春節のOverSeas

 大阪の街は、旧正月=春節休暇で中国や韓国からやってきたツーリストが一杯!ガイドブックとカメラを携えて、皆さん楽しそう。
 OverSeas北京支局長のK氏が、春節休暇を利用して火、水、連日でライブを聴きに来てくださいました。
 トリビュート・コンサートをご家族で楽しんで下さる様子をご存じの皆さんも多いと思います。大きなおプロジェクトを任されて、北京駐在も早4年!もう日常の仕事も採用面接も中国語でなさっているというのがスゴイ!
goods.JPG お正月の北京の街の写真を拝見すると、氷点下13度で寒そうですが、爆竹や花火は中華街みたいだし、お寺や縁日は京都みたい。マクドは日本と一緒です。因みに現在は人民服の人は一人もいないらしい…
 上は沢山の北京グッズ土産!右上の「福」と「龍」のポスターみたいなものは、旧正月のオーナメント、玄関に逆さに貼っておくと「福」が来るというので貼ってみたら、効果てきめん!お客様が一杯来てくださいました。
 左上のが現地の女性誌、VIVI中国版も!全頁オールグラヴィアでコスメは資生堂や日本製品が一杯です。
 スナック菓子は現地で人気の激辛フード、「麻辣花豆(マーラーピーナツ)」、唐辛子と山椒がビリビリに辛くて、ビールのおつまみに最高でした。瞬く間に完食したので味見はできません。あしからず・・・
 支局長のご実家は埼玉なのですが、独身時代から大阪出張のたびに訪問してくださった長年の常連様。久々にお目にかかると、親戚が来た気分!火曜日デュオは菅一平(ds)も駆けつけてくれましたよ。
 懐かしい大きな拍手を頂いて、メインステムもエコーズも嬉しく輝く演奏になりました!
beijinP1040808.JPG 現地の方々としっかりコミュニュケートされている支局長に、中国事情を伺うと、マスコミを通じて私が持っていたステレオタイプとは、ずいぶん違う北京の姿が見えてきました!
 支局長、どうもありがとうございます。可愛い奥様とお嬢ちゃんたちによろしく!どうぞゆっくり骨休めしてください!
CU

ムラーツ弟子、石川翔太、東京参上。

 毎日寒いですね!
 大阪の街は春節休暇のせいか、デジカメ持った中国からのお客さんが一杯!路地裏ジャズクラブ探訪ツアーしたい人、ぜひOverSeasにどうぞ!
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 さて、われらがアニキ、ジョージ・ムラーツの弟子であり、パーソナル・アシスタントを務める石川翔太君が、春節ではなくVISA取得手続きで一時帰国中です。実家は神戸ですが、現在、友人を訪ねて、東京に滞在中。
 しょうたんこと石川君は、音楽家一家に生まれました、お父様はアロージャズオーケストラの元リードアルト奏者、石川正義氏。日本では神田芳郎氏、鷲見和広氏に師事。
 ムラーツ同様、バークリー音楽院に奨学生として留学し一昨年卒業、ベース科:Outstanding Performer(傑出した演奏者) Award, ジャズ作・編曲科よりチャールス・ミンガス賞受賞という優等生です。詳細は彼のHPに!
 29日(日)高田馬場「Jazz Spot Intro」さんで開催される定例ジャムセッションに参上し、ムラーツ直伝の技を披露する予定。現場にはジャズ講座でおなじみの後藤誠氏もチェックに来られるそうです。
 私も参上して「しょうたん、がんばりや~」と掛け声かけに行きたいところですが、彼の将来のために遠慮しておきましょう。
 お江戸の皆様、どうぞ応援のほど、宜しくお願い申し上げます。
1月29日(日) 7:30pm頃に伺う予定です。
Jazz Spot Intro :東京都新宿区高田馬場2-14-8 NTビルB1
TEL 03-3200-4396

