●ライナー・ノーツ by
パール・チャン・リー Pearl Chang Lee
<時の香り>が立ちのぼる!
デトロイト・バップの快作。
寺井尚之のリーダー作第4作目、「フレグラント・タイムズ」は、前作「ダラーナ」、前々作「フラナガニア」と同様、長年のレギュラー・トリオで(寺井は、寺井尚之”フラナガニア”トリオと呼ぶ。)97年11月2日〜3日に録音された。
FRAGRANT TIMES
は日本語では<時の香り>とでも訳すればよいのだろうか。本アルバムでは師匠トミー・フラナガンの作品はもとより、モンク、パウエル、サド・ジョーンズ、ビリー・ストレイホーンの名作や、美しい歌曲などを取り上げている。寺井によると、各々の作品が創造され、モンクやパウエル達自身に演奏されていたその時代、その場所、その一瞬一瞬のほとばしりを、ぐっと掴み取り、昇華させ、自分の音楽の中で、そのエッセンスが香りとしてたちのぼるような演奏をしたかったのだという。それがこのアルバムに「フレグラント・タイムズ」と名付けた理由である。懐古趣味などでは決してない、ハードコアなバップ作品である。
時の流れとともにかげろうのように消え去る時の芸術−−音楽に<時の香り>がたちのぼるとは、何とも言い得て妙であり、実際皆様も、本アルバムのトラックの一つ一つに様々な香りを感じられることだろう。
寺井尚之は1952年6月6日の大阪生まれ。4歳からクラシック・ピアノを始め、18歳でジャズに転向。50年代にサド・ジョーンズやトミー・フラナガン達が展開したデトロイト・バップに熱中、特にトミー・フラナガンの研究に没頭する。大学に入ると同時にプロ入りし、大阪を中心に活動を続け、79年に自分のジャズクラブ、”Over
Seas”を開店、ここを拠点にストレイトアヘッドなジャズ一筋の演奏を行って今日に至る。
この20年間にOver Seasでは、トミー・フラナガンは言うまでもなく、サー・ローランド・ハナ、ジョージ・ムラーツ、アーサー・テイラー、ヒース・ブラザーズ、デューク・ジョーダン、スタンリー・カウエルなど海外の一流アーティストが数多く出演していることもあり、寺井の実力はミュージシャンの内では広く知られるようになっていったものの、CDが出るまでは、知る人ぞ知るの存在であった。しかし93年に寺井トリオのデビューアルバム「アナトミー」が発売されるや否や、ファンや識者の間で大変な好評を呼び、その後自己レーベル、”フラナガニア・レコード”を設立、「フラナガニア」(94年)、「ダラーナ」(95年)と立て続けに快作を発表し、自主レーベルの作品にもかかわらず海外のジャズ雑誌でも注目され、広く「大阪に名手在り」と謳われるピアニストとなる。
しかしこれほど注目されながら、自分の店、Over
Seas以外では、ごく稀な機会を除き演奏をしないために、全国各地からわざわざ寺井を聴きにくる熱心なファンも多い。
寺井の本拠地Over Seasは、日本の商業の中心地、大阪市の堺筋本町にある。その土地柄に不似合いな、浮世離れしたピアノの音色の美しさと、一見近寄りがたい風貌に似合わぬ、気取らない人柄に魅せられ、日頃のストレスが癒されるとファンは言う。もう23年の付き合いになる、彼が最も尊敬する師トミー・フラナガンや、彼のもう一人のアイドル、ジョージ・ムラーツも、ことあるごとに口を酸っぱくして「もう少し休養しろよ」と心配するが、一向に耳を貸す素振りもなく、寺井は毎夜淡々とピアノに向かう。
寺井のクラブの名前、Over
Seasは、いうまでもなく彼の師匠トミー・フラナガンの代表作(寺井は「初期の〜」と必ず注釈を付ける)にちなんだものだ。寺井のフラナガンの音楽に対する理解の深さは並大抵ではなく、米国の演奏者からもフラナガンのコードの使い方などについてしばしば質問されるほどである。
