=師匠トミー・フラナガンを愛奏曲で偲ぶ
2014年3月15日
トリビュート・コンサートはトミー・フラナガンが生誕した3月と、逝去した11月に開催する定例コンサートです。
曲目説明
Tamae Terai

本コンサートの3枚組CDをご希望の方はJazz Club OverSeasまでお申し込みください。
Performed by "The Mainstem" TRIO


寺井尚之(p) 宮本在浩(b) 菅一平 (ds) 

Hisayuki Terai-piano, Zaikou Miyamoto -bass, Ippei Suga-drums


<第24回 トミー・フラナガン・トリビュート・コンサート・プログラム>


<1部>

1. Beats Up ビーツアップ (Tommy Flanagan)
2. Out of the Past アウト・オブ・ザ・パスト (Benny Golson)
3. Minor Mishap マイナー・ミスハップ (Tommy Flanagan)
4. Embraceable You- Quasimodo エンブレイサブル・ユー
       〜カジモド (George Gershwin- Charlie Parker)
5. Sunset and the Mocking Bird サンセット&ザ・モッキンバード (Duke Ellington, Billy Strayhorn)
6. Rachel's Rondo レイチェルズ・ロンド (Tommy Flanagan)
7. Dalarna ダラーナ (Tommy Flanagan)
8.Tin Tin Deo ティン・ティン・デオ (Chano Pozo, Dizzy Gillespie, Gill Fuller)


<2部>
1. That Tired Routine Called Love ザット・タイヤード・ルーティーン・コールド・ラブ (Matt Dennis)
2. They Say It's Spring ゼイ・セイ・イッツ・スプリング (Bob Haymes)
3. Celia シリア (Bud Powell)
4. Eclypso エクリプソ (Tommy Flanagan)
5. A Sleepin' Bee スリーピン・ビー (Harold Arlen)
6. Passion Flower パッション・フワラー (Billy Strayhorn)
7. Mean Streets ミーンストリーツ (Tommy Flanagan)
8. Easy Living イージー・リヴィング (Ralph Rainger)
9. Our Delight アワ・デライト (Tadd Dameron)

Encore: With Malice Towards None ウィズ・マリス・トワーズ・ノン (Tom McIntosh)
      メドレー: Beyond the Bluebird ビヨンド・ザ・ブルーバード  (Tommy Flanagan)
     - Like Old Times ライク・オールド・タイムズ (Thad Jones)


曲目解説

1st Set
1. Beats Up
春のトリビュート・コンサートのオープニングはハッピーなリズムチェンジのリフ・チューン。“Beat Up”は「打ちのめされてクタクタ」また逆に、「すごく楽しい」だったり、意味は色々だ。『OVERSEAS』('57)の録音では、しこたまビールを飲みながらゴキゲンにプレイしたとエルヴィン・ジョーンズは語っており、文字通り、キレの良いビートが弾けて空中に舞い上がるようなプレイだ、その気分は『Sea Changes』('97)で再現されている。
2.Out of the Past

 数多くの名曲を書いたテナー奏者ベニー・ゴルソンの作品。哀愁のあるメロディーと左手のカウンター・メロディーの組み合わせが印象的で、OverSeasでも大変人気がある。フラナガンの初演は'60年、、ゴルソンの盟友アート・ファーマー(flh,tp)のアルバム『Art』で、’80年代から自己トリオで盛んに演奏した。
 ゴルソンは「白黒映画を思わせるノスタルジックな感じ」で作曲したと語っており、フィルム・ノワールの秀作『Out of the Past (過去から逃れて)』からタイトルが付いたのではないだろうか・
3. Minor Mishap

 初演はジョン・コルトレーンやケニー・バレルとの初リーダー作『The Cats』('57)。 “Minor Mishap”は「小さな災難」という意味で、『The Cats』のレコーディングでの思いがけないトラブルに由来していると思われる。おかげでデトロイト・ハードバップの典型的な疾走感を内蔵する名曲には、ちょっぴり皮肉と自戒を込めたタイトルがついた。フラナガンが終生愛奏した名曲。
関連ブログ
4.メドレー: Embraceable You - Quasimodo

 
ガーシュインの有名なバラードと、そのコード進行を基にしたチャーリー・パーカーのバップ・チューンの組み合わせ。“Embraceable You”から“Quasimodo”への絶妙な転調はフラナガン・ミュージックならでは。
 フラナガンが得意としてメドレーの内でも白眉のものだが、残念なことにレコーディングは遺されていない。関連ブログ


