寺井教室の発表会は、演る人だけでなく、聴く側も真剣そのもの!こういう発表会は珍しいらしいです。黄色いシャツが審査委員長:寺井尚之、ピアノの後ろで、壁にもたれて耳を澄ますのは、川端名調律師。
寺井尚之は、トミー・フラナガンが心臓大動脈瘤で倒れてから、一念発起、フラナガンの音楽を守るために、後進の指導に当たる決意をしました。丁度今から10年前のことです。
今では、学生から熟年まで、アマからプロまで、色んな環境の沢山の生徒さんが、フラナガンの演目を熱心に勉強する、ユニークなピアノ教室になりました。実年齢と音楽頭脳の年齢は、余り関係ないみたいです。熟年でも凄く柔軟に音楽に取り組めるものなんですね!
今年8月末に開催した発表会も15回目!普通のピアノ発表会とは違い、事細かに、各演奏者に対する、寺井尚之の厳しくて優しい批評付き。だから発表会が終わると、頭の中が生徒達の音で一杯になってしまい、寺井は誰よりも疲労困憊してます。
一方、寺井尚之の師匠、天才肌のフラナガンは、一般的な意味での「教える」ということが全く不得意な人だった。逆に、弟子に大変な努力と苦労をさせて、師匠のアイデアや技術を、真に受け継がせる目的でそうしたのなら、フラナガンは「教える天才」であったのか? だけど、それは寺井尚之にしか使えない方法だったかも…。
トミー・フラナガンのNYの自宅にて
寺井尚之の教授方は、「教え魔」であったフラナガンの弟分、サー・ローランド・ハナの影響かもしれません。
クイーンズ・カレッジで教鞭をとるハナさん:サー・ローランド・ハナ公式サイトより。
レッスンや発表会で、生徒達のプレイを聴かせてもらっていると、私も思いかけず、色んなことを学ばせてもらえます。
第15回の発表会レポートは、修業するピアニスト達への感謝の気持ちで書きました。ピアニストたち、応援してくださる皆さん、どうもありがとう!
寺井尚之がどんな風にフラナガンから教えられたかは、いずれ気合を入れて書きたいと思っています。
CU
月: 2008年9月
中秋の名月に吠える Blues for Dracula
13日(土)のジャズ講座の冒頭、寺井尚之が、日本映画の巨匠、マキノ雅弘監督晩年の名言:
「ご覧になった映画が、少しでも面白いと思って下さったら、一人でも二人でもええから、どうかそのことをお友達に話してください。そして、映画を見に行くように伝えてください。」
マキノ監督が車椅子から皆に頭を下げ語ったこの言葉を引用しながら、ジャズを取り巻く危機的な状況について訴え、じーんとなりました。講座の帰り道に観たお月さんはとっても明るく輝いていた。
満月には、犯罪や交通事故が増える…元警視庁の人が言っていました。ヴァンパイヤと同じで、潜在的な獣性が騒ぐのでしょうか?満月を観ると、私は“ブルース・フォー・ドラキュラ”に登場する狼の遠吠えを真似しながら、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)の絶妙の語りと、破天荒な人生、ジャズとお笑いの深い関係に思いを馳せる…
寺井尚之も落語好き、昔の漫才好き、鷲見和広(b)さんは月亭可長のファンですね。
“ブルース・フォー・ドラキュラ”は、「色物」と扱われることが多いらしい。あのジャケットや、冒頭の長い語りが冗長で「ストレイト・アヘッドな作品じゃない」という意見がある。それが、全くの誤解であることは、ジャズ講座の本 Vol.Ⅱを読んでいただければよく判ります。本には、トークの対訳もばっちり掲載してありますので、レコードを聴きながら、本を読むとめちゃ笑えます。笑えても「色物」じゃないよ、トークとプレイが一体化する名演です!