また寺井は97年始めより、「ジャズ講座」なる催しを始めた。これは一般的なフラナガン論からもう一歩踏み込んだ解説で、寺井が27年間の研究で採譜した譜面なども公開し、トミー・フラナガンのどこが素晴らしいのかを判りやすく説明し、演奏家ではない一般の音楽ファンにも、ジャズの楽しさ、スリルをわかちあおうとするもので大好評を博している。
しかしフラナガンをここまで尊敬しているからといって寺井の音楽がトミー・フラナガンのコピーであるかというと、今の寺井は全くそうではない。本アルバムを聴いても判るように、寺井の音楽には、フラナガン音楽の再生バージョンではなく、寺井自身のやさしさ、浮世離れした気品、凛とした自己への厳しさ、それと対照的な、一流の音楽家がしばしば垣間見せる、茶目っ気、といった自身の個性が満ち溢れている。
また寺井のプレイでもう一つ特筆すべき点は、米国の評論家スチュアート・ブルーマーが評する様に、情熱のほとばしりと、リズム&ハーモニーの微妙なニュアンスとの結合物であるバップ音楽の言語能力が素晴らしく発達しているという点である。その言語能力を駆使することで、ピアノの「息遣い」を感じさせる数少ないピアニストの一人と言える。息を呑むフレージングの繊細な美しさと、転調の鮮やかさ、活力に溢れたスイング感、鍵盤上の一音一音に命を賭けているかのような真摯さ、潔さの反面、思わずニヤリとさせられるユーモアのセンスが寺井の身上といえるだろう。
このユーモアとはどんなものかというと、例えば、あなたがOver
Seasで寺井のアドリブ・ソロを真剣に聴いていたとしよう。そうしたら後ろのテーブルのお客が酔って騒ぎ始めた。あなたは非常に不快になる。すると寺井のフレーズの中に急に<SpeaK
Low(静かに話せ)>が何の違和感もなく入ってくる。少しあなたは機嫌を直す。だが彼等は声高に喋り続ける。すると今度、寺井がピアノでフォルテしてわざと絶叫気味に<You
Better Go Now(さあもう帰ったほうがいいですよ)>を弾いて退席をお願いしているのが判り、あなたは一人笑いこけている、といった具合だ。弾いている寺井は表情ひとつ変えることはない。そのようなことを含めて、全てに感じられるある種の「品の良さ」こそが師匠フラナガン譲りと言えるかもしれない。
もうひとつ寺井がフラナガンより受け継いだ音楽上の特質は、レパートリーの構成のうまさである。つまり一曲それぞれの構成だけでなく、ひとつのセットの中の曲の並び方が、リズムやキーだけではなく、曲の持つ意味の繋がりをも考えて、面白く飽きない様に組み合わされているという点である。通常のライブを聴いてもいつも思うし、本アルバムの選曲を一見するだけでも、聴いている間も、また聴き終わった後も強く印象に残ることだ。
ベースの宗竹正浩は、1967年2月22日生まれ。19歳から今日まで寺井と演奏を共にする。天性のリズム感と躍動感溢れるビートの逸材である。
クラシックなど他ジャンルにも造詣が深く、卓抜なアルコの演奏にも唸らせられる。層が厚いと評判の関西のベース界に於いても宗竹の存在は傑出している。男の色気を演奏に感じることのできる数少ないベーシストだ。
ドラムスの河原達人は、1957年11月8日生まれ。18歳でジャズを始め寺井のグループで活動を共にしただけあって、繊細でバッピッシュな抜群のサポートを聴かせる。よく歌うドラミングには定評があり、歌詞はすべて覚えている。
<曲目と演奏について>
1. SUB CITY
サブ・シティ
オープニングはバド・パウエルの軽快なナンバー。テーマは舗装の悪いマンハッタンのでこぼこ道を乱暴なタクシーでぶっとばしているようにバウンスするが、アドリブに入ると一転、スムーズなドライブになる。バッパー特有のぐいぐいギアチェンジしていくようなメリハリのあるスピード感覚が痛快。またバップ・ジャズ特有のコーラス毎のスケールチェンジも強烈にスリリングだ。
2. BEYOND THE BLUE BIRD
ビヨンド・ザ・ブルーバード
