GWはOverSeas開店36年周年記念LIVEに!

 若草萌ゆる候、皆様いかがお過ごしですか?

 当店、OverSeasは5月の連休、5/2(土)~5/5(火)の4日間、スペシャル・ライブを開催いたします。

 どの日も趣向を凝らしたプログラム!おいしいお料理やお飲物と共に、ゆったりとお楽しみください!

 

5/2(土)

寺井尚之3 ‘The Mainstem’

Plays STANDARDS

宮本在浩-bass,菅一平-drums

Live Charge ¥2500

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 ザ・メインステムは、寺井尚之が、宮本在浩(b)、菅一平(ds)とチーム・ワークを培って、デトロイト・ハードバップを追求する強力レギュラー・トリオ、日頃は滅多に聴けない寺井尚之の極上のジャズ・スタンダード集を披露します。

 思えば、トミー・フラナガンがライブでさりげなく聴かせるスタンダードは極上でした。

 一旦演るとなると、徹底的に弾けます。鉄壁のピアノ・トリオで、あの曲、この歌、ピアノから歌詞の聴こえてくる最高のスタンダード集を!

5/3(日)

末宗俊郎(g) with Mainstem trio

Live Charge ¥3000 

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 浪速のケニー・バレルと呼ばれる末宗俊郎が、超タイトなリズムセクションをバックに縦横無尽にスイング!ブルース心溢れるギター・ジャズの真骨頂を!

5/4(月)

岩田江(as) with Mainstem trio

Live Charge ¥3000

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 本格派ビバップ・アルト奏者、岩田江(いわた こう)がメインステムをバックに朗々と吹きまくる魅惑のBOP SESSION! 素晴らしいアルトの音色で歌心が溢れてきます。

5/5(火)

“Echoes” リユニオン 

Live Charge ¥2000

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寺井尚之(p)+鷲見和広(b)、名コンビがGWに復活。往年の笑って泣けるデュオローグ!

『ポーギーとベス』やビリー・ホリディの名曲などなど、”エコーズ”の名演目が蘇ります。時にはロマンチックに、時には漫才ばりのユーモラスな音楽の掛け合いを、二人の音楽の会話を、心行くまでお楽しみください。

 

 (各日とも)開場:6pm-  演奏時間:7pm- / 8pm- / 9pm-  

*料金はライブ・チャージにご飲食代をプラスしたものになります。(表示は税抜です)

翻訳ノート:ウエス・モンゴメリー『アーリー・レコーディングス・フロム1949-1958 イン・ザ・ビギニング』

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キング・インターナショナルHPより:

驚愕の未発表音源!!<<ウエス草創期の一大アンソロジー>>

オクターブ奏法, ベースを弾くウエス, クインシー・プロデュース音源・・

『エコーズ・オブ・インディアナ・アヴェニュー』を凌ぐ作品の登場!!

 

  先月、日本先行発売、まもなく本国米国で発売される、ウエス・モンゴメリー話題の未発表音源『アーリー・レコーディングス・フロム1949-1958』、私の周りでも、ジャズにかぎらずロックやクラシックを主に演奏しているミュージシャン達も、すぐにチェックして愛聴しているみたいです。

 このアルバムは地元インディアナポリスの人気ギタリストとして活躍した時期、26才から33才のライブ、スタジオから、プライベートなジャム・セッションでのエレキベースまで、さまざまなシークエンスのプレイを収録したものです。ウエスが遅咲きであった理由は、家の生活を守るため、俗にデイ・ギグと呼ばれる工場勤めをしながら、地元に留まって音楽活動を続けたというのは有名ですよね。でも、ここでの演奏を聴くと、すでにウエスのあのスタイルは出来上がっていたことを、自分の耳で確かめられるのが嬉しいです。

 NYの一流ミュージシャンの間では、「インディアナポリスにウエスあり!」と口コミで噂は伝わっていて、楽旅でインディアナポリスを訪れると、こぞって、彼の出演場所にやって来た。本作は、そんなミュージシャン達の気持ちを共有できます。ウエスと共演している地元ミュージシャン、プーキー・ジョンソン(ts)、ソニー・ジョンソン(ds)も並々ならぬ実力派です。

