寺井尚之”メインステム” NEW動画UPしました。

 雨が上がり、大阪は爽やかな秋の日です。
 大好評の寺井尚之”メインステム”の新しい動画二題、YoutubeにUPされています。
 ひとつめは、「寺井尚之ジャズピアノ教室」の課題曲Ⅱ、“My One & Only Love”、絶対にブレない頭部と、絶対に鍵盤を押し込まず、一番美しくサウンドするツボを心得たソフトタッチ!背筋と腕を巧みに使う奏法は、「ピアノは指で弾くものではない。」という名言を思い出します。

 もうひとつは、バド・パウエル的秘伝奏法、“Strictly Congfidential”、バド・パウエルが残したレコードを聴かれると、パウエルはハードなタッチのピアニストだったと誤解される方がいらっしゃるかも知れませんが、実際は、アート・テイタムやテディ・ウイルソン、トミー・フラナガンたち同様、非常にタッチの美しいピアニストでした。
 端整なサウンドと、バップならではの疾走感を生み出すシフト・チェンジの面白さが、コンパクトな演奏に凝縮されてます。

 宮本在浩(b)+菅一平(ds)リズム・チームが映ってないのが非常に残念ですが、生なら観れますよ~
 ぜひライブにおいでになって、本物を味わってくださいね!
CU

9/18(土) 寺井尚之メインステム! 予告プログラム

 にわか雨、通り雨、小雨、大雨・・・昨日から大阪は色んな雨が降り、酷かった夏の疲れを洗い流し、また少し秋に近づいた気分・・・
 9月は一回のみの寺井尚之”The Mainstem”ライブ:宮本在浩(b)、菅一平(ds)は今週の土曜日!
 予定プログラムをUPしておきますね。

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1. Let’s レッツ (Thad Jones)
2. Beyond the Bluebird ビヨンド”ザ・ブルーバード”(Tommy Flanagan)
3. Strictly Confidential ストリクトリー・コンフィデンシャル (Bud Powell)
4. Warm Valley ウォーム・ヴァレー (Duke Ellington/Bob Russell)
5. Bouncing with Bud バウンシング・ウィズ・バド (Bud Powell)
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1. Yours Is My Heart Alone 君は我が心のすべて (I.Herzer,F.Loehar,B.Loeher)
2. Love, Your Spell Is Everywhere ラブ・ユアスペル・イズ・エヴリホエア(Edmund Goulding/Elsie Janis)
3. Love You Madly ラブ・ユー・マッドリー (Duke Ellington)
4. I Didn’t Know About You アイ・ディドント・ノウ・アバウト・ユー (Duke Ellington)
5. Cup Bearers カップ・ベアラーズ (Tom McIntosh)

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1. That Tired Routine Called Love ザット・タイアード・ルーティーン・コールド・ラヴ (Matt Dennis)
2. Maybe September メイビー・セプテンバー (Ray Evans, Percy Faith & Jay Livingston )
3. Stablemates ステイブルメイツ (Benny Golson)
4. I’ll Keep Loving You アイル・キープ・ラヴィング・ユー (Bud Powell)
5. Our Delight アワ・デライト (Tadd Dameron)

