寺井尚之"フラナガニア"トリオ、待望の新作CD発売!
Yours truly,


ジャケット写真

Hisayuki Terai Trio
--寺井尚之(ピアノ)
--Hisayuki Terai, piano
--宗竹正浩(ベース)
--Masahiro Munetake, bass
--河原達人(ドラムス)
--Tatsuto Kawahara, drums

--Recorded at OverSeas, Osaka, Japan;
--September 23 & 24, 2001
--Mastering at Alchemy Studio
--※LIVE録音ではありません。

--<FLANAGANIA RECORDS TF-4>\2,800


収録曲:
01. The Way You Look Tonight 今宵の君は
--作詞:Dorothy Fields 作曲:Jerome Kern

02. You're My Everything ユー・アー・マイ・エブリシング
--作詞:Mort Dixon, Joe Young 作曲:Harry Warren

03. A Thousand Years Ago 千年の恋
--作詞:Earl Brent 作曲:Matt Dennis

04. What Is This Thing Called Love? 恋とはどんなものだろう?
--作詞・作曲:Cole Porter

05. You Make Me Feel At Home ユー・メイク・ミー・フィール・アット・ホーム
--作詞:Bob Russell 作曲:Matt Denis

06. I Wished On The Moon アイ・ウィッシュト・オン・ザ・ムーン
--作詞・作曲:D.Parker & R.Rainger

07. I Only Have Eyes For You 瞳は君ゆえに
--作詞:Al Dubin 作曲:Harry Warren

08. My Ship マイ・シップ
--作詞:Ira Gershwin 作曲:Kurt Weill

09. Love Walked In ラブ・ウォークト・イン
--作詞:Ira Gershwin 作曲:George Gershwin

10. Someone To Tell It To 夢を告げる人がいなければ
--作詞:Sammy Cahn 作曲:Jimmy Van Heusen, Gill Fuller

11. Will You Still Be Mine? ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?
--作詞:Tom Adair 作曲:Matt Dennis



●ライナーノーツ抜粋(パール・チャン・リー)
 前作の<フレグラントタイムズ>から4年後にこの新アルバム、<ユアーズ・トゥルーリー>が録音されたわけであるが、今回は今までのフラナガニアトリオのアルバムとは少し違った趣の選曲となっているのに皆さんもお気づきであろう。実は新作のレコーディングは今春に予定されていたのだが、寺井尚之の妻、珠重が録音予定時期に病に倒れ、手術のため3週間の入院を余儀なくされ、2ケ月間OverSeasの戦列から離脱してしまったのである。そのため録音はやむを得ず延期となってしまった。二人は結婚して21年、OverSeasの切り盛りや、音楽活動でのアシスタントも勤める彼女は、何よりも寺井尚之の日々の演奏を傍らで最も熱心に聴くファンであった。いつも元気で一緒だったことが当たり前だった妻の入院と大手術は寺井に少なからずショックと不自由を与えた。幸運にも彼女が手術から無事生還した喜びの中で寺井尚之は
『恋というよりも愛を歌った曲、夢と希望のある曲ばかりのアルバムを作ろう!』と思い立ったのである。
 本アルバムは、自分にとっての幸せとは何だったのか、青い鳥がどこにいたのかをピアノで綴った寺井尚之の手紙となっている。その手紙の宛先は妻であり、師トミー・フラナガンであり、寺井のピアノに耳を傾けてくれる皆さん全てであろう。タイトルの
Yours truly,はその手紙が心を込めて書かれたことを示した結びの言葉である。



ベース宗竹正浩 ドラムス河原達人
宗竹正浩(ベース)
1967年2月22日生まれ。抜群のリズム感を持つ天性のベースマンで、ジャンルにとらわれない広い音楽的視野を持つ。18歳から寺井尚之と活動してきた彼ももう34歳となり、近年はアンプを通さぬ生音での力強い演奏にねっとりとした色気が加わり人気を高めている。
河原達人(ドラムス)
1957年11月8日生まれ。OverSeasでは酔いどれドラマーと命名されるほどの無類の酒好きながら、いつも楽しい酔いっぷりと、25年以上の共演歴を持つ寺井尚之への、バッピッシュでかゆいところに手が届くサポートぶりは正に世話女房以上のものがある。スタンダードナンバーの歌詞に対する造詣も深く、本作品にうってつけの役どころである。


●ピアノトリオなのに歌詞対訳付き
本CDには、
曲の内容がわかればいっそう演奏を楽しむことが出来るという寺井尚之のたっての希望で、収録曲すべての歌詞と対訳が付記されています。ぜひこちらもお楽しみください。

