11/16 第45回 Tribute to Tommy Flanagan コンサートは残席僅かです。

11/16(土)のトミー・フラナガン・トリビュート・コンサート、残席がごくわずかになりました。

 早めにチケットをご購入ください。
 チケットは当店のみで販売しています。TEL 06-6262-3940

 Jazz Club OverSeas

8/6(火)田井中福司(ds)from NY

来る8月6日(火)NYで活躍するドラマー、田井中福司が来演、寺井尚之(p)カルテットでフィーチャーします。

 ご予約のうえ、前売りチケット4000円を当店にてご購入ください。

寺井尚之(p)カルテット featuring 田井中福司(ds) from NY

メンバー:田井中福司(ds)、寺井尚之(p)、宮本在浩(b)、末宗俊郎(g)

日時:2024年8月6日(火)Music 7pm-/8pm-/9pm- (入替なし)
前売りチケット ¥4000
当日 ¥4500

6/22(土)Danny Healy Trio

Hisayuki Terai-piano, Zaiko Miyamoto-bass, Danny Healy-horns

雨上がりの大阪、OverSeasはDanny Healy 初出演で盛り上がりました。

 この日、彼が演奏した楽器は3種類、様々な音色と、表情豊かなフレージング、絶妙な楽器のコントロールで、スタンダード曲からフラナガンの名演目まで、幅広いプログラムで楽しませてくれました。

 Danny Healyは、今後2年間日本に滞在する予定です。応援よろしくお願いします。

After the heavy rain in Osaka, Jazz Club OverSeas was enlivened by the nomadic jazz artist, Danny Healy’s debut performance.

On this day, he played three different instruments, captivating the audience with various beautiful tones, expressive phrasing, and exquisite control over all of the instruments. From standard songs to Tom Flanagan’s masterpieces, he entertained us with a wide-ranging program.

Danny Healy plans to stay in Japan for the next two years. Hope you enjoy his next gig here💗

🎶Tunes=

1st Set

1. What Is This Thing Called Love (Cole Porter)

2. All the Things You Are (Jerome Kern)

3. Con Alma (Dizzy Gillespie)

4. Minor Mishap (Tommy Flanagan)

5. In a Sentimental Mood (Duke Ellington)

6. Bouncing with Bud (Bud Powell)

2nd Set

1. Stella by Starlight (Victor Young)

2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron)

3. Monk’s Dream (Thelonious Monk)

4. In Walked Bud (Thelonious Monk)

5. You Don’t Know What Love Is (Gene De Paul)

7. Our Delight (Tadd Dameron)

Encore: Body and Soul (Johnny Green)

5/19(土)寺井尚之3featuring Akira Tanaは伝説のコンサートに!

Hisayuki Terai-piano, Akira Tana-drums

 来日中の名ドラマー、アキラ・タナさんをゲストに迎えたコンサートは、Jazz Club OverSeasのコンサート史上、忘れられない1ページになりました。

 コンサート第一部は寺井尚之(p)、宮本在浩(b)とのトリオで、トミー・フラナガン名曲集、第二部は、末宗俊郎(g)が加わり、アキラ・タナが参加していた伝説のヒース・ブラザーズ時代の名演目を演奏するという、寺井尚之が練りに練ったプロデュース。
 大巨匠たちと演奏を重ねてきたアキラ・タナの音楽力と真心で、客席を終始魅了し続ける素晴らしい演奏になりました。

 アンコールは寺井のアイデアで、5月の童謡「こいのぼり」と「せいくらべ」にジミー&パーシー・ヒース作のブルース「Artherdoc Blues」を挟み強力にスウィングしながら大団円。メンバー全員が最高のプレイで、長く余韻の残る音楽のひと時になりました。
 

Setlist

1st Set (17:00-17:50)

  1. Beats Up (Tommy Flanagan)
  2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron)
  3. Mean What You Say (Thad Jones)
  4. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan)
  5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)
  6. Pannonica (Thelonious Monk)
  7. Eclypso (Tommy Flanagan)

 2nd Set (18:20-19:20)

  1. For Minors Only (Jimmy Heath)
  2. New Picture (Jimmy Heath)
  3. Gingerbread Boy (Jimmy Heath)
  4. Ellington’s Strayhorn (Jimmy Heath)
  5. Bro’ Slim (Jimmy Heath)
  6. The Voice of the Saxophone (Jimmy Heath)
  7. A Sassy Samba (Jimmy Heath)

Encore: 鯉のぼりKoinobori~ Artherdoc Blues(Jimmy and Percy Heath)


 

サー・ローランド・ハナ・トリビュート・コンサート 7/27(土)に!

