第17回発表会、皆の演奏が花開きました!

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 第17回「寺井尚之ジャズピアノ教室」発表会、新人達からベテランまで、日頃の稽古の成果が花開き、ラストは寺井尚之メインステムで大いに盛り上がりました。
 応援のお客様や一般見学の皆様も、最後までお楽しみ頂きありがとうございます!
 各賞はこのようになっていますが、私は皆のどの演奏も大好きでした!!ピアニストたち、本当に今日は名演をありがとう!

<各賞>(敬称略、次点略)

  • 最優秀賞: あずかり (殿堂入りあやめ会長 除外)
  • 努力賞: ひとみ、Reiko  (殿堂入りあやめ会長 除外)
  • パフォーマンス賞: ひとみ
  • 構成賞: あやめ会長
  • スイング賞: あやめ会長
  • タッチ賞: あやめ会長
  • アドリブ賞: あやめ会長
  • 新人賞: ネネ、ひとみ、アユミ、Reiko

 朝一番にやってきたのは、山口さんから贈られた大きな花束!大輪の紫陽花など、淡い色調の豪華な花は、生徒達の可能性を表しているようでベスト・マッチ!マダム、いつもありがとうございます!
 その次は、皆を応援しにやって来た「漁師の息子」でドラマーのImakyでした。今北さん、長時間お付き合いしていただいた後、活きのいい差し入れありがとう!!
 一日中、ピアニストたちを撮影、録音してくださったYou-non氏、ピアノのサウンドを気にしながら、生徒達とそのピアノを色んな面でお世話くださる名調律師、川端さん、記念品の可愛いタオルもありがとうございました!
 出演者達のいかなる不測の事態もカバーして、名サポートを聴かせて下さったベーシスト宮本在浩さん、ドラマー菅一平さん、今日は本当にお疲れ様でした。
 発表会の詳細は、You-non氏撮影の名ショットを中心に、HP上に近日レポート掲載予定。
 おつかれ~
 Come Sunday 次の日曜日は生徒会セミナーで会いましょう!
CU

Check It! 「ジャズ批評」:トミー・フラナガン特集

 8月終盤、いつもは夏のエンディング・カデンツァをうるさく奏でる蝉も沈黙する涼しさに、気分は不完全燃焼・・・皆さんはいかがお過ごしですか?
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  今週発売された、『ジャズ批評』9月号はトミー・フラナガン特集!
 OverSeasでおなじみの常連様、"ヨコハマ・ピープル”こと、『トミー・フラナガン愛好会』の幹部、和田宣行石井将浩両氏の多大な尽力で完成したディスコグラフィーや、むなぞう副会長をウルウルさせた座談会(両氏+上不三雄氏)など、充実した内容です。
diana_wada.jpg  和田宣行氏とダイアナの2ショット!(フラナガン愛好会HPより)

 和田さんも石井さんも文章が上手!夜更けにOverSeasに出没される際の和田氏は、大体「出来上がっている」状態なので、余りにも端正な文章とのギャップが堪えられません。和田さん、またOverSeasで会いましょう!
ishi_tommy.jpgトミー&石井夫妻、ブルーノート東京の楽屋にて。(フラナガン愛好会HPより)
 石井さんの対談でのお話は私もウルウルしました!ダイアナに本を送ってあげようかな?石井さんご夫妻は、秋頃OverSeasに来られるそうなので、皆でいろいろお話を聞きましょうね!
 OverSeasの注目は寺井尚之のインタビュー!インタビュアー太田雅文(vo)さんのおかげで、日ごろジャズ講座の毒舌に慣れている皆さんには驚き(?)の、まろやかな談話が楽しんでいただけますよ!
 各界の方々が選ぶ「トミー・フラナガンこの3枚」の中で、’90年代にヴィレッジ・ヴァンガードにトミー・フラナガンの演奏を聴きに行くと「最高の演奏なのに、いつもガラガラで涙が出た。」と書かれていた記事を見つけ、意外に感じました。そんな夜もあったのかな?’90年代当時、NYのジャズクラブで一番お客の呼べるのは、ホーンならジョージ・コールマン(ts)、ピアノ・トリオなら、トミー・フラナガンかマッコイ・タイナーと言われ、ヴィレッジ・ヴァンガードがフラナガンなら、スイート・ベイジルは同じ週にマッコイをぶつけて、通常週替わりの演奏もフラナガンは異例の2週間でずっぱりだった。私が行ったときは、いつも超満員だったんだけど・・・
 フラナガン夫妻の友人で、来日した時には必ずお噂を聞いていた、著名な写真家、中平穂積氏の短いエッセイも、感慨深いものでした。中平氏がトミーにプレゼントされたというコニカの小さなカメラで、トミーがよく私たちの写真をバシャバシャ撮っていたいたことや、フラナガンのお家に飾ってあった羽子板を懐かしく思い出しました。
 トミー・フラナガン愛好会HPを覗くと、ジャズライフに掲載された、『トミー・フラナガン3@OverSeas』の記事(by 後藤誠氏)も掲載されていました。巻頭グラビアで写真も沢山!このコンサートを知らない人はぜひ見ましょう!
 ジャズ批評9月号は、OverSeasにも置いてありますので、明日のThe Mainstemの休憩時間にも読めますよ。
CU

日曜セミナーでスタンダードをDIG!