何故、“ドラキュラ”がタイトル・チューンになったのかと言いますと、この録音の直前まで在籍していたマイルス・デイヴィス六重奏団のライブで、フィリーは盛んに、このベラ・ルゴシの物真似を演って人気を博していたからだったんです。
あのトークのルーツを調べると、レニー・ブルース (1925-1966)という一人のお笑い芸人にたどり着きます。 ジョージ・ムラーツ(b)もコンサートのMCで言っていましたが、昔のジャズクラブは、ジャズ演奏とお笑い芸を抱き合わせにしていたんです。レニー・ブルースのスタンダップ・コメディと、ビル・エバンス(p)3(無論ドラムはフィリー・ジョー・ジョーンズ)の組み合わせでクラブ出演したこともありました。
レニー・ブルースは、従来タブーだった人種ネタ、宗教ネタで、世の中を痛烈に風刺したスタンダップ・コメディアン、ビートニクやボヘミア志向の若者達にカルト的な人気を博した。
四文字言葉、差別用語もおかまいなし!話の枕に「今夜は客席に何人“ニガー”がいるのかな?」と言ってのけた。
私服刑事がレニーのステージを内偵している時は、わざと、警官に多いカトリック教徒ネタ、アイルランド系をコケにするネタを使って挑発した。店が摘発されたら、どないすんねん!?ヴィレッジ・ヴァンガードのオーナー、マックス・ゴードンが青くなると、「だってお客にウケるんだから」と平然としていたらしい。
民族ネタがイジメにならず、イジられる側にもウケたのは、ユダヤ人である自分自身を笑い飛ばす自虐性が根底にあったからです。当然ながら当局に睨まれ(ビリー・ホリディやバド・パウエルたちと同じですね。)、猥褻語の使用や、麻薬所持で逮捕歴数度、徐々に活動の場を失い、40歳の若さで薬物中毒で(ということになっている)亡くなった人です。彼の信奉者は、ロビン・ウィリアムスやウッディ・アレン、リチャード・プライヤーなど後輩コメディアンから、フランク・ザッパ、ボブ。ディランに至るまで音楽界にも多く、フィリー・ジョー・ジョーンズもその一人だったんです。
現在残されているレニー・ブルースのトークを聴くと、卑猥な言葉を絶叫し、お客をいじって笑いを取る「漫談」というよりはずっと「落語」に近い。ストーリーの完成度が高くて、細かく計算された印象を受ける。「過激」と言われているけど、近年のエディ・マーフィーやクリス・ロックより余程上品です。
一方、ジャズのドラムの概念を変えたフィリー・ジョー・ジョーンズも、太く短く生きたハチャメチャ破滅型、仕事きっちりの天才同志、レニーとフィリーの絆は深かった。
このアルバムのプロデューサー、オリン・キープニュースの著作集、『The View from Within』によれば、レニー・ブルースがクラブ出演すると、フィリー・ジョー・ジョーンズは、頻繁に団体を引き連れて応援に行ったそうです。
“ブルース・フォー・ドラキュラ”のトーク部分も恐らくは、レニーが書いたものかも知れません。当初レニー自身が、トーキング・サイドマンとしてこの録音に参加したがっていたのですが、契約の問題で実現しなかった。
“ブルース・フォー・ドラキュラ”の独特な話し方は、ドラキュラ役者ベラ・ルゴシの声帯模写、ルゴシはハンガリー出身の役者、Rを巻き舌に、VをWに、WをVにして話すのが、誰にでも出来る東欧弁です。
「我輩はビバップ・ヴァンパイヤ。」と、まずは自己紹介。
音楽に対する愛を仰々しい東欧弁で語ってから、自分の子供たちにネスカフェならぬインスタント血液を飲ませ、「お休みのキス」ならぬ、「お休みの噛み噛み」をママの頚動脈にさせて、就寝させる優しい吸血鬼のお父さん、しかし血液の禁断症状に襲われ、次第にヴァンパイヤの本性を表わしていきます。すると、子分の吸血コウモリが「だんな様、あの奇妙な鳴き声は?」とネタを振る。この辺の芸が細かいね。
応えるドラキュラ伯爵は、「夜の子供たちが、麗しき調べを奏でておるのじゃ」と自分のお抱え楽団を紹介し、ドラムの強烈なビートから息もつかせぬソリッドなプレイが展開し、ラストで再びビバップ・ヴァンパイヤが登場します。
「夜の子供たち」が、他の吸血鬼たちに襲われそうになっているの助けようと、親切に避難させる伯爵が、別れ際に言う、貴族らしくないクダケた台詞がオチ。
「ギャラは貸しといてくれや!」 …おやおや、伯爵はギャラを一文も払わず、にミュージシャンを追い払っちゃった!