let's.jpg オープニングのLet’s から、ラストはOur Delight ・・・サド・ジョーンズに始まり、タッド・ダメロンで締めくくる。そして間にはエリントニアが・・・超ハードな選曲ですね!「プログラムは諸事情により、予告なく変更されることがありますのでご了承ください。」と書いておいたほうがいいような・・・
bennett_movie_song.jpg 「旬」な曲は”Maybe September”、『Confirmation/トミー・フラナガン3』や、フラナガン音楽監督時代のトニー・ベネット作品『Movie Song Album』が忘れられませんね!Yes! 昔は「映画音楽」というジャンルがあったんだ!”Maybe September”は、’66年の映画「オスカー」の音楽。映画界の内幕を描く映画で、ベネットも出演してました。
picasso-6.jpg エリントニア”Warm Valley”は、アメリカ音楽を代表する二人の天才音楽家、エリントン+ストレイホーンの共同作業の典型と言われています。デューク・エリントンがオレゴン州楽旅中に眺めたカスケード山脈に、まるで横たわる女性のヌードのようなエロスを感じたエリントンが曲想を思いつき、NYにいるストレイホーンがジョニー・ホッジスの官能的なアルトを想定しながら仕上げたそうな・・・携帯電話やネットなどない時代、二人の天才は長距離電話でどんなやり取りをしたのでしょうか?ピアノトリオであるメインステムが「サウンド・オブ・ミュージック」とジミー・ヒースが呼ぶ、ホッジスの官能的な音色や、エリントンの分厚く深いサウンドをどのように表現してくれるのかが楽しみですね!
 バップの疾走感や、エリントニアの独特の浮揚感、スタンダードやクラシック歌曲まで、カラフルな、寺井尚之ピアノ・トリオ The Mainstemのライブは18日(土)7pm開演!
 お勧め料理は、おいしくなってきた鳴門金時や根菜をあしらった、ポークのクリーム・ソースを作ろう!
CU

メインステム動画追加!

 昨日のジャズ講座、ジミー・ヒースやペッパー・アダムス、サックスの名演と解説が楽しかったですね!
kamonasu_special.JPG 加茂ナス料理や八丁味噌を隠し味に使ったボローニャ・ソース作りでヘトヘトになったけど、「おいしい!」って言ってもらえて嬉しかった~
 日曜日、私がヘトヘトになっている間に追加されてました!先日ご紹介したメインステム動画のコンプリート・ヴァージョンです。
 先日UPしたハイライト・ヴァージョンが思った以上に好評だったので、OverSeas撮影部が、定期的に動画をUPする計画中。


1. Syeeda’s Song Flute (John Coltrane)  サイーダス・ソング・フルート
2. Central Park West (John Coltrane) セントラルパーク・ウエスト
3. High Seas (Kenny Dorham) ハイ・シーズ
4. I Cover the Waterfront (Edward Heyman / Johnny W. Green) 波止場に佇み
5. Manteca (Dizzy Gillespie)  マンテカ
Encore: Easy to Remember (Richard Rodgers Oscar Hammerstein II ) イージー・トゥ・リメンバー

 YAS竹田(b)もハイライト動画を観てくれて、「I Cover the Waterfront」が良かったと、NYからメールくれました。「男はつらいよ」のイントロ判ったかな?私のお気に入りは、上に貼り付けたHigh Seas、KDの曲はいつも大好きです!
 路地裏から愛を込めて!でもライブの方が絶対良いですからね!次回メインステムは9月18日(土)です。来てね!
CU

寺井尚之”メインステム”動画!

 一昨日の発表会で、寺井尚之の講評を初めて聴かれた皆様は、生徒達への厳しさと愛情と共に、トミー・フラナガンに代表される、ソフトタッチで倍音の豊かな広がりのあるピアノ本来の「響き」をどれだけ大事にしているかを感じられたようです。
 OverSeasに寺井尚之を聴きに行きたいけど、なかなか行けないという皆様のために、メインステムのライブを密かにI-phoneで撮影していた方がいらっしゃったようです。8月21日(土)のメインステム、3rdセットのハイライト・シーンが動画でyoutubeにUPされてました。
 残念ながらピアノの後姿しか映ってません。ザイコウ+イッペイファンの皆さん、ごめんなさい! ピアニストは上体がほとんどブレずに、指や腕でなく、背中で弾いているのがよく判りますね!倍音の広がりは圧縮されてしまっているけど、なんとなくわかるかな?対訳ノートに書いた”波止場に佇み“も少しだけ聴けますよ!
 路地裏で階段は少しありますが、決して初めてのお客様でも敷居は高くありませんよ!ぜひ一度大阪名物の、”生”寺井尚之、”生”メインステムを聴きに来て下さいね!
CU