 こんにちは!夏の疲れや、世界陸上による寝不足でバテバテになっていませんか?寺井尚之ジャズピアノ教室は発表会後も燃え尽きず、来る9月6日(日)お昼に、日曜セミナーを開催いたします。

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一般参加歓迎!寺井尚之ジャズピアノ教室生徒会主催セミナー
テーマ:「スタンダード曲をフラナガンの味わいにするには?」
日時:2009年9月6日(日)正午~4pm(開場11:30am)
場所:Jazz Club OverSeas
受講料:2,500円

seminar_chairpersons.JPG  寺井門下優等生コンビの講演もこうご期待!あやめ会長、むなぞう副会長
 今回は初心者の生徒たちに、いわゆるスタンダード曲の楽しさと、彼らが大師匠と呼ぶトミー・フラナガンの音楽の特徴を体験してもらおうという趣旨で開催いたします。演奏家でないジャズ・ファンにも楽しい講座になりそう!

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 長年トミー・フラナガン&寺井尚之を聴きこんできたむなぞう副会長は、アービング・バーリンのじーんとする名曲、『How Deep Is the Ocean (ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン)』を解説。「”海より深い恋心”・・・トミー・フラナガンがこの名歌詞をどう読むか?」その辺りの解説と、むなぞう君による歌詞対訳が、私も楽しみです!フラナガン・バージョンは”Sea Changes”に収録されているので、聴いておくといいかも・・・
lady_be_good_for_ella.jpg  あやめ会長は、モンク・チューン『Ruby, My Dear ルビー・マイ・ディア』と、ガーシュイン歌曲、『Isn’t It a Pity イズント・イット・ア・ピティ』の2曲、様々な演奏、歌唱を例に取りながら、トミー・フラナガン音楽の特徴や、門下生が応用できそうなテクニックの秘密を教えてくれるでしょう。なお『Ruby, My Dear』のフラナガン・バージョンは”白熱”で、また『Isn’t It a Pity』は”Lady Be Good for Ella”で聴けるので、お持ちの方はぜひ聴いてみてください。
<真打は枯葉とベサム・ムーチョ、それからサテンドールでジャズ高座>

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 今回のレクチュアを取り分けルンルンで準備していたのが真打、寺井尚之。「それならわしは、バリバリのスタンダードで勝負や!」とピックアップしたのは、なんと『枯葉』、『ベサメ・ムーチョ』それに『サテン・ドール』の3大スタンダード、おかげで、対訳係りにはシャンソンからトリオ・ロス・パンチョスのスペイン語まで・・・「勘弁して~」という位、どっさりタスクの山。
 当初、子供の頃から、それら大スタンダードの数え切れない凡演を聴き育った私には苦役に思えましたが、やって良かった!イヴ・モンタンの男の魅力や、サボテン・ミュージックの明快さにシビれながら、楽しくお仕事させていただきました。外国生まれの歌詞を読み解くと、その国の「文化」や「情」の違いというものが垣間見えて面白いものですね。
 ナット・”キング”・コールからマイルス・デイヴィスまで、名演、凡演、怪演・・・3大スタンダード曲のさまざまな演奏を聴きながら、トミー・フラナガン音楽の神髄に迫る寺井尚之の日曜噺、たった2曲なのに、どうしても喋り足りないそうで、生徒会にかけあって、当初3時までの予定を、4時前まで延長してもらいました。今回も後半は講座から「高座」になりそうです。しかしオチは私も知りません。
 一般のお客様のご参加も、生徒一同大歓迎です。なお、給食は日曜名物、牛すじカレーとロール・ケーキになっております。
参加ご予約はOverSeas(TEL 06-6262-3940)まで。
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片想いのベクトル “If You Were Mine “対訳ノート(18)

