クリスマスの情景

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 家の宗派は臨済宗(ゆるく)、そのくせ通ってた幼稚園は日本キリスト教団、だから、大昔の私のクリスマスはキャンドル・サービスと讃美歌です。
 その頃、クリスマスに父が買ってきたシングル盤がこれ、Bing Crosbyの<White Christmas>、裏面が<Jingle Bell>。
 それを両親が座敷に出現した新品のモジュラー・ステレオで鳴らして、畳の上で手を取り合ってダンスしてた。それが何とも楽しそうで、私もよちよち歩きの弟と、見様見真似でダンスしたのが楽しくて楽しくて・・・
 ずっと後になって、父と母は進駐軍占領時代、ダンスホールとして使われていた海辺の浜寺の大きなお屋敷で出会い、大恋愛の末結ばれたと、「あんたのお父ちゃんは、お母ちゃん一筋や。何千人に一人おるか、おらんかのええ亭主やで。」と親戚のおばあちゃんから聞きました。
 だから私にとって「ホワイト・クリスマス」は楽しかった子供時代、一家団欒のシンボル。
 
 OverSeasで聴いていただく寺井トリオの<White Christmas>も、そんな幸せなひとときを皆さんにプレゼントできますように。
 
May your days be merry and bright, 
And may all your Christmases be white!
 
メリー・クリスマス!

発掘男ゼヴ・フェルドマン in NY Times

  ご無沙汰でした!

 秋に病気をして退院してから、てんこもりの雑用をこなしていたら、もうクリスマスが・・・

 ここ数年間、翻訳でお世話になっている《レゾナンス・レコード》のゼヴ・フェルドマンさん、別名「世界の発掘男」が、今月初めにNYタイムズにデカデカと載っていたので、リハビリを兼ねて和訳しました。今年リリースされたジャズ・アルバムの傾向と共に、ゼヴさんのユニークな点が余すところなく語られています。

 原文はNYタイムス電子版でお読みになれます。


Jazz Recordings With a Sense of History and Discovery

-歴史発見感覚のジャズ・レコーディング-

ニューヨーク・タイムズ電子版 2016 12/5 付 (執筆者 ネイト・チネンデック)

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“レゾナンス・レコード”はサラ・ヴォーンによる1978年のライブ盤を発売している。

写真:サラ・ヴォーン(於サンフランシスコ、1970、 撮影Tom Copi)

 今年リリースされたジャズの必聴アルバム中の一枚は、半世紀も前の録音、もう一枚は1968年録音、これ以外にも同時期に録音されたアルバムが何枚も出ている。これらは全て、今年の主要トレンドを反映した作品だ。ジャズのレコード業界は、かねてから過去の音源発掘を常としてきたが、今年は従来の規範を超えた歴史的アルバムの大豊作で、多くが大発見の興奮を伴うものだった。

 その中には、全曲未発表のエロール・ガーナー演奏集<Ready Take One >、最近発見されたチャーリー・パーカーの録音セッション<Unheard Bird >がある。その一方、ハーレムの《ナショナル・ジャズ・ミュージアム》は、所蔵の歴史的レコーディングから選りすぐりの音源をデジタル・アルバム化してリリースを開始した。<The Savory Collection, Volume 2 — Jumpin’ at the Woodside: The Count Basie Orchestra Featuring Lester Young >はApple MusicとiTunesより金曜日に発売される。

 この潮流の中で、最も注目に値するアルバムを数多くリリースしたのは”レゾナンス・レコード”だ。”レゾナンス”は、発掘の使命感に燃える新規レーベルだ。ポストバップの先駆者となったオルガン奏者、ラリー・ヤングの絶頂期である’60年代に焦点を当てた< Larry Young in Paris: The ORTF Recordings >, ピアニスト、ビル・エヴァンスによる1968年の知られざるスタジオ録音盤、また、こじんまりした会場で、リラックスした独壇場のパフォーマンスが楽しめるサラ・ヴォーン(’78)、シャーリー・ホーン(’88)それぞれのライブ盤などをリリースしている。

 加えて、”レゾナンス”は、テナー・サックス奏者、スタン・ゲッツのアルバムを2作リリースした。サンフランシスコのクラブ《キーストン・コーナー》でのライブ盤< Moments in Time >は秀逸なカルテットのプレイ、そして、もう一枚はボサノヴァの巨匠、ジョアン・ジルベルトとのリユニオン・セッション<Getz/Gilberto ’76>でジルベルトの気取らないサウンドが輝きを放っている。さらに、このレーベルの年頭を飾ったアルバムは、サド・ジョーンズ-メル・ルイスOrch.創立時のドキュメント< All My Yesterdays: The Debut 1966 Recordings At the Village Vanguard >であった。

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“レゾナンス”・レコード総支配人、ゼヴ・フェルドマン:多くの成功作は彼の功績だ。

 これらのアルバムには、それぞれ多くの資料が梱包されている。それは、新たに発見された歴史的写真、特別寄稿文、音源に参加した現存ミュージシャンのインタビューといったもので、例えば< Larry Young in Paris >の付録は68ページの豪華ブックレットだ。