NEWS❣ 誕生日も命日もTommy Flanaganとあまりにも近い我らがオジキ、Sir Roland Hanna (1932年2月10日 – 2002年11月13日)のトリビュート・コンサートを満を持して来る7/27(土)に開催します。

 日時:7/27(土) 7pm-/8:15pm- (入替なし)
 チケット制:前売りチケット ¥3500
 胸が熱くなるハナさんの音楽を、ぜひこの機会にご堪能ください。

 We will proudly present a tribute concert on Saturday, July 27th for our beloved pianist, Sir Roland Hanna🎹🎹 (February 10, 1932 – November 13, 2002), whose birthday and death anniversary are both so closely tied to Tommy Flanagan.

Tribute to Sir Rland Hanna: Saturday, July 27th 7pm-
Ticket in advance 3500JPY

6/22(土)コンサートのお知らせ:Danny Healy Trio

6/22(土)実力派マルチ・ホーン奏者、ダニー・ヒーリー・トリオのコンサート開催!

 ダニー・ヒーリーはオーストラリア出身で世界中を渡り歩くマルチ・ホーン・プレイヤーです。

 今回、日本に滞在するにあたり「ぜひとも寺井尚之と共演したい!」という熱いラブコールでコンサート開催。

 とてもユニークなバックグラウンドと、強烈なテクニック、音楽への情熱を持った音楽家です。

 NEWS: Introducing Danny Healy🎷 at Jazz Club OverSeas on Saturday, June 22nd.

Danny Healy is an Australian-born virtuoso of multiple wind instruments. A nomadic artist, continuing his musical journey across various countries from Europe to Asia.

This concert, driven by Healy’s strong desire to collaborate with Terai, has come to fruition.

今週のご案内(各日の演奏時間をご確認ください。)

Hisayuki Terai
Hisayuki Terai-piano

5/13(月)寺井尚之ジャズピアノ&理論教室 /Piano School (No Music)

5/14(火) 寺井尚之/Hisayuki Terai(p)+橋本洋佑 /Yousuke Hashimoto(b)デュオ  Live Charge 1980 Music 7pm-/ 8pm-  閉店 9pm-

5/15(水) 寺井尚之/Hisayuki Terai(p)+宮本在浩/Zaiko Miyamoto(b)デュオ  Live Charge 2530 Music 7pm-/ 8pm-/ 9pm- (入替なし)

5/16(木)寺井尚之ジャズピアノ教室 /Piano School (No Music)

5/17(金)末宗俊郎/ Toshiro Suwemuneh (g)Quartet w/寺井尚之/Hisayuki Terai(p)、坂田慶治/ KG Sakata(b)、河原達人 Tatsuto Kawahara(ds)
Live Charge 2530 Music 7pm-/ 8pm-/ 9pm-  

5/18(土)寺井尚之/Hisayuki Terai(p)+宮本在浩/Zaiko Miyamoto(b)デュオー“Special Selection” Live Charge 2970
Music 1st set 7:00-7:45 pm / 2nd set 8:10-8:55 pm- 閉店9pm (*7pmまでにご入店ください)

5/19(日)寺井尚之/Hisayuki Terai(p)Trio+1 featuring アキラ・タナ
Akira Tana (ds)、寺井尚之/Hisayuki Terai(p)、宮本在浩/Zaiko Miyamoto(b)、末宗俊郎/ Toshiro Suwemuneh (g)
前売り(Ticket in advance) ¥4000 (残席ごくわずか/ Only a few seats left)
Music 1st set 5:00-5:50 pm / 2nd set 6:20-7:20 pm- 閉店8pm

*料金はライブ・チャージにご飲食代をプラスしたものになります。/The fee consists of a live charge plus the cost of food and drinks.
*学割:チャージ半額 / Student Rate:50% discount off of the Live Charge

