Junior Mance Trio
ジュニア・マンス・トリオ
2000年3月4日(土)
●JUNIOR MANCEジジュニア・マンス piano
1928年生まれの超ベテラン。明るく楽しいスインギーなピアノは熱いライブが期待できる。
●CALVIN HILL カルビン・ヒル bass
マッコイ・タイナー等と活躍。強烈なビートのベーシスト。
●AKIRA TANA アキラ・タナ drums
最高にスイングする日系トップ・ドラマー
曲目:1stセット
1. Falling In Love With Love 作曲 Richard Rodgers
恋に恋して
2. When Lights Are Low 作曲 Benny Carter
明かりが暗くなったとき
3. Lover Man 作曲 Jimmy Davis, Roger Ramirez, Jimmy Sherman
ラバーマン
4. Jubilation 作曲 Junior Mance
ジュビレーション
5. Blue Monk 作曲 Thelonious Monk
ブルー・モンク
6. What Is This Thing Called Love? 作曲 Cole Porter
恋とはどんなものでしょう?
アンコール
7.A Single Petal Of A Rose 作曲 Duke Ellington
シングル・ペタル・ オブ ・ア・ ロ-ズ
8.Work Song 作曲 Nat Adderley
ワークソング
曲名:2nd セット
1. Good Bait 作曲;Tadd Dameron
グッドベイト
2. Whisper Not 作曲Benny Golson
ウィスパー・ノット
3. Emily 作曲 Johnny Mandel
エミリー
4. Straight No Chaser 作曲 Thelonious Monk
ストレイト・ノー・チェイサー
5. You Donユt Know What Love is 作曲 Gene De Paul
ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ ・イズ
6. God Bless The Child 作曲 Billie Holiday
ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド
7. Take The A Train 作曲 Billy Strayhorn
A列車で行こう
アンコール
8. Blues In G 作曲 Junior Mance
Gのブルース
今日は2年ぶりに、ジュニア・マンストリオのLIVE。でも朝から雨模様、ピアノは雨が降って湿度が高くなると人間と一緒でふさぎこみ、とても鳴りが悪いんです。でも調律師の川端氏はそこを少しでも鳴ってくれるように丁寧に調律調整をして下さって、いつもながら感謝。OverSeasに出演する大ピアニスト達にも定評があります。その結果、やはりジュニアの演奏はうっとうしい天気を吹き飛ばすように快調そのものでした!
ジュニアと寺井が最初に出会ったのは約10年前の<100 GOLD FINGERS>という、師匠トミー・フラナガンが出演していたコンサートの楽屋でした。声をかけてきたのはジュニアの方で、「お前はヤスの先生だったのか?」と聞いてきました。ヤスとは、寺井の弟子のベース奏者で、そのころNYの音楽学校へ寺井の口利きで入学し、ジュニアのクラスで学んでいたYAS竹田のことです(今もNYで活動していて、先日もこのHPの掲示板に書き込みしてくれました)。黙っていると目つきが鋭くて、いかつい感じのジュニアは、本当はすごく気さくな人で、「ヤスはなかなかよくやってる!」と誉めてくれました。なぜ寺井だとわかったのか不思議ですが、多分トミーと一緒だったのでピンと来たのでしょう。ジャズメンに多いタイプの動物的な勘の人です。
以後、ジュニアとはしょっちゅう出会うことなるのですが、ジュニアは空手2段の黒帯で、とにかくいつもすごく元気!今年72歳とはとても思えません。常に快活でとにかく早口、ちょっとかすれた声で実によくしゃべります。自分が腹を立てた話でも、しかめ面でボソボソ言ったりせず、エナジーたっぷりに毅然として言うので、英語がわからなければ、喜んでると思われるかも。飛び切りブルージーなのに、爽快で楽しいジュニアのピアノと全く同じです。
若い頃はあの天才歌手ダイナ・ワシントンに伴奏者として可愛がられ、ワーデル・グレイやソニー・スティットらサックスの巨人たちのお気に入りでもありました。秀才で(あのおでこを見ればわかる!)ご両親は医者にしたかったそうですが、ピアノにのめりこみ勘当されそうになったとのこと(よく聞く話です)。その頃の話を聞くと立て板に水で本当に面白いですよ。
他のメンバーはベースがカルビン・ヒル。彼もマルコムX風の厳しい見かけですが、実は優しく真面目な、お坊さんのような人で、牛乳も卵も口にしない徹底した菜食主義者です。ドラムのアキラ・タナもまた、寺井の昔からの友達で、OverSeasのお客様達には、LIVEでもプライベートでもおなじみです。一音に全霊を打ち込むかのような気迫のこもったダイナミックなドラミングにファンはしびれます。