 2枚組CDには、当時の貴重な演奏写真と共に、当時のウエスの実像に迫る様々なエッセイがぎゅうぎゅう詰めになった小冊子付き。この辺りが、「ジャズ発掘人」として名高いゼヴ・フェルドマンらしいアルバム作りですね!小冊子の冒頭には、「ジャズ発掘人」と呼ばれるフェルドマン自身が語るアルバム誕生秘話。世界中から情報を集め、良いアルバム作りに邁進するのプロジェクトXに血沸き肉踊ります。続いてウエスの家族たち、22才の若さでウエスをプロデュースしたクインシ―・ジョーンズ、ロック畑のウエス・ファン代表、ピート・タウンゼント、さらには、2月に『オファリング:ライブ・アット・テンプル大/ ジョン・コルトレーン』のアルバム・ノート執筆者としてグラミー賞を勝ち取ったアシュリー・カーンなどなど、音楽解説だけでなく、その当時のインディアナポリスのジャズ・シーン、歴史や社会状況が手に取るように見えてくる高内容の一冊!

 当時のインディアナポリスで黒人たちが直面していた人種差別からは、ウエスが、パノニカ男爵夫人の「三つの願い」で、『No discrimination whatever いかなる差別もなくなること。』 と願っているのが深く頷けました。そして、その差別をウエス達が音楽の力で正す痛快な事件のことも書かれています。

 初期ウエスの貴重なレコーディング、それに、まつわる音楽史の興味深い断面を、ぜひご一読ください!日本語訳は不肖私が担当させていただきました。King e-SHOP

 下のヴィデオは、ゼヴさんがホスト役で登場する、アルバム制作ドキュメンタリーです。

CU!

4/10(金)アキラ・タナ、楽しかった!すごかった!

hisayuki_terai_akira_tana_zaikou_miyamoto_ippei_suga1.JPG   待ちに待ったアキラ・タナ(ds)ライブ。4月に不似合いな冷たい雨でしたが、昨年に引き続き、「楽しい!」「すごいっ!」の歓声が口々に漏れる最高の演奏が聴けました。

akiraP1090110.JPG アキラ・タナさんと寺井尚之のお付き合いは、もう30年になります。でも、最初に彼の演奏を聴いたのはもっと前、寺井も私も二十代でした。大学時代の寺井の盟友ギタリスト、現在マレーシアでギター・レジェンドとして活動し、あちらの音大で教鞭を取る布施明仁さんが、その頃ボストンのニューイングランド音大に留学中で、「同じクラスにソニー・スティットと一緒に演っている奴が居ます。」といって彼の地のジャズクラブでライブ録音したカセット・テープ(!)を送ってくださったのがアキラさんとの最初の出会いでした。

 初めてOverSeasにお招きしたのは、Walter Bishop Jr.のトリオで’80年代中盤、それからコンサートで、プライベートで何度演奏していただいたか数えきれません。

 今回の来日も公私ともに超多忙スケジュールの合間を縫っての出演でしたが、譜面を一瞥した途端に、曲の構成がズバッと頭に入る感じ、イントロなしで寺井の首振りから始まる曲、超変則のBeyond the Bluebirdなど、どの曲もリラックスしてこなれた印象に。やっぱりアキラさんが加わったジミー・ヒース作品は、格別の味わいです。

 アキラさんを聴きにきてくれたロック・ミュージシャンのお客様を紹介すると、次のセットではすかさず8ビートでソロを取る茶目っ気も素敵でした。寺井尚之(p)は得意のポーカーフェイスですが、とっても気持ちよさそうにアキラさんと音楽でジョークを言い合っているし、宮本在浩(b)も本当に楽しそう!「ザイコウ、最高!」と声が掛かるソロを出してベテラン二人に強烈アピールしています。


ippeiP1090120.jpg  ラスト・チューンのA Sassy Sambaでは、アキラさんの傍らで食いつくように聴いていたメインステムの菅一平(ds)さんが、隠し持っていたパーカッションでジョイント、すると会場に居た先輩ミュージシャン達の応援が甲子園の外野席のようで、場内は興奮の坩堝に!

