酷暑の毎日、心より暑中お見舞い申し上げます。ビールを沢山飲んでから、熟睡できずに夜明けに目覚めると汗ぐっしょり・・・グッドモーニング・ハートエイクというより、グッドモーニング・ナイトスエットって感じです。
日曜日に開催された寺井尚之ジャズピアノ教室生徒会主催セミナーで聴いたカーメン・マクレエは、哀しい歌でも不思議にメソメソした趣がなく、それ故怖くもあります。でも寺井尚之の解説と共に、皆さんと一緒に聴けるのはほんとうに幸せなことですね!
寺井尚之はマクレエの歌唱に於ける「温度」の低さと、年齢を重ねるにつれて男性へと変化していく「セクシュアリティ」を強調していましたね。
ビリー・ホリディを「理想の歌い手」として、彼女の芸風を学び尽くし、自分の「個性」を作り上げたことへの共感にはとても納得。寺井はセミナー終了後、今回紹介した34の歌唱のうち、一番良かったのは、晩年のアルバム、”For Lady Day”からのトーチソング・メドレー(If You Were Mine~It’s Like Reaching for the Moon)だったと述懐してました。
セミナーの付録として訳した、アーサー・テイラー(ds)著”Notes and Tones”のインタビューの中で、当時48歳の彼女は、スタンダード曲の歌詞が「月と星と恋愛」ばかりでうんざりしていると語っています。ところが、このメドレーはどちらも「月+星+実らない恋愛」の歌、それ以外には何もない、シンプルなトーチソングでした。模索を続け、結局、最初に戻るというのはマクレエのみならず、トミー・フラナガンもそうだった。アーティストの変遷を考える上で非常に興味をそそられます。なお、このインタビューは、現在カーメン・マクレエのサイトにフルテキストが掲載されています。和訳をご希望の方はどうぞ。
不思議なことに、マクレエ・セミナーの直前はトラブル続き、寺井尚之が指を怪我したり、製氷機が故障したり、挙句の果てにセミナーで対訳を映写するプロジェクターのランプが開講30分前に切れてしまったり・・・一方、対訳を作っている私は、愛を失うこと=「死」であるような、壮年以降の瀬戸際的な歌詞解釈と、自分の母親が抱えている哀しさが、奇妙に相互リンクを張ってしまい、胸が痛くて壊れそうになりながら仕事してました。
何はともあれ、セミナーで皆さんとご一緒にカーメン・マクレエ芸術を鑑賞することで、禊(みそぎ)になったような気がしています。
参加してくださった皆様、心よりありがとうございました。
音源や情報を提供して下さったG先生は、セミナー前日に元マクレエの伴奏者だったウラジミール・シャフラノフ(p)さんにお会いして、色んな裏話を仕入れてくださっていたので、また別の機会にゆっくり皆でお話聞きたいです。おやつのさしいれもありがとうございました。
メインステムの宮本在浩(b)、菅一平(ds)両氏もありがとう!
またジャズ講座発起人、ダラーナさま、来週(土)のジャズ講座の為に大急ぎでプロジェクター・ランプ調達してくださってありがとうございました!
参加してくださった京都のKMさん、ダグのライブはベーシストのピーター・ワシントンが良いアルバムと言っていたそうですので、元気出してください!
そして生徒会あやめ会長、むなぞう副会長、セミナーのプロデュースありがとう!土壇場のコピーなど、大変お疲れ様でした!
なお、セミナーの模様は後日冊子になる予定です。どうぞお楽しみに!
明日は鉄人デュオ!皆で聴きましょうね!
CU
カテゴリー: 寺井尚之ジャズピアノ教室
カーメン・マクレエ・セミナー対訳準備中
今週は大荒れのお天気でしたね。昨日は通勤時に物凄い雨が降ったようです。夜中に大雨が降るので熟睡できないし、皆様バテバテになっていませんか?
