第36回 Tribute to Tommy Flanagan:演奏曲解説=

ジャズの巨匠  トミー・フラナガンの名演目の数々を!


トリビュート・コンサートはトミー・フラナガンが生誕した3月、逝去した11月にOverSeasで開催する定例コンサートです。
曲目解説 寺井珠重


トリビュート・コンサートの演奏を演奏をお聴きになりたい方へ:3枚組CDがあります。
OverSeasまでお問い合わせください。
Performed by 寺井尚之- piano with 宮本在浩 -bass

  
寺井尚之 宮本在浩
Hisayuki Terai-piano Zaikou Miyamoto -bass

トリビュート・コンサートは、トミー・フラナガンを偲ぶ楽しい催しです。


<第36回トリビュート・コンサート・プログラム>

<第一部>

1.Bitty Ditty(Thad Jones) 

2. Out of the Past (Benny Golson)

3. Beyond the BlueBird (Tommy Flanagan)

4. Rachel's Rondo (Tommy Flanagan) 

5.メドレー: Embraceable You(Ira& George Gershwin)
   〜Quasimodo(Charlie Parker)  

6. Sunset and the Mockingbird (Duke Ellington, Billy Strayhorn)

7. Beats Up (Tommy Flanagan)

8. Dalarna (Tommy Flanagan)

9. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller Dizzy Gillespie)




<第2部>

1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)

2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron)

3. They Say It's Spring (Bob Haymes)

4. A Sleepin' Bee (Harold Arlen)

5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)

6. Passion Flower (Billy Strayhorn)

7. Eclypso (Tommy Flanagan)

8. But Beautiful (Jimmy Van Heusen)

9. Our Delight (Tadd Dameron)


<Encore>

With Malice Towards None (Tom McIntosh)
Like Old Times (Thad Jones)

<1部>

1. Bitty Ditty (Thad Jones) : ビッティ・ディッティ
 
 フラナガンが天才と口を極めて絶賛する、コルネット奏者/バンドリーダー/作編曲家―サド・ジョーンズの作品。フラナガンとジョーンズは、デトロイトにあった伝説のクラブ《ブルーバード・イン》でこの曲を愛奏した。、"エボニクス"(黒人英語)での"Bitty Ditty"(ちょっとした小唄)の意味は「とても難しい曲」だ。
  フラナガンは「サドの作品は、よほど弾きこまないと、本来あるべきかたちにならない。」と語った。OverSeasのスタンダード・ナンバーでもある。

サド・ジョーンズ(1923-1986)
 2. Out of the Pas (Benny Golson): アウト・オブ・ザ・パスト
 
テナー奏者、ベニー・ゴルソンがハードボイルド映画のイメージで作曲したマイナー・ムードの作品。
 ゴルソンはアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズや、自己セクステットで録音、一方、フラナガンはゴルソンの盟友、アート・ファーマー(tp)のリーダー作『Art』で、後にリーダー作『Nights at the Vanguard』などに録音し、'80年代には自己トリオで愛奏した。
 フラナガンがアレンジした左手のオブリガードが印象的で、OverSeasで大変人気がある曲。

3. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan):ビヨンド・ザ・ブルーバード
  
デトロイト時代の若きトミー・フラナガン、サド・ジョーンズやエルヴィン・ジョーンズ達とレギュラー出演したデトロイトのジャズクラブ“ブルーバード・イン”を回想して作ったブルージーで気品溢れるデトロイト・ハードバップの名作。

 さらに詳しい解説はブログをご参照ください。
  ブルーバード・イン追記
4. Rachel's Rondo (Tommy Flanagan):レイチェルのロンド
 
フラナガンの長女、レイチェルに捧げた躍動感と気品溢れる作品。フラナガンは『Super Session』('80)に録音、その後、寺井尚之がフラナガン以上に愛奏、『Flanagania』('94)に収録している。
  

5. メドレー: Embraceable You (Ira and George Gershwin) エンブレイサブル・ユー - Quasimodo カシモド (Charlie Parker)
 
ガーシュインの甘いスタンダードナンバーと、そのコード進行を基にしたチャーリー・パーカーのバップ・チューンの組み合わせ。フラナガンが紡ぎ出した数々のメドレーの内でも最も感動的な作品。関連ブログ