 アンコールは前回大好評の「どんぐりころころ=リズムチェンジ」に続き、今回は「七つの子」ジャズヴァージョン。最近大阪環状線が駅ごとに発車メロディーを鳴らすのにインスパイアされた寺井が、ここぞとJRのホームで耳にした色んなメロディーを、最高のピアノタッチで繰り出すのに、皆大爆笑。最後まで笑顔の絶えないライブになりました。 

 「楽しい」を生み出すためには日頃の厳しい修練が必要なんだ!改めて実感したコンサート。またの再会を約束し、アキラさんは明日帰国の途につきます。

 アキラ・タナ(ds)ライブ、次回も宜しくお願い申し上げます!

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<1st Set>

1. Ladybird (Tadd Dameron)

2. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)

3. Mean What You Say (Thad Jones)

4. If You Could See Me Now  (Tadd Dameron)

5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)

<2nd Set>

1. Suddenly It’s Spring (Jimmy Van Heusen)

2. They Say It’s Spring (Bob Haymes)

3. Bro’ Slim (Jimmy Heath )

4. The Voice of the Saxphone (Jimmy Heath )

5. Rifftide (Coleman Hawkins)

<3rd Set>

1. What Is Thing Called Love? (Cole Porter)

2. Quietude (Thad Jones)

3. Stablemates (Benny Golson)

4. I’ll Keep Loving You (Bud Powell)

5. A Sassy Samba  (Jimmy Heath )

Encore: 七つの子:環状線メドレー

第26回トリビュート・コンサートCDできました。

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 3月のトミー・フラナガン・トリビュート・コンサートの3枚組CDが出来上がりました。

 巨匠フラナガンが最も好んだピアノ・トリオというフォーマットで培った名演目、そのアレンジを受け継ぐ弟子、寺井尚之が手塩にかけたメインステム・トリオ(宮本在浩-bass、菅一平-drums)で、渾身のプレイを披露しています。

 コンサートにご参加いただいたお客様にも、お越しになれなかったお客様にも、OverSeasならではの演奏風景を感じていただける逸品になりました。

 録音からCD製作まで、毎回ボランティアでお世話くださる福西You-non+あやめ夫妻に感謝。
お申込みはメールでお願い致します。すでにご予約いただいているお客様は次回ご来店の際にお渡しいたします。
応援くださった皆様、心よりお礼申し上げます。

トリビュート・コンサート!

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第26回トミー・フラナガン・トリビュート・コンサート、おかげさまで盛況で開催することができました。

 今年でフラナガン没後14年、客席に生前の勇姿を生で知るお客様は少なくなっていきますが、新旧のお客様に支えられ、26回のコンサートが出来たと思うと感慨もひとしおです。

zaiko_miyamoto_26th.jpg 寺井尚之のレギュラー・トリオも、当初のフラナガニア・トリオ(宗竹正浩-bass、河原達人-drums)から、現在のザ・メインステム (宮本在浩-bass、菅一平-drums )に衣替えして、今回で14回目、トリビュートの過半数のコンサートをメインステムで演ったことになります。稽古が三度のご飯より好きな寺井がこれまで8年の歳月をかけてトリオとしてのサウンドを磨いてきたわけですから、メンバーはさぞ大変だったろうと思いますが、長年の常連様から「いやあ、よくなったねえ。」声をかけられると、疲れも吹っ飛んだのではないでしょうか。

 トリビュート・コンサートのプログラムは、毎回、フラナガンが愛奏した名演目と呼ばれるものから、寺井がセレクトして起承転結のあるひとつのコンサートにまとめていきます。今回は、故郷デトロイト時代からフラナガンが大きな影響を受けたサド・ジョーンズ作品で始まり終わるプログラム。ippei_suga_26thtribute.jpgその間にフラナガンが理想としたデューク・エリントン+ビリー・ストレイホーン作品、バド・パウエル、タッド・ダメロンなどのビバップの名曲、フラナガンが春になると奏でたスプリング・ソングたち、それにフラナガン・ライブの最大の聴きどころだったメドレーを織り交ぜ、このコンサートがひとつのフラナガン音楽史というか、読み応えのある「物語」になったと、初めて感じることが出来ました。