8月1日の日曜セミナーの為に、講師:寺井尚之が厳選したカーメン・マクレエの歌唱は若き日のディック・カッツ(p)さんが伴奏する『By Special Request』(’55)から、晩年のビリー・ホリディ集『For Lady Day』まで、カワイコちゃんシンガー(a girl singer)と言われていた時期から、”おっさん”と間違えられる時代まで、今のところ、全34曲。「いつ対訳くれるねん?」というドスの効いた取立てに泣きながら、さきほどようやく初稿の紙出しが終わったところです。
寺井尚之が解説しやすいように、草稿に加筆していくので、対訳作業はここからがやっとスタート地点。初期のレコーディングには、サミー・デイヴィスJr.との漫才みたいに楽しい掛け合いが聞ける「お目にかかれてうれしいね」など明るいものもあるのですが、マクレエの本領は、やはりトーチソングの悲劇性。何でもなさそうな「一言」に、強い痛みや、皮肉を込めるのがカーメンの必殺技なので、対訳を作っていると、私まで失恋したみたいな気持ちになって胸が痛~くなってしまうのです。
仕事や勉強以外で毎日2時間以上インターネットを使っていると、ネット依存症(Digital Addiction)になってしまうそうですが、このまま毎日何時間もマクレエの歌詞を翻訳していると「失恋依存症」になってしまいそう・・・
マクレエが歌を一生の仕事に選んだきっかけは、譜面がだめなビリー・ホリディの為に、新曲を歌って聞かせる「下歌い」をしたことから、弟子として、友人として彼女の一挙一動を見習ったことだったそうです。ところが、ビリー・ホリディの十八番を歌う時でさえ、ホリディ・フレーズのコピーはどこにも見つかりません。逆に、8月のジャズ講座で取り上げる阿川泰子さんのアルバムでは、慣れ親しんだホリデイの節回しがモロに出てくるので、二つの講座で聞き比べると面白いかも知れません。ホリディに心酔して、身も心もどっぷり浸かったカーメン・マクレエの歌には、表面的なスタイルでなく、そのエッセンスが昇華されているように思えます。
寺井尚之のプレイにも、フラナガンのコピー・フレーズはほとんどないですから、その辺りもたいへん興味深い。
カーメン・マクレエの歌詞解釈が判っていただけるような対訳を目指して、これからさらに磨きをかけていく予定です。
ぜひ、日曜講座にお越しください!
<Carmen McRae講座>
日時:2010年8月1日(日)
時間:正午~3:30予定
受講料:2,500円
今週土曜日は寺井尚之メインステム3!お勧め料理は「蒸豚&チヂミの盛り合わせ」を!
CU
「こどもの日」生徒会ゼミ開催しました。
大型連休は海外旅行や遠出の方も多かったとか・・・皆様もお休み楽しく過ごされましたか?
OverSeasはカレンダーどおりの営業。遠いところから来てくださったお客様と、○○年ぶりの嬉しい再会もありました!
連休最終日、5月5日は、「寺井尚之ジャズピアノ教室」主催のセミナー開催。
普段のセミナーは、一般のお客様をお誘いして賑やかにやるのが常ですが、今回は伸び盛りの生徒達の「質問」に答えるQ & A 形式だったのでこじんまりとラウンドテーブル・スタイルで開催。
発展途上のピアニストたちが普段聞きたくてもなかなか訊けない質問が沢山出て、あやめ会長、むなぞう副会長、師匠の寺井尚之が判りやすくテキパキ答えていい雰囲気の集まりになってました。
<ジャズ用語説明コーナー>:生徒達の悩みは普段のレッスンやジャズ講座で、師匠が口にする語句の意味がわからないことらしい。例えば、「ヴァース」と「イントロ」の違いは?「セカンド・リフ」と「ヴァンプ」と「インタールード」の区別がわからない・・・とか色々な質問が飛び出しました。あやめ会長がネット検索して出てきた語句説明を、寺井尚之がバッサリ斬ってしまって、一言で説明したり、即ピアノで実例をお聞かせしたり、色々ためになりました。
<構成コーチ;むなぞうコーナー>むなぞう副会長は、自由曲に進んで自分ヴァージョンを作ろうとする生徒達のために「構成」の組み立て方を説明。スタンダード曲”All the Things You Are”を実例に、すっきりしたヴァージョンを作るための指針を教えてくれました。上級生はスゴイね!
