Sir Roland Hanna Trio
サー・ローランド・ハナ(p)トリオ
2000年1月25日(火)
●Sir Roland Hanna サー・ローランド・ハナ piano
1932年生まれ。トミー・フラナガン同様、デトロイトが生んだジャズの巨人の一人。ジョージ・ムラーツとの名コンビやサド・メル・オーケストラ、またソロピアノの名盤でも人気を博す。卓抜したテクニックと強烈なスイング感、デトロイト派ならではの気品は、現在<ジャズ界最高の巨匠>の名にふさわしい。
●Paul West ポール・ウェスト bass
1934年NYハーレム生まれ。ビリー・ホリデイ、ダイナ・ワシントン達との共演。ディジー・ガレスピー生前の腹心的存在であった。またNY夏の風物詩、JAZZMOBILの運営にも携わる。現在はサー・ローランド・ハナのレギュラーベース奏者として活躍。
●Eddie Locke エディ・ロック drums
1930年生まれ。サー・ローランド・ハナ同様、デトロイト出身のジャズジャイアント。60年代には、往年のコールマン・ホーキンス・カルテットのドラマーとして、当時のレギュラーピアニスト、トミー・フラナガンと数々の歴史的名盤を録音。デトロイト・バップらしい渋いビートを叩きだす名手。
曲目
<1st セット>
1. Invitation 作曲Bronislaw Kaper
2. Autumn Leaves 作曲Joseph Kosma
3. One For Amos 作曲Sam Jones
4. It Could Happen To You 作曲Johnny Burke, Jimmy Van Heusen
5. Oleo 作曲Sonny Rollins
6.アンコール:All The Things You Are 作曲Jerome Kahn
<2ndセット.>
1. Colors From A Giant Kit 作曲Sir Roland Hanna
2. I Can't Get Started 作曲Vernon Duke
3. Stella By Starlight 作曲Victor Young
4. This Time, It's Real 作曲Sir Roland Hanna
5. Caravan 作曲Juan Tizol, Duke Ellington
6. I'll Be Seeing You 作曲Sammy Fain
7. *アンコール
Prelude In E Major =piano solo 作曲Sir Roland Hanna
サー・ローランド・ハナはOVER SEASが愛してやまないデトロイト派の大ピアニスト。マエストロという名にふさわしい名手です。トミー・フラナガンと同じ高校の2年後輩でもあり、OVER SEASにはおなじみのアーティストです。寺井尚之は親愛の情を込めてハナさんと呼び、ハナさんは寺井のことを「ヒサユキチャン!」と呼びます。今回は現在のレギュラートリオを引き連れての初めてのライブだったので、期待も盛り上がりました。何しろドラムが我々の尊敬するテナーの父、コールマン・ホーキンス・カルテットでフラナガンと共に在籍していたドラマー、エディ・ロックなのですから!うちでの公演の前日が大阪でオフだったので、ハナさんはトリオを引き連れて“ヒサユキチャン”のLIVEを聴きに来てくれました。この夜の出演は気合十分のフラナガニアトリオ。お得意のデトロイトバップの名曲の数々にデトロイト出身のハナさんとエディ・ロックは大喜び!デトロイトバップの名曲でフラナガニアトリオの十八番である<With Malice Toward None>が始まった時に場内から盛大な拍手が起こるのを見てメンバー達は感心していました。見よ!OVER SEASのお客さんのレベルの高さを!へへ・・・。盛り上がったところで今度は、ジャズ曲のオールマイティともいえる切り札、D.エリントンの<黒と茶の幻想>で大いに気分を盛り上げてからハナさんに一曲お願いしました。
メンバー全員やる気まんまんでバンドスタンドへ向かおうとした瞬間、ハナさんはもうピアノの前に座り、ソロで<My Shining Hour>を奏で始めました。先ほどのカラフルなエリントンナンバーとの何と鮮やかなコントラストでしょう!奇行の様に受け取られかねませんが、全体の構成としてハナさんには大変理にかなったソロだったのです。その場にいた全員が深い感動に包まれました。これもデトロイト派ならではのやり方ですね。演奏後寺井は、ダンディなニューヨーカーP.ウエストとの再会を喜び、今年70歳になるエディ・ロックには「30年間、あなたを待ち続けていました」と言うと、彼も感慨深げでした。それが翌日のエディのエネルギーへの引き金となりました。
フラナガニアトリオによる前日の歓迎ライブを聴きにきて、
1曲弾いてくれたハナさんと、その指先を食い入るように見つめる寺井
さていよいよ本番当日!ハナさんの作品以外は全てなじみ深いスタンダードばかりでしたが、どれもこれもハナさんのトリオならではの解釈ですばらしい演奏でした。ポール・ウエストは手堅いサポートに徹して黒いビートをひたすら刻みます。ハナさんは安定した鼓動の上で蝶のごとく華麗で鮮やか!超ウルトラCを連発、sssh〜と気合を入れながらピアノの椅子を右へ左へ座り変え奥義を出す様子は牛若丸のようです。ドラムのエディ・ロックがこれまたちょっと現代の若手ドラマーには出せない奥深いリズム。ブラシもスティックも、また素手でもめちゃくちゃヒップでシックなドラミング。河原達人氏の目は完全に点になっています。後で河原氏はエディからドラマーとして絶賛され、おまけに写真まで一緒にとってくれと頼まれました。