対訳ノート(29)波止場に佇み:I Cover the Waterfront

 「残暑お見舞い」には、あまりにも暑い毎日、シャワーを浴びないと一日は始まりません。皆様いかがお過ごしですか?
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 今日はメインステムが土曜日に演奏予定の名曲“波止場にたたずみ”について書いてみたいと思います。
<歌のお里>
 ジョニー・グリーン作曲、エドワード・ヘイマン作詞、ポップ・ソングとして“I Cover the Waterfront”が書かれたのは1933年のこと。このコンビの最大のヒットはビング・クロスビーが歌った”Out of Nowhere”ですが、Interludeを読んで下さる方なら“Body & Soul”の作者であることはもうご存知かもしれませんね。
 この歌は当時のベストセラー小説のタイトルにあやかって作られました。小説の“I Cover the  Waterfront”は、文字通り”沿岸警備”で、新聞記者出身の作家、マックス・ミラーが書いたロマンチック・ミステリー、中国系移民の密航事件を追う新聞記者が、犯人の美しい娘と恋に落ちながらも、果敢に真実を追及していくというストーリー、ミラー自身が長年港湾関係の取材で鳴らしたジャーナリストだったので、リアルな描写と歯切れの良い文章が受け、すぐに映画化されこれも大ヒット。歌はストーリーとは余り関係ないけど、先行ヒットしていたために、映画の中でも使われています。深夜映画のないこの時代、ネットでこの映画も観ることが出来ます。ただし字幕はなし。
<帰還兵を待つ歌として>
Image-BillieHoliday.jpg この歌が再び愛され、小説や映画より長く記憶に残るようになったのは第二次大戦後のことです。波止場に佇み待ちわびるのは、外地に出征した恋人や夫でなくとも、息子や兄弟、友人であったかも知れません。日本にも『岸壁の母』という歌謡曲がありましたが、戦争の勝ち負けは別にして、戦争に巻き込まれた人々の心は同じであったでしょう。ビリー・ホリディのカーネギー・ホールでのコンサート(’47)で”I Cover the Waterfront!”と大きな掛け声がかかるのが思い出されますね。
 ちょうど現在ジミー・ヒース(ts)の自伝を読んでいるのですが、大戦直後ジミーが所属していた楽団の歌手も、頻繁に“I Cover the Waterfront”を歌っていて、それをふざけて物真似したジミーが、当の歌手にあやうく撃ち殺されそうになったという、イチビリな私にとって非常に恐ろしいエピソードが書かれていました。
 かつて”水辺にたたずみ”とも邦題表記されていましたが、この歌の舞台が「水辺」ではなく「波止場」であることは、ヴァースを読めば明らかですよね。そして、歌詞を読めば”Cover”という動詞が決して、沿岸警備隊や警察のように、波止場の周辺をくまなく捜査するというニュアンスでなく、ひっそりとした夜の港にじっと立ち続け、海の向こうにいる大切な人に語りかけている歌であることがわかると思います。

I Cover the Waterfront
波止場に佇み

原詞はこちらに
Edward Heyman詞、Johnny Green曲
(Verse)
人を傷つけ嘲る都会を離れ、
ひっそりした凍てつく夜、
荒涼とした波止場に独り佇む。
見えるのはどこまでも続く水平線だけ。
心は痛み、石のように重苦しい。
日が昇ると、少しは軽くなるかしら?
(Chorus)
私は波止場に佇み、
海に目を凝らす。
愛する人は
帰って来るの?