 ”レゾナンス”は、音源の修復からパッケージ・デザインに至るまで、コレクターの理想とする「芸術作品としてのアルバム」制作のために、多額の資金をつぎ込んでいる。このような徹底ぶりは、アルバム関連のオンライン・ヴィデオ・ドキュメンタリー・シリーズの制作にまで至る。しかし、”レゾナンス”のこだわりこそが、一介の悪ノリ新興レーベルから、この分野を牽引するトップ・レーベルの座へと飛躍する原動力となった。

 ”レゾナンス”の創設者、ジョージ・クラビンはロスアンジェルスのオフィスから、電話インタビューで次のように語った。

クラビン:「うちのアルバムは、それぞれが小さな展覧会のようなものなんです。美術館の回顧展に行けば、展示室にそのアーティストの作品が所狭しと並んでいますよね。我々は、同じことをレコーディングで行っているんですよ。」

 現在のクラビン氏の立場には、ちょっとした偶然が絡んでいる。彼は長らくレコーディング・エンジニアの仕事に従事していた。コロンビア大学在学中には、サド・メルOrch.を録音していて、新人アーティストを支援し、彼らの作品を市場で流通させてやりたいという思いから、非営利団体”Rising Jazz Stars Foundation”を創設した。つまり”レゾナンス”は、この団体の一部門として、新人支援の規範の下に発足したのだ。

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1968年のビル・エヴァンス:”レゾナンス”は、同年のスタジオ録音をアルバム・リリースしている。撮影:German Hasenfratz,(via Andreas Brunner-Schwer)

  しかし、ベテラン・レコード・プロデューサーであり、モザイク・レコードの総帥として、ジャズ復刻盤の金字塔を打ち立てたマイケル・カスクーナが持ち込んだ、巨匠ギタリスト、ウエス・モンゴメリーの初期のテープにより、状況は一変する。このテープを2012年にアルバム<Echoes of Indiana Avenue>として発表したことを契機に、< Bill Evans — Live at Art D’Lugoff’s Top of the Gate >や、サックス、フルート奏者、チャールズ・ロイドの初期の音源を2枚のアルバムとして相次いでリリースすることになる。

 組織内の音源修復とマスタリング部門を統括するクラビン氏と並ぶ “レゾナンス”成功の仕掛け人が、総支配人ゼヴ・フェルドマンだ。根っからのジャズ・マニアであり、ポリグラムやコンコードといった大手レコード会社の営業部門に勤務してきた彼は、クラビン氏に要請されるまで、よもや自分がアルバムのプロデュースを担当するとは思わなかった。

 今年の夏、フェルドマン氏はグリニッジ・ヴィレッジでコーヒーを飲みながら、以下のように語った。

 「往々にして、私の情熱は、自分のキャリアの妨げとなってきました。昇進ができなかったり、就職を断られたこともあります。私のエネルギーと熱弁に、相手が怖気づいてドン引きしちゃうんですよ。」

逆に “レゾナンス”では、この性癖が功を奏した。彼に課せられた重要任務は、権利関係や使用許諾といった「交渉」であったからだ。

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左から:スティーブン・ウィリアムス、シャーリー・ホーン、チャールズ・エイブルズ:ホーン、このメンバーによる1988年のライブ盤も今年の新譜。
写真:米国議会図書館蔵

 

 マイケル・カスクーナは感嘆をこめて彼を語る。
「ゼヴは闘犬みたいな奴だ。これまで、我々の多くが骨折り損だと思い手を付けなかった案件を、持ち前のエネルギーのせいか、非常に合理的な根拠のせいか、とにかく彼は、どんどん話をまとめて、次から次へと奇跡を起こしてみせるんだよ。」

レーベルの新作には、ピアニスト、ジーン・ハリス率いるソウル系ジャズ・トリオ、”スリー・サウンズ”、”ファンク・ブラザーズ”のギタリストとして有名な、デニス・コフィーのライブ盤もある。(両作品は”ブラック・フライデー”にLP限定で発売され、来年1月13日にはCDとして幅広く販売される。)

“レゾナンス”の新年発売予定ラインナップ中、最大の注目作は、エレクトリック・ベースの巨匠、ジャコ・パストリアス率いるビッグバンドのアルバム< Truth, Liberty & Soul — Live in NYC: The Complete 1982 NPR Jazz Alive! Recording >で、4月の「レコード・ストア・デイ」にリリースが予定されている。これらを含め全新譜のアルバム作りがレーベルのポリシーに沿ったものであることは言うまでもない。

クラビン氏は「毎回、ここまで手間暇かけて制作するのは本当に難しい。」と、自らの経営モデルを語るが、笑いながら次のように付け加えた。
 「誰かが同じような事をやりたいと思っても、やめといた方がいいと説得された挙句、尻尾を巻いて退散するのがオチだろうね。」

氏はさらに語る。「私たちの仕事は、まさに社会奉仕なんだ。これらの素晴らしいレコーディングを、このようなかたちで発表して、天から贈られた音楽の贈り物をこの世に復活させている。皆さんに楽しんでほしいという願いを込めてね。」 

訳:寺井珠重

 

アキラ・タナ LiveReport=祝ジミー・ヒース90才!