歌詞カード

雑誌等の『ユアーズ・トゥルーリー』評
スイングジャーナル 2002年3月号
トミフラの高弟による
ジャズピアノ通を唸らせる力作
by 岩浪洋三

 寺井は大阪で“オーバーシーズ”を中心に演奏しており、知る人ぞ知るピアノの名手である。本作は4年ぶりの新作だが、また一段の成熟を示している。前作まではジャズ曲も多かったが、今回はポップな恋や愛の曲ばかりが集められている。それは録音の直前、結婚21年目という愛妻が病で入院し、その回復を待って演奏したので、又一緒に暮らせるようになった喜びを手紙のような形で表現したので、手紙の結び「Yours truly,」をタイトルにしたのだという。

 この手紙はまた録音時には健在だった寺井の師トミー・フラナガンに宛てたものにもなっている。寺井は弟子を取らなかったトミーのほとんど唯一人の弟子でもあり、彼はピアノ演奏につねに師匠ゆずりの厳しさを求めてきた。本作では神経を集中し、高い音楽性を追及するアドリブの中身は濃く、どの曲も起承転結が見事でドラマがあり、まるでもともとピアノ曲ではないかと思わせるものがある。きっとジャズピアノ通を唸らせ納得させるにちがいない。トミーはまた転調の名手だったが、寺井は速い曲はスインギーにハードに弾くが、バラッドでは愛の歌にふさわしく、温かく抒情的に詩的に演奏し、ほのぼのとした気分にさせてくれる。

 器楽演奏に全曲の歌詞と対訳付なのは快挙。米では口の中で歌詞をつぶやきながら弾くくらい歌詞は大切なのだ。


ジャズライフ 2002年3月号
歌詞とメロディを一体化した演奏を
通して伝わる人生のメッセージ
by 後藤誠

 どんなに聴き慣れたスタンダードのメロディでも、そのフレイズやひとつひとつの楽音に、歌詞の内容や単語の意味をこめて演奏できるミュージシャンがどれくらいいるだろう。マット・デニスやシアリング、ナット・コールからも影響を受けた寺井は、みずから肉声で歌を歌うのではなく、ピアノを弾くことで、メロディと歌詞が一体となった楽曲本来の世界を聴き手に伝えようと試みる、いまでは数少ない名手のひとりだ。歌詞が聞こえてきそうなピアノのソロと献身的なベースとドラムのサポート。このアルバムでは愛にちなんだ11編のスタンダードを題材に選び、自らの人生の哲学を表現していく。英文の歌詞カードとその対訳も、演奏及び楽曲鑑賞の理解を深めてくれる。


CDジャーナル 2002年3月号
by 青木和富

 大阪でクラブ“オーバーシーズ”を経営し、熱烈にトミー・フラナガンを信奉するピアニスト、寺井尚之の4枚目のアルバム。自主出版のインディ・レーベルだが、これは素晴らしい。フラナガンの単なるスタイル・コピーなどではなく、フラナガンの背後の品位のようなものが寺井のピアノにあって、フラナガンのルーツ、デトロイト・バップの継承者と旗を揚げるのはいかにもと納得させられた。ハートでつながっているのだ。だから見事に自分の語りになっている。病気から回復した愛する人への演奏。


週刊金曜日 2002年2月8日号
きんようぶんか<音楽>のページ
『ユアーズ・トゥルーリー』寺井尚之トリオ
ひととのつながり
by 後藤誠

 昨年九月の同時多発テロ事件以降、世界を取り巻く状況は大きく変わった。個人的には無気力感に襲われる日々をしばらく味わった。音楽を聴いたり、音楽について書く気力を失ったのだ。

 それまで何の疑問もなく享受していた日常のあらゆる営みとはなんだったのか。音楽を聴く行為、音楽について書く行為の意義はどこにあるのか。こうした自問に対する答えは見つからないまま、時間だけが、それまでと変わらずに流れていく。

 年も変わった。いつまでも落ち込んでいられない。気分も一新し、再開することから始めよう。そうすることで、何かが見えてくるかもしれない。

 今年は、家族や恋人、友だちといった「ひととのつながり」を再確認する1年にしよう。先ごろ発表された某有名文学賞の受賞作が、どれも家族をテーマにしていたことからもわかるように、この「つながり」は音楽にとっても意義あるテーマになるはずだ。

