初リーダー作で、今なお人気のあるアルバム『Cats』 (NEW JAZZ, ’57)に収録したオリジナル。”minor mishap”は、「ちょっとしたアクシデント」という意味。名前の由来は『Cats』のレコーディング時のほろ苦い顛末に隠されている。以来、フラナガンが終生愛奏したソリッドなハードバップ・チューン。
7. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie) 1st Setを締めくくるナンバー、〈ティン・ティン・デオ〉は、キューバ人コンガ奏者、チャノ・ポゾが口ずさむメロディとリズムを基にしたディジー・ガレスピー楽団の演目で、戦後、大流行したアフロ・キューバン・ジャズの代表曲。 ビッグバンドのマテリアルを、コンパクトなピアノ・トリオ編成で表現するのがフラナガン流。哀愁に満ちたキューバの黒人音楽と、ビバップの洗練されたイディオムが見事に融合したアレンジが素晴らしい。
<2nd Set>
1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis) 作曲者マット・デニスは弾き語りの名手として、また〈エンジェル・アイズ〉を始めとするフランク・シナトラの数々のヒットソングの作者として有名。デニスはナイト・クラブに出演する際、一流ジャズメンをゲストに招いて共演するのを好み、それにつれて彼の楽曲もジャズメンに愛奏されるようになった。J.J.ジョンソンはフラナガン参加アルバム、《First Place》(Columbia, ’57)にこの曲を収録。その32年後、フラナガンはリーダー作《Jazz Poet》 (Timeless, ’89)に収録し、ライブで愛奏を続け、アレンジを進化させた。現在は寺井が進化型のアレンジを引き継いでいる。 寺井は《Anatommy》 (Hanil ’93)に収録。
2. Smooth as the Wind (Tadd Dameron) フラナガンが愛奏したもう一人の作曲家、タッド・ダメロン(ピアニスト、作編曲家)の作品。力強く優美な「美バップ」の黄金比率を持ち、次々と美しい花が開花していくようなハーモニーの華麗さに目を見張る。 この曲は、麻薬刑務所服役中のダメロンがブルー・ミッチェル(tp)のアルバム「Smooth as the Wind」(Riverside, ’61)の為に書き下ろしたもので、アルバムにはフラナガンも参加している。 一編の詩のような曲の展開、吹き去る風のように余韻を残すエンディングまで、完成度の高いアレンジがレガシーだ。
Black and Tan Fantasy (Duke Ellington) 晩年のフラナガンは、自分が子供時代に親しんだ、ビバップ以前の楽曲を精力的に開拓していた。 自分のブラック・ミュージックの道筋を逆に辿ろうとしていたのかもしれない。その意味で、エリントン楽団初期、禁酒法時代(’27)の代表曲〈ブラック&タン・ファンタジー(黒と茶の幻想)〉は非常に重要なナンバーだ。 フラナガンが最後にOverSeasを訪問したとき、寺井が演奏すると、珍しく絶賛してくれた思い出の曲でもある。
1. As Long as I Live (Harold Arlen) 2. Green Wine (Benny Carter) 3. Strictly Confidential (Bud Powell) 4. Pannonica (Thelonious Monk) 5. Laverne Walk (Oscar Pettiford) 6. Maybe September (Percy Faith) 7. Bouncing with Bud (Bud Powell)
Encore: You Go to My Head (Fred Coots) Eclypso (Tommy Flanagan)