6. Sunset & the Mockingbird (Duke Ellington) サンセット & ザ・モッキンバード

 
晩年のライブ盤、バースデイ・コンサート('98)のタイトルになった印象的な作品。エリントンの自伝(Music is My Mistress)によれば、フロリダ半島でふと耳にした鳥の鳴き声を元に作った作品と言う。フラナガンは、それをラジオで聞き覚えてピアノトリオのヴァージョンに仕立て上げた。寺井はフラナガン譲りの美しいタッチで大自然を表現してみせる。

7. Beats Up (Tommy Flanagan) ビーツ・アップ
 
フラナガン初期の名盤、『OVERSEAS』(1957)に収められたリズム・チェンジのリフ・チューン。冒頭からピアノ⇔ドラムスの2小節交換から始まるスリリングな曲。快活なビートでコンサートの期待感が盛り上がる。本来ならトリオで演る曲ながら、デュオのフォーマットでも十分なダイナミズムが感じられた。フラナガンは、40年後に『Sea Chenges』に再録音している。

8. Dalarna (Tommy Flanagan) ダーラナ

  印象派的なフラナガンのバラード作品、、フラナガンは『Overseas』に録音したものの、ライブで演奏することは長年なかったが、寺井尚之が自己アルバムのタイトル・チューンとして録音し、フラナガンは翌年'96年に、『Sea Changes』('96)に再録した。フラナガンはダーラナを録音した直後に寺井に電話で知らせてきた。そのことを寺井尚之は今も誇りにしている。
 同じ年、来日したフラナガンは、OverSeasで、寺井と全く同じアレンジを使い演奏し、満員の会場を熱狂させた。
  

9. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Dizzy Gillespie, Gill Fuller)
 トミー・フラナガン極めつけの名演目、キューバの哀愁、ラテンの土臭さと、ビバップの洗練が見事に融合し、何とも知れない魅力を醸し出す。トリビュートは今回初めてのデュオ形式になったが、曲の力強さとフラナガン・アレンジの醍醐味を見事に再現してくれた。

詳しい解説はブログに。



<2部>


1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis, Ted Steele)ザット・タイヤード・ルーティーン・コールド・ラヴ 
  暗さ知らずのラブソング、フラナガンのウィットに富む一面と、転調が一杯のこの曲を軽々と弾く技巧が堪能できる作品。名盤『Jazz Poet』に収録後、フラナガンのアレンジはどんどん進化した。
 最近は、中井幸一(tb)カルテットがJ.J.ジョンソンゆかりのナンバーとして演奏している。
トリビュートでは、フラナガンがライブで披露した進化ヴァージョンで。

2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron) スムーズ・アズ・ザ。ウィンド
一編の詩のような曲の展開、吹き去る風のようなエンディングまで、文字通りそよ風のように爽やかな名曲。
 ビバップの創始者の一人、タッド・ダメロン(ピアニスト、作編曲家)の耽美的な作風をフラナガンはこよなく愛した。〈スムーズ・アズ・ザ・ウィンド〉曲は、麻薬刑務所に服役中のダメロンがブルー・ミッチェル(tp)のアルバム「Smooth As the Wind」の為に書き下ろした作品で、アルバムにはフラナガンも参加している。
 
「ダメロンの作品には、オーケストラが内包されているから、弾きやすい。」−トミー・フラナガン

 タッド・ダメロンについての解説はブログで3回連載済
 

3. They Say It's Spring (Bob Haymes)
ゼイ・セイ・イッツ・スプリング

 NYの春の夜にフラナガンが愛奏したスプリングソングの一曲。J.J.ジョンソン時代のバンドメイトであるテナー&フルート奏者ボビー・ジャスパーの妻だったブロッサム・ディアリーの持ち歌で、ジョージ・ムラーツ(b)とのデュオの名盤『Ballads & Blues』に収録した。同郷デトロイト出身のダグ・ワトキンス(b)も、フラナガンからこの曲を教わり愛奏したという。

 エンディングに宝塚歌劇団の「スミレの花咲く頃」を挿入するのが、関西人の寺井スタイル。
 曲についての詳しい解説はブログに。

4. A Sleepin' Bee (Truman Capote/ Harold Arlen) スリーピン・ビー
 They Say It's Springと対を成すエキゾチックなスプリング・ソング。ハイチを舞台にしたミュージカル“ハウス・オブ・フラワーズ”の中の曲、フラナガンは『ハロルド・アーレン集』に収録し、'91年OverSeasで演奏した。

 “ミツバチがお前の掌で眠るなら、恋は本物。”というハイチの恋占いをテーマにした曲。フラナガンがOverSeasで聴かせたインタルードを使うダイナミックなヴァージョンは今回のトリビュートでも好評を博した。
 曲についての詳しい解説はブログに。


