第13回 寺井尚之ジャズピアノ教室発表会 2007年8月26日
Reported by Tamae Terai

 1998年、師匠トミー・フラナガンが病気に倒れた事から、デトロイト・バップ伝承の熱意に燃えた寺井尚之が開いたジャズピアノ教室、生徒達の上達の成果が披露される、毎年1月、8月最終日曜日の発表会も、13回目を迎えました。
 「トミー・フラナガン音楽の遺産を守りたい!」という寺井尚之の熱意に応え、色々な地方から、様々に個性溢れる生徒達が集まり日夜練習に勤しんでいます。
 当教室の特徴をシンプルに言うと以下の3点です。
@ジャズ曲のアレンジ譜を、それらしく弾くのではなく、“即興演奏”としてのジャズを演奏すること。
Aピアノは美しいタッチで弾かなければならない。打楽器のようにただガンガン弾くのではなく、ピアノ本来の美しいサウンドを引き出すこと。
Bフィーリングや根性に頼るレッスンではなく、合理的に近道で目標を達成すること。

 本発表会の出場資格は“自分で創ったアドリブをする事”。各自の発表曲について、ちゃんと演奏解釈をして自分だけのバージョンを作った演奏者だけが出場出来るのです。
 師匠、寺井尚之の一音も聴き漏らさぬ集中力と真剣な審査ぶりも、発表会の大きな見所、聞き所です。

 ベテラン達から、デビューを飾る新人まで、色々な経歴や環境の皆さんが集まり、日頃のレッスンで実力を蓄えて挑む発表会は、私に大きな感動を与えてくれます。
 寺井尚之ジャズピアノ教室教室とは? 

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<目次>
手堅いサポートメンバー!
各賞
御礼
選手宣誓

ハイ・クオリティに先輩驚愕!第一部
台頭するミュージシャン達&サプライズ!第2部
大躍進のピアニスト達!第3部
オーラ輝く!第4部

 サポートメンバー

                  
宮本 在浩(ベース)
Zaiko Miyamoto
菅一平(ドラムス)
Ippei Suga
 1975年1月4日生まれ。
 西川悟氏に師事後、OverSeasで修行間もなく、仕事中の事故で右手に大怪我をするが、強靭な意志で奇跡的にカムバック。 家業は大阪が世界に誇る町工場で、妻も子息も妹も音楽をたしなむ音楽一家。
 稽古熱心で楽曲に対する理解も深くめきめき腕を上げて、現在最も注目される成長株。
 発表会では生徒達と同じ視線で、皆のレパートリーを徹底的に研究し、最高のフォロー役。
 1975年2月26日生まれ。
 実家は八尾市の老舗古書店、大仙堂。
'95年から松本誠(p)3で活動。'96年に OverSeasトミー・フラナガン3ライブでのルイス・ナッシュに深い感銘を受け、'04年から寺井尚之と共演を重ね、実力を上げる。
 確かなテクニックと、配慮の行き届く人柄がプレイに反映され、各方面から注目の新鋭ドラマー。
 発表会初出演、生徒達が日頃の練習の成果を出せるようサポートに徹する。

各賞受賞者(次点略,敬称略、氏名は本人の希望する場合ニックネームになっています)

★最優秀賞:あやめ

あやめ
★構成賞:あやめ 
★タッチ賞:あやめ


★Ad-lib賞(該当者2名、松本誠、あやめ


松本誠


あやめ
★スイング賞 松本誠
努力賞けんいち
★パフォーマンス賞: けんいち
★新人賞:(該当者2名、ゆかりん、まるちゃん
ゆかりん まるちゃん
発表会開催ご協力ありがとうございました!

