての『音の輪』ツアーを敢行しました。

 かつて自分たちの町があった場所に集まった被災地の方々の前で演奏を披露して、喜んでいただけた。涙を流している人もいた。ミュージシャン冥利で、自分がもっと泣いてしまった、感動してしまったと、アキラさんは演奏体験を語ります。J.J.ジョンソンやヒース・ブラザーズなど、超一流のバンドで世界を華々しくツアーしてきた巨匠ドラマーの心を、これほどまでに突き動かした心の交流って素晴らしい!それは、第二次大戦中、米国市民でありながら敵国人として、住み慣れた場所や生活、財産、全てを没収され、「戦時敵国人抑留所」に収監された日系人の方々の歴史、アキラさんの家族の歴史と決して無関係ではないように思えます。

 今回が3回目となった『音の輪』ツアー、ぜひ、私たち皆で、おもてなしと応援をしたいものですね!

『音の輪』の日本語サイトはこちら

ツアーは、8/20から9/3まで、東京と河口湖でも出演を予定しています。ツアー・スケジュールはこちら

 アキラ・タナさん単独のライブ@OverSeasは9/8(火)  我らが寺井尚之(p)+宮本在浩(b)との、底抜けに楽しい共演も、どうぞお楽しみに!