98年に続いて2000年もOver Seasにやってきたジュニア・マンス。
さて前日東京でレコーディングした疲れも見せず、一行は元気溌剌OverSeasに現われました。勝手知ったる他人の店、サウンドチェックもそこそこに1stセットの一曲目は「恋に恋して」。昨年結婚して幸せ一杯のジュニアの心境でしょうか、しょっぱなからアキラが思い切りよいドラムソロを聴かせ、これからの展開に期待が高まります。 7時10分過ぎに、タイムリーな「明かりが暗くなった時」を、快調にスイングさせ、盛り上がったところで「ラヴァーマン」で泣きが入りました。それからジュニアファンなら誰でも知ってるヒット曲「ジュビレーション」に突入、コテコテの盛り上がりは否応なしに高まります。カルビン・ヒルのズイズイいう独特の音色のベースソロ、歯切れの良い表情豊かなアキラのソロも印象に残りました。続いてスローブルース「ブルーモンク」でマンスの真骨頂を聴かせます。決して指使いやテクニックが凄いわけでなし、ボイシングが強烈なわけでもないのに魅力がある、とにかくスイングしグイグイ引き込まれて行きます。そして再び可愛い恋の唄「恋とはどんなものでしょう」へ。70過ぎて恋とは何でしょうって?ああ可愛いおじいちゃん!さっきの「ブルーモンク」と対照的にアップテンポで軽快にスイング。
この魅力は何なのかと思っている間にジュニアが「ここで、ちょっと休憩を・・」なんて言ってるじゃありませんか!?プロモーターの川上氏がお客さんが入れ替わることを知らせてくれてなかったようです。寺井がそっとジュニアに耳打ちすると、更にアンコールを2曲。エリントンの<女王組曲>から、エレガントな小品「ア・シングル・ペタル・オブ・ア・ローズ」を一曲と、あの「ワークソング」。アキラが一音一音に全身全霊を打ち込むような鋭いドラミングでメリハリを利かせ、カルビンがズイズイとしぶいソロを聴かせます。体をくねらせてソロを繰り出すカルビンは一切無駄がない動きでベースと完全に一体化していて、ディズニー漫画のようでした。一部に来たお客さんはトクしましたよね!
しばし休憩をはさんで時間どおり2ndセットが始まりました。
1曲目のオープニングは同郷シカゴの天才作編曲家、タッド・ダメロンの代表作「グッドベイト」をミディアムテンポでスインギーに流し、続いてベニー・ゴルソンのヒット曲「ウィスパー・ノット」をややゆっくりと演奏。1stセットではピアノの後ろにぴったりとついて背後霊のように必死に見学していた寺井も、ちょっとゆっくり座っています。でも引き続いて、ジュニアの十八番であるきれいなワルツ、「エミリー」を、タッチの色彩を細かく変化させながら弾き始めるや、寺井も再度背後霊に変身。この曲は2年前にもここで弾いてくれましたが、今回のヴァージョンの方が、少し油っぽさが抜け細めのエミリーという感じでした。そういえばNYでジュニアの彼女を見た松本君が若くて美人と言ってたっけ。お次は甘さを控えて新たなモンクチューン、「ストレイト・ノー・チェイサー」に挑みます。存在感のあるベースと表情豊かなドラムスがジュニアと一体化して鮮やかなダイナミックスを紡ぎ出し、最後にはド迫力のストライド奏法になだれ込み会場全体が深いグルーブに包み込まれて行くのがわかります。
外はどしゃ降りで車が走るとタイヤの音も聞こえますが、OverSeasの中は熱い鼓動で充満。ああ、これがジャズの醍醐味やわ!今夜、マライア・キャリーを見に行っちゃったどこぞのお方、どっちが楽しかったかな?
さてお次は今日初めての悲しい恋の唄、「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」。何ともブルージーですが、カラッとして後を引かない語り口は自分が幸せだから?
ここら辺まで来て、私が居るドアの前からお客様を見渡すと全員がとても楽しそうで活気が一杯。特に高橋エディターの笑顔が印象的でございました。ミュージシャン達の元気をもらったかのように反応が良いのにも感心。高松、横浜、熊本、北海道からはるばる駆けつけて下さったお客様も近郊のお客様も皆本当に楽しそうで、私は心の中で“YEAH、MAN!”とほくそえんだのでした。
ジュニアはビリー・ホリデイの愛唱歌を続けます。なんと「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」、それもジャズロック!でもアキラさんとカルビンのサポートが歯切れ良いのでちっともダサくない、これまたカラッとしたテイストになりました。2流がやるとこうは行きません。10時を大分回ったところで、締めくくりは「A列車」。もう止まらない!フニクリフニクラまで入ってくるチョー楽しいアドリブフレーズの連続!勿論拍手は鳴り止まず、アンコールはアフターアワーズおきまりのコテコテのキー、「Gのブルース」。ああ、これこそジュニア・マンス!これがブルースやで!ほんまええわ!ありとあらゆるブルースの文句が繰り出され、ジュニアの世代が大好きなブルース歌手チャールズ・ブラウンの“ベイビー、一晩中お前の手を握らせて”という節が出てくるとアキラも思わずジュニアと目を見交わしてニンマリ!YEAH!私もあのブルース大好きなんです!