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havfrue_alm_blaa.jpg   アンデルセン童話の人魚姫を例に出すまでもなく「片想い」はとても辛い。童話の人魚姫は、言葉を失ってから、恋と命を両方失い、「フーテンの寅」はさすらいの旅に出る。歌舞伎なら、会いたさ一心で放火したり、大蛇に変身してまで男を追いかけまわしたりする。現実世界では、ストーカーになったり、電車で関係ない人の口の中に手を突っ込んだりして逮捕されたりすることさえある。片想いは不幸だ。
 でも、先週のThe Mainstemが演奏した片想いの歌、『If You Were Mine 』には、チャップリンの映画の様に、希望の星のまたたきが見え隠れして、なんとも不思議な魅力がありました。
 「片想いの歌」はジャズやポップの世界では「トーチ・ソング(Torch Song)」と呼ばれてます。「報われぬ恋の炎の歌」という意味ですね。
  『If You Were Mine 』はジャズ・スタンダードでと言えるほど有名ではないけどビリー・ホリディゆかりの歌。だからホリデイを愛するフランク・ウエス(ts)(『Sonny Rollins Plays」:講座本Ⅰp.86参照)やトニー・ベネット(vo)も取り上げている。
for_lady_day_2.jpg  私はカーメン・マクレエのライブ盤『For Lady Day, Vol. 2』で覚えました。「次の歌は余り有名ではないけど、ビリー・ホリディの大ファンならおなじみ・・・」、そう言ってイントロなしでピアノだけをバックにメドレーで歌う。伴奏者は役不足もいいところですが、カーメンの歌に、私の心の底にある、無意識な煩悩をギュッと掴まれたようなショックに、耳が離せなくなっちゃった。こんな刑事に取り調べを受けたら、やってない犯罪でも「私の犯行です。」とすぐ自白しそう・・・「しまった!」と思いながら、結局アルバム一枚皆聴いちゃった。他のトラックでゲストに入るズート・シムス(ts)も最高!・・・若い頃からビリー・ホリディにどっぷり心酔して数十年、カーメンの音楽解釈は隅々まで発酵し、余りに鋭い表現は、もう一度聴くのが恐くなる。フラナガンに心酔する寺井尚之のプレイも後10年くらいすると、こんなに濃くなるのかな?
carmen_mcrae.jpgCarmen McRae(1920-94)
 この曲は、ジョニー・マーサー作詞マット・マルネック作曲、映画《To Beat the Band》の挿入歌でした。ジョニー・マーサーは、自然なサウンドを生む歌詞と、ジャンルを問わない作詞技量でアメリカン・ポピュラー音楽史上最高のリリシストと言われています。マット・マルネックは、いくつになっても楽しめるビリー・ワイルダー映画「お熱いのがお好き」のバンド・アレンジや、あの映画でマリリン・モンローが歌ったトーチ・ソング、『I’m Thru with Love』を作曲した人です。
 とはいえジャズ界では、なんといっても’35年録音の、テディ・ウイルソンOrch.に華を添えたビリー・ホリディのデビュー、いわゆる「ブランズウィック・セッション」が有名。
   
 レディ・デイは20歳の駆け出し歌手、フレージングやタイムの取り方はすごいけど、まだまだ荒削り。でも、レコード会社に提示された聞いたこともない膨大な曲を、テディ・ウイルソンが自分のアパートでビリーと平均1曲1時間のペースで稽古して、その間にヘッド・アレンジを作って、スタジオ入りし、バンドと一発録りしたものと言われると鳥肌が立ちますね!
 先週聴いたThe Mainstemのプレイは、このビリー・ホリディではなくてボビー・タッカーが伴奏する円熟したホリディを想像させてくれました。レコーディングはこれ一度しかないけれど、ライブではずっと歌っていたのかな?
 もし私が村上春樹なら、『1Q84』の「青豆」のシークエンスにこの曲を入れ、「天吾」のシークエンスにマクレエがメドレーで組み合わせたもうひとつのトーチ・ソング“It’s Like Reachin’ for the Moon”を挿入していただろう。

If You Were Mine イフ・ユー・ワー・マイン
原歌詞はここに。
あなたが私のものならば
天下は私のもの、
あなたが私のものならば
素敵な事はなんでもできる。