5. Sunset & the Mockingbird


  晩年のライブ盤、バースデイ・コンサート('98)のタイトル・チューン。デューク・エリントンがエリザベス女王に献上するため一枚だけ自費で楽団を使い制作したLP「女王組曲」の中の曲。
 フラナガンはNYのジャズ系FM番組の主題曲として流れていたこの曲を聞き覚え、ピアノトリオ・ヴァージョンにしつらえた。この夜も、フラナガン譲りの最高のピアノタッチで大自然の夕暮れに聞こえるモッキンバードの歌声が冴え渡った。
6. Rachel's Rondo

 
最初の妻、アンとの間に生まれた美貌の長女レイチェルに捧げた作品。フラナガンは『Super Session』('80)に収録したが、ライブでは余り演奏することはなかった。
 一方、寺井はこの曲の明るさと気品から現在に至るまで長年愛奏、『Flanagania』('94)に収録している。

7. Dalarna

 『Overseas』収録、初期の有名なオリジナルで尊敬するビリー・ストレイホーンの影響が感じられる。フラナガン作品の例に漏れず、厳しい転調を用いて独特の曲想を作り上げている。録音後、フラナガンは長年演奏することがなかったが、寺井尚之が『ダラーナ』を録音したのに触発され、寺井のアレンジを使い『Sea Changes』('96)に再録した。

 
8. Tin Tin Deo
 ビッグバンドの演目をピアノ・トリオのコンパクトなフォーマットで、より深くダイナミックに表出する屈指の名演目、哀愁と土臭さを持つキューバの音楽言語と、同じアフリカ言語ながら、知的に洗練されたビバップのイディオムが見事に融合し、新しいブラック・ミュージックになる。
 ディジー・ガレスピー楽団がこの曲を初録音したのはデトロイトで、フラナガンの親友、ケニー・バレル(g)が参加した。フラナガンにはその当時の特別な思い出があったのかもしれない。
 現在は寺井尚之The Mainstemがそのアレンジをしっかりと受け継いでいる。
 関連ブログ


 2nd Set 
 1. That Tired Routine Called Love

 弾き語りの名手で、フランク・シナトラの音楽監督であったマット・デニスが作ったユーモラスなラブソング。デニスは自分のショウにジャズメンをゲストとしてさかんに起用し、一筋縄ではいかない彼のオリジナル曲はジャズメンの間で口伝えに広まった。自然だけれどめまぐるしい転調のあるこの作品はJ.J.ジョンソンのリーダー作 『First Place』('57)で初演。その後'80年代終わりから、'90年代前半にかけて愛奏し、名盤『Jazz Poet』に収録した。その後もアレンジはどんどん洗練されていった。トリビュートでは、フラナガンがライブで披露した進化ヴァージョンを披露している。

 
 2. They Say It's Spring

 NYの街に春の到来を告げるフラナガンのスプリング・ソングスの一曲。'90年代、フラナガンは春にNYのジャズクラブに出演をするのが常で、春の曲を必ず聞かせてくれた。この曲は、J.J.ジョンソン・クインテット時代の盟友、ボビー・ジャスパーの妻で、弾き語りの人気歌手、ブロッサム・ディアリーのライブで聴いてからレパートリーに加え、ジョージ・ムラーツ(b)との名デュオ・アルバム『Ballads & Blues』に収録した。
  関連ブログ
 
 3. Celia

 Celiaが収録されているバド・パウエルのアルバム『Jazz Giant』は、フラナガン宅の書棚の一番目立つところに、多分今も飾られている。1948年、精神病院で電気ショック治療を施されたパウエルが愛娘Ceceliaの誕生を祝って作ったこの曲は、きらびやかな装飾を排除した重厚な美しさに溢れている。
 1989年、パウエルへのトリビュート・コンサートで、フラナガン・トリオが演奏したアレンジで。 
 
 4. Eclypso

 恐らく最も有名なフラナガン作品。"Eclypso"は「Eclypse(日食、月食)」と「Calypso(カリプソ)」の合成語。トミー・フラナガンを含めバッパーは、言葉の遊びが好きで、そんなウィットがプレイにも反映している。NASAのサイトを見ると、フラナガンがスエーデン楽旅に出る直前、1957年4月に北米で金環日食があったことが記されている。恐らくフラナガンはこれを観てタイトルを思いついたのだろう。
 フラナガンが寺井尚之をNYに呼び寄せ、別れの夜にヴィレッジ・ヴァンガードで寺井のために演奏してくれた思い出の曲でもある。
 
 
5.A Sleepin' Bee
 
 トルーマン・カポーティ原作、ハロルド・アーレン音楽のミュージカル「A House of Flowers」からのスプリング・ソング。「蜂が手の中で眠ったら、あなたの恋は本物」というハイチの不思議な言い伝えを元にしたスインギーなラブ・ソング。 

