トミー・フラナガン没後24年、OverSeasで誕生月と逝去月に開催する46回目のトリビュート・コンサートを3月15日に開催しました。 フラナガンの名演目を選りすぐってお聴きいただくトリビュート・コンサート、今回はフラナガンが生涯愛奏しつづけ、自費で『Let’s (Play the Music of Thad Jones)』という作品集を録音しているサド・ジョーンズの作品にスポットを当てたコンサートになりました。 演奏は、おなじみフラナガン唯一の弟子、寺井尚之(p)と25年来のパートナー、宮本在浩(b)とのデュオ。
オープニングは、フラナガンが大きな影響を受けたコルネット奏者、作編曲家、サド・ジョーンズ(写真左)のオリジナル。デトロイト・ハードバップ誕生の地であるデトロイトの黒人居住地にあったジャズクラブ《ブルーバード・イン》に因んだ曲。50-21はクラブの番地(5021 Tireman Ave. Detroit)だ。フラナガンとジョーンズは、このクラブのハウスバンドとして活動(1953~54年)、その時期に演奏した多くのサド・ジョーンズ作品は、フラナガン終生の愛奏曲になる。コンサートの客席には、愛車ナンバーが“5021”の常連様が2名もおられるのが誇らしい。 フラナガンはアルバム《Comfirmation》 (Enja ’77) 、《Beyond the Blue Bird》 (Timeless, ’90) 、寺井尚之は《Fragrant Times》 (Flanagania ’97)に収録。
2, Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) ビヨンド・ザ・ブルーバード:フラナガンが《ブルーバード・イン》へのノスタルジーを込めて作った作品で、同じくデトロイトの盟友ギタリスト、ケニー・バレルをゲストに迎えたリーダー作(’90)のタイトル曲とした。 アルバムのリリース前、フラナガンはNYで寺井尚之にこの譜面を写譜させ、彼に演奏することを許した。めまぐるしい転調によって曲に品格と深みを出す典型的なフラナガン・ミュージックだ。
3. Medley: Embraceable You (George Gershwin) – Quasimodo (Charlie Parker)
3.A Sleepin’ Bee (Harold Arlen) スリーピン・ビー:フラナガンが“スプリング・ソング”と呼び、春になると愛奏した演目の一つ。カリブを舞台にしたミュージカル「A House of Flowers」(トルーマン・カポーティ原作、ハロルド・アーレン音楽)の挿入歌。「蜂が手の中で眠ったら、あなたの恋は本物」というハイチの言い伝えを元にしたラブ・ソングだ。フラナガン・ヴァージョンを基に、すっきりと切り詰めた寺井尚之のアレンジをフラナガンは大いに褒めてくれたことがある。
4. They Say It’s Spring (Bob Haymes) ゼイ・セイ・イッツ・スプリング:
ライク・オールド・タイムズ:これもフラナガンとサド・ジョーンズがデトロイト時代に演奏した作品。ジョーンズ名義の『Motor City Scene』 (’59 United Artist)に収録。後年フラナガンはアンコールに愛奏した。彼がご機嫌なときは、ポケットの中から小さなホイッスルをこっそり取り出し、絶妙なタイミングで、ピューッと吹いて会場を多いに湧かせた。この夜も、寺井が隠し技のホイッスルを鳴らすと、フラナガンが元気だった「昔のように」楽しい空気が満ち溢れた。
1. 50-21 (Thad Jones) 2, Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) 3. Medley: Embraceable You (George Gershwin) – Quasimodo (Charlie Parker) 4. Minor Mishap (Tommy Flanagan) 5. Sunset and the Mockingbird (Duke Ellington, Billy Strayhorn) 6. Beats Up (Tommy Flanagan) 7. Dalarna (Tommy Flanagan) 8. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)
=2nd Set=
1.That Tired Routine Called Love (Matt Dennis) 2. With Malice Towards None (Tom McIntosh) 3.A Sleepin’ Bee (Harold Arlen) 4. They Say It’s Spring (Bob Haymes) 5. Passion Flower (Billy Strayhorn) 6. Eclypso (Tommy Flanagan) 7. Easy Living (Ralph Ranger) 8. Our Delight (Tadd Dameron)
Encore 1. To You (Thad Jones) 2. Like Old Times (Thad Jones)
=Annual Concert tribute to Tommy Flanagan in March 2025= This year of 2025, pianist and owner of Jazz Club OverSeas, Hisayuki Terai with Zaiko Miyamoto on bass will hold his special tribute concert to his mentor, Tommy Flanagan.
Date and Time: Saturday, March 15, 2025 7:00 PM / 8:20 PM (Doors open at 6:00 PM, no seat changes between shows)
Advance Ticket Price: ¥3,850 (tax included, reserved seating) Seats are limited, so please purchase your tickets as soon as possible.
2. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) 〈ビヨンド・ザ・ブルーバード〉1950年代前半、20代のフラナガンが、サド・ジョーンズ達とデトロイト・ハードバップを開花させた場所は、デトロイトの黒人居住区にあった伝説的ジャズクラブ《ブルーバード・イン》だ。後年フラナガンがノスタルジーを込めて作った曲で、1991年にリリースしたアルバムのタイトル曲とした。《ブルーバード》の客層は、自動車産業に従事する黒人労働者で、ジャズを愛し、若手ミュージシャンを応援するアット・ホームな店だったと語ってくれたことがある。 シンプルで親しみやすいメロディの裏にある綿密な転調と、”返し”と呼ばれる左手のカウンター・メロディが、デトロイト・ハードバップの特徴。寺井はアルバム(左上写真)のリリース前、フラナガンから譜面を授かり演奏を許された。
寺井尚之がフラナガンに弟子入り志願したのは1975年、正式に弟子として認められたのは9年後、1984年のことです。以降、NYのフラナガンに演奏テープを送り続け、「NYに来なさい!」と命令されたのが1989年、フラナガン師匠は、寺井を色々な音楽の場に同行し、色々な巨匠に紹介し、演奏チャンスを与え、自分の演奏も間近でたっぷり聴く機会を与えました。それからはフラナガンが亡くなるまで、何でも教えてくれたそうです。今年で寺井は72才になり、フラナガンの享年を追い越してしまいましたが、師匠の音楽を伝えようとする熱意は今が一番強いのかもしれません。 次回のトミー・フラナガン・トリビュートは来年の3月15日(土)に開催予定です。 どうぞこれからも応援宜しくお願い申し上げます。(text by 寺井珠重)
<1st> 1. Bitty Ditty (Thad Jones) 2. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) 3. Rachel’s Rondo (Tommy Flanagan) 4. Medley: Embraceable You (George Gershwin) ~Quasimodo(Charlie Parker) 5. Lament (J. J. Johnson) 6. Elusive (Thad Jones) 7. Dalarna (Tommy Flanagan) 8. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)
<2nd> 1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis) 2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron) 3. Medley: Thelonica(Tommy Flanagan)~Minor Mishap (Tommy Flanagan) 4. If You Could See Me Now (Tadd Dameron) 5. Eclypso (Tommy Flanagan) 6. But Beautiful (Jimmy Van Heusen) 7. Our Delight (Tadd Dameron)