noda_sara_hisauki_n.jpg  お久しぶりです!楽しみにしていたアキラ・タナ(ds)さんをお迎えしたコンサートを10月25日に開催しました。

ここ2年間、春と秋にサンフランシスコから来演していただくアキラさん、圧倒的なドラミングと温かい笑顔、その人柄に、すっかり魅了される仲間が増える一方。寺井尚之とのプログラムは、毎回アキラさんゆかりのジャズ・ジャイアンツへのオマージュが溢れていて、還暦を過ぎたベテラン達が青年時代から持つジャズへの愛情が少しも損なわれていないことが伝わってきます。ユーモアと先人への礼節が溢れるセッションは、そこ抜けに楽しくて、アキラさんの出演には、万難を排して集合してくれる仲間が増えて嬉しい限りです。

jimmyheath.jpg コンサートの10月25日は、ちょうどジミー・ヒース90才の誕生日!米国では、この前後に、NYとワシントンDCで盛大なバースデー・コンサートが開催されています。’70年代終盤、若きアキラさんは、ジミー・ヒースの”ヒース・ブラザーズ”に抜擢され、一躍注目を浴びました。寺井尚之にディジー・ガレスピー直伝のビバップ理論を懇切丁寧に教えてくれた恩師でもあります。二人は、ジミー・ヒースの作品を一杯演奏して、日本からのお祝いにしよう!と固く心に誓っていました。

 そのため、寺井尚之(p)は虎視眈々とプログラムを練りに練り、宮本在浩(b)とじっくり準備を整えていました。コンサートは、アキラさんが繰り出す自由自在のグルーヴで、寺井尚之の豊かな音色のバップの大技を一層スイングさせます。宮本在浩(b)は安定したボトムラインで、ベテラン二人の自由なプレイを支える見事なトリオのコンサートになりました。

 会場には、長年のジミー・ヒースやヒース愛好家も数多く、ジミーの曲がコールされると大拍手、アドリブにGingernread Boyが入ると歓声が!

 終演後は皆で記念写真を撮ってジミー・ヒースご本人に送付。大喜びしてもらいました。折しも来日中だった、巨匠フランク・ウエス(ts,as,fl)の未亡人、サラ・ツツミさん(一番上の写真で寺井尚之の左側の金髪のレディ)がコンサートに来てくださったのも光栄でした。アキラさんと知己のサラさん、この日の演奏を大変喜んで、ジミーさんに電話で報告されたそうです。お客様達もフランク・ウエスの奥さんに会えて大興奮!

=曲目=

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<1st>

1. Hi-Fly (Randy Weston)
2. Out of the Past (Benny Golson)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. Lament (J.J.Johnson)
5. Commutation (J.J.Johnson)

<2nd>

1. Bro Slim (Jimmy Heath)
2. New Picture (Jimmy Heath)
3. For Minors Only (Jimmy Heath)
4. The Voice of the Saxophone (Jimmy Heath)
5. Project ‘S’ (Jimmy Heath)

<3rd>

1. What Is This Thing Called Love (Cole Porter)
2. Quietude (Thad Jones)
3. It Don’t Mean a Thing (Duke Ellington)
4. Ellington’s Strayhorn (Jimmy Heath)
5. A Sassy Samba (Jimmy Heath)

Encore: どんぐりころころ

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 ジミー・ヒースの録音がある曲には、アルバムにリンクを貼っています。3rd セットのジミーの作品は二曲ともアキラさんがレコーディングに参加しています。ぜひ聴いてみて下さいね。

 アンコールの「どんぐりころころ(リズム・チェンジ)」は、東日本大震災復興支援のために、アキラさんが立ち上げた日本人+日系人バンド音の輪””のレパートリーです。こちらも収録CDがありますのでぜひ!

 

 =家族のドラマ=

akira cousins.JPG 左から:アキラ・タナ、田名尚文牧師、尚文さんのお嬢さん

 そして、客席にはもう一つのドラマがありました。Interludeの読者の皆さんはご存知のように、アキラさんの両親、田名大正師、ともゑさん夫妻は、米国に移民した日本人コミュニティのために、1930年代終盤に北海道から米国に渡り、現在も、たくさんのご親戚が日本に居られます。この日は、まだ会ったことのないアキラさんを訪ねて従兄にあたる方が、SNSではるばるOverSeasにご来店!その方は田名尚文(たな ひさふみ)さん、やはり札幌出身で、退職後、三重県にある日本キリスト教団鳥羽教会の牧師様として活動されています。アキラさんも風光明媚な海街からやって来た従兄に出会えて感無量!温かく穏やかな笑顔はDNAのなせる業なのか、談笑する田名ファミリーの姿に、私もまた感無量でした。 

 初対面のアキラさんの印象はどうだったのでしょう?終始にこやかにコンサートを楽しんでくださった尚文さんに伺いました。
 「地位も名声もあるのに飾らない。山田洋次監督の主人公「とらさん」のように、周りを包み込む温かさを感じました。
米国で育って居るのに日本で育った日本人以上に日本人らしさを感じます。脇役に徹していつも主役を支える役目に喜んで参加する。そんな『ほっこり』型のおじさんに見えました。
 演奏は凄いとしか言い様がありませんが、見ている人を楽しませる術をも自然に表現しているように感じました。」

 尚文さんの印象は、私たちのアキラさんへのイメージを端的に代弁するものですね!

