近況報告&中井幸一Plays『Dial J.J.5』のお知らせ

p-nakaikoichi-200.jpg 皆様お久しぶりです!いかがお過ごしですか?

 ここ最近、珍しいお客様や懐かしいお客様が相次いでOverSeasに来てくれました。一人はジョージ・ムラーツ兄さんの義弟、ラデックさん、チェコでヘアーメイク・アーティストとして一流ホテルにサロンを持ち、気が向くと格安航空券で世界を旅するボヘミアン。大阪でカプセルホテル(!)を楽しむついでに、ムラーツさんゆかりの当店を訪ねてくれました。もう一人は、遥か22年前、香港からの政府交換留学生として大阪大学で勉強していた頃、よくライブを聴きに来てくれた青年チャンさん、現在は、香港中文大学の副学部長になり、学会で来日した際、「寺井さんのピアノを聴かせたい!」と海外の仲間を大勢連れて、滞在先の京都から、メインステムのライブに来てくれました。皆、マナーが良くて、すごく熱心に聴き、生のジャズ・ピアノ・トリオを楽しんでくださった!長い間、ジャズクラブの片隅に居ると楽しいこともあるなあ・・・としみじみ思います。

 さて、どんなに世の中が変わっても、J.J.ジョンソンはトロンボーンの神様で、『Dial J.J.5』が永遠の名盤であることは変わらない。と、いうわけで新企画登場!7月2日にOverSeasでは、トロンボーン奏者であり、ジャズからポップスまで、アレンジャーとして定評のある中井幸一さん、そして岡山のテナー奏者、中務敦彦(なかつかさ あつひこ)さんをお迎えし、中井さん書き下ろしのスコアで、J.J.ジョンソンの名演目をお聴かせします。リズムセクションは、もちろん寺井尚之メインステム(宮本在浩 bass 菅一平 drums)、メインステムにとっては演り慣れたJ.J.の演目、そこに実力派フロント二管が入ると想像するだけでわくわくします。 

=予定演奏曲=
Barbados (Charlie Parker)
Our Love Is Here To Stay (George Gershwin )
Bird Song (Thad Jones)
Old Devil Moon (Burton Lane) etc…

 

中井幸一(tb) 5 Plays J.J.Johnson 

日時:7月2日(土)
メンバー:中井幸一(tb,arr.)中務敦彦(ts),
 寺井尚之(p)、 宮本在浩(b)、菅一平(ds)
Live Charge3000 (学割チャージ半額)

首尾よくJ.J.Johnsonの音霊が蘇りますように。ぜひ一緒に聴きましょう!

 

コールマン・ホーキンス達の”ルート66″ (2)

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 ここでお話する『ルート66』は、1960-64年に放映されたTVドラマ、LAとシカゴを結ぶルート66を、バズ&トッドという二人の若者(上の写真左:バズ/ジョージ・マハリス、右:トッド/マーティン・ミルナー)が、コルベット・スティングレーに乗って旅するロード・ムービー。日本でもNHKでも放映され大ヒットした。余談ですが、トッドの吹き替えを担当した愛川欽也は、このドラマを下敷きにして『トラック野郎』の企画を作ったのだそうです。

<Season2/ Episode No.3 ”Goodnight, Sweet Blues”>

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 『ルート66』、シーズン2の第三話<グッドナイト・スイート・ブルース>はシリーズ中でも最もジャズ色の濃いもので、往年の名歌手エセル・ウォーターズを中心に、コールマン・ホーキンス、ジョー・ジョーンズ、ロイ・エルドリッジという錚々たるジャズメンがゲスト出演するというもの。このエピソードの監督ジャック・スマイトの代表作は、ビリー・ホリディ、レスター・ヤングからモンクまで、現存するスター達のスタジオ・セッションを記録した歴史的ジャズ番組『The Sound of Jazz』ですから、なるほどという感じです。

 【あらすじ】 

 ストーリーは愛と涙の人情話。ピッツバーグに近いRoute 66のどこか、老女Ethel-Waters.jpgジェニー(エセル.ウォーターズ)は運転中に心臓発作を起こし、トッド&バズの運転するコルベットと接触事故を起こす。トッド&バズに救助され、医師の診察を受けたものの、ジェニーの心臓は手の施しようがないほど悪化しており、余命いくばくもない。