圧巻はキャラバンでのドラムソロ、これは彼が昔、名トランペッター、ロイ・エルドリッジのバンドにいた時の持ちネタでしたが、その凄かったこと!ダンスしながら叩き出すそのフレーズ、ダイナミックで、唄い叫び、スイングするこのドラマー!70歳の上品なおじいちゃんは、バンドスタンドで、世界一華のあるかっこいいスターに変身していました。
<CARAVAN>が終わった瞬間、満員とはいえせいぜい60人しかいない人たちが全員立ち上がって雄叫びを上げているのを見て私はさらにびっくり!エディの気合でOVER SEASも甲子園に変貌していたのでした。ハナさんはこの感動の余韻を楽しむかのようにラストチューンにリズムの空白を生かした
<I'll Be Seeing You>を選びました。甲子園と化した会場の拍手は鳴り止まず、アンコールはこれまたソロ!ハナさんの美しい<Prelude>、ピアノのタッチの微妙な陰影が曲の奥行きを深め、ため息のもれる一曲。終わった後、感動で涙ぐんでいる人が一杯いました。恥ずかしながら私もその一人でした。鳴り止まない拍手でしたが、ここで寺井がレフリーストップ。終演後ミュージシャン達も大変ハイになってBOYSとなっていました。私の忘れられぬ名演リストがまた1ページ増えました。こんなに良いコンサートを創ってくれた演奏者とお客様達全員に心から感謝した夜でした。
河原達人 |
00/02/05 10:47 |
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この間のローランド・ハナトリオのライブ、すごかったですね。後半のエディロックさんの「キャラバン」のドラムソロ、ジャズドラムの歴史すべてを見させていただいた様な気がします。あれから1週間ほど微熱が続きました。エディロックさんと一緒にとってもらった写真で私の目が半眼になっていたのは、単にアルコールに侵されていたためではなく、その「熱」が原因です。あのライブの日、私の目はずっとあの写真の様だったそうです(後日、寺井さんがそう言うてはりました)。
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寺井尚之 |
00/02/06 15:19 |
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河原、おまえ、ローランド・ハナさんにSIRが抜けてるやないか。なんちゅう失礼なやっちゃ。それから今度おまえのメール友達エディロックの十八番、キャラバンやってくれるのを期待してるわ。皆さんもぜひ期待して聴きに来て下さい。 |
管理人 |
00/02/06 15:55 |
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どうも、寺井さん。僕も河原さんのキャラバンをぜひ聴きたいのですが、あの、途中でスティックを持たずに素手で延々やってくれたエディ・ロックさんのソロも河原さんは真似してくれるのでしょうか。僕の席からは河原さんの顔がよく見えたんですが、あの場面ではいちいち痛そうに顔をゆがめながら、苦悶の表情で見ておられたので(笑)、あれも期待するというのはやはり気の毒でしょうか? |
Dalarna |
00/02/07 00:32 |
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この間の「サー・ローランド・ハナ・トリオ」はすごかったなあ・・・ぼくは高松から駆けつけたので2部しか聴けなかったけど、通しで聴きたかったなあ・・・。フラナガニア・トリオでの「キャラバン」期待してます!(^^)河原さん、手のひら鍛えといてや。
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児玉勝利 |
00/02/14 23:13 |
あの感動を是非もう一度 |
サー・ローランド・ハナトリオの演奏はすばらしかったですね。見ていて又聴いていて体が震えてしまいました。サー・ローランド・ハナさんのピアノ演奏はピアノの魔術師との表現が決して誇張でないことを実感させてくれました。しかし、それ以上にすばらしかったのがエディ・ロックのドラム演奏です。これ程の演奏があったのか。寺井さんはアーサー・テーラーはもっとすばらしかったと言います。これよりもすばらしい!ちょっと想像できないな。でも、是非あの感動をもう一度味あわせて下さい。
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元ドラ赤井 |
00/02/16 01:17 |
河原氏を後押しする会 |
サー・ローランド・ハナトリオは本当にすばらしい、たのしい演奏でしたね。 今まで何人ものジャズメンのステージを見てきましたけど、身も心も心底、スウイングしたのは久しぶりです。体も心も本当にスウイングしました。サー・ローランド・ハナ・トリオのメンバーの人柄が出ていた素晴らしいライブだったと思います。
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Over Seasの常連さん、Dalarnaさんのホームページでもこの日のライブレポートを読むことができます。こちらも読んでいて楽しくなる素晴らしいレポートです。読みたい方はこちらへどうぞ。
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