拍手は依然として鳴り止まず、スタンディング オベイションとブラボーの嵐!雨などどっかへ行っちゃった。ああ、楽しかった!ジュニア・マンスはやはりLIVEに尽きる!そして今夜に限って、皆の歓声も、キーはGだったのでした。
掲示板から
ジュニアマンストリオ、すばらしい一時
児玉勝利ジュニアマンストリオ、すばらしい一時をすごさせてくれました。僕にとって第一の目当てはアキラ・タナさんのドラムが再び聴けること。「管理人」さんも書いておられるように、アキラ・タナさんのドラムを叩くときの幸福そうな豊かな表情。その表情がドラムの演奏にも現れるのでしょうか、間合いの取り方やシンバルワーク等いろいろな面で確かなテクニックに裏打ちされて豊かな表情を見せてくれます。
カルビン・ヒルさんのベースは独特の味わいのある音色です。そして僕の場合どうしても鷲見さんと比べてみたくなるのですが、鷲見さんが右手だけでなく流れるように動く左手が合わさって歌を作り上げていくのに、カルビン・ ヒルさんのばあいは左手の動きはあまりなく、主として右手で独特の音色を用いて歌を作り上げていくようで、僕としては対称的で面白く感じたところです。
ジュニアマンスの手を見ていると何だかカニが鍵盤の上を歩いているかのように見えてしまうのですが(失礼)、その手が心踊る音楽を味あわせてさせてくれました。
最後にもう一度、ああ、すばらしい一時がすごせた。
アキラ・タナさんからのメッセージ
管理人管理人の高橋です。
アキラ・タナさんからOverSeasに送られてきたメールをここに掲載させていただきます。わざわざローマ字で日本語のメッセージを書いてくださるところに、アキラさんのお人柄と、日系としての我々日本人ファンに対する愛情がうかがえて感激してしまいます。Minasama,
Yube totemo tanoshikatta. Itsumo Overseas ni koraraete
subarashii fuuinkino naka de enso dekirukoto wa hontooni
shiawase desu. Arigato. Gochisoo mo saiko de enso
surumae tabenaikoto ni shite imasu!!!Dewa kyo Niigata no oo yuki to samusa to hachijikan ni
densha noru koto o tanoshimi ni shite emasu!!!!Dewa mata tsugi no korareru made kiyostsukete kudasai.
Okasan ni yoroshiku!!-Akira
アキラ・タナさんのホームページ→http://www.tanareid.com/
やっぱりJAZZやね
ANNジュニア・マンス、前回にもまして良かったです。あのパワー、グイグイ来ました。上質のこってりとした生クリームのような、味も香りも濃厚、風味豊かやけどくどくないおいしさだけが残るそんな感じでした。3人の息もぴったりで、音の混じり合いや間もさすがプロやこれやないとあかんと感心しました。
ジュニア・マンスすばらしかったです
Tak遅まきながら3/4のジュニア・マンスTrioすばらしかったです。一流のArtistが揃った時に創り出されるサウンドはかくも違うものかと感服させられました。華麗で踊るようなジュニア・マンスのピアノ、シンバルが飛んできそうなど迫力かつ繊細なリズムを叩き出すアキラ・タナのドラム、正確無比かつ心に響くなんとも言えなカルビン・ヒルのベース、否応なく興奮し感動させられたLiveでありました。また気軽にサインにも応じてくださった皆さんの人柄にも魅力を感じずにはいられませんでした。
それにしても私は1stで後ろ髪を引かれ禿げそうになりながら去りましたが2ndではいったいどうい展開になったのでしょうか。誰か教えてくださーい。
最後にこんな楽しいLiveを強力に勧めてくださった寺井御夫妻に心より感謝しております。ありがとうございました。ジュニア・マンス!
管理人いやあ、楽しい、楽しいとは聞いてましたが、ほんとに楽しかったです、ジュニア・マンスのLIVE。「客ってのはこうやって楽しませるもんさ」という術中に、こっちもわかっててハマっていく快感とでも言うんでしょうか。すぐ目の前にあの人たちがいて、あんなに楽しそうにジャズをやっていて、それを見、聴いている自分がいて、というそのシチュエーションに酔いしれる快感を心ゆくまで堪能させてもらいました。
特に「通りすがり」さんも書いてらっしゃいますが、アキラ・タナさんのあのドラムを叩く表情ったら最高。エディ・ロックさんも本当に楽しそうな顔で叩いていたけど、あの表情を河原さんに期待してもいいでしょうか、河原さん(笑)。
惜しむらくは、せっかくサインしてもらうために買った2年前の鶴岡での同メンバーによるライブ盤を、家に置き忘れてしまった我が情けなさです。代わりに急きょ心斎橋のヴァージンに寄って買った(三村さん、ごめんなさい!)ライブ盤「That's Where It Is!」にサインしてもらい、いまそれを聴きながらこれを書いています(内容Goodです)。とにかく楽しいライブでした。
アンタが主役!
通りすがり忙中閑あり。アキラ・タナは最高やった。
生で聴いたおいらは幸せ者や。CDで音は再生できても、顔の表情までは無理やさかいな。そりゃあーよかったな!ヘイヘイホーホケキョ!TAKAさんのホームページはこちら
BACK HOME