サー・ローランド・ハナ・トリビュート・コンサート曲説

サー・ローランド・ハナ
Sir Roland Hanna (1032-2002)

 当店と寺井尚之に多大な恩恵を与えてくださったピアニスト、サー・ローランド・ハナ没後22年、寺井尚之がベーシスト、宮本在浩とともに、デトロイト・ハードバップ・ロマン派の巨匠の情熱と、音楽に境界なしという一途な精神がみなぎる作品群を演奏しました。以下はコンサートの演奏曲目解説です

演奏 Hisayuki Terai-piano, Zaiko Miyamoto-bass

1st Set

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 51QRmzb3gIL._AC_-1.jpg

1.Ode to a Potato Plant (Sir Roland Hanna)  オード・トゥ・ア・ポテト・プラント
日本語にすれば「ジャガイモ賛歌」というところだろうか?凡人にとっては些細なことにも大きな感動を見出すハナさんらしいオリジナルで、清涼感溢れる70年代の作品。
 ジョージ・ムラーツ(b)、リチー・プラット(ds)とのトリオによるアルバム『Time for the Dancers』 (’77, Progressive)に収録。

     2. Enigma (Sir Roland Hanna) エニグマ

    神秘的な無調のオリジナル、リチャード・デイヴィス(b)、アンドリュー・シリル(ds)とのトリオによる『Three Black Kings』 (’97 JFP)他、ハナさんは何度も録音している。寺井は2002年に鷲見和広(b)と“Echoes of OverSeas”に収録。

    3. Quietude (Thad Jones) クワイエチュード

    Sir Roland and Richard Davis(b)

    「静けさ」という意味のサド・ジョーンズ作曲、気品と愛らしさを兼ね備えた作品。ハナさんはサド・ジョーンズ‐メル・ルイスOrchで1967年から74 年までレギュラー活動したが、その時期の楽団でピアノをフィーチャーして演奏された。

    4. This Time It’s Real (Sir Roland Hanna) ディス・タイム・イッツ・リアル

    2001年、青森善雄(b)、英明(as,ss,cl)、クリス・ロゼリ(ds)のカルテットで来演した時に演奏された。曲の由来をハナさんに訊いたところ、ハナさんの友人で恋多きフレンチホルン奏者が、また新しい恋をしたときに言った言葉-「今度こそ本物よ!-This time it’s real」に触発されたという。その恋の顛末は定かでない。恋は盲目、美しいメロディーに幸せと切なさが入り混じる。同メンバーでの青森英明名義のアルバムや、デンマークの名テナー奏者、ジェスパー・シロとの共演盤がある。

    5. Prelude No.14 in Cm (Sir Roland Hanna)

     メランコリックで可憐なワルツ。 ハナさんのオリジナル・プレリュードで、ジョージ・ムラーツとの名コンビによる幻の名盤『24のプレリュード集- Book2』 (’78, Salvation)に収録。『24のプレリュード集』はCTIの傍系レーベルが一対のアルバムとして、日本で録音し日本のみの限定リリース盤として制作した。そのため広く知られないままだったが、近年、再評価の動きが高まっている。

    6. Prelude No. 2 in Gmajor, Blue, Green, Brown & Black (Sir Roland Hanna)

    同じく『24のプレリュード集- Book1』 (’78, Salvation)に収録。副題〈ブルー、グリーン、ブラウン&ブラック〉はさまざまな人種の瞳の色を意味し、どんな人種も、神の前では平等というハナさんのゆるぎないメッセージがこもっている。ちなみにハナさんの父親は教会の宣教師である。

    7. What Does It Matter? (George Mraz) ホワット・ダズ・イット・マター?

     ‘70年代にコンビを組んで多数の録音を遺したベーシスト、ジョージ・ムラーツ作のソフトで官能的なボサノバ曲、今夜は宮本在浩によるベースの美技をフィーチャー。フランク・ウエス(ts,fl)とハナさんを中軸にしたユニット、ニューヨーク・ジャズ・カルテット(NYJQ)のアルバム『Surge』(’76, Enja)、ムラーツとのデュオ『Sir Elf Plus 1』(’78, Choice)に収録。
     作曲したムラーツによれば、レコーディング時に、録音ブースとのやりとりで、「だからどうだっていうのさ?(What Does It Matter? )」とムラーツが言った言葉だったが、なぜか曲名としてクレジットされていたという。