<あやめ会長のアドリブ作法> 今回は縁の下の力持ちとしてサポート役をしてくれた会長は「努力賞、最優秀賞の殿堂」入りらしく、アドリブの下地を作る超整理力のノウハウを少しアドバイス。皆一生懸命聞いていましたね。
<必勝!足カウント養成講座>
寺井尚之ジャズピアノ教室では、ジャズのノリを出すために、手だけでなく、「足」を重視します。寺井尚之が幾多の名ピアニストたちの足カウントの取り方を何年も研究して編み出した秘法と言えるかも・・・ 4ビート、in two、ラテン、アフロ・・・さまざまなリズムをしっかりと認識する方法や、正確な足カウントの取れるような練習方法を、生徒皆で実践してみました。
こんなに面白いセミナーになったのなら、一般のお客様もどんどんお誘いすればよかったですね・・・今回の内容も生徒会で本にする予定なので、同じような悩みを持っているミュージシャンや、ご興味のある方はぜひどうぞ!
次回の生徒会セミナーは秋開催の予定。今度は皆さまもお誘いして華々しく楽しむ予定です!乞う御期待。
CU
寺井尚之ジャズピアノ教室 第18回発表会速報
雨天決行!第18回発表会、満員の大盛況でした。
総勢11名のピアニスト達が名演奏を披露!寺井尚之の講評は激辛でした
各賞受賞者 (敬称略)
- 新人賞:うっじー、Fatima、
- 努力賞:該当者なし。(*あやめ 殿堂入り)
- パフォーマンス賞:スズコ
- 構成賞:あやめ
- アドリブ賞:あやめ、むなぞう
- タッチ賞: むなぞう (*あやめ 殿堂入り)
- スイング賞: あやめ
- (最優)秀賞:めー、 (*あやめ 殿堂入り)
現在打ち上げ反省会中でRelaxin’ at OverSeas。
八重のチューリップを贈ってくださった山口マダムさまありがとうございました。ご自分の教室の発表会でご欠席だった名調律師、川端さん、沢山の人たちに「今日は川端さんは??」って訊かれました。録音担当して下さったYou-nonさま、いつもありがとうございます!!
The Mainstemのリズムチーム、ザイコウさん、イッペイさん、生徒のみなさん、お疲れ様~
発表会レポートはHPに近日UPします!
CU
「寺井尚之ジャズピアノ教室」 第18回発表会のお知らせ
真冬のはずなのに、雨が多い大阪です。皆さまいかがお過ごしですか?こちらは、発表会直前レッスン、今はアユミちゃんのレッスン中。
雨が降ろうが晴れようが、発表会は日曜日、大阪国際女子マラソンと同時刻にスタート!
第18回 寺井尚之ジャズピアノ教室発表会
日時:2010年1月31日(日)12:00-16:00
一般見学可(要予約)2,000yen
今回は初出場2名を含め、11人のピアニスト達が日頃の稽古の成果を披露します。
年齢、職業、など様々な生徒たちが、寺井尚之の厳しいレッスンに応えて、自分で書き上げた譜面で一生懸命、稽古しました。
あやめ会長、むなぞう副会長が入門してくれた創設時は、「トミー・フラナガンや寺井尚之が好きだから」という理由でピアノを志したメンバーばかりでしたが、時代は変わった。ジャズ喫茶もなく、ジャズ講座に出てくる名盤すら入手困難な時代、情報社会って何なのさ?最近は入門してからフラナガンや寺井尚之を聴き始める人もたくさんいます。寺井尚之に入門したのもなにかの縁、ジャズを演奏する楽しさ、「ピアノ」という楽器の本当の音色を出す喜びを、発表会で感じてください!
ピアニスト達を、バンドスタンドで徹底サポートするのはThe Mainstemの宮本在浩(b)、菅一平(ds)、The Mainstemの豪華メンバーです!