波止場に佇み、
恋人を捜す、
見上げれば
星のない夜空。

私はここよ、
辛抱強く待ちわびる

はかない希望に全てを託し、
あなたを想って待っている。
なんと切ないことでしょう!
あなたは今どこ?
私のことなど忘れたの?
どうぞ覚えていてほしい。
戻ってくるの?戻って来てよ。

私は波止場に佇んで、
ひたすら海を見つめてる。
愛する人が戻って来ないかと。
どうぞ戻ってきて…

 切ないな!
 アレック・ワイルダーは、この歌を「切々と感情に訴えかける佳作」と書いていた。
「待てば海路の日和あり」と言うけれど、待つのは本当に辛い。恋人を待つのも、OverSeasでお客様を待つのもご同様。でもロマン派=寺井尚之がこの曲を料理すると、希望の星がひとつ、ふたつと灯って、心が癒されるかも知れません。
 土曜日のメインステム、どうぞご期待ください。
 お勧め料理は、ちょっぴりエスニックに、生春巻きと熱い春巻きの盛り合わせにしようと思ってます。
CU

8/21(土) 寺井尚之”The Mainstem”:予告プログラム

mainstem2.jpg 夏休みはゆっくりできましたか?お盆も終わりビジネス街に喧騒が戻ってきました。今週(土)は、寺井尚之トリオ”The Mainstem”で、一緒に夕涼みしましょう!
 上昇気流に乗るメイン・トリオの演奏曲目を一挙予告!


1. Bitty Ditty (Thad Jones) ビッティ・ディッティ
2. A Blue Time  (Tadd Dameron) ア・ブルー・タイム
3. Scratch (Thad Jones) スクラッチ
4. Good Morning Heartache  (Irene Higginbotham/ Ervin Drake/ Dan Fisher)グッドモーニング・ハートエイク
5. Minor Mishap (Tommy Flanagan)マイナー・ミスハップ

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1. Moon & Sand (William Engvick/Alec Wilder) ムーン&サンド
2. Don’t Blame Me (Dorothy Fields / Jimmy McHugh) ドント・ブレイム・ミー
3. Dacquiri (Joe Newman) ダイキリ
4. If You Were Mine (Johnny Mercer / Matt Malneck)イフ・ユー・ワー・マイン
5. Rachel’s Rondo (Tommy Flanagan) レイチェルのロンド

1. Syeeda’s Song Flute (John Coltrane)  サイーダス・ソング・フルート
2. Central Park West (John Coltrane) セントラルパーク・ウエスト
3. High Seas (Kenny Dorham) ハイ・シーズ
4. I Cover the Waterfront (Edward Heyman / Johnny W. Green) 波止場に佇み
5. Manteca (Dizzy Gillespie)  マンテカ

Joe's Hap'nin's.jpg 残暑を和らげる素敵な小品、2-3の“Dacquiri”はキューバ生まれのカクテル、カウント・ベイシー楽団の名トランペッター、ジョー・ニューマン作の甘く涼やかな曲をお楽しみに!
 過ぎ行く夏に似合う曲は、何と言っても2-1の“Moon & Sand”、熱さと冷たさの入り混じった幻想的な夏の夜の砂浜、アレック・ワイルダーの世界を満喫してください。歌詞などについてはこちら!
 「海」に因んだ寺井尚之の名演目は3rdセットにも!ケニー・ド-ハムの“High Seas”でハードバップの醍醐味を、”波止場に佇み”ではロマン派寺井ならではの演奏解釈をお楽しみください。
John_Coltrane.jpg 予備校時代の夏に、たまたま涼みに入ったジャズ喫茶でジョン・コルトレーンを聴いた瞬間にジャズに心酔した寺井尚之、以来コルトレーンは寺井的「夏の季語」、2-1,2-2ではコルトレーンが非常に優れた作曲家であったことが再認識できそう!
ats.jpg 因みにKDの“High Seas”やトレーンの”Syeeda’s Song Flute”は菅一平(ds)が崇拝するアーサー・テイラー(ds)のリーダー作、『AT’s Delight』にソリッドな名演が収録されているので、更に楽しみ。音色や音程がぐっとクリアになった宮本在浩(b)のビートは、ラスト・チューンの”Manteca”で炸裂する予感です。
 カーメン・マクレエ講座で聴いた究極のトーチソング(2-4)も、ばっちりプログラムに入ってます!歌詞を聴かせるピアニスト、寺井尚之の演奏解釈が楽しみですね。
 暑さを忘れさせてくれる涼しげな曲、花火の様に鮮烈な夏の曲、過ぎ行く夏を惜しむ曲、夏の様々な心象風景を、デトロイト・ハードバップと共に、どうぞお楽しみください!
8/21(土) :寺井尚之3”The Mainstem” 宮本在浩(b)、菅一平(ds)
Live Charge  2,625 yen(入替なし、要予約)

トリビュート・コンサートにありがとうございました!