トミー・フラナガンが、青春時代デトロイトで修行した思い出のジャズクラブ「ブルーバード・イン」を回顧して作った楽曲。ブルージーで流れるようなメロディの超難曲だが、寺井はさらりと弾き切り、円熟した表現を聴かせる。日本人の寺井が、遠いデトロイトの第二次大戦後のクラブシーンに馳せる思いが、聴く者の胸を熱くする。夢の中から聞こえてくるような密やかな導入部からスインギーなプレイへ変化し、センチで印象的な2小節のフレーズからラストコーラスへ持ってくる展開は、セピア色からカラーへと転ずる如くドラマチックである。寺井のフラナガンに対する尊敬がよく出た演奏だ。
3. 50-21
フィフティ・トゥエンティワン
2で謳われたクラブ、「ブルーバード」で共に演奏したトランペット奏者サド・ジョーンズのオリジナルで、「50-21」はクラブの住所である。寺井はパーカーのブルース、<ブルーバード>を引用したり、師匠フラナガンとはひと味違うユーモアに溢れた、リラックスしたプレイを展開。エンディングに同じくジョーンズの作品、<スクラッチ>を挿入し、この偉大な音楽家への敬意を表している。またフラナガンによれば、このクラブ、ブルーバードは、扉を開けるとすぐ左側にバンドスタンドがあり、お客さんが、皆心から音楽を愛し、サポートした大変特別な暖かい店で、寺井のOver
Seasに良く似ていたということだ。
4. DAY DREAM
デイ・ドリーム
ビリー・ストレイホーン作曲の、恋に夢うつつになる美しいバラードでは、ベース宗竹のアルコをフィーチュア。宗竹は弦楽器の持つ柔らかさと激しさで、この繊細なマテリアルにユニークな解釈を聴かせる。宗竹の豪放な弓と、寺井の蝶が舞うように繊細なピアノの表現のコントラストが素晴らしい。
5. HALLUCINATION
ハルシネーションズ
「幻覚」という意味で、バド・パウエルの作曲した寺井が得意とする急速のバップ・チューン。河原の的確なスネア・ドラムと、宗竹入魂のピックアップで三位一体ぐいぐいとスイングしていくのはさすが、このトリオならではの強みである。気品とスリルに溢れたトラックだ。
6. TIME WAITS
タイム・ウェイツ
「アメイジング・バド・パウエル−Vol.4」(Blue
Note)に収録されている、滅多に取り上げられない名曲。タイトルは「Time Waits For No One(時間は誰のことも待たずに過ぎ去る)」というアメリカの決まり文句を逆にしたのだろうか。ここでの寺井の気迫は圧倒的である。時間が止まったかの様に、凝縮された精緻な美しさをたたえたこのトラックこそ、「フレグラント・タイムズ」というアルバム・タイトルにふさわしい。パウエルの閃きが甦ったかと胸を突かれた。
7. EPISTROPHY
エピストロフィー
セロニアス・モンクのユニークな作品。タイトルはモンクお得意の、人を煙に巻くシュールな造語。素材のアクの強さが逆に寺井の演奏の流麗さを際立たせる結果となった。テーマの最初の16小節はピアノだけの静かな導入部で、やがてブリッジでベースとドラムが入り、メロディアスなモンク・チューンとなり、ラスト・テーマではピアノとベースの2拍3連のパターンにドラム・ソロがかぶさるユニークなアレンジで、スリルあるトラックとなっている。
8. I HAD A CRAZIEST DREAM
アイ・ハド・ア・クレイジェスト・ドリーム
ハリー・ウォーレン作の歌曲、「想いを寄せる君が僕に恋をしてる、あり得ないクレイジーな夢を見た。」という歌詞。寺井にとってのクレイジーな夢とは、ジャズに対する見果てぬ夢か。敬愛するフラナガンへの想いだろうか?これほどケレン味のない洒脱な演奏をする寺井に、それはクレイジーではなく、正夢だよと言いたい。
9. CRAZY HE CALLS ME
クレイジー・ヒー・コールズ・ミー