    2nd Set

    1.Colors from a Giant’s Kit (Sir Roland Hanna) カラーズ・フロム・ア・ジャイアンツ・キット

       ハナさんの没後リリースされた未発表ソロ・アルバム(IPO, 2011)のタイトル曲。サー・ローランド・ハナというピアノの巨人が遺した絵具箱を開けると、色彩豊かな音が一気にあふれ出る爽快感がある。このセットのオープニングに相応しい曲だ。

      2. A Child Is Born (Sir Roland Hanna, Thad Jones)

       最も人気のあるサド・ジョーンズ作品とされるが、実はサドメル時代にハナさんが作った曲だという。キリストの生誕を想起させる慈愛に満ちた高潔なメロディーとハーモニーで、いつの時代も愛される作品。2002年6月、トミー・フラナガンへの追悼盤『Tributaries: Reflections on Tommy Flanagan』(IPO)に収録。録音の5か月後、ハナさんもフラナガンの後を追うように、この世を去った。

      3.Prelude No. 4 in Cm, München (Sir Roland Hanna) ミュンヘン

       『24のプレリュード集- Book1』に収録、初めて訪れたドイツの印象を表現した作品。これらのプレリュード曲は、日本側との打ち合わせの行き違いによって、来日してから、僅か1週間で書き上げたものだ。ハナさんの想像力と集中力がどれほどすごいものだったか想像も及ばない。

      4.Two Cute (Sir Roland Hanna) トゥー・キュート

      ヴァイオリンの巨匠、ステファン・グラッペリが、ハナ+ムラーツ+メル・ルイス(ds)と組んだアルバム『Stephane Grappelli Meets the Rhythm Section』(Black Lion, ‘75)に収録。軽やかで気品漂う作品で、ピアノと弦楽器のユニゾンが心地よい。

      5. A Story Often Told Seldom Heard (Sir Roland Hanna) ア・ストーリー・オッフン・トールド・セルダム・ハード

       タイトルは「しょっちゅう語られるのに、滅多に聞かれることのない話」という意。ハナさんは1962年、NYのジャズクラブ《ファイヴ・スポット》で、時代の寵児として注目を集めたセロニアス・モンクの演奏の合間の時間つなぎ、いわゆる対バンとして出演し、モンクしか聴く気のない聴衆の前で演奏するという辛酸をなめた。そんな体験がもとになっているのかもしれない、憂愁と高潔さに心を打たれる。後に、ハナさんはソロ・アルバム『Round Midnight』(Town Crier, ‘87)に名演を録音し、寺井にそのCDを送ってくれた。

      6.Time Dust Gathered (Sir Roland Hanna) タイム・ダスト・ギャザード

       モントルー・ジャズフェスティバルのソロ・ライブ、『Perugia』(Arista ‘76)に収録のオリジナル。
       ハナさんの口癖は「タイム・イズ・マネー」だったから、「無駄になった時間をかき集めて、有効なものにする、という意味。」と、寺井は言う。

      7.Time for the Dancers (Sir Roland Hanna) タイム・フォー・ザ・ダンサーズ

      大阪、伊丹空港にて(1990)

       ピアノ・トリオによる同名アルバム(Progressive, ‘77)やNYJQ(ニューヨーク・ジャズ・カルテット)、中山英二(b)とのデュオなどの録音やコンサートで、愛奏された美しい曲。
       「この曲はどんなダンサーをイメージして演奏すればよいのですか?」と寺井が尋ねたことがある。すると、ハナさんは「どんなダンサーでもいいんだ。ヒサユキちゃんの好きなイメージで演奏しなさい。」と答えた。「それじゃあ、ハナさんが白鳥の湖を踊っているところを…」というとハナさんは苦笑していた。その思い出とともに、今日もエンディングにチャイコフスキーの一節が入った。

      8. Mediterranean Seascape (Sir Roland Hanna) 地中の情景

       アフリカ、中近東、ヨーロッパの人やモノが行き来する地中海の情景、潮風や海流にの乗って多様な音楽文化が融合する様子が見事に描かれた壮大な作品。
       寺井がこの曲を演奏したきっかけは、ハナさんが自身の録音をわざわざ自分で採譜して、寺井にプレゼントしてくれたことだった。年月を経た今は寺井-宮本デュオの夏の名演目になっている。 NYJQの日本公演アルバム『In Concert in Japan』(Salvation, ‘75)やソロ・アルバム『Round Midnight』に収録。