ドレスコードもなし、司会進行や受付も、全て生徒たちのハンドメイドの発表会、演奏の一音一句聴きもらさず、おもしろくてためになる寺井尚之の講評もお楽しみに。外部の方もご見学になれますので、ご予約の上お越しください。
明日は寺井尚之”The Mainstem”、寺井尚之の気合も十分、強力なプログラムを用意しています!
私は大きなお鍋に沢山ロールキャベツを作ってお待ちしてます。
CU
Merry Christmas!
クリスマス・イブ、皆さんいかがお過ごしですか?ロマンチックなキャンドル・ディナー?ご家族で団欒?こちらはどうかって?イブの夜もちゃんとレッスンしていますよ!
クリスマス気分とは全く無縁のOverSeasですが、今週も沢山のお客様が来て下さってうれしいです!
宮本在浩(b)さんと並ぶ青少年は、ジョージ・ムラーツのアシスタントとして芸を盗む傍ら(?)バークリー音楽院で学ぶ”しょうたん”こと石川翔太(b)くん、年末で里帰り中。23日はゲストとして、”Picturesque”を弾いてくれました。弱冠21歳、ダテに留学してなくて、かなり腕が上がってました。寺井は「まだ子供やねんから、何でもどんどんコピーしてとり込んだらええねん。」と言ってます。ボストンで自己アルバムも録音してます。
しょうたんは年始1月6日(水)のエコーズ初ライブにも来るそうなので、若手の逸材を聴いてみたい方はぜひどうぞ!
こちらは同じ夜に来て下さったフリージャズのアルト奏者、Soon Kimさん。現在はフリーのメッカ、ベルリン在住で、ウォルター・ノリス(p)先生のお友達です。ノリスさんから、「日本に行くならOverSeasに行って挨拶してきて!」と頼まれて、わざわざ来て下さいました。Kimさんは、もう何年も昔に、今は在NYのアルト奏者、東出(あずま いずる)さんがOverSeasで演奏している時に何度か飛び入りで参加してくださっていたそうで、私もなんとなくお顔に見覚えがありました。Kimさん、ノリス先生によろしく~
そして、昨日は寺井尚之ジャズピアノ教室主催の年末パーティ!生徒たちや常連様で、楽しく盛り上がりました。
ただ宴会やるだけでなく、しっかりジャズ講座も!お題は「White Christmas」、アービング・バーリンの名曲を、ビング・クロスビーのオリジナル・ヴァージョンに始まり、マット・デニスやトニー・ベネット・・・チャーリー・パーカーやトミー・フラナガンのヒップなバージョンの解説をむなぞう副会長が、それから寺井尚之が登場して、クリスマス中に来日していたトミー・フラナガンの色んなエピソードを公開。最後はThe Mainstemのクリスマス・ソング集(!)を聴きながら、皆でスイングしました。
*不肖私は給食係に専念。
<MENU>
- オードブル:スタッフド・エッグ、イクラ添
- チキンのジェノバ・ソース
- オイル・サーディンのカナッペ
- シュリンプ・カクテル・カナッペ
- 生ハムのオープン・サンド
- 巻きずし
- For the Kids:骨なしフライドチキン、串焼きウインナー、ミニミニ・ドーナツ
韓国風蒸し豚プレート
ポテト・サラダ、クリスマス・ケーキ風
アボカド&芝海老のフルーツ・サラダ
和牛焼肉
ホワイト・チキン・カレーのドリア
パスタ:ペスカトーレ
デザート:苺とバナナ、クルミ入りアイスクリーム・ケーキ
デザートはカワカミさんが当日プレゼントしてくださった苺のおかげで、予想外の豪華さ!お子様にも大人にも喜んでもらえてよかった~!ごちそうは3ラウンドありましたが、2ラウンド目以降は写真撮影する余裕がありませんでした・・・
と、いうわけで、今年も暮れようとしていますが、年賀状も出来てない・・・
年末年始に講座本の新刊を読みたい方は、26日までにお申し込みくだされば、なんとか発送できると思いますので、よろしくお願いします!