星に命令しよう、
そこにじっとして!
愛しい人の行く手を照らすよう、
頭上の星は、
皆、あなたに従うように。

あなたが私のものならば、
あなたの愛だけに生きる。
あなたの殿堂に膝まずき、
私の全てを投げ出そう。

あなたと引き換えなら
この心臓も、
この命も惜しくない、
死んで本望、
あなたが私のものならば。

 片想いでも、相手の幸福を願える想いなら、愛されることだけを願い、うまく愛せない人よりも、むしろ幸せかも知れない。
CU

Coming Soon! 寺井尚之ジャズピアノ教室発表会 

 残暑お見舞い申し上げます!
 munazou-rehearsal.JPG  リハーサルで華麗なフィニッシュ!むなぞう生徒会副会長
 来る8月30日(土)正午より、寺井尚之ジャズピアノ教室門下生による発表会を開催いたします。
 今回は11名のコンパクトな発表会。仕事や病気、育児や学業など諸事情で出場できなかった人たちが5名もいるのは最近の社会情勢のせいかな・・・とっても残念ですが、初出場が4名のデビューに立ち会えるのは、とっても嬉しい!
ai_takls.JPGOverSeasの看板娘、あいちゃんも出場しますよ!The Mainstemの強力リズム・チーム、ザイコウ、一平がとことんサポートしてくれる発表会は門下生の憧れです。
 正午から開催し、大トリのあやめ生徒会長の後、審査委員長、寺井尚之によるエクシビション演奏もあります。
 出場ピアニストたちは、恥ずかしがらないで、たくさん応援を連れてきてください。「誰かの為に心をこめて演奏する」のも、アーティストにとっては大事なことかも・・・
 当教室にご興味がおありなら、見学もできます。(見学チケット¥2,000 要予約)
発表会プログラムはこちら
akubi-rehearsal.JPGバド・パウエルに挑むアクビちゃんをリハで指導中の寺井尚之
CU

Portraits in Jazz : お盆のThe Mainstem

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  お盆のUターンラッシュで帰宅されたみなさん、お疲れ様です!お休みをご家族や恋人とゆっくりすごされたみなさん、You Are Lucky!  えっ!?まだお休み中なの?!・・・絶句!
 昨日はThe Mainstemのライブ、ひっそりした堺筋本町にありがとうございました!この夜は、ジャズメンのオリジナル曲特集。ミュージシャンたちが愛する人、尊敬する人の肖像を、音に託して描き出した名曲は、ご先祖様と過ごす日本のお盆に相応しいレパートリー!蒸し暑さを吹き飛ばすタイトなプレイで夕涼み!
 人物の肖像を「音」で描き出すジャズの表現スタイルは、デューク・エリントンも盛んに行っていました。ひょっとしたらアフロ・アメリカン文化にそういうルーツがあるのかも知れません。
 寺井尚之が夏になると聴かせるベニー・カーター(as.tp.comp.arr…)の名曲から始まったこの夜のThe Mainstemはこんなメニュー!


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  1. Summer Serenade サマー・セレナーデ (Benny Carter)  ~ Almost Like Being Love オールモスト・ライク・ビーイング・ラヴ (Alan Jay Lerner/Frederick Loewe)
  2. I Love You アイ・ラヴ・ユー (Sonny Stitt)
  3. In Walked Bud イン・ウォークト・バド(Thelonious Monk)
  4. Mona’s Mood モナズ・ムード(Jimmy Heath)
  5. Forever Sonny フォーエヴァー・ソニー (Jimmy Heath)

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  1. Everything I Love エヴリシング・アイ・ラヴ(Cole Porter)
  2. Dacquiri ダイキリ (Joe Newman)
  3. Fine & Dandy ファイン&ダンディ (Kay Swift and Paul James)
  4. If You Were Mine イフ・ユー・ワー・マイン(Johnny Mercer/ Matt Malneck)
  5. Eclypso エクリプソ  (Tommy Flanagan)
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  1. Syeeda’s Song Flute サイーダズ・ソング・フルート(John Coltrane)
  2. Central Park West セントラル・パーク・ウエスト(John Coltrane)
  3. Bean & the Boys ビーン&ザ・ボーイズ (Coleman Hawkins)
  4. The Voice of the Saxophone to Coleman Hawkins from Afro American Suites of Evolution ザ・ヴォイス・オブ・ザ・サクソフォン(Jimmy Heath)
  5. Rifftide リフタイド (Coleman Hawkins)

Encore : After Paris Tribute to Coleman Hawkins アフター・パリス ( Sir Roland Hanna)

budmonk.jpg Ⅰ部は、セロニアス・モンクがソウルメイト、バド・パウエルの為に書いた『In Walked Bud』にBeBopの芳香が立ち上りました。バド・パウエルはモンクの親友、最高の理解者であるだけでなく、モンク音楽を表現してくれる理想のピアニストでした。『52番街のテーマ』など、バド・パウエルが演奏するためだけに書いた曲も数多くあります。モンクが深い愛情を注いだバド・パウエルは、警官の暴力からモンクをかばおうとして頭を殴打され、脳に障害を受けるという悲劇を生んだのです。