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 土曜日のトリビュート、お忙しい中、沢山駆けつけてくださってどうもありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
 2002年より、フラナガン誕生の3月、逝去の11月と、年2回定期的に開催してきましたが、3月でこれほど寒いトリビュート・コンサートは初めて、帰り道は真冬みたいでした。
 寺井尚之はトリビュートの前になると、修行と言ってもいいほど稽古をします。OverSeasのピアノは寺井が稽古すればするほど、調子がよくなって、調律の川端さんが舌を巻くほど。全体のサウンドが整って、しっとり潤いに満ちた音色を出すようになるんです。その端正さはちょっと怖いくらい。楽器は「生き物」に違いない・・・谷崎潤一郎なら一篇の短編小説が書けるかも知れません。
 The Mainstemのピアノ・トリオとしての演奏も、トリビュート・コンサートの回を増すにつれ充実してきました。宮本在浩(b)、菅一平(ds)はアドリブ・ソロも寺井尚之に負けじとたっぷり仕込みがありましたが、このリズム・チームの秀逸さは、個人技を優先することなく、「フォア・ザ・トリオ」で、曲やメドレー全体の起伏を見据えて、強力なダイナミクスを構築してくれるところ!トミー・フラナガンへのリスペクトがすべての演目に感じられる爽快なプレイだった!コンサートのCDRを作りますのでご希望の方は当店までお問い合わせください。
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 今回の演目はメインステムによるトリビュート初登場の”Con Man”で始まり、”Eclypso”などフラナガンのオハコや名メドレーもたっぷり、春のトリビュートのお楽しみ「スプリング・ソングス」として、ロジャーズ・ハートの”Spring Is Here”、”Sleepin’ Bee”が鮮烈な印象を与えました。
 掛け声も最高!最高のお客様の前で、トミー・フラナガンに捧げるコンサートが出来るって、本当に幸せなことです。
<第16回 トリビュート・トゥ・トミー・フラナガン コンサート曲目>
1. The Con Man (Dizzy Reece)
2. Out of the Past (Benny Golson)
3. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)
4. Embraceable You ~Quasimodo
5. Mean Streets(Tommy Flanagan)
6. Some Other Spring (Arthur Herzog Jr./ Irene Kitchings)
7. Minor Mishap (Tommy Flanagan)
8. Dalarna (Tommy Flanagan)
9. Eclypso (Tommy Flanagan)

1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)
2. They Say It’s Spring (Marty Clark/Bob Haymes)
3. A Sleeping Bee (Truman Capote/ Harold Arlen)
4. Spring Is Here (Richard Rodgers/ Lorenz Hart)
5. Rachel’s Rondo (Tommy Flanagan)
6. I’ll Keep Loving You (Bud Powell)
7. Tin Tin Deo (Chano Pozo, Gill Fuller, Dizzy Gillespie)

With Malice Towards None (Tom McIntosh)
Ellingtonia:
A Flower Is Lovesome Thing (Billy Strayhorn)
Chelsea Bridge (Billy Strayhorn)
Passion Flower (Billy Strayhorn)
Black and Tan Fantasy (Duke Ellington)

 曲説は後日HPにUPいたします。その前にジャズ講座の対訳を作らないといけないのでしばしお時間を。キム・パーカーはヴォーカリーズや、ややこしいオリジナルがあって、ほんまに手ごわいです。ジャズ講座新学期のラインアップもUPしていますので、ご興味があれば覗いてみてください。初受講の方も歓迎です。
CU

トリビュート・コンサートの前に、スプリング・ソングスの話をしよう!