ボブ・ラッセル、カール・シグマンのコンビによるユーモラスなラブ・ソングで、ビリー・ホリディの名唱でも知られる。かつて寺井はフラナガンに、ビリー・ホリデイを聴くようにと教えを受けて以来、熱心に聴きこんできただけあって、曲の解釈は抜群。パウエルの曲を演奏する時の真摯さとは別に、茶目っ気たっぷりの遊び心が光る。サビの部分の歌詞で、「大木を震わせる風のように〜(like
the wind shakes the bough)」という個所ではトレモロで音を震わせ、また、「貴方のためならどんな難題でもすぐにやる、でも不可能なことはちょっと時間がかかるでしょう(The
difficult, I'll do right now, The impossible will take a little
while....)」のところでは、わざとフェルマータ(ポーズ)をかけ、音に時間をかけている。そのジョークが音楽的に美しいものだから立派である。タイトルをあえて、Sheと言い換えず、Heのままにしているのも、恐らくはこの唄が寺井のフラナガンへの想いを表現しているのかもしれない。またこの歌詞の最初に「彼が邪魔物をどけたいのなら、山だって動かしてみせる(I
say I move the mountains, if he want them out of the way)」というくだりがある。まさしくこの曲は、師フラナガンの近作「Sea
Changes」(Alfa Jazz)への寺井からの返歌である。
10. UN POCO LOCO
ウン・ポコ・ロコ
8、9、10と続くクレイジー組曲とアルバムの締めくくりは、スペイン語で「少しクレイジーな」という意味のバド・パウエルの超難曲。ここでフィーチュアされる河原の鋭いバップドラムが実に素晴らしい。寺井にとってこの曲は思い出深い曲である。初めてトミー・フラナガンが寺井の店Over
Seasでトリオを率いて待望のライブを行った時、到着してまずサウンドチェックでピアノに向かい、いきなり、凄いスピードとパワーで弾き始めたのがこの曲だったという。これまでパウエル派と呼ばれるピアニストが数多く録音しているが、誰もが失敗しているテーマの左手の返し(オブリガード)を、フラナガンがいともたやすく弾いたのに寺井は圧倒されたという。あれから15年後、寺井もまた本曲をいともやすやすと弾いているように聞こえる。彼があの瞬間に感じた香りが、このアルバムをかけるとまさしく、再び漂ってくるようだ。
マスコミ各誌の批評
●ケーデンス誌(米)1998年12月号 “ディスクレヴュー”より
フランク・ルボリーノ
P.44
1) ケニー・バロン、 The Artistry Of Kenny Barron WAVE34
2) ロン・カーター、 So What BLUENOTE 94976
3)ヒサユキ テライ、Fragrant
Times FLANAGANIA3
1)、2)は省略
さて、寺井の(3)は、ジャズの巨匠達が寺井のために技を披露する舞台のお膳立てをしてくれた、というような作品である。寺井のピアノトリオがジャズの古典10曲を情熱と活力一杯に激しく弾き切る跳躍台の役割を務めているのは、パウエル、フラナガン、ストレイホーン、モンク、サド・ジョーンズといった顔ぶれである。<フラナガニア>というレーベル名からも、寺井の敬愛するのがトミー・フラナガンであるのは明白だ。
彼は自分のクラブで活動しており、そのクラブ名は、フラナガンの曲(原文のまま)に因み“オーバーシーズ”という。フラナガンを師と仰いではいるが、その演奏には、寺井ならではの個性がある。本アルバムの収録曲の多彩な作曲者の顔ぶれを見ても、寺井が単にフラナガンに隷属しているだけの音楽家ではないことは明らかである。
寺井のトリオは何年も活動しており、同一メンバーで数枚のアルバムがある。共演活動の長さはプレイのタイトさと、メンバーの瞬時の意思の疎通からも明らかである。寺井のサウンドにはバロンと同じく芳醇で豊かなコクがあり、響きの良い音色で空気を満たす。ジャズ界の名作曲家達の作品に対する解釈も、本アルバムの興味深い面であり、作品の原型から多様な変貌を遂げる。例えば本作のパウエルの曲は、確かにパウエルには違いないのだがそのアプローチは全く斬新である。モンクの曲を聴いても、いかにもモンクらしいのだがコピーではない。