これをジャズ・クラブで演ったら、お客さんにどれほどウケたろうと容易に想像できます。日本のジャズ界ならEchoesしか太刀打ちできないかもしれない。
本家、レニー・ブルースのドラキュラ噺はベラ・ルゴシだけでなく、フランケンシュタイン映画でお馴染みの役者、ボリス・カーロフの声帯模写も出て来る。
アメリカに移民したドラキュラが、芸人になりドサ回りしたり、奥さんに、「オールバックのコテコテ頭は、枕カバーが汚れるからやめなさいよ!」と文句を言われたり、NYの安酒場でトマトジュースを飲んでいると、酔っ払いに絡まれたり…とっても面白いんです。そういえばウディ・アレンも、ドラキュラネタの戯曲を書いてます。
ヴァンパイヤは陽の当たる世界では生きていけない日陰者、芸人やジャズ・ミュージシャンと同じです。クラブ・オーナーやレコード会社は、そんな彼らの生き血を吸って搾取する。
そして、血が吸いたくなると本性をさらけ出す姿は、麻薬中毒の禁断症状を思わせます。“ドラキュラのブルース”は強烈なブラック・ユーモアだったんですね!
ヘロイン常習者として、神戸でも逮捕歴(’51)があるというフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)は、横山やすしも真っ青の破滅型人生を送りました。
マイルス・デイヴィスとのバンドも、ドラッグが災いし、一旦、ジョン・コルトレーンと一緒にクビを言い渡されるものの、他のドラマーではかっこが付かずに、呼び戻されている。マイルス六重奏団では思い切りハードなドラミングをしているけど、フィリー・ジョーが一番得意としたのはブラッシュワークだった。
マイルスは音楽的意図から、フィリーにブラッシュ禁止令を言い渡した。フィリーはきっちり言いつけを守り、うるさく叩きまくるプロだった。
ディック・カッツ(p)さんは、若い時に、「エラい目に会うでー」と周囲の止めるのを振り切って、フィリー・ジョー(ds)のバンドでツアーし、音楽的には最高の経験をした。でも皆が言ったとおり、ギャラはもらえなかった。フィリーはギャラを前金で受け取っていて、仕事がするときにはすでにオケラだったんです。
それでも、フィリー・ジョー・ジョーンズを悪し様に言う人はいない。私はビル・エヴァンス(p)3で来日した時に見ましたが、他のバンドが出演している間、舞台の袖に腰掛けて、足をブラブラさせながら、缶ビールを飲んではった姿が印象的です。
Philly Joe Jones (1923 – 1985)
片手には「正統派のテクニック」もう一方の手には「ストリートで培ったヤクザなセンス」を持つと言われた稀有なドラマー、フィリーの一生は、ザッツ・アナザー・ストーリー…後の機会に一杯書きたいと思います。
OverSeasには、アーサー・テイラー(ds)によるフィリー・ジョー・ジョーンズのインタビューの邦訳を置いているので、ご希望の方はどうぞ!
CU
続トミー・フラナガンの音楽観:Blindfold Test
今週のジャズ講座では、’75年のトミー・フラナガンのリーダー作、『白熱』(Positive Intensity)が登場します!
7月登場したロイ・ヘインズ名義の『Suger Roy』と同じメンバー(ベース:ロン・カーター)ですが、味わいはかなり違う。
フラナガンのおハコ、“Verdandi”“Smooth As the Wind”“Dalarna”が収録されていて、エラの許を離れ、フラナガンが独立してからの軌跡を暗示する内容!まるでダ・ヴィンチの習作を鑑賞するような趣もあり、芸術の秋にぴったり!
ぜひお越しください。
さて、お待たせしました。
トミー・フラナガンがダウンビート誌に遺した、ブラインドフォールド・テストの続きです。
皆さんに余り馴染みのないと思えるレコードは割愛しましたが、「ダメロニア」の論評は入れました。フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)がタッド・ダメロン作品中心に演奏した名バンド!ビバップの心溢れるヒップなバンドが、’80’sにあったことをぜひ知っておいて欲しかった。レコードはUptownというNYのマイナーレーベルで現在廃盤ですが、再発された時には、ぜひ聴いてみてほしい。
フラナガンは、テストに聴かされるレコードが何か、全く知らされないまま、論評しなければなりません。星5つが最高点です。
=1989 3月号続き=
8. Dameronia/ フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
“Them of No Repeat”
アルバム名:Look Stop Listen (Uptown)
パーソネルは推察どおり。
フィリー・ジョーの “ダメロニア”だ。Yeah! セシル・ペイン(bs)だ!彼は現在のジャズ界でバリトン・サックスで、最も独特な音色を持っている!彼の引用はいいねえ!(スキャットする。)何ていう曲だったかな…
評点:作曲者タッド・ダメロンに★★★★★!
ドラマー、リーダー、フィリー・ジョー・ジョーンズに★★★★★!
セシル・ペインに★★★★★!