really_big_Jimmy 51ldCZk9cJL._SS500_.jpg テナー奏者、ジミー・ヒースの名作が聴けたのも今夜のお楽しみ!-4は、私がジャズ界一の良妻賢母に認定する奥さんのモナ・ヒースのポートレート。モナの蒼い瞳を想わせる様な名曲ですね。ブロンドのモナは、お人形さんみたいに可愛くて、声は女優のミア・ファーロウみたい!料理も上手で思いやりがあって聡明、あんな風に歳をとれたら最高です。ジミーのアルバム《Really Big》に収録されていますが、ピアノはトミーではなくシダー・ウォルトンです。
-5もジミーが後輩ながら敬愛するテナー奏者ソニー・ロリンズのポートレート、The Mainstemはラテン、アフロ、4ビートのギアチェンジでバップ仕立てのメリハリのついた演奏解釈にして、トリオの持ち味を生かしてます。

Joe's Hap'nin's.jpg コール・ポーターで始まったⅡ部は「緊張&緩和」が一杯。素手でたたき出すラテンリズム、リラックスしたムードの『Dacquiri』はジョー・ニューマン(ts)の作品、ジャズ講座で《Joe’s Hap’nin’s》を取り上げて以来、夏の愛奏曲。今年のダイキリは、特にまろやかでまとまりの良い出来でした。
 南の島でギンギンに冷えた大きなグラスに注がれたダイキリを飲みたいな~と夢見た途端、スピードメーターが振り切れる程速い『Fine & Dandy』に目覚めてしまいました。

 「あなたが私のものならば・・・」ビリー・ホリディやカーメン・マクレエの歌声が聴こえてくるトーチ・ソングは次の対訳ノートに書きたいな!オール2コーラスで短いけれど心に残る演奏だった。
 ラストはトミー・フラナガンの十八番!皆既日食のダイヤモンド・リングみたいに輝くトリルに客席はうっとり!トミーのお墓にお参りした気分に。
coltrane10.gif ラスト・セットはジャズメンのオリジナル曲ばかり!まずジョン・コルトレーン(ts)の2曲から!『Syeeda’s Song Flute』は、トレーンの姪御さんが幼い頃、ピアノの鍵盤を叩いて遊んでいたメロディからできた曲だそうです。成長したサイーダさんは会計士の仕事をしていて、一度旦那さまとOverSeasに来られたことがあります。『Central Park West 』を聴くと、トレーンが優れた作曲家だったのがよく判る。素材の「アク」を上手に抜いて、しかも抜きすぎず、最大限に「うまみ」を引き出すのが京料理とデトロイト・バップの共通点かな・・・
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colemanhawkins_by_terry_crier.jpg 後半はコールマン・ホーキンスを偲ぶ作品のパレード!トミー・フラナガンがホークのレギュラーだった時代のオハコ『 Bean & the Boys』(ビーンはホーキンスのニックネーム)、ジミー・ヒースが『アフロアメリカン組曲』に収めたホークのポートレート『The Voice of the Saxophone 』では印象的なテーマに絡むベースラインが絶妙でしたね!題名のニュアンスは「ホーキンスの音こそがサックスの音色」という意味です。作曲者のジミー・ヒースは身長160センチそこそこでの小柄な人ですが、ジミーのテナーもソプラノも『ザ・ボイス』に相応しい。一度レコードを聴いてみてください。
 ラストはジャズ系ブロガー達のお気に入り『Rifftide』、ガーシュイン作品、Lady Be Goodのコード進行を基にしたモンクの曲『ハッケンサック』に文字通りリフが付いたものです。スイングからBeBopへと音楽を進化させたコールマン・ホーキンスの懐の深さは凄いですね。ベースドラムとシンバルをシンクロさせる一平さんはパパ・ジョー・ジョーンズ(ds)風でかっこよかった!
24preludes.jpg アンコールは、サー・ローランド・ハナ(p)の心打たれる名作『After Paris』を聴くことができました。巨匠サー・ローランド・ハナ(p)がホーキンスに捧げた曲で《24のプレリュード 第一巻》の9番目のプレリュード、キーはF♯mです。
 ハナさんによれば、ホークは晩年に、豪奢な生活を楽しんだパリに楽旅後、体調を崩し、怪我や災難に見舞われ、苦しい日々を送ったそうで、そんな姿を想いながら作曲したのだそうです。
 この曲を聴くと「滅び」という言葉の意味を思います。どんなに栄華を誇る文明も、偉大な天才も、私のような凡人にも、それはいつかやって来る。『After Paris』は、ハナさん自身への鎮魂歌のようにも聴こえました。
 お盆の夜に、色んな事を思い出させてくれたThe Mainstemのライブ!次回は8月28日(金)、その頃は残暑の季節?それとも台風? ぜひお越しください!
CU