 大阪在住のピアニスト、寺井尚之は、先ごろ他界した人気ピアニスト、トミー・フラナガンの弟子・研究家として知られてきた。その寺井が四年ぶりに発表した新作『ユアーズ・トゥルーリー』で、愛にちなんだスタンダードばかりを取り上げた。

 ジャズのスタンダードというと、恋の気持ちをつづった男女の機微を描いたラヴソングが中心と思われているだろう。しかし寺井はこの作品で、恋と愛を明確に区別している。恋とはかりそめの若い男女の起伏に富んだ感情の変化、愛とは家族や夫婦、親子と、人生をともに生きていく他者への変わらぬ気持ちである、と。このアルバムに収められた11曲のスタンダード・ナンバーで寺井はこれまでの人生観を再確認し、新たなる決意を提示しているようにみえる。出会った男女が、愛を育んでいくプロセスのなかで、互いの気持ちを確認する場面なぞ、いくらでもあるだろう。そんな場面を描いた歌を、三人のミュージシャンが、あるときはクールに、またあるときはエモーショナルに、演奏を進めていく。

 ハイライトは、ナット・キング・コールの歌唱で知られる「夢を告げる人がなければ」だ。最後から二曲目に収録されたこの曲で、寺井はテーマのメロディをあえてピアノで弾かず、ベースの弓弾きにまかせている。しかもジャズに不可欠と思われるアドリブソロはまったくない。ピアノ、ベース、ドラムスという、たった三つの楽器で作り出す世界。どんなに素晴らしい夢であっても、耳を傾けている愛する人がいなければ、それを語ることに何の意味もない。壮大なスケールを誇る映画のフィナーレにも通じる、大きな希望がそこにはこめられている。

 インストゥルメンタル(器楽演奏)なのに、原曲の英文歌詞とその対訳がすべての曲について添付されているのも、このピアニストらしいこだわりの表れといえる。旋律と歌詞が一体となってすぐれた楽曲が生まれる。寺井は、これらの楽曲のもつ無限の可能性を、肉声や歌詞といった直接的な手法ではなく、自らの楽器ピアノで雄弁に歌い上げている。


レコードコレクターズ 2002年5月号
by 佐藤秀樹

 寺井尚之は昨年末に亡くなったトミー・フラナガンの随一の弟子として知られるピアノの名手。歯切れの良いタッチと格調溢れるプレイを愛するファンも多い。フラナガンに長年に渡り私淑してきた蓄積と研鑚の成果は、'93年のデビュー作以下これまでに発表してきた4枚のピアノ・トリオ・アルバムを通じて見事に表現されているが、それだけに4年ぶりの新作の登場は喜ばしい。

 心惹かれるものへの愛情とこだわりを見せてきた寺井だが、ここえはジャズ曲を主としてきた前作までと違ってラヴ・ソングを取り上げている事も話題。レギュラー・メンバーである宗竹正浩(b)と河原達人(ds)とのコンビネーションもばっちりで素晴らしい演奏が堪能できる。ハード・バッパーとしての情熱と心意気を見せた(4)や、詩的で美しい表現力を持つ(8)などはとくに心惹かれるナンバー。全曲の歌詞と対訳を載せているのもこれら歌ものをいかに大事に扱っているかの証拠だ。大阪における彼の店OverSeasにおける昨年9月の録音。


産経新聞 2002年2月19日(火)付第15面
<大阪拠点に活動、ジャズピアノの寺井尚之>
4枚目のリーダーアルバム発表

 大阪を拠点にデトロイト・ハードバップの神髄を伝える演奏活動を続けているジャズピアニストの寺井尚之が、四枚目のリーダーアルバム「Yours truly,(ユアーズ・トゥルーリー)」=写真=を発表した。

 大阪生まれ。四歳からクラシックピアノを始め、十八歳の頃にジャズに興味を持つ。トミー・フラナガンの演奏を聴いて、1975年から師事。七九年に大阪市内にジャズクラブ「オーバーシーズ」をオープンし、「Anatommy」(九三年)をはじめ、これまで三枚のアルバムを発表している。

 今回収録されたのは「今宵の君は」「恋とはどんなものかしら」スタンダードばかり十一曲。宗竹正浩(ベース)と河原達人という気心の知れたトリオで、やはり演奏し慣れた「オーバーシーズ」を舞台に収録。切れの良さと繊細なタッチが同居した、色彩豊かなサウンドが楽しめる。


2001年12月23日OverSeasパーティより
寺井尚之自身による『ユアーズ・トゥルーリー講座』


フラナガニアトリオ at OverSeas

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