録音、CD制作、写真撮影:You-non様
記念品:グレイスピアノ サービス
ピアノ調律:川端定嗣様

美しい花束:マダム・パノニカ


 
*調律とピアノに関するお問い合わせはグレイス ピアノサービスへ!0725-33-9808

なくてはならぬ選手宣誓から!
 教室の至宝!橋本会長の選手宣誓なしでは発表会は始まりません!会長はバレーボール中、右指骨折のアクシデントに見舞われ、残念ながら演奏の方は休場で、後輩達は大ショック。
 しかし、宣誓は舌好調!!
前日から大阪で開催した「世界陸上」にひっかけて、アスリート達に負けぬ気合と、怪我をした人の分まで頑張るように、全員を鼓舞!拍手喝采を受けました。
<高度な演奏に驚愕!第一部>


受付はむなぞうー会長のコンビで新人達を温かくサポート。
司会はピアノ同様流麗に、あやめ副会長が務めました。


1. ゆかりん There Will Never Be Another You 


 今回最年少出場のゆかりんちゃん、ミニスカとスパッツ、演奏し易いよう履きなれた運動靴、そしてバラ色の頬がとっても愛らしい!でもギャルっぽい見かけと裏腹に、師匠に言われる前に、譜面はきっちりきれいに清書して、丁寧に整理してくる配慮も忘れません。そんな気構えが、本番の演奏に見事に反映されてました。
 にこやかで堂々とした演奏は、発表会デビューと思えない高レベルで先輩達も感嘆。
 寺井一門のレベルの高さを証明した素晴らしきトップバッターにBRAVO!
2. そうき  There Will Never Be Another You
 先日CDを発売した人気ブルース・バンド「仲田耕実 & Boogie Baby」の紅一点として活躍するそうきちゃん、IT企業のシステム・エンジニアの二足のわらじで、なおかつジャズピアノも制覇しようという凄い闘志の持ち主です。発表会直前に過労で倒れ、なんと、この曲のエンディングをレッスンせずに出場した根性は見上げたものだった。ライブ経験が豊富な為か、本番の演奏は「今までのレッスンよりずっと良かった!」と辛口師匠も満足のコメントでした。
 これからも、寺井一門の「美しいタッチと理に叶う音楽解釈」をモリモリ吸収して、自分のミュージック・ライフに役立てて欲しい!
 総合鍵盤弾き、そうきのHP
 

3. スズキ Afternoon in Paris
 気配りの行き届いた丁寧な稽古振りは教室きってのABちゃんことスズキさん、もうひとつの趣味、パティシエの腕前もかなりスゴいです。
 今回はジョン・ルイスの端正な名曲に1シーズン取り組みました。You-non氏撮影の写真を見ると、フォームが凄くよくなっているのが良く判ります。
 レッスンでは、いつも緊張してワイワイいいながら演っている曲も、今日は落ち着きが感じられたのは稽古の成果!ベースのフレーズとハーモニーがぴったり合って倍音炸裂し、客席もとっても気持ちよさそうだった。マイペースを守りながら、じっくり聴かせてくれました!

4. まるちゃん  How High the Moon
 まるちゃんは、昨年秋、生徒会主催の「エラ・フィッツジェラルド講座」をヴィジター受講して入門を決めました。それからの進み方は驚異的!フェラーリかポルシェかというほどのハイスピード、ハイレベルで、発表会デビューの時点で課題曲以外にすでに2曲難易度の高いレパートリーをモノにしていました。
 でもやっぱりデビューには緊張したようです、応援のダンナ様まで「ビールを飲まずにいられない心境」だったそうです。想定外の急テンポでスタートしたものの、稽古充分ですんなり弾けてしまったのが逆に凄かった。ブラック&ホワイトのファッションが似合うクール・ビューティ!今後の進歩ぶりがすごく楽しみなピアニストです!


第2部:台頭するミュージシャン達&サプライズ!

受付は会長&松本誠のベテラン・コンビ、会長の骨折箇所を見ながら、なにやらヒソヒソ。
司会はキュートな実力派アクビちゃんが。
1. 児玉勝利 The Man Who Has Everything