対訳ノート(26):Spring Is Here
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 春の兆しはあるけれど、今週は雪や雨や雷、それに強風!先日、雨宿りにデパートに寄ったら、ホワイトデーのプレゼントを買う為に並ぶ紳士の行列があちこちに…なんとランジェリー売場にも男性が・・・皆さま、いかがお過ごしですか?
 春のトリビュート・コンサートが近づくと、ウィークデーのOverSeasに沢山のスプリング・ソングが響き、外は寒くても、ウキウキ気分になります。でも、今日はふきのとうみたいに、少しほろ苦いスプリング・ソングを。
Spring Is Here>
 ともすればエバンス派のオハコと思いがちな<スプリング・イズ・ヒア>も、デトロイト・ハードバップ・ロマン派の寺井尚之(p)が演奏すると、一味違う。”The Mainstem”が聴かせるヴァージョンは、冒頭の混合ディミニッシュ・コードの響きだけで、美しくも哀しい歌詞の内容が一瞥できる。かつてトミー・フラナガン3がNYのジャズクラブ「スイートベイジル」で、4月にスプリング・ソングとして演奏したヴァージョンを基にしているのだとか。あの有機的なハーモニーは、紛れもなくデューク・エリントン!エリントン的なるものはトミー・フラナガンや寺井尚之ミュージックの至る所に隠れていますね。
<歌のお里>
 <スプリング・イズ・ヒア>のお里は、1938年のブロードウェイ・ミュージカル『I Married an Angel 私は天使と結婚した』、プレイボーイの銀行家が婚約解消の際に「天使としか結婚しない」と宣言したら、ほんとに美人の天使がやって来て結婚したのはいいけれど…というコメディーです。数年後に映画化されていますが、その際に歌われる<スプリング・イズ・ヒア>は曲想も歌詞も春爛漫のハッピーな歌曲に替わっていて、ちょっとがっかり・・・
Rodgers_and_Hart_NYWTS.jpg 作曲:リチャード・ロジャーズ(左)、作詞:ロレンツ・ハート(右):リチャード・ロジャーズがロレンツ・ハートと出合ったのは16歳の時、そのままコンビでソングライターの世界に入り、25年間の永きに渡って共作を続けましたが、やがて戦争が始まり、ハートの洒落た作風は軟弱と見なされ、時流から外れて行きます。ハート自身もアルコールに溺れて仕事に支障をきたすようになり、42年にコンビ解消、ロジャーズはオスカー・ハマーシュタインⅡ世と『オクラホマ』や『サウンド・オブ・ミュージック』など、健全な名作をどんどん創り、新たな局面に邁進。一方ハートは’43年に48歳の若さで失意のうちに亡くなりました。My Funny ValentineThe Lady Is a Tramp, Blue Moon, Bewitched etc…二人が生み出した名曲は数知れず…どれも甘くてほろ苦い味わいの粋な歌曲ばかりです。ポピュラー音楽の中ではこのコンビが、私の一番のお気に入りかも知れません。
 “春が来たのに私の胸は躍らない、それは誰にも愛されないからかも。“ 寂しい心を歌うラインに、一番インパクトの強いせり上がるメロディをつけている辺りが、ロジャーズ+ハートの凄さかな。原歌詞はこちら。

“スプリング・イズ・ヒア”
Richard Rodgers and Lorenz Hart
VERSE
あなたや私がそうだったように
世界中が詩を紡いだ頃、
たしか「春」ってあったよね。
小さなテーブルで差し向かい
二人で春の甘いお酒を飲めば、
男も女も若者は皆高らかに歌ったよね。
4月、5月、6月・・・時が経つにつれ、
寂しい調子に変わる。
人生が、幸せの風船に針をつき刺した。

CHORUS
春が来たよ!
なのに心は躍らないのは何故?
春が来たよ!
ワルツが素敵に思えないのは何故?
欲しいもの、したいこと、
私には何もない。
誰にも必要とされていないせいかな。

春が来たよ!
なのにそよ風が嬉しくないのは何故?
星がまたたき始める、
何故に夜は心を誘わない?
多分誰も愛してくれないせいだよね。

春が来た・・・らしいね!