45周年記念 Special Selection-寺井尚之(p)+宮本在浩(b) Plays Standards

 祝開店45周年!このデュオならではの、スーパー・スタンダード集、たくさんのお客様の前で、寺井尚之お得意の”ピアノでマネする声帯模写”も楽しんでいただけました。

 1st Set

1. I’ve Never Been in Love Before (Frank Loesser)

2. All the Things You Are (Jerome Kern)

3. Day by Day (Paul Weston)

4. All the Way (Jimmy Van Heusen)

5. Night and Day (Cole Porter)

2nd Set

1. Tea for Two (Vincent Yumans)

2. Satin Doll (Billy Strayhorn)

3. Fly Me to the Moon (Bart Howard)

4. I’m a Fool to Want You (Jack Wolf /Billie Holiday Song)

5. Just One of Those Things (Cole Porter)

3rd Set

   1. Moon River (Henry Mancini)

   2. Harlem Nocturne (Earl Harry Hagen)

   3. The Girl from Ipanema (Antonio Carlos Jobim)

   4. Misty (Erroll Garner)

5. Caravan (Juan Tizol)

Encore: ピアノで綴る声帯模写 As Time Goes By(Herman Hupfeld)

今週のご案内:5/3-5/5は開店45周年記念LIVE

4/29(月)寺井尚之ジャズピアノ&理論教室

4/30(火)寺井尚之(p)+倉橋幸久(b)デュオ  Live Charge 2200 
Music 19:00-/ 20:00-  閉店 21:00

5/1(水)寺井尚之(p)+東ともみ(b)デュオ  Live Charge 2200 Music 19:00-/ 20:00-  閉店 21:00

5/2(木)寺井尚之ジャズピアノ&理論教室

5/3(祝 金)寺井尚之(p)+宮本在浩(b) Duo Plays Standards
Live Charge 2970 
16:30 開場 <1st set>17:00- <2nd Set> 18:00- <3rd Set> 19:00-

5/4(祝 土)末宗俊郎(g)トリオ with 寺井尚之(p)、宮本在浩(b)
     Live Charge 2530 
16:30 開場 <1st set>17:00- <2nd Set> 18:00- <3rd Set> 19:00-

5/5(祝 日)荒崎英一郎(ts)トリオ with 寺井尚之(p)、宮本在浩(b)
Live Charge 2530
 16:30 開場 <1st set>17:00- <2nd Set> 18:00- <3rd Set> 19:00-

第44回トリビュート・コンサート曲目解説

English Edition is here

tommy flanagan
2024 3/16 Tommy Flanaganの誕生日に

演奏:寺井尚之-piano、宮本在浩-bass

1st Set

1. Eclypso (Tommy Flanagan)

Eclypso

エクリプソ:オープニング・ナンバーは、フラナガンのオリジナルの中でも、最も人気のあるカリプソ・ムードの作品。寺井尚之がフラナガンの招きで長期NY滞在した最後の夜、フラナガンは《ヴィレッジ・ヴァンガード》で、「ヒサユキのために」とスピーチして演奏してくれた思い出の曲。

2. Out of the Past (Benny Golson)

 アウト・オブ・ザ・パスト:テナー奏者、ベニー・ゴルソンがフィルム・ノワールのイメージで作った作品で、彼の盟友、アート・ファーマー(tp)はフラナガンと共に『Art』に収録した。その後フラナガンが、自己トリオのレパートリーに加え、ライヴ盤Nights at the Vanguard(写真)などに録音している。フラナガンがアレンジした左手のオブリガードが印象的で、OverSeasで大変人気がある曲。

3. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan)

NYのフラナガンのアパートで。(’89)

 ビヨンド・ザ・ブルーバード:デトロイト時代にサド・ジョーンズ達とハウスバンドで切磋琢磨したジャズクラブ《ブルーバード・イン》へのノスタルジー溢れる名曲で、デトロイトの同胞、ケニー・バレルをゲストに迎えたリーダー作(’90)のタイトル曲とした。
 このアルバムのリリース前から、フラナガンはNYで寺井尚之にこの譜面を写譜させ、演奏することを許した。めまぐるしい転調によって曲に品格と深みを出す典型的なフラナガン・ミュージックだ。


4. Medley: Embraceable You (George Gershwin) – Quasimodo (Charlie Parker) 

Charlie Parker

 メドレー‐エンブレイサブル・ユー~カジモド:生前のフラナガンはライヴで数多くのメドレーを演奏したが、録音が残っているのはごく一部だ。これは、ガーシュインの「抱きしめたいあなた」というバラードと、チャーリー・パーカーが、その進行を基に作曲し、“ノートルダムの背むし男(カジモド)”と名付けたビバップの、例のない組み合わせだ。フラナガンがこの2曲を組み合わることによって「魂の“美しさ”は、表面的な美醜や肌の色とは無関係だ」というチャーリー・パーカーの芸術的真意を伝えた。寺井も、同じ信念で演奏を続けている。
  