児玉選手応援団長、友情出演::鷲見和広(b) 
 師匠−鷲見和広のデュオ、“エコーズ”の守護神として、水曜日の三番テーブルを独占するコダマさんの真の姿はテナー奏者です!
 今回はコダマさんの敬愛するコールマン・ホーキンスが録音したリチャード・ロジャーズのナンバー!演奏直前に現れたのは、赤いポケット・チーフも鮮やかな
タキシードに身を包んだナイト、鷲見和広(b)さんでした。聴きなれたエコーズのサウンドをバックに朗々としたテナーの音がコダマしました!
鷲見和広氏がブログに書いておられるように「正に“通好み”の選曲」でありました。
2. まっさん   Minor Mishap 
 キャリア・ウーマンであり、よき妻、母、アマチュアバンドのミュージシャンという超多忙の生活を送るまっさん、今回の演目Minor Mishapは、トミー・フラナガン大師匠の名演目、よって師匠の指導は、少しのミスも見逃さず、愛のムチがビシバシの厳しいものでした。ハードな稽古に良く耐え抜いたまっさんのピアノのサウンドは冴え渡り、合図の視線もばっちり!今までのまっさんのパフォーマンス中、群を抜く名演を聴くことができ最高でした。今日は師匠も「よくがんばった!」と、ニッコリ満足げに微笑んでました。
3. PON   Star Eyes
 数多い演奏者の中でもひときわ目立つ長身をエスニックなファッションで引き立てるPONちゃんは、石川県、山城温泉を本拠に引っ張りだこのピアニスト。当地からOverSeasに来られるお客様に聴いても、皆さん名前を知っている有名ピアニストです。
 今回はは親しみやすいメロディで人気があるものの、ラテンと4ビートのノリの色分けで、誰もが苦労する難曲、しかし、そこはプロ!終始にこやかにトリオのメンバー達に合図を送りながら、落ち着きのある演奏を披露。師匠も今までで最高の演奏!とにっこり。長身の利点を生かし、今後一層スケールの大きなピアニストになれそう!

  PONちゃんのblogはこちら
4.かおりん
Off Minor
Chelsea Bridge
 J−POPの世界で活躍中のチャーミングなかおりんちゃんは、今年道頓堀の大スクリーンにヴィデオ・クリップが流されて好評でした。発表会の間も自作のミニCDを録音中で、忙しかった様子。
 師匠もレッスンでは、ジャズだけでなく、ポップのジャンルに応用できるアドヴァイスをたくさん伝授しています。
 基礎テクニックと運動神経というピアノ演奏で重要な資質を兼ね備えるかおりんちゃん、発表会では、ストレイホーンとモンクの大ネタをこなしました。ミュールを履いていても、ペダルさばきが鮮やかなのが凄かった。ジャズの世界でも大きなポテンシャルを持っているプレイヤーです。 
ナカムラカオリ公式HP

<第3部 躍進するプレイヤーは気持ちがいい!>
(左から)受付嬢は最年少ゆかりんちゃん&コダマさん、引継ぎの会長もニッコリ
司会はABちゃんがMCデビュー!
1. けんいち 
Yardbird Suite
If You Could See Me Now

 毎回発表会を応援に来られるギャラリーの支持率をさらったのは、なんといってもけんいちくんのプレイでした。
 2006年冬のデビューから前回までと比べ、演奏する姿、タッチ、サウンド、スイング感、フレージング、全てのテクニカルな要素が飛躍的に進歩したのみならず、彼のプレイには聴く者に訴えかける“サムシング”がありました。ピアノの後ろに陣取る調律の川端氏は「オオッ スゴイッ!けんちゃん化けた!!」と椅子から落ちそうになったそうです。
 先輩達も苦労する「スイング感」、そして「倍ノリ」のフィーリングがごく自然に出てきて、自分の「言いたいこと」をちゃんと音で表現していたと、一番弟子松本誠も大絶賛!
 日頃のレッスンだけでなく、ウィークディのライブにも足げく通い、瞳を輝かせながら、師匠の芸とエネルギーを楽しみながら”盗んできた”けんちゃん、その成果が、今回見事に花開きました。どんどん前進して欲しいピアニストです。
2. むなぞう 
3 in 1
Cup Bearers

 大師匠トミー・フラナガンやサー・ローランド・ハナと交流経験を持ち、楽曲に対する理解の深さも教室きっての若頭むなぞうくん、大師匠トミー・フラナガンの愛奏曲2曲は、どちらもフラナガンの印象的なフレーズが随所に取り入れられ、よく考えられたむなぞうヴァージョン!特にCup Bearersは、変則小節の手ごわい曲でしたが、さすがによくまとめてじっくり聴かせました。
 後輩けんちゃんも「むなぞう兄さんのフレージングはすごく勉強になります。」と瞳をキラキラさせていました。 
3. つー   Strictly Confidential
I Want to Talk abou You
Smooth as the Wind
 