今年のライブも後2晩のみ。25日(金)は寺井尚之+宮本在浩(b)デュオ、26日(土)は寺井尚之”The Mainstem”!
ぜひお越しください!
CU
生徒会セミナー 満員御礼!
寺井尚之ジャズピアノ教室生徒会主催の日曜セミナーが、昨日華々しく開催されました。先週は発表会、今週はセミナーと、寺井門下のエネルギーはすごいです。
「スタンダード曲をトミー・フラナガンの味わいにするには?」というテーマは講師陣には大変手ごわいものであったと思います。なぜなら、トミー・フラナガンという人は、誰でもがこぞって演るようなスタンダードを好んで弾く人ではなかったからです。
それでもなお、スタンダード曲をテーマに選んだのはひとえにジャズ初心者の後輩たち想いの心からで、あやめ会長、むなぞう副会長はBeautifulでした。
トミー・フラナガンと個人的に接する貴重な経験を演奏に活かすむなぞう副会長は、アービング・バーリンの永遠の名曲“How Deep Is the Ocean”を取り上げて、フラナガンのピアノは、しっかりと曲の意味を伝えていることを教えてくれました。「音楽は特殊言語」であるということの証明ですね!英語に堪能でスタンダードの歌詞に憧憬深いむなぞうくんの個性が溢れ、後輩たちにも判りやすいレクチュアが大好評でした。
発表会「最優秀賞殿堂入り」の理論派、あやめ会長は、歌詞のあるガーシュインのスタンダード曲“Isn’t It a Pity?”と歌詞のないモンク・チューン、“Ruby, My Dear”を取り上げ、エラ・フィッツジェラルドよりも歌詞をよく覚えていたフラナガンのピアノ的音韻の踏み方や、セロニアス・モンクとトミー・フラナガンのアドリブ・コンセプトの違いを、譜例を出して専門的に解説してくれました。初心者にはかなり難しい理論解説もあったけれど、皆一生懸命に耳を傾けノートを取っている姿も印象的でしたね!充実した内容のレクチュアをありがとうございました。私も勉強になりました。
今回一番ノリノリで準備をしていたのが真打 寺井尚之で、いつも自分が演奏しないくせに“ベサメ・ムーチョ”、“サテン・ドール”、“枯葉”を徹底研究したので解説は舌好調!シンプルで楽しいトークの中に、音楽への愛が溢れていて「今日のテライさんて淀川長治みたいやなあ・・・」ってお客様が笑ってました。
愛が溢れると、寺井尚之は毒舌もあふれます。ハイブロウなトークの中に、いかりや長助やバキューム・カーも登場して、皆笑い転げてました。
楽しいセミナーでピアニストたちが学んだことは、「誰でも出来るトミー・フラナガン」みたいなマニュアルはないということです。毎日努力をコツコツと積み重ねるのみ。それを楽しいと思える人、You Are Lucky!
OverSeas常連の皆様、生徒会にお付き合いくださって、ほんとにほんとにありがとうございます!生徒ではない皆さんがお越しになると、いっそう張り切りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
CU
対訳ノート(19) 東西「枯葉」事情
発表会が無事終わり、9月6日(日)は生徒会セミナー!教室外のお客様も多数ご予約いただき、生徒会に代わりまして心より感謝します!