 世界トップクラスの実力と、東北復興支援に努力を惜しまない優しさ、その活動を継続する力と、人間力、巨匠ドラマー、アキラ・タナ!来年4月に再び来日する予定、また一緒に楽しみましょうね!

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ジャズとは無関係なトランプ候補のことを子供に説明したアメリカのお父さん

   trump8b.jpg日本でも、ときには国会より扱いの大きな米国の大統領選挙戦。ドナルド・トランプ候補が、過去に隠し録いされた女性蔑視発言と、それを擁護したトランプのブレーンで元NY市長、Rジュリアーニの発言も、ワイドショーでガンガン報道されてました。
 

 一方、10月9日、ミシガン州に住む一般男性が、FB上でこの話題について、(未来の)幼い息子たちにきっちりと説明したメッセージを発信したら大反響!

 ちょうど子供の頃に、ラジオで流れてた「全国子供電話相談室」と、フランク・キャプラ監督の映画を足して二で割った感じ。しっかりしていて力強いメッセージだったのです。「感動した!」という賛同のコメントにまじって、「何が悪い?クリントンはどないやねん?!」というような非難ごうごうのコメントも一杯で、やれやれという感じ。

 とにかく読んでいてじーんときたので訳してしまいました。


「男なら、そんな事を言うときもある。」

 ドナルド・トランプ大統領候補の女性蔑視発言について、元NY市長ルドルフ・ジュリアーニ

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 カレブとイーサンへ:

 幸運にも、今の君たちは、政治的な話題を見聞きしたり、興味を持つには若すぎる。

それに、まだFBアカウントを持つ年頃でもない。でも、君たちが私とFB友になる日も近いんじゃないかな。
そしていつか、退屈しのぎや興味本位から、昔、親父はどんな投稿をしていたのかと、覗いたりするかも知れない。
面白いエピソードや、ちょっとした教訓がないかと思ってね。そんなときのために、書き留めておくことにする。

 「男」ならいかなるときも、あんなことは言わないものだ。
 確かに、君たちと同じXとYの染色体を持つ人間の中に、そんなことを言う者は居る。だが、そういう連中を「男」とは呼ばない。
 そういう人間は「色情狂」「悪人」「強姦魔」と呼ぶのだ。本当の「男」はそんなことは言わないし、言おうと思いもしないんだぞ。

 これから君たちは、「男」はいかに振る舞うべきか、「男」になるにはどうすればいいか、散々耳にするだろう。
だが、その大部分はまったく役に立たないゴミ屑だ。本当の「男」になりたければ、見せかけの男らしさや男性優位主義は忘れなさい。 
 それは、君たちの周りに居る弱い人、無防備な人―いじめられっ子や、君たち自身の子どもを守る、ということにつながる。男だって、赤ん坊はのときは、親たちが一晩中寝ずに哺乳瓶を温め、おむつや、おねしょで濡れたベッドのシーツを替えてやり、自分たちは、そこで吐いたり、ウンチしたり、血を流したり、泣きわめいているんだ。弱者と責任を持つ者は、互いに心を通わせなければいけないということにつながる。自分たちの中にある醜さのために犯しった間違いや過ちを、素直に認め、許してもらえるまで謝るということにつながる。

 本当の「男」なら、子どもたちの楽しい笑い声を聞くためなら、コスプレだってするし、自分からすすんで笑い者にだってなれる。本物の男は、場合によっては絶叫するし、しくしく泣くものだ。本物の男は、女性たちに尊敬を持ち、礼を尽くし、大切にする。なぜなら、私達は皆、神がご自分の姿に似せてお創りになった同じ人間なのだから。

 「男」でいるのは楽じゃない。これから君たちも大変だよ。だからね、誰かが汚らわしい言葉や振る舞いを正当化して、君たちの「男」としての尊厳を傷つけたときには、怒りなさい。そして声を上げなさい。そんな連中の物差しで物事を判断させてはならない。要するに「男になれ!」ってことだ。

父よりー

関連記事:A dad explained Trump’s words to his sons and made a powerful point about masculinity. Derek Steele said it perfectly.

秋のトミー・フラナガン・トリビュート11/19(土)開催!

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  暑かった夏がやっと過ぎ、肌寒い季節になりました。皆様いかがお過ごしですか?

 OverSeasの年中行事、トミー・フラナガンを偲ぶ秋のトリビュート・コンサート“Tribute to Tommy Flanagan”、今年は11月19日(土)に開催します。

 名曲Dalarnaを始めとするオリジナル曲、フラナガンがこよなく愛したサド・ジョーンズやエリントンの楽曲、ビリー・ホリディのヒット曲、そして深いメドレーなどなど、レコードで、そしてライブやコンサートで感動を与えてくれた名演目の数々を、トミー・フラナガンの弟子として今もなお研鑽を重ねる寺井尚之率いる名トリオ、The Mainstem (宮本在浩-bass 菅一平-drums)の演奏でお聴かせします。

 長年のフラナガン・ファンから、日頃ジャズに馴染みのない方々も、来てよかった!と思って頂けるコンサートにいたします。

“Tribute to Tommy Flanagan”ぜひお越しください!