 ピアノの鳴りは息を呑むほど美しかったし、 宮本在浩(b)、菅一平(ds)のふたりも存在感を見せつけてくれました。お客様からもらったコンサートの感想メールを引用させていただきます。

「ザイコーさん、一見控えめに見えて、実はしっかり師匠のピアノに絡みつつ、菅さんとはお互いに支え合って、というのがよく見えました。」

「菅さんのプレーは、師匠から次から次に来る暗黙の要求に穏やかな表情で応えられている姿がカッコ良かったです。」

 「冒頭のLet’sが始まった途端、2000年の大阪ブルーノートのフラナガン・トリオの演奏を思い出して涙が出た。」と言ってくれた人も居ました。

 前回のフラナガン・インタビューにこんな発言があったのを覚えていますか?

「演奏するからには、しっかり準備をして、そこに或る思いを込めたい。」

 そんなフラナガンの心は確かに受け継がれているなあ。そんな風に感じることができました。

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<曲目>

《第Ⅰ部》

1. Let’s /Thad Jones

 作曲者はコルネット奏者としても、バンドリーダーとしても天才的な手腕を発揮したサド・ジョーンズ。ジョーンズの作品は一筋縄ではいかない難曲が多いために、沢山の演奏者に取り上げられるスタンダードは少ない。だがフラナガンは終生彼の作品を掘り下げた。

 「サド・ジョーンズ作品には強力なパワーを内蔵していて、演奏すると、自然にそのパワーが発散する。彼の作品を演奏できるならば、演奏者として順調な道を歩んでいる証だ。」トミー・フラナガン

 

 

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2.Beyond the Blue Bird /Tommy Flanagan

 青年時代のフラナガンがサド・ジョーンズ(cor.tp)と共に、毎夜、デトロイトの黒人居住地で熱い演奏を繰り広げた場所《ブルーバード・イン》を偲んで作ったオリジナル。本曲は若き日へのノスタルジーに溢れている。

 生前のフラナガンは、《ブルーバード・イン》と《OverSeas》の雰囲気は、よく似ていると言ってくれた。

 デトロイトのお家芸である左手の”返し”が印象的、親しみやすいメロディでありながら、、転調が多く弾くのは大変むずかしい。寺井尚之はリリース前に、この曲を写譜して、演奏を許されたことが誇りだ。

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3. Mean What You Say  /Thad Jones

 ゆったりしながら、爽快なスピード感が味わえるサド・ジョーンズ作品、サド・メルOrch.の十八番でもあった。’Mean what you say(ズバっと、相手に伝わるように言え!)’はジョーンズの口癖らしいが、デトロイト・ハードバップのモットーとも言えるだろう。

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4.メドレー: Embraceable You  
/George Geshwin

        Quasimodo /Charlie Parker

 ガーシュインの有名なバラード(抱きしめたくなるほど愛らしい君)、そのコード進行を基にして作ったバップ・チューンに、チャーリー・パーカーは「カジモド」という醜い「ノートルダムのせむし男」の名前を付けた。原曲とバップ・チューンを絶妙な転調で結ぶ意表をついたメドレーには、パーカーの真意を読み解いたフラナガンの深い洞察力が見える。 ライブで、フラナガンのメドレーは最高の聴きどころだったが、これは数あるメドレーの内でも白眉だった。残念なことにレコーディングは遺されておらず、トリビュート・コンサートでその素晴らしさを偲ぶしかない。関連ブログ

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5. Sunset & the Mockin’ Bird / Duke Ellington, Billy Strayhorn

  エリントン&ストレイホーン作品、エリントン・ミュージックはフラナガン終生の理想だった。この曲はフラナガン67才のバースデイ・コンサートのライブ盤(右写真)のタイトルになっている。エリントンの自伝『Music
is my mistres』によれば、フロリダ半島をハリー・カーネイ(bs)運転の車で移動中、夕焼けの中で耳にした不思議な鳥の鳴き声に霊感を得て、瞬く間に書き上げた曲とある。後にエリントンは、この曲を含めた「女王組曲」を収録し、たった一枚プレスして英国のエリザベス女王に献上品とした。フラナガンは、FMラジオのジャズ番組のテーマ・ソングとして毎週流れるのを聴き覚え(!)レパートリーに加えたと言う。