 アレック・ワイルダーの著書American Popular Songを読むとこんな風に書いてありました。(p.209)「歌詞もハートらしさが出た秀作、特にクロージング・ライン”Spring is here, I hear!( 春が来た・・・らしいね)”は、彼自身の考え方が、皮肉っぽく凝縮されている。」
 <スプリング・イズ・ヒア>はロジャーズ+ハート共作期終盤の作品、ロレンツ・ハートが亡くなる5年前に書かれたものだそうです。戦争が影を落とす世の中に、調子を合わせることが出来ないハートの苦しみが見え隠れして、一層この曲が身近に感じられます。
 第16回トリビュート・コンサートは3月27日(土)、その時分にはもっと春めいているかしら?
 13日(土)のジャズ講座は、リリアン・テリー&トミー・フラナガンの名盤、『A Dream Comes True』登場!ビリー・ストレイホーンの名曲など対訳どっさり作りました。リリアン・テリーはイタリア人だけど、ちゃんと歌詞解釈があるのがエライです!
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 当日はビーフストロガノフを作ってお待ちしています!
CU

対訳ノート(25)Speak Low

 寒い日が続きますが、日差しは春が近くに来ていることを教えてくれます。東京方面は雪だったそうですが、皆様いかがお過ごしですか?先週のジャズ講座は、とっても盛り上がりました。『The Magnificent』(トミー・フラナガン3)には別テイクが沢山公開されていて、テイク数の推理は寺井尚之ならではの説得力がありました。師匠への愛に溢れる激辛トークがどうにもとまらなくなって、あやうく最終新幹線に乗り遅れそうになったお客様も…間に合ってよかった!
speak low.jpgジョージ・ムラーツ(b)、アル・フォスター(ds)時代のトミー・フラナガン3の作品、”The Magnificent”は「品格あるもの」という感じかな?日本盤のタイトルは”Speak Low”です。
<Speak Low 歌のお里>
 “スピーク・ロウ”は、OverSeasのライブの定番として長らく聴いてきました。時たま、バーや居酒屋と間違えて来られたお客様たちが演奏中にワイワイ騒ぐと、寺井尚之がこの曲を演奏して「小声で話してや~!」とアピールしていたので、長年の常連様にはとっても馴染み深いナンバーですね!
 クルト・ワイル作曲、オグデン・ナッシュ作詞の<スピーク・ロウ>のお里は、1943年のブロードウエイ・ミュージカル、『ヴィーナスの接吻 One Touch of the Venus』、美術館のヴィーナス像の薬指に床屋の青年が婚約指輪をはめると生身の美女に変身して・・・というロマンチック・ドタバタ・コメディーで、48年にきれいなエヴァ・ガードナー主演で映画化されています。ブロードウェイではヴェーナス役としてマレーネ・ディートリッヒに白羽の矢が立ったのですが、俗っぽくてお色気過剰で、舞台で脚線美をモロ出しするのは娘の教育に悪いと言って断ったらしい。
 作詞のオグデン・ナッシュは「アメリカ最高の小唄作詞家」としてつとに有名ですが、ブロードウェイでヒットしたのはこの『ヴィーナスの接吻』だけ・・・この作品では脚本も担当しています。クルト・ワイルは皆さんもよくご存知、『三文オペラ』で有名ですね。ドイツで活動していましたが、ナチのユダヤ人迫害を逃れ米国に移住した人です。数年前にInterlude に書いたことがありますが、この歌詞の冒頭、”Speak Low, When you speak love”はシェークスピアの有名な喜劇『空騒ぎ: Much Ado About Nothing 』の名セリフ、一目惚れした女性に恋を告白できない内気な親友の為、貴族ドン・ペドロが、仮面舞踏会の夜、親友になりすまし、このセリフで彼女を口説きます。
 ミュージカルについてあれこれ相談をしているとき、クルト・ワイルが何気なく引用したシェークスピアの台詞にヒントを得たナッシュが一気に詞を書き上げたと言われています。A-A-B-A形式なんだけど、小唄どころか56小節の長い歌、Aの部分が各16小節で、サビのB部分はたった8小節しかない変形サイズ。
 『The Magnificent』では冒頭の”Speak Low…”のところを、わざと朗々と歌い上げてみせるところが、いかにもフラナガン流ジョークに思えます。まるで、内緒話を大声で言ってびっくりさせようとしているみたいで可愛い!原曲はゆったりしたハバネラだけど、フラナガンはin two4beatを駆使してメリハリのある楽しい演奏解釈でした!
 映画『ヴィーナスの接吻 One Touch of the Venus』の”Speak Low”のシーンはyoutubeで観れます。オリジナル歌詞はネット上にありますが問題が多い。歌詞を勝手に載せるといけないので、こちらを三行目から読んでみてください。