      Encore: Souvenir (Sir Roland Hanna)

      ハナさんは’60年代と’70年代の一時期、サラ・ヴォーンの伴奏者を務めていた。この不世出の歌手が癌で亡くなったときに捧げた追悼曲。-「今夜はこの曲をハナさんに捧げます。」という言葉とともに感動的な演奏でコンサートを締めくくった。

      演奏は寺井尚之(p)、宮本在浩(b)DUO
      コンサートのライブ録音あるいは動画をご希望の方は当店までお申し付けください。

      今週のご案内

      Yas Takeda
      Yas Takeda

      7/29(月)寺井尚之ジャズピアノ&理論教室

      7/30(火) 寺井尚之(p)+倉橋幸久(b)デュオ  Live Charge 2200 Music 7pm-/8pm- /Closed 9pm

      7/31(水) 寺井尚之(p)+東ともみ(b)デュオ  Live Charge 2200 Music 7pm-/8pm- /Closed 9pm

      8/1(木)寺井尚之ジャズピアノ&理論教室

      8/2(金)寺井尚之(p)+宮本在浩 (b)デュオ Live Charge 2530 Music 7pm-/ 8pm-/ 9pm-

      8/3(土)Yas 竹田&Friends:Yas 竹田(b)、寺井尚之(p)、河原達人(ds)、Live Charge 3300、Music 5pm-/6pm-/7pm

      サー・ローランド・ハナ・トリビュート・コンサート演奏曲目

      リハーサル中の寺井尚之と宮本在浩

       OverSeas初のサー・ローランド・ハナ・トリビュートは、寺井尚之(p)と宮本在浩が入念に準備した珠玉の名曲集。

       アンコールの“Souvenir”は、ハナさん作のサラ・ヴォーン追悼曲ながら「今夜はハナさんに捧げます、」という寺井尚之の言葉が印象的でした。

       客席にはハナさん存命中に交流のあった人々や、このコンサートで初めてハナさんの音楽に触れて感動した若い世代も!改めてサー・ローランド・ハナの素晴らしさを実感できた音楽の夕べになりました。

      1st Set

      1. Ode to a Potato Plant (Sir Roland Hanna)
      2. Enigma (Sir Roland Hanna)
      3. Quietude (Thad Jones)
      4. This Time It’s Real (Sir Roland Hanna)
      5. Prelude No.14 in Cm (Sir Roland Hanna)
      6. Prelude No. 2 in G△, Blue, Green, Brown & Black (Sir Roland Hanna)
      7. What Does It Matter? (George Mraz)

      2nd Set

      1. Colors from a Giant’s Kit (Sir Roland Hanna)
      2. A Child Is Born (Sir Roland Hanna, Thad Jones)
      3. Prelude No. 4 in Cm, München (Sir Roland Hanna)
      4. Two Cute (Sir Roland Hanna)
      5. A Story Often Told Seldom Heard (Sir Roland Hanna)
      6. Time Dust Gathered (Sir Roland Hanna)
      7. Time for the Dancers (Sir Roland Hanna)
      8. Mediterranean Seascape (Sir Roland Hanna)

      Encore: Souvenir (Sir Roland Hanna)

      寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ“Special Selection”7/20編 CDできました。

      ご希望の方は当店までお申し込みください。

      寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ、7/20の“Special Selection”の演奏がCD&動画になりました。

       ご希望の方は当店までお申し込みください。

      演奏曲目はこちら

      サー・ローランド・ハナ・トリビュートは残席僅少です。

      サー・ローランド・ハナ・トリビュート
      残席ごくわずか

      7/27 Tribute to Sir Roland Hanna
      おかげさまで、残席は数席のみになりました。
      お越しの際は、必ず残席の有無をご確認下さい。
      当日は込み合いますので、6 :30pmまでにご入場いただけると幸いです。

      寺井尚之(p)と宮本在浩(b)による、サー・ローランド・ハナ・トリビュート、美しいハナさんの未知なる音楽世界をおたのしみください!