Nice Crowd、お盆のエコーズ。

 OverSeasはお盆も平常営業中。
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 今週は平日もカジュアルな服装のお客様でいつになく(?)いっぱい!
 他の町から普段はなかなか来れない水曜日、「やっと来れました!」と、生エコーズを喜んでくださって、ありがとうございました!
 キャノンボール・アダレイTシャツがかわいいグループの人たちは、カリフォルニア州ヴァレンシア在住のカップルと、お嫁さんのお父様。旦那さんがキャノンボールと同じアルト奏者で、ネットで探して聴きに来てくれました。
 ガーシュインーやバップ・チューンはもちろん、”ニャー”のエンディングも、一緒に笑ってくれてうれしかったです。
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 鷲見和広さんは、グラマーな新しい楽器になってから、あの手この手でハイポジションを繰り出す姿が魅力。ピアノは地震や大雨で受けたダメージを逆手に取って、ソフトタッチでものすごいボリュームを出し店中が倍音で満たされ、皆さん気持良さそうです!
 無表情な寺井尚之と、表情豊かな鷲見和広さんが、双子のザ・ピーナッツみたいに、シンクロナイズのエンディングを決めると、「何であんなことができるの・・・?」と客席からざわめきが・・・。
 この夜のエコーズの「お題」は、『お盆』と『ヴァケーション』、「五木の子守唄」の”おどま盆ぎり、盆ぎり”や、いにしえの大昔に整形前の弘田三枝子が歌っていた「V-A-C-A-T-I-O-N」がいろんなキーでアドリブの中にコラージュされるので、皆大喜びしていました!
 OverSeasのお盆のライブは14(金)が荒崎英一郎(ts)トリオ、そして15日(土)が寺井尚之The Mainstem出演!
 堺筋本町はひっそりしていますので、お忍びでどうぞ!
CU

Jazz講座:Bottom-Up

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 昨日のジャズ講座、お休みの中来てくださって、どうもありがとうございました!
 この夜、一番印象に残ったのは、やはりレッド・ミッチェル(b)!寺井尚之の耳の中で今も響き続けるミッチェルのボトム・ラインの話でした。“Communication”で聴かせた、トミー・フラナガン、ジェリー・ダジオン(as)との絡み合い、せめぎ合いの波動、まるで、ライブ会場の”Fat Tuesday’s”にいるようにリアルに感じ取れて、楽しかった~。
 レッド・ミッチェルは、通常のチューニングとは異なり、ヴァイオリンやチェロと同じの「五度チューニング」を使用しています。それが、どのような音楽的効果を生むのかを、The Mainstemのベーシスト、宮本在浩(b)さんが、ピアノの下にあるOverSeasの店置きベースの調弦を変えながら、ベースに触ったことのない私たちに判り易く解説してくれたので、この夜の講座が一層楽しくなりました。
 現在のベースの基本になっている4度チューニングは、クラシックのオーケストラでは、他の弦楽器との不調和を生む悪しきものだというのが、レッド・ミッチェルの信念であるようです。
 クラシックのオーケストラによっては、ブラームスのシンフォニーを演奏する際はベース・セクションの数人のチューニングを変更するようなことも一般的に行われているそうです。オケの人はまたいろいろ教えてください。
red_mitchell_in_black.jpg Red Mitchell (l927- 1992)  ミッチェルの一番のアイドルはベーシストでなく、テナー・サックスのズート・シムズ、2番目は歌手サラ・ヴォーン。
 2枚のライブ盤で、バップ・チューンからオリジナル曲、スタンダードまで、いろいろ楽しみましたが、私がなぜか印象に残ったのが”These Foolish Things(思い出の種)” 三人のプレイヤーの音楽の途は三者三様ですが、ビリー・ホリディという同じ観音様をお守りにしていることが、演奏ににじみ出ていた!私は江戸っ子でもなんでもないけど、「 鮨食いねぇ!!」って言いたくなるような、親近感を持てる演奏だった!
   寺井尚之の解説は、熱く楽しく、ライブで掛声をかける私設応援団の人数を数え、何者なのか、人物鑑定までしてしまいました。やっぱり、大向こうの掛声は上手にしないといけませんね・・・

 来月のジャズ講座にも、引き続きレッド・ミッチェルが登場。今度はトミー・フラナガンのトリオ作品、『Super Session』ですから、これは絶対に参加していただきたいと思います。
CU
 

ジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」は8/8 土曜日!