CU

ジョージ・ムラーツ後日談

 大阪は久しぶりの雨模様、先週「トミー・フラナガンの足跡を辿る」で”Here’s That Rainy Day”を聴きました。この歌の中の「雨の日」は、「まさかあるまいと思っていた不幸」を表現する決まり文句ですが、今日の雨はカラカラに乾燥しているこの季節への恵みの雨!OverSeasも加湿器2台フル稼働中でした。
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 さて、先週ジョージ・ムラーツさんのベース嫁入りのご報告をした直後、兄さんから新しいオーナーに宛てた手書きの礼状が届きました。
 ジョージ・ムラーツの1コーラスソロのように、達筆で心の籠った文章には、謝辞とともに、このドイツ製のベースをどれほど気に入っていたかということが書かれていました。
 手紙によると、そのベースは、歴代チェコ大統領が主催するプラハ城のコンサートで、必ず使っていたものでした。
Vaclav-Havel-Smiling-New_Yorker.jpg 民主化以降、チェコスロバキアとチェコ共和国の初代大統領を歴任、同時に世界的な劇作家であったヴァーツラフ・ハヴェル前大統領は、チェコ民主化の象徴、左写真のように、ブラピを超知的にしたようなイイ男、チェコの政治と文芸、両方のヒーローです。共産政権下は、文人カフェで芝居をしながらバーテン稼業、同じ店でムラーツが演奏していたという若い頃からの飲み友達でした。
 ハベル前大統領のジャズ好きは有名で、ビル・クリントンが米大統領としてチェコを訪問した時はサックスをプレゼントし、一緒にジャズ・ライブを楽しんだとか。
praha_castle.jpg 現在のクラウス大統領は、自らピアノをたしなむジャズ・ファンです。大統領府のプラハ城で「Jazz na Hradě (ジャズ アット プラハ城)」と銘打つ定期コンサートを開催し、内外の一流ミュージシャンを招き、自らMCを務めるという徹底ぶりです。
 このベースが最後に出演したコンサートは、このプラハ城、共演者はハンク・ジョーンズ(p)でした。
 ナチスやソ連占領など、古代から歴史的苦難の多いチェコの人々にとってジャズは、自由と民主主義の象徴!
 日本にやってきたベースは、民主化政権の拠点であるプラハ城でスイングしながら、「自由」の幸せ聴衆と共に謳歌した由緒正しい名器だったのです。
 1800年代にドイツで製造されたこの楽器は、いわゆる「オールド」と呼ばれるものですが、名工房のラベルはありません。でも、巨匠ムラーツが何千というベースから選び抜き、長らく愛奏することによって、その体を余すところなく震わせて演奏者に応える楽器になったのです。そして、ピアノにせよベースにせよ、木でできた楽器には魂が宿ります。
 素晴らしい演奏者に心をこめて演奏されると楽器の魂が輝きます。OverSeasでトミー・フラナガンやサー・ローランド・ハナが演奏した後は、ピアノのサウンドが輝きを増し、ものすごく良く鳴ります。寺井尚之も調律の川端さんもそれを「奇跡」と言います。「ピアノが喜んでいる」としか思えない音色になるんです。逆もまた真なり。大切にすればするほど、楽器の情が深くなり、喜んだり悲しんだりするものです。
george_mraz_04_milano2008.jpg ムラーツが故国のお城で演奏する喜び、歴代大統領の感慨、一般市民の楽しさがこもった楽器、今回の嫁入り騒動中、実は嫁入り先を日本に決めたは、ムラーツ兄さんではなくて、この楽器自身だったのでは・・・と思ったこともありました。
 新しいベースのオーナーは、何よりもまずムラーツが大好き、これからはムラーツ以上に愛し続けてくれることでしょう。彼は現在、彼女の類い稀なサウンドバランスに惚れ惚れしている様子です。
 素晴らしいマッチング、ジョージ・ムラーツも3月にNYでカムバックが決まっています。きっと来日して、このベースに再会する日が来ることでしょう。
どうぞ末永くお幸せに!
CU

