2. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) 〈ビヨンド・ザ・ブルーバード〉1950年代前半、20代のフラナガンが、サド・ジョーンズ達とデトロイト・ハードバップを開花させた場所は、デトロイトの黒人居住区にあった伝説的ジャズクラブ《ブルーバード・イン》だ。後年フラナガンがノスタルジーを込めて作った曲で、1991年にリリースしたアルバムのタイトル曲とした。《ブルーバード》の客層は、自動車産業に従事する黒人労働者で、ジャズを愛し、若手ミュージシャンを応援するアット・ホームな店だったと語ってくれたことがある。 シンプルで親しみやすいメロディの裏にある綿密な転調と、”返し”と呼ばれる左手のカウンター・メロディが、デトロイト・ハードバップの特徴。寺井はアルバム(左上写真)のリリース前、フラナガンから譜面を授かり演奏を許された。
寺井尚之がフラナガンに弟子入り志願したのは1975年、正式に弟子として認められたのは9年後、1984年のことです。以降、NYのフラナガンに演奏テープを送り続け、「NYに来なさい!」と命令されたのが1989年、フラナガン師匠は、寺井を色々な音楽の場に同行し、色々な巨匠に紹介し、演奏チャンスを与え、自分の演奏も間近でたっぷり聴く機会を与えました。それからはフラナガンが亡くなるまで、何でも教えてくれたそうです。今年で寺井は72才になり、フラナガンの享年を追い越してしまいましたが、師匠の音楽を伝えようとする熱意は今が一番強いのかもしれません。 次回のトミー・フラナガン・トリビュートは来年の3月15日(土)に開催予定です。 どうぞこれからも応援宜しくお願い申し上げます。(text by 寺井珠重)
<1st> 1. Bitty Ditty (Thad Jones) 2. Beyond the Blue Bird (Tommy Flanagan) 3. Rachel’s Rondo (Tommy Flanagan) 4. Medley: Embraceable You (George Gershwin) ~Quasimodo(Charlie Parker) 5. Lament (J. J. Johnson) 6. Elusive (Thad Jones) 7. Dalarna (Tommy Flanagan) 8. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)
<2nd> 1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis) 2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron) 3. Medley: Thelonica(Tommy Flanagan)~Minor Mishap (Tommy Flanagan) 4. If You Could See Me Now (Tadd Dameron) 5. Eclypso (Tommy Flanagan) 6. But Beautiful (Jimmy Van Heusen) 7. Our Delight (Tadd Dameron)
=Annual Concert tribute to Tommy Flanagan in November 2024= This year of 2024, pianist and owner of Jazz Club OverSeas, Hisayuki Terai with Zaiko Miyamoto on bass will hold his special tribute concert to his mentor, Tommy Flanagan on the anniversary of his passing.
Date and Time: Saturday, November 16, 2024 7:00 PM / 8:20 PM (Doors open at 6:00 PM, no seat change between shows)
Advance Ticket Price: ¥3,850 (tax included, reserved seating) Seats are limited, so please purchase your tickets as soon as possible.
アウト・オブ・ザ・パスト:テナー奏者、ベニー・ゴルソンがフィルム・ノワールのイメージで作った作品で、彼の盟友、アート・ファーマー(tp)はフラナガンと共に『Art』に収録した。その後フラナガンが、自己トリオのレパートリーに加え、ライヴ盤『Nights at the Vanguard』(写真)などに録音している。フラナガンがアレンジした左手のオブリガードが印象的で、OverSeasで大変人気がある曲。
スリーピン・ビー:これも楽しいスプリング・ソングで、カリブを舞台にしたファンタジックなミュージカル「A House of Flowers」(トルーマン・カポーティ原作、ハロルド・アーレン音楽)の挿入歌。「蜂が手の中で眠ったら、あなたの恋は本物」というハイチの言い伝えを元にしたラブ・ソングだ。フラナガン・ヴァージョンを基に、すっきりと切り詰めた寺井尚之のアレンジをフラナガンは大いに褒めてくれた。
ライク・オールド・タイムズ:サド・ジョーンズとデトロイトの《ブルーバード・イン》で演奏した作品。ジョーンズ名義の『Motor City Scene』(’59 United Artist)に収録され、フラナガン自身、アンコールでよく演奏した。彼がご機嫌なときは、ポケットの中から小さなホイッスルをこっそり取り出し、ここぞのタイミングで、ピューッと吹いて会場を多いに湧かせた。トリビュートでは、やはり寺井も隠し持っていたホイッスルを鳴らし大喝采。トミー・フラナガンが元気だった「昔のように」楽しい空気が満ち溢れた。 フラナガン・トリオの演奏は『Nights at the Vanguard』(Uptown)に収録されている。