5. Dalarna (Tommy Flanagan)

ダーラナ地方

ダーラナ:『OVERSEAS』(1957)に収録されたフラナガン初期のオリジナル。『OVERSEAS』を録音したのは、J.J.ジョンソンとのスウェーデン・ツアーの間だった。そのツアーはスウェーデン文化省の招きで、数か月かけてスウェーデンの津々浦々をまわってコンサートをするというもので、美しい森と湖に囲まれたダーラナ(上写真)でも公演したのだろう。

 フラナガンが心酔したビリー・ストレイホーンの印象派のタッチと、厳しい転調をさりげなく用いることによって洗練された美しさを生み出すフラナガンの個性が感じられる。
 『Overseas』に録音後は、長年演奏しなかったが、寺井尚之のCD『Dalarna』に触発され、寺井のアレンジを使い『Sea Changes』(’96)に再録。演奏する寺井尚之の胸中には、「ダーラナを録音したぞ!」とNYから電話をかけてきたフラナガンの弾んだ声が響いている。

6. Beats Up (Tommy Flanagan)
 ビーツ・アップ:これも1-5.と同じく『OVERSEAS』に収録し、『Sea Changes』に再録した作品で、リズム・チェンジのリフ・チューン。 
 寺井尚之は、宮本在浩とのデュオで、トリオに負けないダイナミックなプレイを聴かせる。

7. Sunset and the Mockingbird (Duke Ellington, Billy Strayhorn)

 デューク・エリントンがフロリダ半島で聴いたモッキンバードの鳴き声に触発され瞬く間に書き上げたとされ、エリザベス女王に献上するために、自費で1枚だけプレスしたアルバム『女王組曲』に収録。

女王陛下とエリントン

フラナガン67才のバースデイ・コンサートのライヴ・アルバムのタイトル曲。
 コンサートでは、冒頭のピアノの響きが格別で、「ピアノが腹から声を出している。」という宮本在浩(b)の言葉がうなづける。

8. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)

Chano Pozo & Gillespie

ティン・ティン・デオ:第一部のクロージングは、フラナガン屈指の名演目、ディジー・ガレスピーが牽引したアフロキューバン・ジャズの代表曲だ。 
 読み書きのできない天才的なキューバ人コンガ奏者、チャノ・ポゾが口ずさんだメロディとリズムをガレスピー達が採譜し、ビッグバンド用の曲に仕上げた作品。フラナガンは、曲の持つ土臭さと哀愁を保ちながら、ビッグバンドに負けないダイナミクスに、持ち前の気品を加えたヴァージョンを創造した。
 トリビュートでは、さらに切り詰めたデュオ編成で、寺井尚之と宮本在浩が、フラナガン的ダイナミズムを再現してみせる。
 

2nd Set

1.That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)

Matt

 ザット・タイヤード・ルーティーン・コールド・ラヴ:トミー・フラナガン全盛期の愛奏曲。フランク・シナトラのヒットソングを数多く手がけた作曲者マット・デニス(写真)は、弾き語りの名手でもあり、TV、ラジオでも活躍した。彼はクラブ出演する際、ゲストに一流ジャズメンを招くのを好み、それがきっかけで、彼の作品は

ジャズメンの名演によって、さらに長く伝承された。JJジョンソンも’55年、高級ナイト・クラブ”チ・チ”におけるデニスのショウにゲスト出演し、フラナガンが参加した《First Place》にこの曲を収録。その30年後、フラナガンはリーダー作《Jazz Poet》(’89 写真)に収録、ライヴでも愛奏し、数年後には録音ヴァージョンを凌ぐアレンジが完成した。現在は寺井尚之がそれを引き継ぎ演奏している。

2. They Say It’s Spring (Bob Haymes)

Bobby Jaspar & Blossom Dearie

 ゼイ・セイ・イッツ・スプリング:フラナガンが“スプリング・ソング”と呼び、春が来ると愛奏した演目の一つ。“スプリング・ソング”には、楽しい曲も寂しい曲もあったが、これは前者で、浮き浮きした春の恋の歌。もともとJ.J.ジョンソン時代のバンド仲間、ボビー・ジャスパーの妻だったブロッサム・ディアリーのヒット曲で、フラナガンは彼女のライヴで聞き覚えたという。’70年代にジョージ・ムラーツ(b)との名デュオ・アルバム『Ballads & Blues』に収録。 