 トリビュート・コンサートでは息を呑む寺井尚之のピアノタッチの至芸で。

 

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6.Raincheck  / Bily Strayhorn

 ビリー・ストレイホーンが第二次大戦中、カリフォルニアで作ったと言われている作品。雨雲を吹き飛ばすような颯爽とした雰囲気に溢れている。

  フラナガンは、ジョージ・ムラーツ(b)、ケニー・ワシントン(ds)との黄金トリオで、名盤『Jazz Poet』に収録している。スピード感と品格を併せ持つフラナガン流ヴァージョンで。

 

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7. Dalarna / Tommy Flanagan  

 ”ダラーナ”は、『Overseas』を録音したスウェーデンの風光明媚な地域の名前を冠した初期のオリジナル。転調の奥義や印象派的な曲想に、心酔していたビリー・ストレイホーンの影響が垣間見える。

 『Overseas』以降、フラナガンが演奏することはほとんどなかったが、寺井尚之のアルバム『ダラーナ』(’95)の演奏に触発され、寺井のアレンジを使って『Sea Changes』(’96)に再収録した。

 

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8. Tin Tin Deo / Chano Pozo, Dizzy Gillespie, Gill Fuller

 フラナガンは、ビッグバンドの演目を、コンパクトなピアノ・トリオ編成でダイナミックに料理するのを得意にしていた。この曲は、哀愁に満ちたキューバの黒人音楽と、ビバップの洗練されたイディオムが見事に融合したブラック・ミュージックだ。

 ディジー・ガレスピー楽団がこの曲を初録音したのはデトロイトで、フラナガンの親友、ケニー・バレル(g)が参加した。フラナガンにはその当時の特別な思い出があったのかもしれない。

 現在は寺井尚之The Mainstemがそのアレンジをしっかりと受け継いでいる。

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 《第Ⅱ部》

1. Eclypso  /Tommy Flanagan

 フラナガン作品中、最も有名なのがこの曲かも知れない。『Overseas』(’57)や『Eclypso』(’75)を始め、フラナガンは繰り返し録音している。、”Eclypso”は「Eclypse(日食、月食)」と「Calypso (カリプソ)」の合成語。トミー・フラナガンを含めバッパーは、言葉の遊びが好きで、そんなウィットがプレイにも反映している。

  フラナガンが寺井尚之をNYに呼び寄せ、別れの夜にヴィレッジ・ヴァンガードで寺井のために演奏してくれた思い出の曲。

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 2. They Say It’s Spring  / Bob Haymes

 フラナガンが”スプリング・ソングス”と呼んで愛奏した季節の演目。

 ’50年代中盤に、ブロッサム・ディアリーのキュートな歌声でヒットした。彼女の夫は、当時J.J.ジョンソンのバンド仲間であったボビー・ジャスパー(ts.fl)であったことから、フラナガンはディアリーのライブで、この曲を聴き覚えレパートリーに加え、フラナガンの演奏を聴いたダグ・ワトキンス(b)も愛奏するようになったという。NYのジャズシーンでは口コミで音楽が広まっていったのだ。

 作曲者、ボブ・ヘイムズは人気歌手ディック・ヘイムズの弟、俳優、歌手、TV番組タレントとしても有名だった。

 ’70年代にジョージ・ムラーツ(b)との名デュオ・アルバム『Ballads & Blues』に収録されている。
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 3. Rachel’s Rondo  /Tommy Flanagan

 最初の妻、アンとの間に生まれた美しい長女レイチェルに捧げた作品。フラナガンは『Super Session』(’80)に収録したが、ライブでは余り演奏することはなかった。

 一方、寺井はこの曲を大切にして長年愛奏し、『Flanagania』(’94)に収録している。

 冴え渡るピアノのサウンドがこの曲の気品を遺憾なく発揮する。

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 4. A Sleepin’ Bee  / Harold Arlen
 これも、春にNYでフラナガンがよく演奏したスプリング・ソング。Aペダルの軽快なヴァンプが春の浮き浮きした気分にぴったりだ。ライブで演奏していくうちに、’78『ハロルド・アーレン集』に収録したヴァージョンからどんどんアップデートしていて、トリビュートで演奏するのは進化ヴァージョンだ。