ピアニスト、ウォルター・デイヴィスJr.(p)に★★★★★!
合計星20個!!
本作はジョニー・グリフィンの豪快なテナーをフィーチュアして、華やかさ一杯。セシル・ペイン(bs)は左端、ウォルター・デイヴィスJr.は左から三番目です。
9.Sir Roland Hanna(p)
曲名:“My Secret Wish”作曲サー・ローランド・ハナ
アルバム名:Gift of the Magi (West54 )
ピアノソロ
長年の友、ローランド・ハナ。彼も私も同じデトロイト、ノーザン高校卒業だ。サー・ローランド…彼のようにテーマを処理することの出来るピアニストは他にいない。ワンダフル!!ちょっとフォークソング的だな。誰かの作ったフォークソングかな。良い演奏だ。
これも★★★★1/2!星が半分だけ足らないのは、この録音より、ずっといいローランドを、生で沢山聴いているからだ。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
ダウンビート誌 1996 8月号より : 聞き手: Dave Helland
3. 演奏者:ダイアナ・クラール(p,vo)
曲名:”I’m an Errand Girl for Rhythm”
アルバム名:All for You (Impulse)
Personell: Ryssell Malone(g), Paul Keller (b)
ダイアナ・クラールだね。彼女はとっても上手に自分自身を伴奏する良いピアニストだと思うよ。この録音はとってもいい感じだ。★★★★1/2!
私は何度か生で彼女を聴いたことがある。IAJE(国際ジャズ教育者協会:今年破産した。)の大会が、一番最近だ。
聞き手:歌手の伴奏で一番大切な点は何でしょうか?
たった今、君もそれを聴いたのに!(訳注:You just heard it.はトミーの口癖。)自分の歌唱がどこへ行くのかを知っていて、その為には、バックにどんな音が必要なのかをちゃんと判っているということだよ。弾き語りにせよ、他人の伴奏にせよ、良い伴奏は、それに尽きる。援護するのみ。ダイアナ・クラールは、正にそのとおりのことを演っていた。そういうことがうまかったのは、他にナット・キング・コールくらいしか思い当たらないな。
2. 演奏者:ジェス・ステイシー(p)
曲名:”Sing, Sing, Sing”
アルバム名:Live at Carnegie Hall/ Columbia
これはよく知っている。歴史的録音、聴き慣れたレコードだ。“シング、シング、シング”この夜のコンサートには3人のピアニストが出演していた。これはジェス・ステイシー。テディ・ウイルソンはスモール・コンボで出演した。’40年代の初め、子供のときに聴いたんだ。ジェス・ステイシーも好きだけど、テディ・ウイルソンの方がずっと好きだよ。彼のスタイルの方がとっつき易かったし、私にとって魅力があった。私はテディ・ウイルソンのように弾きたいと思った。ジェス・ステイシーは、こんなこと言ってはいけないのかも知れないが、いかにも元気一杯、自信満々という感じだ。ステイシーもスタイリストだが、他の二人ほど心を捉えるスタイルではなかった。勿論、後ひとりはカウント・ベイシーだよ… でも、高得点にしておこう!:★★★★1/2 あるいは★★★★★。
左:Jステイシー、右:Tウィルソン
5. 演奏者:セロニアス・モンク(p)
曲名:”In Walked Bud”
アルバム名:Genius of Modern Music, Vol.Ⅰ( Blue Note )
Personel: Monk(p), George Taitt(tp), Sahib Shihab(as), Bob Paige(b), Art Blakey(ds)
“イン・ウォークト・バド”、作曲したセロニアス自身が演奏した唯一の録音だ。
聞き手:この曲のどこが、バド・パウエル的なエッセンスなんでしょうか?
バドのピアノの腕前はモンクよりも、ずっと上だ。だが、実はモンクにはモンクならではの腕がある。それはモンクだけに当てはまる、モンクだけの技量なんだ。彼の生を観たことがあるなら判ると思うが、非常に個性的だし、音楽に対するアプローチ、つまりサウンドの出し方は彼だけのものだ。
一方バドのピアノの技量は、従来の伝統的な奏法を踏まえたもので、そこに彼独自の力強さとダイナミクス、それにバドならではのアイデアやコンセプトが加味されている。
例えば、誰かがモンクが演奏しているクラブに行ったとしよう。もし、ピアノの音が聴こえなかったとしても、そのリズムを聴いただけで、「ああ、モンクだ!」と判るはずだ。
聞き手: 今おっしゃったようなモンク的リズムで、モンクの音楽を正しく演奏するのは難しいことですか?