ジョージ・ムラーツ、ベースの嫁入りとカムバックのご報告

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  寺井尚之がHP上で告知していたジョージ・ムラーツさんの秘蔵ベースの件、良縁に恵まれ日本に嫁入りが果たされました!
 夏の楽旅で負傷し、高額な治療費用を捻出するために「愛器を日本の方に」と願ったムラーツさん、その願いをブログやTwitterやフェイスブック…様々な伝達方法でお声掛けくださった皆様、ご心配やお見舞いメールを下さったファンの皆様、本当にありがとうございました。ムラーツさん共々、心より感謝しています。数か月に渡りご心配をおかけしましたが、やっと良縁が決まりました。嫁ぎ先は、神奈川県在住のベーシスト。ムラーツの音楽をこよなく愛し、クラシックとジャズの両方で活躍されている心優しいサムライです。
 12月中旬にトントン拍子に話がまとまり、これでOverSeasのミッション完了!と喜んだのですが、ムラーツ兄さんから、運送&支払完了まで、引き続き言葉の面倒を見るように指令が来て、それからが大変!
mraz_terai.jpg まず、運送を安全かつ経済的に行う為には、空輸とハードケースと保険が大前提ということになりました。当初のプランは、NYでムラーツが持っている上等のハードケースを一旦自費でプラハに送り、梱包するというものでしたが、なにせミイラの棺桶!空輸なら大変なコスト、船便なら大変な時間のロスがあることを認識。現地で中古ケースの調達を試みたものの、頼みにしていたプラハの友人ベーシストはあいにくツアー中。
 また運賃は、個人で運送業者に依頼すると、法外な金額になることが判明。買い手の方に負担をかけぬよう、これもジョージ・ムラーツが色々苦心して、チェコの友人の会社に代行してもらうことにしました。ハードケースを捜したり、万全の保険の手配をしたり、普段の楽旅ならすべてのアレンジはプロモーターにまかせっきりのベースの巨匠が、一人で手配するのはさぞ大変だったでしょう。
 慌てふためくうちに、チェコ民主化のシンボル、ハベル元大統領(ムラーツの友人です。)が逝去され、チェコ全国民が喪に服することになり、クリスマスの長期休暇を目前に、銀行も会社も業務がストップしてしまったんです。このまま新年まで街は休止状態かも…「どないしょう!!」寺井尚之とジョージ・ムラーツ、プラハの関係者、そして買ってくださった方の間でメールや文書のやり取りが続き、まるでタモリの4か国連合麻雀です。
 その時の兄さんの慌て方は、ステージ上のクールな演奏ぶりからは想像もつかないほどでした。NYから夜討ち朝駆けのマシンガン現状報告、長文メールも要約すれば、「俺は一番中起きて頑張ってるのに、段取りがつかん!どないしょう?!」というものだったのですが、結局、私の翻訳作業も24時間体制…。
 でも、ムラーツさんの慌てぶりは、本当にうれしい事でした。なぜなら、予約金のみの受領で楽器を搬出すると固く決めていたのです。「もしも残金が振り込まれなかったら」なんて全く想定せず、新しい持ち主のために、指板もネックも新品に交換して「とにかく年内に届けてあげたい!」と思っていたから焦ったのです。
 言っておきますが、兄さんは、単なるお人よしではありません。チェコの民主化運動に対するソ連の弾圧を潜り抜け、ジャズに命を懸け、すべてを捨てて米国に逃れた人です。ムラーツは、こんなに日本人を信用してくれてるんだ!そう思って、寺井尚之と大喜びしました。後から伺ったのですが、嫁入り先もその気持ちを察し「日本人として恥ずかしくない態度を取らねば!」と肝に銘じたそうです。義侠の兄弟、ジョージ・ムラーツと寺井尚之、ベースのご縁を結んだ方も同じような心根の方だったのが不思議ですね。
 ベースはフランクフルト、パリを経由して1月6日に神奈川に到着!
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 新しいご主人の感想です。
 「オールド・ドイツというよりも外観も音もイタリアンに近いおとなしめの深い鳴りをするベースでした。やはりムラーツ氏の審美眼、好みが反映されているようです。」
 「弾くたびにどんどんとその本領を発揮してきています。なんといっても1から4弦のバランスがすばらしく統一されているので非常に弾きやすい楽器になってきています。
1・2弦がうなる楽器というのは非常に珍しく理想的です。」

 海を越えたベースのお嫁入り、新しいご主人も、ムラーツさんも、本当に良かったです!
324_georgemraz.jpg<ジョージ・ムラーツのカムバックが決まりました!>
 そして、もう一つGOOD NEWS!ジョージ・ムラーツのカムバックが3月に決まりました!
 丁度、一昨日VISAの手続きで帰国しているジョージ・ムラーツの弟子&アシスタント、石川翔太君によれば、ムラーツは順調にリハビリを続け、傍目には普通通り楽器を触れる程度まで回復しているそうです。
 3月23、24日の二日間、NYリンカーンセンターのアレン・ルームで開催される、偉大なるテナー奏者たちに因んだ特別コンサート”The Music of the Tenor Masters”に出演が決まりました。メンバーはジョー・ロバーノ、ベニー・マウピン(ts)、ケニー・バロン(p)、ルイス・ナッシュ(ds)とムラーツ。
 地元NYのこじんまりした会場で、なおかつ一流の演奏場所ですからカムバックには最適ですね。地元のみなさんは、ぜひ応援に行ってください!
 石川翔太君は昨日OverSeasでプレイしましたが、ムラーツの弟子は肩書きだけではありません!驚くほど沢山のことを師匠から吸収しているのがわかりました。石川君は未来のジャズ界を背負って立てる逸材です!
 約一か月の日本滞在中、元師匠の鷲見和広、先輩の宮本在浩など、皆に会いに時々遊びに来るそうですから、ぜひ聴いてみてくださいね!
 ジョージ・ムラーツさんにも、皆さまにも、今年はずっと良い年になりますように!
 寺井尚之からのご報告は、土曜日のジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」で改めて。
CU