関連ブログ

 
 6. Passion Flower

 パッション・フラワーはトケイソウのこと。花の題材を好むビリー・ストレイホーン作品。ジョージ・ムラーツがレギュラー・ベーシストだった時期、ベースをフィーチュアした名演目。ジョージ・ムラーツ(b)がフラナガン・トリオに在籍中、毎夜この曲で弓の妙技を披露し、独立後の現在も十八番として演奏し続けている。
 この夜は宮本在浩が雄弁なプレイで客席を魅了した。
 
 7. Mean Streets
  ベースの後は菅一平(ds)のフィーチュア・ナンバー。初演『Overseas』('57)でのタイトルは“Verdandi”であった。かつて日本盤のライナーノートには「“Verdandi”は、J.J.ジョンソンのスェーデン楽旅を招聘した団体名」と紹介されていたが、本当は「アルコール中毒者」を擁護する労働組合の名称だった。
 スウェーデンで 『Overseas』録音の際、差し入れにもらった大量の酒で酔っ払ってしまったので、フラナガンがふざけてこのタイトルにしたのだ。

 '80年代終盤、トリオに抜擢されたケニー・ワシントンのフィーチュア・ナンバーになった機会に、ケニーのニックネームである“ミーン・ストリーツ(やくざ)”と改題され『Jazz Poet』に収録された。
 
 8. Easy Living
  ビリー・ホリディはフラナガンのアイドルで、その唱法はフラナガンのピアノ奏法に大いに生かされた。
 「恋に溺れるて惚れ抜くと、生きているのが楽になる。私の人生にはあなただけ・・・」という"Easy Living"は、悩み多いバッパーたちに大きな共感を呼んだ。

 フラナガンが亡くなった夜、寺井尚之が涙でピアノの鍵盤を濡らしながら演奏してから実に13回目の春、その哀しみは美しいピアノの響きの中に昇華されている。

 
  9.Our Delight (Tadd Dameron)
 
 フラナガンが「オーケストラ的な要素が組み込まれているから演りやすい。」と愛奏したダメロン作品。A1(8) A2(8) B(8) A3(8)形式。囁くようなピアニッシモから、強力なグリスで爆発するフォルテッシモまで縦横無尽、バップの目くるめくスリルに溢れた名作、この夜は、宮本在浩(b)、菅一平(ds)との三位一体のプレイで、コンサートの雰囲気は最高潮になった。
 
   
 Encore
1. With Malice Towards None

  フラナガンが「ブラックな要素」をこよやく愛したトム・マッキントッシュの作品。
題名は「誰にも悪意を向けずに」という、エイブラハム・リンカーンの演説の名言から名付けられた。
 メロディは、賛美歌「わが主イエス、我を愛す」を基にしたもので、スピリチュアルでシンプルなメロディから、色彩豊かなハーモニーが湧き上がる。マッキントッシュ自身やミルト・ジャクソンなど、録音は色々あるものの、フラナガンの気品ある演奏解釈は傑出しており、OverSeasの大スタンダード曲になっている。 
 この夜のプレイは「最高にブラックだった!」と客席から感想をいただきありがとうございました。

2.メドレー: Beyond the Bluebird
     - Like Old Times 


 デトロイト時代のフラナガンを偲ぶメドレー、 “ビヨンド・ザ・ブルーバード”はフラナガンが若い頃に切磋琢磨した街のトップ・ジャズクラブ「ブルーバード・イン」を回想した作品。フラナガンによると、その店は「地元の常連がミュージシャンを応援してくれるアットホームな場所でNYにはない空間。OverSeasの雰囲気と似ていた。」そうだ。ごく自然な流れに聴こえるけれど、実は転調が一杯ある典型的フラナガン・ミュージック。寺井尚之はフラナガン家で写譜を許され、リリース前からレパートリーにしていた。
 
 “ライク・オールド・タイムズ”はB♭の16小節ブルース、「ブルーバード・イン」のハウスバンドの主軸奏者サド・ジョーンズ(cor)の作品。古き良き時代のアフターアワーズの盛り上がりが偲ばれる。トリビュートでは寺井尚之が隠し持ったホイッスルで奇声を上げて、トリビュートの最高のフィナーレを飾った。

トリビュート・コンサートの演奏を演奏をお聴きになりたい方へ:
3枚組CDがあります。

OverSeasまでお問い合わせ下さい。

 Tribute to Tommy Flanaganのページへ戻る
TOPへ