今回のテーマは「スタンダード曲」とあり、日ごろOverSeasでは滅多に聴かない超スタンダード曲、「枯葉」の対訳を色々作るうち、世界中でヒットしたこの曲の歌詞のイメージも、それぞれの文化によってかなり変化することが判って、今までとは違う親近感を持ちました。
<日本の「枯葉」:もののあはれ>
日本の「枯葉」は戦後のシャンソン・ブームの代表曲で、その時代の代表歌手、高英夫のシングル盤は、当時破格の10万枚セールスを記録したそうです。さすがに私も、リアルタイムのことは知りませんが、それから数10年後の私の小学生の頃ですら、秋になると「笑点」などのTV寄席で、必ず「枯葉よ~♪ 枯葉よ~♪」と、東西の漫才師や落語家が必ずネタにしているのを、夕御飯を食べながら笑ってました。ジャズ・ファンでなくとも、「枯葉」は超有名な曲だった。
日本語詞は、イラストレーターとして余りに有名な中原淳一作、高英夫さんの歌唱を聴きとりしたらだいたいこんな感じ。
<枯葉 ジョセフ・コズマ曲/中原淳一詞>
(Verse)
風の中のともしび
消えていった幸せ
底知れぬ闇の中
はかなくも呼び返す
・・・
(Chorus)
枯葉よ~ 絶え間なく,
散りゆく 枯葉よ、
風に散る 落ち葉のごと
冷たい土に・・・
万葉の時代から紅葉狩りを愛でる大和民族の「枯葉」観がここにある。秋風に吹かれる枯葉の散りざまに、恋の終わりを重ね会わせた奇麗な詞ですね。祇園精舎の鐘の声に 諸行無常の響きを聴く私たち日本人にはすごく判りやすい!
<祖国フランスは「死せる葉」>
それでは、元祖のシャンソンの「枯葉」はどうなんだろう?この曲は元来ジョセフ・コズマ作のバレー音楽で、大戦直後のフランス映画「夜の門」(’45)の挿入歌に使うため、脚本を担当していたジャック・プレヴェールが歌詞を後付けしたもの。この映画で主役に抜擢されデビューを飾ったイヴ・モンタンが歌ったものの映画も歌もヒットせず、後にジュリエット・グレコが歌い世界的にヒットしたそうです。「夜の門」の枯葉のシーンはYoutubeで観ることが出来ますが、円熟期の歌唱とは比較にならない青臭いものです。
Jacques Prevert (00-’77)
フランス映画が殆どロードショーされない現在ではジャック・プレヴェールを知る人も少ないかも知れない。ピカソ、マチス、シャガールなど20世紀美術の旗手たちと交わり多くの美術書を編纂したプレヴェールは、詩人であるだけでなく仏映画史上を代表する脚本家、ピカソの「青の時代」を彷彿とさせるような映像と名セリフに溢れる名画「天井桟敷の人々」や、OverSeasでは皆が知ってるあのカシモドの「ノートルダム・ド・パリ」の脚本家でもあります。
詩人としてのプレヴェールの視線は、階級社会にありがちな「上から目線」ではなく、常に庶民と共にあるストリート系。
原題は「Les Feuilles Mortes」、直訳すれば「死んだ葉」の複数形。日本の「枯葉」というネーミングは、この題名のニュアンスをうまく表現していますよね。でもプレヴェールの書いた「枯葉」は「散りゆく葉」ではなく、ゴミとしてシャベルで集められた落ち葉の塊。普通ならイケていない情景を一遍の詩に仕立て上げた非凡なものだった。原詩はこちら。
<Les Feuilles Mort by Jacques Prevert>
Verse
どうか君よ、覚えていておくれ、
僕たちが恋していた幸せな日々を。
あの頃の人生は美しく、
太陽はもっと輝いていた。
死んでしまった落ち葉がシャベルで積まれ、
道の片隅に捨てられている。
積もる枯葉は、
僕の追憶と後悔の姿(後略)・・・
歌詞の中の過去の情景には色彩と光が溢れている。逆に、シャベルで積まれた現実の落ち葉には、紅葉の鮮やかさなど無縁なモノクロの風景しか聞こえてこないのです。日本人なら、色のない「枯葉」はまず詩にはしないでしょう。