 元々「A House of Flowers」というハイチを舞台にしたブロードウェイ・ミュージカルの劇中歌。「蜂が手の中で眠ったら、あなたの恋は本物」というハイチの言い伝えを元にした可愛らしいラブ・ソング。 

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5.Passion Flower  / Bily Strayhorn

 フラナガンがジョージ・ムラーツ(b)の弓の妙技をフィーチュアして盛んに演奏したビリー・ストレイホーンの名曲。ムラーツはフラナガン・トリオを離れてからも、自分のグループで愛奏し続けている。

 パッション・フラワーはトケイソウのこと。ビリー・ストレイホーンは花を題材にした作品を好んで作っているが、その中でも、この曲を最も愛奏している。

 今夜は、宮本在浩が秀逸な演奏で大きな存在感を示した。

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6. Mean Streets  /Tommy Flanagan

  元々”Verdandi”という曲名で、エルヴィン・ジョーンズのドラムソロをフィーチュアし『Overseas』(’57)に収録、20年後、レギュラー・ドラマーに抜擢したケニー・ワシントン(ds)のフィーチュア・ナンバーとして盛んにライブで演奏し、ケニーのニックネーム、”ミーンストリーツ”と改題し『Jazz Poet』に収録。

 トリビュートでは、菅一平(ds)が細部まで神経の行き届くダイナミックなドラムソロで、大きな成長ぶりを見せつけた。

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 7. I’ll Keep Loving You  /  Bud Powell

   バド・パウエルが歌手の女友達の持ち歌に書き下ろしたとされる作品で、凛とした美しさがみなぎる硬派のバラード。フラナガンは、ビバップのアンソロジー集、『I
Remember Bebop』(’77)に収録。フラナガンを愛し続ける寺井尚之の心が溢れる名演となった。

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 8.Our Delight  / Tadd Dameron

 

 ビバップの立役者の一人、ピアニスト、作編曲家、タッド・ダメロンの代表作。フラナガンはダメロン作品には「オーケストラの要素が内蔵されているので非常に演りやすい。」と言い、ライブを最高に盛り上げるラスト・チューンとして盛んに愛奏した。それにもかかわらず、レコーディングはハンク・ジョーンズとのピアノ・デュオしか残されておらず、バップの醍醐味が炸裂するスリリングなフラナガンのアレンジを再現できるのは寺井しかいない。

 

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collar.jpg《アンコール》

1. With Malice Towards None  / Tom McIntsh

  フラナガンが、真の「ブラック・ミュージック」として愛奏したトム・マッキントッシュ初期の作品。

 「誰にも悪意を向けずに」という題名は、エイブラハム・リンカーンの名言で、メロディは賛美歌を基にしたスピリチュアルな曲。

 この曲が生まれた頃、マッキントッシュとフラナガンは住まいが近所で親しく行き来しており、フラナガンはこの曲の創作過程に立ち会って、自分のアイデアを盛り込んだ。様々な編成で多くの録音があるものの、フラナガンのスピリチュアルな演奏解釈が傑出している。その中でも最も心を打たれるのは、フランク・モーガン名義のアルバム『You Must Believw in Spring』に収められたソロピアノの演奏だ。

 

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2. Like Old Times  / Thad Jones

 

 フラナガンがアンコールで頻繁に演奏した作品。サド・ジョーンズ名義の『Motor City Scene』(’59)や、ヴィレッジ・ヴァンガードのライブ盤(’87 右写真)に収録されている。「昔のように」は、デトロイトの《ブルーバード》のアフターアワーズの楽しさを指すのかもしれない。

 今夜のコンサートでは、昔のフラナガンのように、寺井が隠し持っていたホイッスルを、絶妙のタイミングで吹き鳴らし大喝采を浴び、文字通り「昔のように」笑いが溢れる楽しい締めくくりとなった。

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トリビュート・コンサートの演奏を演奏をお聴きになりたい方へ:3枚組CDがあります。

OverSeasまでお問い合わせ下さい。