bradley's.jpg  ’84年 Bradley’s, NYにて:左からJimmy Knepper(tb), 寺井尚之(p), Red Mitchell(b)
 皆さん、暑いけどお元気ですか?私もなんとか元気にやってますが、毎日アタフタ、火傷もして暑い日々。夏休みというものがあった過去を懐かしむばかり・・・エアコンもジャクジーも要らない!南の島で潮風に吹かれ、一日中寝転がって過ごしたい・・・
 でも明日の土曜日はジャズ講座、夏休みを満喫している皆さん、高校球児の応援に燃える皆さんも、明日はジャズに燃えよう!講座に集合しましょう!
 今回は、トミー・フラナガン、レッド・ミッチェル(b)、ジェリー・ダジオン(as)が組んだ“Communication (コミュニケーション)”という名前のトリオのライブ盤2枚(’79)を中心に、寺井尚之が深く楽しく解説していきます。
FAT-TUESDAYs_title.jpg  ライブ盤のロケーションはNYグリニッジ・ヴィレッジで盛業だったジャズクラブ、Fat Tuesdays、ここはかつて、エレキギターの無形文化財みないなレス・ポールが出演し、ジミー・ペイジなどロック・ギタリストも頻繁にセッションに参加していることでも有名でした。’80年代にはスタン・ゲッツの息子、スティーブ・ゲッツがブッキング・マネージャーになっています。
communication.jpg  Communicationのライブは’79年11月の第三週目13日(火)~17日(土)の一週間ギグでした。当時の”The New Yorker”のタウン情報のナイトライフ欄には、こんな紹介文が。
 Fat Tuesday’s : 190 3rd Ave. at 17th St. – 地下にあるジャズクラブ、寄木張りの床と鏡が組み込まれた滑らかな茶色の壁は、ここが以前ディスコだった名残だ。
 11/10(土)まではブラジルのパーカッショニスト、アイアート・カルテット・フィーチュアリング・ロン・カーター(b)。11/13(火)より、The Communication Jazz Bandが5日間出演。ジャズバンドと銘打っているが、実はレッド・ミッチェル(b)、トミー・フラナガン(p)そしてアルト奏者ジェリー・ダジオンのトリオ。5日間出演。開演は9:30pm、ディナーも可。

 そういえば、私も東京の六本木のディスコを改装したクラブで、レッド・ミッチェル+フレッド・ハーシュ(p)に松本英彦(ts)さんが飛び入りしたセッションを見たことがあります。レッド・ミッチェル(b)はどこで会っても、黒のハイネックシャツだった・・・彼のお部屋のクローゼットは同じ形のハイネック・シャツがずらりと並んでいるって、ジョージ・ムラーツ兄さんが言ってたけどほんとかしら?
knickerbocker_front.jpg 当時のトミー・フラナガンはレッド・ミッチェルと盛んに共演していて、10月の下旬から11月の第一週までは、”ファット・チューズデイズ”から徒歩10分ほどのUniversity Placeにあるピアノ・サロン、”ニッカボッカー・サルーン”にデュオで出演していました。ニッカボッカーはステーキがおいしいレストランとして現在も盛業中、でもライブは週末だけみたい。
red_mitchell_at_piano.JPG コーネル大中退、ジュリアード中退、しかしピアノもヴォーカルもたしなむ得体の知れない仙人、変則五度チューニングの巨匠レッド・ミッチェル(b)はたった一晩だけ、寺井尚之と一緒に演奏したことがあります。それが一番上の写真。場所は、同じグリニッジ・ヴィレッジの伝説のクラブ、Bradley’s。ふとした偶然が重なって、こんなハプニングになったのですが、そのおかげで、今でも寺井尚之の耳には、生のレッド・ミッチェルの温かく柔らかでいて核心を突くビートが響いている。
 アルト・サックスのジェリー・ダジオンは、叩き上げのバンド・マン、サド・メルOrch.の、最高の二塁手のような手堅いプレイが印象的でした。フラナガン、ミッチェル、ダジオン、3人のプロが繰り広げるトリオ、”Communication”のライブは、出たとこ勝負のカオス?それとも、リラックスしたライブ?それとも三人三様の役どころが生かされるプロ中のプロしか出来ぬギグだったのか?
 明日のジャズ講座で、寺井尚之により迫真の実況中継がお楽しみなれますよ。 乞うご期待!
 私は、夏バテでもおいしく召し上がれる生春巻を仕込んでお待ちしています。
CU