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 ”Tribute to Tommy Flanagan” トミー・フラナガン追悼コンサート

    演奏:寺井尚之メインステム(宮本在浩 bass 菅一平 drums)

 11/19(土) 7pm- / 8:30pm- (入れ替えなし)

 前売りチケット(3000円)は当店にて発売中。お早めにお求めください。

 

 

闘病中のGeorge Mraz を援助する寄付サイト

george14276579_1473211274.1474_funddescription.jpg  我らが兄貴、ベーシストのジョージ・ムラーツは、去る7月8日に膵臓嚢腫の除去手術を受けました。

 幸いに嚢腫は良性でしたが、術後に心臓発作を併発、その他の合併症のために現在も闘病中です。ジョージの妻、カミラさんが、ムラーツの快癒を祈念して、寄付サイトを立ち上げています。寄付の方法は簡単な英語ができて、クレジットカードをお持ちでしたら、比較的安易に、また安全に出来ます。

 これまでに、旧友のジョン・アバクロンビー、ジョン・スコフィールド達、これまでの共演者、アーマッド・ジャマル(p)、ケニー・バロン(p)、エミール・ヴィクリッキー(p)、ベニー・ウォレス(ts)ジョーイ・バロン(ds) etc…バスター・ウィリアムス、北欧のハンス・バッケンロスを始めとする先輩後輩のベーシスト、そしてクインシー・ジョーンズまでが、彼の才能を讃え寄付を行い、寺井尚之と私も些少ですが、このサイトを通じて御見舞いしました。現在3万ドル近い金額が集まっていますが、治療費、生活費を考えると、決して安心できる金額ではないと思います。

 ジョージ・ムラーツに御見舞しようという皆さまは、一度、このサイトをご覧になってみてください。

 

 

対訳生活アゲイン

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写真:エラ・フィッツジェラルド&ノーマン・グランツ 於 南仏アンティーブ’64

 寺井尚之が、トミー・フラナガンのディスコグラフィーを時系列に辿りながら解説する月例講座、「トミー・フラナガンの足跡を辿る」が始まって早13年。解説の内容も、爆笑度もますますヴァージョン・アップして第二期に突入中。

 9月から第一期エラ・フィッツジェラルド共演時代が始まります。トミー・フラナガンとエラ・フィッツジェラルドのレギュラー共演は、2つの時代に大別され、第一期は1963年~65年、第二期は1968~78年、エラの元から独立した後、フラナガンの演奏は円熟期に入ります。

 チック・ウェッブ楽団で磨かれた天才バンド・シンガー、エラ・フィッツジェラルドの即興演奏芸術は、一般的な「歌手」の範疇を大きく超越したもので、「引用」フレーズを散りばめるアドリブ技法や、「転調」で3D的歌唱世界を作り上げる様子は、まるでピカソのキュビズム絵画のようです。

Ella_at_Juan_les_pins_1.jpg というわけで、今後しばらくは毎月エラのアルバムが解説されることになるので、私の「対訳生活」がまた始まります。まずは『Ella at Juan-Les-Pan』(’64)から。

 南仏のリゾート地の野外コンサートに併せて、歌詞はどんどんオリジナルから離れて、ほぼ原型をとどめない歌もあるほどです。だからといって、終始行き当たりばったりに変えているわけではなく、ジャズ・ミュージシャンと同じような思考回路で、無限にある音楽の引き出しから、「スイングしていて意味のある」言葉を選んでいるようにも思えます。

 その証拠に、現代のブルース研究の第一人者、メンフィス大学教授のデヴィッド・エヴァンスが編纂したブルースの研究所『Ramblin’ on My Mind/ New Perspectives on the Blues』では、エラの歌った”セント・ルイス・ブルース”について、彼女の歌詞やメロディーのどのフレーズが、どの時代の誰のブルースから引用されているかを研究した章があるくらいなのですから。

 尤も、歌詞というものは、歌唱要素の一部にすぎません。寺井尚之が私の対訳を使って、様々な角度からエラとフラナガンの芸術を浮き彫りにしてくれるのは、ほんとうに面白い!

 また色々こぼれ話を書いていこうと思っています。ご興味があれば、講座にも足を運んでみてくださいね。

 「新トミー・フラナガンの足跡を辿る」毎月第二土曜日 18:30- 開講
    参加料2500(学割チャージ半額)

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オータム・コンサート(2)中井幸一(tb)クインテット

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 残暑に台風、皆様いかがお過ごしですか?