3. A Sleepin’ Bee (Harold Arlen)

 スリーピン・ビー:これも楽しいスプリング・ソングで、カリブを舞台にしたファンタジックなミュージカル「A House of Flowers」(トルーマン・カポーティ原作、ハロルド・アーレン音楽)の挿入歌。「蜂が手の中で眠ったら、あなたの恋は本物」というハイチの言い伝えを元にしたラブ・ソングだ。フラナガン・ヴァージョンを基に、すっきりと切り詰めた寺井尚之のアレンジをフラナガンは大いに褒めてくれた。

4. Passion Flower (Billy Strayhorn)

OverSeasでプレイするムラーツ(’84)

パッション・フラワー:作曲者ビリー・ストレイホーン自身も愛奏した作品(’44)で、フラナガン・トリオのベーシスト、ジョージ・ムラーツの十八番。トリビュートでは宮本在浩(b)が磨きのかかった弓の妙技を聴かせる。パッション・フラワーは日本でトケイソウと呼ばれ、一風変わった幾何学的な形は、欧米で磔刑のキリストに例えられる。黒人でありゲイだったストレイホーンは、常にエリントンの影武者に甘んじた苦悩を、この花に例えたのかもしれない。
 ムラーツは、フラナガンの許を去った後もこの曲を愛奏し、リーダー作『My Foolish Heart(’95)』に収録。  

5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)

マイナー・ミスハップ:フラナガンが終生愛奏したソリッドなハードバップ・チューン、初リーダー作『Cats』(’57)に収録したオリジナル。”minor mishap”は、「ちょっとしたアクシデント」という意味。名前の由来は『Cats』のレコーディングのほろ苦い顛末に由来する。。
 フラナガンは昔気質のジャズ・ミュージシャンで、演奏するときもたいてい譜面を使わなかったが、初めての共演者では、そうもいかず、譜面が必要になる。そこで、来日時には、寺井の採譜した譜面をコピーして持ち帰っていた。フラナガンのサイン入りのMinor Mishapの譜面は当店の壁に飾られている。(写真)

6. I’ll Keep Loving You (Bud Powell)

 アイル・キープ・ラヴィング・ユー: 静謐な硬派のバラード。
 フラナガンがパウエル作品を演奏すると、曲の持ち味を失うことなく、一層洗練された美しさが醸し出された。トリビュート・コンサートではフラナガンに対する変わらぬ想いをこめて。

7. Our Delight (Tadd Dameron)

 アワー・デライト:ピアニスト、作編曲家、タッド・ダメロン(写真)の作品で、ライヴを盛り上げるラスト・チューンとしてフラナガンが愛奏した。それにもかかわらず、レコーディングはハンク・ジョーンズとのピアノ・デュオしか残されておらず、バップの醍醐味が炸裂するスリリングなフラナガンのアレンジを再現できるのは寺井しかいない。この夜の寺井尚之と宮本在浩は、いつにもまして、この曲は本来ドラムレスで演るのだと思ってしまうほど、ダイナミックなプレイを聴かせた。


Encore:

  1. With Malice Towards None (Tom McIntosh)
Tom McIntosh

 ウィズ・マリス・トワーズ・ノン: フラナガンージョージ・ムラーツのデュオ・アルバム、『Ballads&Blues』に収録されたスピリチュアルな名作。作曲者のトム・マッキントッシュ(tb)はフラナガンの友人で、この作品の創作過程には、フラナガンのアドバイスが大きく取り入れられた。
 「誰にも悪意を向けず」というジャズらしくないタイトルは、多くの犠牲者を出した南北戦争後、エイブラハム・リンカーンが演説で口にした名言だ。
 “ウィズ・マリス…”は、寺井尚之の十八番としても知られ、コンサートでは演奏に涙ぐむお客様もおられた。

2. Like Old Times (Thad Jones)

Thad Jones

 ライク・オールド・タイムズ:サド・ジョーンズとデトロイトの《ブルーバード・イン》で演奏した作品。ジョーンズ名義の『Motor City Scene』(’59 United Artist)に収録され、フラナガン自身、アンコールでよく演奏した。彼がご機嫌なときは、ポケットの中から小さなホイッスルをこっそり取り出し、ここぞのタイミングで、ピューッと吹いて会場を多いに湧かせた。トリビュートでは、やはり寺井も隠し持っていたホイッスルを鳴らし大喝采。トミー・フラナガンが元気だった「昔のように」楽しい空気が満ち溢れた。 フラナガン・トリオの演奏は『Nights at the Vanguard』(Uptown)に収録されている。         

解説:寺井珠重
監修:寺井尚之

*本コンサートのCD3枚組をご希望の方は当店にお申し込みください。
動画は近日Peatixで配信。