また、ベース奏者とは、ピアノトリオのサウンドを統合する“かなめ”であるが、宗竹はリッチな音色で、見事にその役目を果たしている。私は特に<デイドリーム>が気にいった。
バップやメインストリームジャズを産んだ時代が遠い過去になるにつれて、新進演奏家が、それらのジャンルで独自性と革新性を得るのがますます困難になってきている現在、寺井は、彼の愛するジャズというゲームの創造者達へのオマージュを捧げつつ、自らをマンネリに陥れる罠からは巧みに逃れている。「革新」が寺井の目標ではないにしても、こういう音楽を演奏し続ける上での、力強い範例を彼は示している。
●スイング・ジャーナル誌 98年3月号
岩浪洋三
前作『ダラーナ』に次ぐ第4作。これまで以上にパワーも増し、演奏も充実してきており、本作は彼のベストだ。彼はほとんど毎晩自分の店“オーバーシーズ”で演奏しているので、知る人ぞ知るの存在だが、聴き逃せない名手だ。何度もライブを聴き、そう思った。彼はトミー・フラナガンのほとんどただ一人の弟子で、転調のあざやかさ、気品、繊細さと豊かな感性、そしてダイナミズムは師匠ゆずりだが、近年は独自の境地をみせてきている。今回は新生面の聴ける秀作だ。
●CDジャーナル誌 98年3月号
後藤誠
時流に染まることなく、バップ演奏の場を確保するため、大阪の真ん中に店を構えて20年。トミー・フラナガンの弟子として知られる寺井の目指す音楽とは、師匠との交流で感得したデトロイト流のバップ。通算4作目の本作で、それを明確に打ち出した。時の香りが立ち上る一連の佳曲に、洗練された解釈を試みる。鮮やかな転調、美しい音色、洗練されたタッチ、流麗なフレーズ、広いレンジ。埋もれた名曲にも光明をあてるなど、聴きどころ満載の好内容版。
●ジャズライフ誌 98年2月号
後藤誠
パウエルの難曲にも真正面から勝負を挑んだデトロイト流バップ
大阪一のビジネス街にある、自分の店を拠点に活動を続けて19年目。美しい音色、洗練されたタッチ、流麗なフレイズ、広いダイナミック・レンジ----近寄りがたい風貌からは、まず想像できないものばかりだ。そんな寺井の目指す音楽は、師匠との交流から感得したデトロイト・バップ。通算4枚目の本作で、それをはっきりと打ち出した。さらに師匠に先駆け、パウエルの難曲にも挑戦、デトロイト流のバップ解釈を試みる。予想を上回るその鮮やかさは、むしろ衝撃的ですらある。寺井はこの作品で、フラナガン研究家というよりも、日本で唯一のデトロイト・バッパーであることを高らかに宣言しているように思われる。最後まで緊張の連続、タフにしてハードな展開のピアノ・トリオ愛好家にぜひ推薦したい。
●ジャズライフ誌 98年3月号
“レコード店ジャズ担当者が薦める今月のイチオシ盤”
ワルツ堂梅田店
4作目となる本作で興味深いのはバド・パウエルの4曲。「サブ・シティ」「ハルシネーションズ」ではシャープな切れ味の演奏でグイグイ迫り、ドラマティックに盛り上がるバラッド曲「タイム・ウェイツ」では耳を惹きつける。そして難曲「ウン・ポコ・ロコ」。どんどん湧き出すアドリブは神がかっている。とにかく指がよく動く。絶好調のバップ作だ。
●朝日新聞 98年1/30版
“今月の10枚 ポピュラー・海外編”
青木啓
キャリア20年、大阪で活躍する寺井の『フレグラント・タイムズ』は、パウエルやモンク、トミー・フラナガンらの作品を弾く。歌心豊かなフレージング、情緒、スイング感が素晴らしく、ベースの宗竹正浩、ドラムスの河原達人もバイタルな好演。
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