5.Minor Mishap (Tommy Flanagan)

 最も初期のオリジナルで、転調を繰り返す難曲。初演は、フラナガンの初リーダー作、『Cats』(Prestige '57)だ。"プレスティッジ"の制作ポリシーは録り直しをしない低予算主義。フロントにジョン・コルトレーンを自ら指名し、意気込んで臨んだが、録り直しができないために、バース・チェンジの小節数が半端になる結果に終わった。文字通りMinor Mishap=“ちょっとした不幸な出来事”だったのだ。
 だが、フラナガンはその後も、愛奏を続け、デトロイト・ハードバップの疾走感を楽しませてくれた。
 
 『The Cat』とこの曲についての解説はブログに。
 6.Passion Flower (Billie Staryhorn) パッション・フラワー
 
ストレイホーン作品、“Passion Flower”は日本ではトケイソウと呼ばれる。フラナガンとの共演期から現在に至るまで、ジョージ・ムラーツ(b)の弓の名演奏が聴ける十八番。今回のコンサートでは、宮本在浩が、デュオのフォーマットで極上の弓を聴かせた。
 
 7.Eclypso (Tommy Flanagan) エクリプソ
  おそらく最も有名なフラナガン作品。"Eclypso"は「Eclypse(日食、月食)と「Calypso(カリプソ)」の合成語。トミー・フラナガンは、こんな言葉遊びが好きで、彼のウィットはライブでのプレイにも感じられた。寺井尚之がフラナガンの招きでNY滞在した最後の夜に、ヴィレッジ・ヴァンガードで、フラナガンが寺井のために演奏した思い出の曲。
 
 8. But Beautiful (Jimmy Van Heusen) バット・ビューティフル

 「恋は十人十色、可笑しかったり、哀しかったり…穏やかで、狂おしく…」 短い言葉で綴られる様々な恋の色合いを、ピアノのサウンドで豊かに表現していく。'90年代、フラナガンが盛んに愛奏したバラードだが、愛想の陰には、寺井尚之の言葉があった。寺井は、フラナガンがプレスティッジの『Moodsville8』(フランク・ウエス・カルテット)でのBut Beautifulのイントロを「ジャズ史上最高のイントロだ!」とフラナガンに力説したのだった。 そのことをフラナガン自身は、全く気づいていなかったようだ。おそらく、アルバムを聞き返し、新たなインスピレーションが湧いたのだろう。'93年にデンマークのジャズパー賞の受賞記念コンサートで、この曲を再演し、名演を遺している。
 
9. Our Delight (Tadd Dameron) アワ・デライト
 タッド・ダメロンがビバップ全盛期'40年代半ばにディジー・ガレスピー楽団の為に書いた作品。ピアノとベース、ドラムが入れ替わり立ち代りフィーチュアされるダイナミックなフラナガンのアレンジは、ピアノトリオの醍醐味を満喫する事が出来る。
 フラナガンがライブのラスト・チューンとしてよく演奏した。
 今回のトリビュートではデュオで、そのスリルを出すという離れ業に湧いた。
 


Encore

1. With Malice Towards None (Tom McIntosh) ウィズ・マリス・トワーズ・ノン
 フラナガンが、アメリカ的だから、ブラックだからという理由で好む作曲家トム・マッキントッシュの名曲。
 題名は「誰にも悪意を向けずに」という、エイブラハム・リンカーンの名言。
 賛美歌を基調にしたシンプルなメロディと芳醇なハーモニーとブルース・フィーリング、聴く度に感動が湧き上がる。マッキントッシュ自身やミルト・ジャクソンなど、録音は色々あるものの、フラナガンの気品ある演奏解釈は傑出している。いわばデトロイト・ハードバップ的ソウル・ミュージックなのかもしれない。

 詳しい解説はブログ

2. Like Old Times (Thad Jones)
 ライク・オールド・タイムズ

 トミー・フラナガンのライブでは、最後のセットのアンコールとしてよく演奏された。フラナガンは、スペインで見つけたという細長いホイッスルをいつもポケットに忍ばせ、絶妙のタイミングで「ピューッ」と一声吹いてから、澄ました顔で強烈にスイングし続け、会場を喝采と笑いの渦に巻き込んだのが懐かしい。


Hisayuki Terai and Zaiko Muyamoto
  次回トリビュートはフラナガンの命日月、11月にやりたいと思います。皆さん、どうぞ来てください!
今夜はどうもありがとうございました。
寺井尚之

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