 7月に開催した『Dial J.J.5』特集コンサート、ベテラン・トロンボーン奏者、J.J.ジョンソンの世界を知り尽くす中井幸一による渾身の編曲と、盟友ホーン奏者、中務敦彦をフロントに、これまたJ.J.ジョンソン+トミー・フラナガンのコラボを知り尽くす、寺井尚之トリオ”The Mainstem”がリズム・セクションを務める夢のクインテット、大変ご好評いただき、ありがとうございました。再演のご希望に応えて、来る10月1日(土)、さらにヴァージョン・アップしたコンサートを開催します!

p-nakaikoichi-200.jpg リーダーの中井幸一さんは、関西大学軽音楽部在籍中から、並外れたプレイと耳の良さで、プロとして引っ張りだこの存在でした。これまで様々なコンボや、アロー・ジャズ・オーケストラ、ニュー・ソニック・ジャズ・オーケストラなどのビッグバンドで活動、リーダーとして、ホズク・オーケストラを主宰しています。そして、ビッグバンドからポップスまで、幅広い編曲で定評ある名アレンジャーでもあります。

 

 

 

atsuhiko nakatsukasa.jpg 中井さんと共にフロントを務める中務敦彦さんは岡山を拠点に活動するマルチ・リード奏者、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンをこなし、「ジャズに軸足を置きつつも、近年、ヴォーカリストとのバンドやポップスのサポートも密かに楽しんでいる。」と仰っています。

 中井さんと中務さんを強力にバックアップするのはご存知、寺井尚之メインステム(宮本在浩 bass 菅一平 drums)、J.J.ジョンソン達先人の音楽への深い愛情と尊敬が満ち溢れる演奏を聴くのはほんとうに気持ちが良いです。上っ面だけの懐メロジャズとは、桁の違うクインテットのプレイ、ぜひ聴きに来て欲しいです!

“中井幸一(tb) 5 Plays J.J.Johnson”

日時:10月1日(土) Music 7pm-/ 8pm-/ 9pm- (入替なし)
メンバー:中井幸一(tb,arr.)、中務敦彦(ts), 寺井尚之(p)、 宮本在浩(b)、菅一平(ds)
Live Charge3000 (学割チャージ半額)

 

 =予定演奏曲=

Barbados (Charlie Parker)
Our Love Is Here To Stay (George Gershwin )
What Is This Thing Called Love (Cole Porter)
Walkin’ (Miles Davis) etc…

 

 

オータム・コンサート(1)アキラ・タナ

 

akira_tana_2016.jpg Good News!

 今年の秋も、私達が大尊敬するお友達であり、ジャズ界を代表する巨匠ドラマー、アキラ・タナ(ds)さんがOverSeasにやって来ます!

 アキラさんは今回も「音の輪」を率いて、震災復興支援のために、東北各地で無料コンサートを敢行する他に、「音の輪」としてギグやコンサートも行う予定。

 OverSeasにアキラさんが出演する日は、奇しくもアキラ・タナの知名度を世界レベルに押し上げたジミー・ヒース90才の誕生日とあって、アキラさんと同様、ジミーを敬愛する寺井尚之(p)がスペシャルなプログラムをご用意いたします。

 OverSeasでは、アキラさん大好きなファン増殖中。皆さんも10月25日はぜひぜひ、お越しください!絶対に楽しい演奏になりますよ!

 akira_tana_at_overseas2.JPG寺井尚之(p)トリオ featuring Akira Tana (ds)

with 宮本在浩(b)

【日時】2016年10月25日(火) 開場:18:00~
MUSIC: 1st set 19:00- /2nd set 20:00- /3rd set 21:00- (入替なし)
チケット制:前売り ¥3500(税抜)
当日 ¥4000(税抜)

 

対訳ノート(48)You’d Be So Nice to Come Home To

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Cole Porter (1891-1964)

=歌のお里=

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  “You’d Be So Nice to Come Home To” は言わずと知れた超セレブソングライター、コール・ポーターの作詞作曲。ブロードウェイの舞台裏を描くコメディ-映画『Something to Shout About』(’43)の劇中歌で、主役、ドン・アメチーが、この歌でヒロインを口説くものの、「プレイボーイのあなたは、女の子を見れば誰でも追いかけまわしているのでしょ。」と軽くいなされる。映画はコケたけど、この歌はオスカーにノミネートされ、多くの歌手や楽団がカヴァーした。中でも映画と同年にリリースされたダイナ・ショア&ポール・ウェストン楽団のレコード(メリルのヴァージョン同様、ヴァースなし)は、ヒットチャートに18週間ランクイン、ソングライターとして最大のライバル、アーヴィング・バーリンの<ホワイト・クリスマス>を追い抜き、ポーターは大いに溜飲を下げた。ジャズ・ファンに愛され続けるヘレン・メリルのヴァージョンはそれから10年以上後に録音されたものです。

 当時、この歌がヒットした理由は?
 -「歌詞哀愁を帯びたメロディーが、戦争のため、愛する人と離れて暮らす何百万という男女の共感を呼んだから。」- 伝記《Cole Porter/ A Biography (Charles Schwartz著)より。

 それなら、やっぱり歌詞を調べよう!コール・ポーター詞の特徴は、クラシックでエレガントなことばと、口語や新語が絶妙のさじ加減で混ざり合い、独特のリズムと洒落た味わいを生み出すところ。だから英語を母国語としない私たちには難しい!

=エイゴの話=

 最大の難関は、巨泉さんでさえ誤ったタイトル・フレーズ、You’d Be So Nice to Come Home Toこのことばで歌(Refrain)が始まり、終わる。当初、歌のタイトルには、いくつか候補があり、結果的に、このフレーズを題名とした。歌の肝!英語の意味をチェックしてみよう。

 (1) You’d は、ご存知のようにYou wouldの略、ここでの wouldは、現実と異なる空想や願望を表す。

 (2) You’d Be So Nice to Come Home Toの末尾の ‘To’は目的語を導く前置詞、なのに目的語自体がないのは、それが主語と同じだから。こういう場合は、目的語を入れてはだめ。受験英語サイトを見ると、そういうのは「欠落構文」と呼ぶらしい。先月見かけた、英デイリー・テレグラフ電子版の見出しが欠落構文だった。”This is the kind of music you should listen To at work. (仕事の能率向上に役立つ音楽ジャンルはこれ!) 