“Walkin’ “ 本当の作曲者

 2週間前、The Mainstemが聴かせてくれたブルース、 “Walkin’ (ウォーキン)”の作曲者について少し書いたのですが、「わけあり」の作曲者についてジャズ講座でおなじみのG先生から「”Walkin'”の原曲はテナーサックス奏者、ジーン・アモンズのオリジナル、”Gravy(グレイヴィー)”というのがジャズ界の通説です。」とメールが来ました。
 ところが、G先生が”Gravy(グレイヴィー)”の収録されているアルバムの作曲者クレジットを見ると、そこにはベーシストのレイ・ブラウンの名前があったそうです。G先生の知的好奇心は否応無く刺激され、懇意にするミュージシャンで、米ジャズ界で「物知り博士」と異名を取る某氏に照会した結果、やっぱり彼もアモンズの作品だと断定している旨のメールが・・・。
 「著作権」などないミケランジェロやダ・ヴィンチの時代から芸術作品や作者の真贋を調査するのは、探偵ごっこみたいで面白い。そこで、私も”Walkin'”を少し追っかけてみたら諸説紛々。
<Who Is リチャード・カーペンター?>
 そもそも”Walkin'” の公式作曲者というなっているリチャード・カーペンターとは何者なのか?
 カーペンターズのお兄さんと同じ名前のこの人は、浅黒い肌の元会計士であったそうです。アンタッチャブルなシカゴ出身、腕っ節が太く二重顎の大男で、みかけはヤクザの用心棒。専ら編曲者のエージェントとして仕事を斡旋し、彼らの著作を自分の音楽出版社に帰属させ、作曲者の版権を不当に取得していたらしい。自分の欲しいものは、「相手の胸倉を掴み脅迫して手に入れた」カツ上げ派。  チェット・ベイカー伝記’Deep In a Dream’:James Gavin著より
<ジーン・アモンズの”Gravy”>
Walkin-LP.jpg “Walkin'”は’54年にプレスティッジから出たマイルス・デイヴィス・セクステットの録音で有名。そこに参加していたのがJ.J.ジョンソン(tb)です。印象的なタグ・ラインとファンキーな曲想で”Walkin'”はマイルスの名演目として繰り返し演奏され、誰もが知るスタンダードとなりました。
 マイルスのLPのライナー・ノート(アイラ・ギトラー執筆)には、ジーン・アモンズが’54年に”Gravy”というタイトルでこの曲を同レーベルから録音済みであると明記されています。
LPライナーノートより:「(Walkin’とGravyの)テーマはほぼ同一だが、一音も違わないというわけではない。また(マイルスやJ.J.ジョンソンがイントロとインタールードに使っている)タグ部分は簡略化されている。
 私が(アモンズのGravy以降)この曲に遭遇したのは’52年、NYのジャズクラブ”ダウンビート”に出演していたマイルス・デイヴィス&ジャズInc.のライブだった。Gravyが潜在意識下で蘇り、たびたび気になっていたのが、この’54年のマイルスのレコードが出ると、曲名はWalkin’に変更されていた・・・

gene_ammons_classics.jpg  ネット上でアモンズの演奏する”Gravy”のサンプル音源を聴いてみると、確かにほとんど同一曲。同じページの演奏曲リストを見ると、作曲者は”Brown”とあり、G先生の言うとおり、Ray Brownのことだろう。Garvyのカタギじゃないファンキーさは確かにジーン・アモンズの匂いで一杯ですが、アモンズ作の物証は発見できなかった。
<ジミー・マンデイ作曲説> jimmy_monday.jpg 色々調べていくうちに、ジャズ・メディアの中には、”Walkin'”の作者をジミー・マンディ(’28-83)に帰属させている人も多いことを発見。 マンディはテナー奏者兼編曲者で’30年代に一時アール・ハインズ楽団に所属、後にベニー・グッドマン、カウント・ベイシー、ディジー・ガレスピーなど様々な人気ビッグバンドのアレンジャーとして活躍した人です。
 西海岸のジャズ系FM局のスーパーヴァイザーであるジョー・ムーアなど複数の関係者が、まるで当たり前みたいにこの説を唱えていました。マンディがこのブルースを演奏したデータなどあるのかな?
 というわけで、ジャズ・スタンダードとして知られる名作”Walkin'”の作曲者が誰なのか、私はまだ釈然としません。ジャズ系の掲示板には、寺井尚之がふと口にしたタッド・ダメロン説を唱える人もいるし、後の捜査はG先生に委ねたいと思います。
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 G先生の友人であるNYの「物知り博士」(実名を出せないのが残念)はラトガーズ大学でリチャード・カーペンターと会ったことがあるそうで、 譜面の読み書きができない「作曲者」カーペンターを”ペテン師”と言い切っています。また「物知り博士」の友人には、カーペンターが不当に取得した著作権を本当の作曲者に返すために活動している人もいるそうです。きっと著作権帰属運動をしている友人なら、とことん調査をしているだろうし、やっぱりアモンズ説が正しいのかも知れませんね。
CU