Speak Low スピーク・ロウ
Ogden Nash/ Kurt Weill

恋を語る時は
小声で囁いて。
夏の日は
瞬く間に色褪せる。
恋を語る時は
ひそやかに。
二人の時は駆け足で過ぎ、
海に漂う舟の如く、
あっと言う間に離れ行く。

愛しい人よ、
ひそかに甘く囁いて、
恋は一瞬の火花、
すぐに闇へと消え去るもの。
どこにいようと、
すぐに明日は来る。

時はあまりに速く、
恋はあまりに短い。
恋は輝く純金で、
時は泥棒のように恋を奪う。

愛しい人よ、
私たちは遅れているよ、
カーテンが降りると、
全てが終わる。

私はじっと待っている、
愛しい人よ、
お願いだから囁いて、
愛の言葉を
さあ早く!

 当店の演奏中は、恋愛でも経済問題でも、常にスピーク・ロウでお願いいたします。
 土曜日のメインステムをおたのしみに!私は赤身の多い特上三枚肉と、大きな白花豆でポーク・ビーンズを作ってお待ちしています。
CU

春のトリビュート・コンサート 3月27日開催!

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 暖かくなったり寒くなったり、三寒四温というには余りに暴力的なダイナミクスですね。NYやワシントンDCは大雪で大変みたいですが、皆さんお元気ですか?今週の月曜日には昨年亡くなったディック・カッツさんの告別セレモニーがNYセント・ピーターズ教会で行われ、参列したダイアナから「ディックはNYに出て来て初めて知り合ったピアニストで友達だった。寂しい~!!こんな気持ちを判ってくれるのはあんただけ、今夜は眠れないの・・・」と涙の電話がかかってきて、私も寂しい~ 冬は心まで寒くなるのかな?春よ来い!早く来い!
 というわけで、トミー・フラナガンが誕生した3月を祝し、今年も心をこめて開催します。
『第16回トミー・フラナガン追悼ライブ Tribute to Tommy Flanagan』
日時:3月27日(土) 7pm- /8:30pm- (入替なし)
演奏:寺井尚之ピアノトリオ The Mainstem
前売りチケット3,150円(当日3,675円)

 春のNYでフラナガンが愛奏したスプリング・ソングの数々は甘さとほろ苦さが溶け合って、アップビートな春ならではの感動をもたらしてくれます。春野菜みたいにアクの強いバップ・チューンはフラナガン流に、アクを流し去り、素材の繊細な持ち味が出るように聴かせてくれます。
 演奏は寺井尚之The Mainstem、宮本在浩(b)、菅一平(ds)の演奏はJazz Club OverSeasでしか聴けません。内容は前回よりさらにスケールが大きく充実したものになるでしょう!
 チケットはOverSeasでのみ取り扱っております。お早目にお求めください!
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CU