コルトレーン クロニクル 写真で辿る生涯

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コルトレーン・クロニクル / 写真でたどる生涯
藤岡靖洋 (著) / 菊田有一 (編集) DU BOOKS刊 ¥3.800

 皆さんはジャズ・フォトグラフィーはお好きですか?
 私が著作のお手伝いをしている世界的ジョン・コルトレーン研究家&コレクター、Mr. Fujiこと藤岡靖洋氏は、写真蒐集もハンパでなく、チャック・スチュワートやフランシス・ウルフなど著名写真家の名作から、ジャズメンが個人的に所蔵しているスナップまで、途方もない資金をつぎ込んだ膨大なコレクションをお持ちです。今回、貴重なコレクションから、藤岡さん自身が選りすぐった200点余りの作品が一冊の本になりました。
 題して『コルトレーン・クロニクル 写真で辿る生涯』
 紙も印刷もいかにも上等!さしずめNYならパークAve.の、ちょっと気取ったリッツォーリ書店に並べれば似合いそうな豪華本、でも豪華なだけではありません。コルトレーンの40年余りの生涯を目で辿れば、ジャズ界の移り変わりが一目瞭然!コンサートのチラシや、チケットなどがさり気なく挟まれ、何でもかんでもスクラップしていた子供の頃の楽しさと、シリアスなドキュメンタリーの視線が同居していて、コルトレーン・ファンでなくとも、ページをめくるのが楽しい本になっています。
 小学校のクラス写真から始まり、ディジー・ガレスピー楽団でのアルト奏者時代、チャーリー・パーカー、マイルズ・デイヴィス、キャノンボール・アダレイなどジャズ史を彩ったスターたちとの共演ショット、代表アルバムの録音風景、プレイバックに耳を傾ける少し疲れた顔にも、深い味わいがありますね。世界初公開という貴重なショットにびっくりしたり、お馴染みのチャック・スチュワート作品は、印刷画質の素晴らしさで、新しい印象を受けました。年を経て変わる面構えと眼光は、コルトレーンが背負っているものも、時代と共に変化していることを教えてくれます。
 レイアウトやキャプションなど細部まで凝った仕上げは編集のおかげかな?藤岡さんとチームを組む編集者は素晴らしい方ばかりと、つくづく感じました。
 ベストセラー、「ジャズの殉教者」(岩波新書)を読まれた方は、見覚えのある写真も改めてクリアに観れるので、楽しさ倍増でしょうね。
 岩波新書「ジャズの殉教者」では、コルトレーンが小学生のときに作った「黒人の歴史」というスクラップ・ブックのことが書かれていました。私はラッキーなことに、そのコピーを閲覧させていただいたことがあります。かつて奴隷であった自分達の歴史から始まり、その当時、様々な分野で活躍していた黒人のヒーローたちを、写真や新聞記事の切り抜きと手書きの解説で、語っていくという、それは素敵なものでした。『コルトレーン・クロニクル』に一貫して漂う少年の視線は、このスクラップ・ブックと不思議に似通っています。
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 『コルトレーン クロニクル 写真で辿る生涯』は、NYのディックス・ヒルズにあるコルトレーン・ホーム記念館のオフィシャルブックに指定されるそうです。
 こんな豪華な本を、たった3,800円という値段で出版してくださったDU BOOKSに感謝!全部売れても赤字らしい・・・
 藤岡さんの言葉を借りるなら、「こんな贅沢なもん、買わな損でっせ!」
 お求めは書店のほかディスクユニオンさん澤野工房さんなどで。
 OverSeasでも閲覧できますのでぜひどうぞ!
CU

謹賀新年


 あけましておめでとうございます!
 OverSeasは今日からスタート!
 1月6日(金)の鉄人デュオが初ライブ、7日(土)はSuper Fresh Trio 坂田慶治(b)、今北有俊(ds)、若手&ベテランでもさらに上を目指す上り竜、寺井尚之(p)の組み合わせをお楽しみに。
 1月8日(日)は、正午より、新春ジャズ、DVDセミナー!往年のカウント・ベイシー楽団や、エラ・フィッツジェラルド&トミー・フラナガン3 @モントルー・ジャズフェスティバル、お正月に相応しい名演で、ジャズの楽しみを極めます。
 寺井尚之は辰年の年男!今年もOverSeasをどうぞ宜しくお願い申し上げます。
CU