(3) 次によくわからないのが ’Come Home To You‘ということばの意味。‘come home’なら’家に帰る’だけど、そこに‘To you’が付くとどうなるの?私が調べた英和辞書には、イディオムとしての適切な説明はなかった。そこで、ネイティブ用の便利な無料辞書サイト、The Free Dictionary.com を調べてみる。すると、以下のような記述が!

come home to someone or something

to arrive home and find someone or something there.( 帰宅して、’to’以下の人、あるいはそれ以外の何かを見つけること) 

  これだ!‘Come Home To You’とは、「自分の家に帰ると、あなたが居る。」という意味だったのだ。つまりYou’d Be So Nice to Come Home Toは、「僕が家に帰ったとき、もしも、誰かが僕の家に居てくれるとするなら、そして、その誰かが、もしも君なら、すごく素敵だろうなあ…」となり、直訳すると、詩的と言うには程遠い、やたらと回りくどい愛の表現になるのだった。

  巨泉さんは、この題名の正しい意味は『あなたの待つ家に帰っていけたら幸せ』としていた。そして、大戦下でヒットしたのは、『戦争のために、愛する人と離れ離れで暮らす何百万という男女の心にアピールした』から。どうやら、ずいぶん近づいてきたみたい。

 それでは、この言葉は、映画のように、男から女への口説き文句であり、「早く戦争が終わって、恋人の待つ故郷へ、或いは妻の待つ家に戻りたい!」という男たちの気持ちを語る歌なのだろうか?十年ほど前、私はそう確信し、『Ella at Juan Les Pain』でエラが快唱するこの歌の対訳を作ったのだけど…もう一度しっかり確かめておこう。 

=ネイティブに訊いてみた

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 持つべきものは友!米国に進出する日本企業のために、膨大な和英翻訳をこなすプロ中のプロフェッショナルであり、サックスでジャズ、ヴァイオリンでクラシックと幅広い音楽活動を続ける私の翻訳パートナー、ジョーイ・スティールさん(在サウス・カロライナ)は、私の疑問をいつも解決してくれる魔法使い。日英の比較言語とジャズの両方に精通するジョーイさんに、歌詞の本当の意味を訊いてみた。日本語検定一級の彼でも、英語のニュアンスを伝えるのは英語。驚いたことに、これは「プロポーズの言葉」だと、教えてもらいました。以下は要約。 

1.要するに、プロポーズの歌だよ。 

2.この歌の時代は、男性が外に出て働き、女性は主婦、というのが一般的だった。’仕事で疲れて家に帰った僕を、君が迎えてくれれば、どんなにいいだろう!’言い換えれば‘一緒になろう、結婚して!’ってこと。明らかに、男性から女性に向けた歌詞だよ。もちろん女性が歌っても問題ないけどね。 

3.結婚したカップルの間で、夫が妻にこのセリフを言う?それは、絶対あり得ない。例え離れ離れの夫婦でも考えられない。勿論、夫が戦地に居る夫婦がこの歌詞にグッとくるというのは、十分納得できるけどね。あくまで、「日常の夫婦生活に戻る」という意味じゃない。一緒に住もう、結婚しよう、という意味。

 *英語に関する質問サイトに日本人が投稿した同様の質問に対して、英国人女性がやはり「プロポーズ」という言葉で説明していたから、一般論として間違いないでしょう。

=リアリティ・ギャップ=

 結局のところ、「帰ってくれたら嬉しいわ」よりも「あなたの待つ家に帰っていけたら幸せ」の方が正しいけれど、英語を母国語とする人々の意味するところよりも広義だった。言語のリアリティ・ギャップは至る所にある。状況証拠に気を取られずに、謙虚にならなければと自戒。

515332000.jpg 一方、戦時中の男女の心をわしづかみにした歌の陰には、コール・ポーターの秘められたリアリティがあった。ポーターはバーリンと並ぶほどの愛国者として知られているけど、自分が戦地に居たわけじゃない。ポーターはすでに50才を過ぎ、落馬事故によって両足の自由を奪われて5年の歳月が経っていた。それどころか、真珠湾攻撃が勃発したのは、左足の再度の大手術とリハビリからようやく退院した翌月だった。

 今の言葉で言うとLGBTだったポーターの奔放な男性遍歴の中でも、最愛の恋人(の一人)とされるネルソン・バークリフト(右写真 Getty Imagesより)は、この歌は’僕たちの歌’、つまり二人のロマンスを基に作られたと証言している。

 ダンサー、俳優、振付師であったバークリフト(1917-1993)は、ポーターより二回り年下だ。二十歳そこそこで俳優を目指しヴァージニア州からNYにやって来た。ポーターと親密になったのは、ブロードウェイで役が付き始めた’41年頃だ。芸能界の超大物で大金持ちのポーターは、彼にとって、願ってもない後ろ盾だったはず。