いや、そこはまだ簡単だ。彼の選ぶ音の方が、ずっと厄介なものだ。モンクのような音の選び方は非常に難しい。彼の創るメロディ自体がリズムを示唆しているんだ。 つまりメロディの感覚に、リズムが内包されているのだ。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
どうですか?
トミー・フラナガンは、ダイアナ・クラールのピアノではなく、歌伴の腕をかなり高く買っていました。「今売り出しのDクラール、お前どない思う?」と少なくとも3回訊かれました。意外かも知れないけど、彼女のグラマーっぽい歌い方も好きだったみたい。
トミーの深遠なものの言い方は、偉大なるデューク・エリントンを見習ったのかもしれません。ハナさんへのコメントを寺井尚之調のざっくばらんな言い方に翻訳すれば「ローランドやったら、もっとええレコードあるやろう!何でこれを選ぶんや!気に食わん。」、Bグッドマンのカーネギー・ホールのコメントを翻訳すれば、「何でわざわざテディ・ウイルソンやなくて、ジェス・ステイシーをわしに聴かせるんじゃ!」とテストに使用するセレクションに抗議しているわけです。
そしてモンクに対するコメントには、モンクに対する並外れた理解と敬愛の念を感じました。フラナガンの「伝統的なピアノの技量」はパウエル以上のものがありましたが、フラナガンは、モンクの頭の中をよく判っていた。だからこそ『セロニカ』という傑作を創ることができたのだとつくづく感じました。フラナガンは、数少ない言葉の奥が本当に深い人だった…
13日(土)はジャズ講座、CU!
アニキ帰国
これは、数年前のコンサート時の写真です。絵になるなあ。撮影:後藤誠
先週は、寺井尚之のアニキ、元トミー・フラナガン3のジョージ・ムラーツさんがハンク・ジョーンズと大阪に来ていました。
旅の多いアニキには、少しでもゆっくりしてもらって、おいしいものを食べてもらいたい… 寺井尚之も私もあたふたドタバタ、常連様、ファンの皆様もありがとうございました。
OverSeasの常連さま、サイクリング健康法の権威、ドクター・カジはアニキと10年来の友人。
おかげで、アニキは無事帰国の途についたようです。
最終日は、グレイト・ジャズ・トリオで新譜をレコーディングしたそうです。ちょうど同じ日に、アニキとファーストネームで呼び合う友人、チェコのクラウス大統領(ジャズ・ピアニストです。)が日本の国連常任理事国入りについて福田首相と会談に来られていたので、アニキはぜひスタジオに招待しようと思ったのですが、一足違いで叶わなかったと、アニキは残念がっていました。
先週のエコーズでは、ムラーツのオリジナル曲、Picturesqueには、「俺よりうまいやないか!」と鷲見和広さんのガッツ溢れてこなれたプレイを絶賛してくれて、嬉しかったなー!
アニキの音楽をこよなく愛するOverSeas、例えアニキが世界中ツアーしても、これほど、アニキのオリジナル曲や、おハコの演目をトリビュートするジャズクラブはないと胸を張って言いたいです。
終演後は、ベース奏法についてのアドヴァイスもたっぷりしてくれて、OverSeasで演奏しているベーシスト達には、値千金のアニキの訪問でした。
それにしてもキモノがよく似合います!ムラーツを神と崇めるコムラーツ、鷲見和広さんと
来月は、ヨーロッパ全土を強行日程でツアーするアニキ、体に気をつけて!
また日本に来てくれるのを皆で待っています!
CU
或る夜の”エコーズ”
エコーズ:寺井尚之&鷲見和広
毎週水曜日は、寺井尚之(p)と鷲見和広(b)のエコーズが楽しい!
デュオのインタープレイと言えば、深遠なる「音楽の対話」というイメージかも知れないけど、エコーズはわかりやすい!おもしろい!!バップ・チューンで漫才みたいにかけ合いして、バラードでホロリとさせる。同じ曲を演っても毎回違った表情になります。…けど、通を唸らせる奥の深さもある関西風!