私のフランス人の友は、かねてからパリの男は絶対に浮気をするからケシからんと言い、ベルギー人の誠実な男性と結婚しました。それが本当だとすると、この詞に登場する「追憶」も「後悔」も「あんたが悪いんでしょ!」と言いたくなるけど、セミナーで聴く円熟期のイヴ・モンタンの歌唱を聴くと、そんな批判力が吹っ飛ぶ位説得力がありますから、どうかセミナーではトイレに行かず聴いてね。
<マーケティング重視の米国版>
生徒会セミナーで、色んなヴァージョンが聴けるアメリカ版の「枯葉」の詞は、偉大なるジョニー・マーサーの作詞。セミナーでは、マーサーがやはり歌詞を後付けして大ヒットした「サテン・ドール」も登場します。
英語のタイトルは「Autumn Leaves (秋の葉)」と改題し、原作のヴァースの部分は大胆にカットして、コーラスの部分だけにして、ビング・クロスビーやナット・キング・コールでヒット(’52)!数年後、ポピュラー・ピアニストのロジャー・ウィリアムスが、はらはら落ちる葉っぱのイメージのイントロをつけて爆発的にヒットして、ジャズの世界でも大いに演奏されたんですね。
<Autumn Leaves by Johnny Mercer>
落ち葉が窓辺を漂う。
赤や黄金に染まる秋の木の葉。
僕は君を想う、
夏の日に交したキスや、
僕がいつも握っていた
陽焼けした君の手を。
(中略)
でも君がいないことが何よりつらい、
枯葉の落ちる季節になると。
Johnny Mercer(09-76) 自らうまい歌手だったマーサーの歌詞は、歌い手に実力があれば最高の素材。
ここで懐かしむ「恋」はひと夏の情事、上の2作に比べて、秋の葉がとてもカラフルに表現され「つらさ」もほどほどといった感じ。
ゆえに、シャンソン派からは、英語詞はヴァースを一刀両断にし、プレヴェールに比べ芸術性が低い、感傷的に過ぎると厳しく批判されているけれど、J.マーサーらしい自然で丸いサウンドと、実力のある歌手なら歌い上げるのに便利な長い詩節で、なかなか良い歌詞だと思います。
ヴァースを削り原作のニュアンスを変えたのは、あくまでキャピトル・レコードの重役としてのマーサーの判断かも・・・収益第一のハリウッド映画と同じ発想かな?
と、言う訳で秋の枯葉の色は、お国柄で色々違う、そしてジャズの演奏歌唱はそれ以上に十人十色です。対訳は、もっとちゃんとしたものを作ってあるので当日お楽しみください!
日曜日の生徒会セミナー、ほとんど満席ですが、参加ご希望の方はOverSeasまでお問い合わせください。(TEL 06-6262-3940)
なお、牛すじは前回以上の上物を入手したので、給食のカレーもさらにおいしく出来そうです!
CU
第17回発表会、皆の演奏が花開きました!
第17回「寺井尚之ジャズピアノ教室」発表会、新人達からベテランまで、日頃の稽古の成果が花開き、ラストは寺井尚之メインステムで大いに盛り上がりました。
応援のお客様や一般見学の皆様も、最後までお楽しみ頂きありがとうございます!
各賞はこのようになっていますが、私は皆のどの演奏も大好きでした!!ピアニストたち、本当に今日は名演をありがとう!
<各賞>(敬称略、次点略)
- 最優秀賞: あずかり (殿堂入りあやめ会長 除外)
- 努力賞: ひとみ、Reiko (殿堂入りあやめ会長 除外)
- パフォーマンス賞: ひとみ
- 構成賞: あやめ会長
- スイング賞: あやめ会長
- タッチ賞: あやめ会長
- アドリブ賞: あやめ会長
- 新人賞: ネネ、ひとみ、アユミ、Reiko
朝一番にやってきたのは、山口さんから贈られた大きな花束!大輪の紫陽花など、淡い色調の豪華な花は、生徒達の可能性を表しているようでベスト・マッチ!マダム、いつもありがとうございます!
その次は、皆を応援しにやって来た「漁師の息子」でドラマーのImakyでした。今北さん、長時間お付き合いしていただいた後、活きのいい差し入れありがとう!!
一日中、ピアニストたちを撮影、録音してくださったYou-non氏、ピアノのサウンドを気にしながら、生徒達とそのピアノを色んな面でお世話くださる名調律師、川端さん、記念品の可愛いタオルもありがとうございました!