 ジェニーは、昔大活躍した往年のブルース歌手だった。彼女の夢は、30年前に、共に活動した仲間“メンフィス・ナチュラルズ”ともう一度一緒に歌うこと。それを冥途の土産として天国に召されたい。

そこでジェニーは、トッド&バズに、「私の有り金全部使ってくれていいから、昔の仲間に会いたいの。彼らの演奏が聴きたいの。お願い!」と頼みます。 

 バズが大のジャズファンであったことから、二人は往年のディーヴァのために一肌脱ぐことを決意。手分けしてメンバー達を捜しにアメリカ中を飛び回る。.あの人はいま・・・LAやシカゴ、メンフィス、NY、かつての人気ミュージシャンは明暗分かれるそれぞれの人生を歩んでいた。現役バリバリのミュージシャンやスタジオ・ミュージシャンとして第二の人生を歩む者、、亡くなったり、刑務所で服役中だったり、音楽ときっぱり縁を切って靴磨きで生活している者まで、人生いろいろ。ともあれ、トッド&バズは、死を目前にするジェニーの病床で、約束通り“メンフィス・ナチュラルズ”のリユニオン・セッションを実現させる。

 元気をもらったジェニーは昔の仲間の演奏で、かつてのヒット・ナンバー、<Goodnight, Sweet Blues>を歌うと、幸せの笑みを浮かべながら天国に召されるのだった。

 黒人女優として初めてエミー賞にノミネートされたエセル・ウォーターズの演技もさることながら、コールマン・ホーキンスとパパ・ジョーとロイ・エルドリッジがドラマに出てるのがすごい!それにまだまだ人種差別があった’60年代始めに、白人青年が黒人女性の願いで、色々努力すというプロットも珍しい。

 コールマン・ホーキンス扮するスヌーズ・モブレーは、昔はクラリネット、今はテナーに転向して、大人気を誇るモダン・ジャズ・ジャイアントという役どころ、でも、実際のところ、セリフもほとんどなくて、芝居しているというよりも「素」のままです。芸達者な役者さん達も一緒にミュージシャン役を演じているのですが、ジョー・ジョーンズとロイ・エルドリッジは彼らと対等にしっかり芝居をしています。ところが、役柄の設定にびっくり!

<トランペットを吹くジョー・ジョーンズ>

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左から:ジョー・ジョーンズ(tp)、actor ウィリアム・ガン(banjo)、actor フレデリック・オニール(b)、ロイ・エルドリッジ(ds)一人おいてコールマン・ホーキンス(cl)


 このドラマでは、ジョー・ジョーンズとロイ・エルドリッジの楽器が入れ替わっているんです。刑務所に服役中で、判事の温情によって一時的に釈放してもらうトランペット奏者がジョー・ジョーンズ、NYのスタジオ・ミュージシャンとして引っ張りだこのドラマーがロイ・エルドリッジ!勿論、セッション・シーンもそのとおりで、パパ・ジョーの吹き替えをロイ・エルドリッジがやっている・・・

 なんでこんなややこしいことになったの??JazzWaxのサイトに、ジャズメンの友人である評論家、ダン・モーガンスターンが納得のいく説明をしていました。

 特別出演の3人のミュージシャンの役柄のうち、一番重要で出演シーンの多いのがトランペット奏者、Lover Brownだった。そこで、パパ・ジョーは、「この役やりたい!」ともくろんで、誰よりも早く撮影スタジオに入り、「私、トランペットも出来るんです。芝居も出来るんです!」と、監督に直訴したのだとか・・・身のこなしも滑らかで、トランペットも実際に吹けるジョーンズの方が、カメラ映りがいいと思われたのかもしれません。

 後からやってきたロイ・エルドリッジは、パパジョーの抜け駆けに激怒したものの、後の祭り、ドラマー役をやるしかなかった。なんたってエルドリッジは十代の頃はドラマーとして稼いでいたのだから、演奏するのには何の問題もなかったんです。

 上のスチール写真を観ると、ロイ・エルドリッジが何となくブスっとしているように見えなくもない。

ともあれ、歴史的なドラマ画像、セリフも短いし、ストーリーもシンプルで判りやすい。音楽はネルソン・リドル、残念ながら、ナット・キング・コールで有名な、あの<ルート66>の歌は登場しません。