ウィーク・デイなのに他府県からわざわざお客様が来てくださるのもありがたい。昨日も何名か遠くからお客様が来られていましたが、一番遠いところから来られた方は、はるばるNYから!数週間前から、お料理を含めご予約いただいていました。エコーズといえど、寂しい夜もあるけれど、この日は何故か超満員だった…
或る夜の演奏曲目
1st
High Fly (Randy Weston)
Out of the Past (Benny Golson)
Wisteria (George Mraz)
Picturesque (George Mraz)
2nd
On a Misty Night (Tadd Dameron)
Mean What You Say (Thad Jones)
I Wants to Stay Here (George Gershwin)~Happy Birthday
Passion Flower (Billy Strayhorn)
Denzil’s Best (Denzil Best)
3rd
In a Mellow Tone (Duke Ellington)
With Malice Towards None (Tom McIntosh)
Blues for Sarka (George Mraz)
For the Kat Man (Walter Norris)
For a Cool Cat (Walter Norris)
エコーズは、お客様が楽しく聴いて下さると、今度は、その楽しさがエコーズに逆流して、どんどん楽しいプレイになります。すると、自然に「今日のお題」が出来上がります。お題は、季節に因んだものから、「雨」とか「猫」とか「カルメン」に至るまで千差万別…サブテーマが生まれると、どんな曲にも、その「お題」が顔を出します。昨日の「お題」は、湿度最高だったからダメロンの“On a Misty Night”を演ったので、ミストになるのかと思ったら「誕生日」だった。それは、エコーズを聴きに来られた遠方のお客様の誕生日が6日後だったから。
I Wants to Stay Here の美しいアリアでしんみりして、ふと気が付くとメロディがHappy Birthdayに大変身、ノリの良い場内のお客様全員が「ハッピー・バースデイ」の大合唱!それからのエコーズは、スイッチが入ってどうにも止まらない… それからというもの、至るところ、あらゆるKeyで顔を出す、バースデイ・ソング!
当のバースデイのお客様は、エコーズのこなれた演奏ぶり、ベーシスト鷲見和広のネタの仕込み具合、寺井尚之のとぼけた引用句に大うけ!音楽で繰り出すジョークに大笑い。「うまくなったなー」とつぶやいてくれて、嬉しかったなあ・・・
言葉が違っても、音楽を通じたユーモアには国境がなかったのでした。
9月9日、アニキ、ちょっと前倒しにお誕生日おめでとう!
速報:第15回寺井尚之ジャズピアノ教室発表会
昨日、当寺井尚之ジャズピアノ教室の15回目の発表会が無事終了しました。
うちの発表会は「一味違う!」と、見学に来られるお客様によく言われます。それは、ピアノのタッチの美しさや、演奏曲、演奏レベルだけでなく、緊張度の高さ。会場全体が、これほど一生懸命に聴いてる発表会は他にないらしい…プロのピアニストでも、緊張で手が震えると告白する人が多い。
というのも、師匠が全員の演奏を、一音一句全て聴き漏らさずに、厳しくて愛情溢れる講評をしてくれるのが一因です。
今回はいつも最終セットを飾る人気ベテラン陣が一部不在でしたが、初級から上級生徒まで大健闘!番付が高くなるにしたがって、演奏レベルもUP!生徒達の司会も楽しくて、4時間に渡るコンサートもあっと言う間でした。
緊張の後の笑顔はとっても素敵!この司会役は、『努力と最優秀賞の殿堂入り」を果たしたあやめ副会長。
宮本在浩(b)菅一平(ds)の二人が、長丁場も心を込めてサポート!後姿は録音、撮影をしてくれるyou-non氏!
このベーシストは発表者ではありません!エコーズ・ファンクラブ、コダマ会長のサックス演奏を応援のため、正装で演奏する鷲見和広さんです。
「オリンピックじゃないんだから、本番で失敗しても、皆の実力はわしが一番よく知っている!」というのが、寺井尚之の口ぐせ。
発表会の後は、各賞の発表に続き、「最近、入門しても、フラナガンも聴かんし、ライブや講座に来ん生徒が多すぎる!」と寺井尚之。しかし、なぜかボヤキ系スピーチを聴いて、見学に来た方が即入門するというハプニングも!
記念写真と鷲見和広さんのショット以外は、当日のお客様にいただいた写真です。
発表会公式カメラマン、You-non氏の演奏写真が冴える発表会レポートは、OverSeasのホームページに近日UP予定。
各賞受賞者(ニックネーム、敬称略)
新人賞:あい、マチルダ、アレグロ、スズコ
努力賞:コダマ *「殿堂入り」あやめ対象外
パフォーマンス賞:あい(名司会に)
構成賞:あやめ
Ad-lib賞:あやめ
タッチ賞:あやめ
スイング賞:あやめ
最優秀賞:アクビ *今回より「殿堂入り」あやめ対象外