       どうぞ宜しくお願い申し上げます。

       店主敬白

      今週のご案内:ハナさんトリビュート・コンサート(土)に。

      サー・ローランド・ハナ・トリビュート
      サー・ローランド・ハナ・トリビュート・コンサート 残席僅少

      7/22(月)寺井尚之ジャズピアノ教室

      7/23(火) 寺井尚之(p)+倉橋幸久(b)デュオ  Live Charge 2200 Music 7pm-/ 8pm-/Close 9pm (入替なし)

      7/24(水)寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ  Live Charge 2530 Music 7pm-/ 8pm-/ 9pm- (入替なし)

      7/25(木)寺井尚之ジャズピアノ教室

      7/26(金) 滝川雅弘(cl) トリオ w/寺井尚之(p)、東ともみ(b) Live Charge 2530 Music 7pm-/ 8pm-/ 9pm- (入替なし)

      7/27(土)Tribute to Sir Roland Hanna  
      演奏:寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ
      Music 7pm-/8:15pm- (入替なし)前売りチケット(残席僅少) ¥3500

      7/20 寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ“Special Selection”今夜の曲目

      Hisayuki Terai-piano, Zaiko Miyamoto-bass

       Special Selection in summer, 夏休み中とありティーンのジャズファンたちもご来店。若者にジャズの醍醐味が伝わって嬉しいデュオでした。

      1st Set

      1. Beats Up (Tommy Flanagan)
      2. I Had a Craziest Dream (Harry Warren)
      3. For Minors Only (Jimmy Heath)
      4. Serenade in Blue (Harry Warren)
      5. Talking (Red Mitchell)
      6. Too Late Now (Burton Lane)
      7. Cup Bearers (Tom McIntosh)

      2nd Set

      1. Syeeda’s Song Flute (John Coltrane)
      2. Central Park West (John Coltrane)
      3. 46th & 8th (Waymon Reed)
      4. That Old Devil Called Love (Doris Fisher and Allan Roberts)
      5. Sub City (Bud Powell)
      6. Star-Crossed Lovers (Billy Strayhorn)
      7. Woody’n You (Dizzy Gillespie)

      Encore: Every time We Say Good Bye (Cole Porter)

      NEW VIDEO from Special Selection

      寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ、6月の“Special Selection” より“クライ・ミー・ア・リヴァー”(アーサー・ハミルトン作曲)をお楽しみください。

      この日の全編LIVE動画ご視聴希望の方は当店までお申し込みください。

      From Hisayuki Terai (piano) and Zaiko Miyamoto (bass) “Special Selection” concert  @JazzClubOverSeas  “Cry Me a River,” composed by Arthur Hamilton, a jazz standard recorded in J. J. Johnson album, First Place with Tommy Flanagan on piano.

      今週のご案内:寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ“Special Selection”(土)に。

      寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ“Special Selection”
      Hisayuki Terai-piano, Zaiko Miyamoto-bass

      7/15(月)祝日休業

      7/16(火) 寺井尚之/Hisayuki Terai(p)+橋本洋佑 /Yousuke Hashimoto(b)デュオ  Live Charge 2200 Music 7pm-/ 8pm-  閉店 9pm-

      7/17(水) 寺井尚之/Hisayuki Terai(p)+宮本在浩/Zaiko Miyamoto(b)デュオ  Live Charge 2530 Music 7pm-/ 8pm-/ 9pm-

      7/18(木)寺井尚之ジャズピアノ教室 /Piano School (No Music)

      7/19(金)末宗俊郎/ Toshiro Suwemuneh (g)Quartet w/寺井尚之/Hisayuki Terai(p)、坂田慶治/ KG Sakata(b)、河原達人 Tatsuto Kawahara(ds)
      Live Charge 2530 Music 7pm-/ 8pm-/ 9pm-  

      7/20(土)寺井尚之/Hisayuki Terai(p)+宮本在浩/Zaiko Miyamoto(b)デュオー“Special Selection” Live Charge 2970
      Music 1st set 7:00-7:45 pm / 2nd set 8:10-8:55 pm- 閉店9pm (*7pmまでにご入店ください)

      LIVEは入替なし Same cover charge for 1 or 2 or 3 sets
      (学割チャージ半額)Student discount: 50% Music Charge

      寺井尚之(p)+宮本在浩(b)デュオ“Special Selection”6/29編CDできました。

      CDのお申し込みは当店まで

      人気デュオの定例ライブ、 “Special Selection”, 6/29のライブCDができました。  ご希望の方は当店までお申し込みください。