 ポーターは、この若者に夢中になった。足の自由を奪われ、合併症に苦しむポーターの目に、若く健康でしなやかな肉体を持つ美青年は、愛らしく眩しいものだったに違いない。ポーターから彼に送られた膨大な手紙や電報は、デート場所を記した走り書きのメモに至るまで、ポーターの死後公表されていて、一部を伝記で読むことができる。 

f99014b379ebfe6154dc5746f952adf7.jpg 1942年、バークリフトはポーターの元を離れて、陸軍に入隊した。耐え難い寂しさを味わうのは専らポーターだった。逞しい若者がわんさか居る軍隊、勿論、軍隊にはゲイも居る。いろいろ浮名を流す年下の恋人の帰りを待つポーターは、僕My可愛いlittle兵隊soldierさんboy“に宛てて、残された寂しさや、臆面もない愛の言葉、時には嫉妬や非難の言葉を書き送っている。ポーターはLAとNYに複数の屋敷を所有し(戦前はパリにも)、ビヴァリーヒルズに近いブレントウッドの邸宅には、バークリフト専用の部屋が用意されていた。

 コール・ポーターの時代のアメリカでは、同性愛は違法、だから彼の嗜好はひた隠しにされた。リンダという妻を娶り、妻との「友情」は美化され語り継がれているけど、真相は本人しかわからない。彼はしばしば夫婦旅行にボーイフレンドを同行させることもあった。お気に入りのボーイフレンドを自宅近所のアパートに囲ったり、セレブ達で共同経営する高級クラブの支配人に据え、そこで別の男の子とデートしたり・・・毎日昼間から、プールサイドで男だけのパーティ三昧…私のような庶民には、面倒臭いとしか思えないけど、セレブだけに許されるゴージャスな享楽を謳歌した。実際のとこと、24時間介護してくれる使用人なしでは、トイレや着替えも難しいことも、ひた隠しにした。

 彼の恋の相手は、このバークリフトだけでなく、ロシア人建築家からトラック運転手まで、数え切れないほどいたけれど、一生を共にする相手には恵まれず、孤独な死を迎えている。

 戦時下の大多数の男女と、コール・ポーターの事情には、少しばかりのギャップがあるけれど、<You’d Be So Nice to Come Home To>が、大きな共感を巻き起こしたのは、ドロドロの愛憎を上手にクローゼットにしまい込み、美しいところだけを見せるという、プロフェッショナルなソングライターとしての手腕の賜物だったのか?或いは、戦地に行った愛する人への想いは、誰でも同じということなのだろうか?

=暖炉のメタファー=

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 コール・ポーターの権威、ロバート・キンボールの解説に、この疑問に対するヒントがあった。〝当初、この曲には複数の仮題が付けられていて、その中の一つが<Something to Keep Me Warm (僕を温め続けてくれるもの)>である。”というのです。恐らく、このタイトルがボツになったのは、アーヴィング・バーリンによる’30年代のヒット曲、<I’ve Got My Love To Keep Me Warm >を連想させるからでしょう。もしも、このタイトルだったら、歌手たちは、二行目の“You’d be so nice by the fire”を強調して歌ってたかも。この言葉、単純に訳せば「暖炉のそばの君は素敵だろうな。」になる。でも、この歌が「プロポーズの言葉」であるからには、「暖炉のそばの君」の意味はとても深い。

 寒い冬の夜、一人暮らしの我が家に帰ると、家の中は暗くて寒い。でも「君」と一緒になれば、明かりが灯り、暖炉で温まった家が「僕」を待っていてくれる。

 赤々と燃える暖炉は、仕事の疲れを癒し、すさんだ心を温めてくれる「君」の象徴、コール・ポーターが、いくつ屋敷を所有し、どれほど恋をしようとも、母親以外の誰に求めても得られなかった、「ぬくもり」の象徴ではなかったのかな?

=You’d be So Nice to Come Home To=
作詞作曲 Cole Porter (1943)

You’d be so nice to come home to,
You’d be so nice by the fire,
While the breeze, on high, sang a lullaby,
You’d be all that I could desire,

Under stars, chilled by the winter,
Under an August moon, burning above
You’d be so nice,
You’d be paradise to come home to and love.
 

家に帰って、君が出迎えてくれたなら、とても素敵だろうな。

暖まった暖炉のそばに君が居れば、もう最高だろうな。

心地良く吹くそよ風が子守歌を歌ってくれても、

僕の願いは君と一緒になることだけ。

凍てつく冬の星の下、

8月の燃える月の下、

いつも君と一緒なら、素敵だろうな、

最高に幸せだろうな、

僕を待つ、愛する伴侶が君ならば。

 戦争を体験した昭和の文化人、大橋巨泉さんは、「遊び」を、トコトン真面目に追及する楽しさを教えてくれました。この対訳ノートを、大橋巨泉さんに捧げます。合掌

  • 参考文献 

    COLE PORTER / A Biography by William McBrien / Alfred A. Knopf 1998刊
    The Complete Lyrics of Cole Porter by Robert Kimball / Da Capo Press 1992刊
    Cole Porter: A Biography by Charles Schwartz / Da Capo Press 1979刊