出演者達のいかなる不測の事態もカバーして、名サポートを聴かせて下さったベーシスト宮本在浩さん、ドラマー菅一平さん、今日は本当にお疲れ様でした。
発表会の詳細は、You-non氏撮影の名ショットを中心に、HP上に近日レポート掲載予定。
おつかれ~
Come Sunday 次の日曜日は生徒会セミナーで会いましょう!
CU
日曜セミナーでスタンダードをDIG!
こんにちは!夏の疲れや、世界陸上による寝不足でバテバテになっていませんか?寺井尚之ジャズピアノ教室は発表会後も燃え尽きず、来る9月6日(日)お昼に、日曜セミナーを開催いたします。
一般参加歓迎!寺井尚之ジャズピアノ教室生徒会主催セミナー
テーマ:「スタンダード曲をフラナガンの味わいにするには?」
日時:2009年9月6日(日)正午~4pm(開場11:30am)
場所:Jazz Club OverSeas
受講料:2,500円
寺井門下優等生コンビの講演もこうご期待!あやめ会長、むなぞう副会長
今回は初心者の生徒たちに、いわゆるスタンダード曲の楽しさと、彼らが大師匠と呼ぶトミー・フラナガンの音楽の特徴を体験してもらおうという趣旨で開催いたします。演奏家でないジャズ・ファンにも楽しい講座になりそう!
長年トミー・フラナガン&寺井尚之を聴きこんできたむなぞう副会長は、アービング・バーリンのじーんとする名曲、『How Deep Is the Ocean (ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン)』を解説。「”海より深い恋心”・・・トミー・フラナガンがこの名歌詞をどう読むか?」その辺りの解説と、むなぞう君による歌詞対訳が、私も楽しみです!フラナガン・バージョンは”Sea Changes”に収録されているので、聴いておくといいかも・・・
あやめ会長は、モンク・チューン『Ruby, My Dear ルビー・マイ・ディア』と、ガーシュイン歌曲、『Isn’t It a Pity イズント・イット・ア・ピティ』の2曲、様々な演奏、歌唱を例に取りながら、トミー・フラナガン音楽の特徴や、門下生が応用できそうなテクニックの秘密を教えてくれるでしょう。なお『Ruby, My Dear』のフラナガン・バージョンは”白熱”で、また『Isn’t It a Pity』は”Lady Be Good for Ella”で聴けるので、お持ちの方はぜひ聴いてみてください。
<真打は枯葉とベサム・ムーチョ、それからサテンドールでジャズ高座>
今回のレクチュアを取り分けルンルンで準備していたのが真打、寺井尚之。「それならわしは、バリバリのスタンダードで勝負や!」とピックアップしたのは、なんと『枯葉』、『ベサメ・ムーチョ』それに『サテン・ドール』の3大スタンダード、おかげで、対訳係りにはシャンソンからトリオ・ロス・パンチョスのスペイン語まで・・・「勘弁して~」という位、どっさりタスクの山。
当初、子供の頃から、それら大スタンダードの数え切れない凡演を聴き育った私には苦役に思えましたが、やって良かった!イヴ・モンタンの男の魅力や、サボテン・ミュージックの明快さにシビれながら、楽しくお仕事させていただきました。外国生まれの歌詞を読み解くと、その国の「文化」や「情」の違いというものが垣間見えて面白いものですね。
ナット・”キング”・コールからマイルス・デイヴィスまで、名演、凡演、怪演・・・3大スタンダード曲のさまざまな演奏を聴きながら、トミー・フラナガン音楽の神髄に迫る寺井尚之の日曜噺、たった2曲なのに、どうしても喋り足りないそうで、生徒会にかけあって、当初3時までの予定を、4時前まで延長してもらいました。今回も後半は講座から「高座」になりそうです。しかしオチは私も知りません。
一般のお客様のご参加も、生徒一同大歓迎です。なお、給食は日曜名物、牛すじカレーとロール・ケーキになっております。
参加ご予約はOverSeas(TEL 06-6262-3940)まで。
CU