 上のYou-non氏撮影の写真を見ても、爽やかでキュートな演奏ぶりが伝わってくるつーちゃん、後ろから見ていると、背中のボタンがアクセントになっていて、一層愛らしい姿でした。
 前回の発表会で新人賞受賞し、一挙に3部のトリに番付を上げた逸材です。バド・パウエルやタッド・ダメロンが並ぶレパートリーといい、パートナー達に送る合図といい、僅か2回目の出場とは思えない成長振りに目を見張りました。
 ところが本人に聞くと、お腹が痛くなるほど緊張していたらしい。来年から青年海外協力隊の一員としてモロッコに2年赴任予定ですが、ノープロブレム!人生は長い!じっくり育って欲しい逸材です。


<第4部、最終ラウンドはオーラ輝く!>

美貌受付嬢はまるちゃん&つーちゃんコンビ、会長も思わずニンマリ。
司会は若武者けんちゃん、演奏よりずっと緊張したそうです。
1. アクビ 
The Tadd Walk
Good Morning Heartache
Our Delight 

 入門僅か3年余りでメキメキ実力を伸ばし、OverSeasでライブ経験も積んで来たアクビちゃん、小柄な肢体から想像も付かない、スインギーでダイナミックなプレイは人気の的。演奏中の、背中や腰、肘の使い方は、あやめ副会長と共に、後輩達の注目の的です。
 今回は橋本会長の穴を埋めて、4部のトップとして、渋さ溢れるダメロンの曲、深い楽曲解釈を要求される大人の女性のバラード、トミー・フラナガンとフラナガニアトリオの名演目と、厳しい3曲で勝負。
 ライブを経験したからか、音を出すなり、「会場の雰囲気を一変させる」ようなオーラを発散させられたのは大進歩!と師匠も満足気でした。

 
2. あやめ副会長
Django
Stars Fell on Alabama
Eclypso

 発表会最多最優秀賞を受賞する「努力の殿堂」あやめ副会長は、コンスタントにOverSeasでのライブ出演もこなし、常に準備万端の安定したプレイを聴かせてくれます。発表会では司会や録音まで買って出て後輩達の尊敬の的。夫君You-nonと共に、発表会に大いに貢献して頂いています。
 今回も、美しい音色と音使い、一味違う変化に富んだ選曲で、じっくり聞かせてくれました。トリオのパートナー達も震撼する、「引き込み方」は後輩達には大いに学ぶところあり、Eclypsoの最後のトリルまで、皆のお手本となる演奏を披露し、見事最優秀賞に輝きました。
4. 松本誠  Tempus Fugit
Easy Living
Mean Streets
  当教室の一番弟子、松本誠は子供のときからOverSeasで寺井尚之やトミー・フラナガンを始めとする巨匠達の演奏に親しみ、パノニカ・マダムは半ズボン姿で、お店に来ていたあどけない松本少年を覚えていらっしゃいます。
 そんな彼も今は二児の父、仕事に家庭に忙しい年代になってきました。発表会の数週間前、このレギュラートリオでライブ出演し、好評を博した直後の発表会はリハの時間もとれず、本番直前の簡単な打ち合わせのみで臨みました。それも、バド・パウエル、ビリー・ホリディ、トミー・フラナガンと、寺井門下を象徴するような難易度最高の大ネタ三曲。
 しかし、そこはやっぱり松本誠、最初から「理屈では言い表せない」何とも言えない心地よさのあるスイング感と浮揚感が溢れました。柔らかな指を駆使した複雑な音使い、変幻するハーモニーの広がりに、後輩達はうっとりしたり、圧倒されたり…見学のお客様も大満足の演奏になりました。
 外野の私にとっては、発表会のプレイヤー全員が大スター! 入賞した皆さんも、惜しくも賞を逸した皆さんも、出場者達は、皆それぞれが輝いて素敵です。それだけでなく、客席で真剣に演奏を見つめ拍手を惜しまない皆さんのミュージシャンシップも、演奏と同じほど素晴らしく、魅力を感じて止みません。
 次回の発表会は'08年1月27日(日)、明日から、生徒の皆さんは
プラクティス!プラクティス!外野の私も力いっぱい応援しています。 by tamae terai



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