海外ジャズメンより:震災お見舞い(4) from Stanley Cowell 

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 Dear Japanese Friends and Jazz Fans,
 My family and I extend our deepest sympathy to you and pray for you to recover from this great disaster that has happened to your country and its people. We know you are suffering and feel a great sense of loss, but do not lose faith, and please bring forth that powerful, regenerative Japanese spirit that the world has come to admire and respect.
 Although a heartbreaking disaster that you are continuing to undergo is almost unimaginable to us, I and all my musician friends in the United States are feeling your pain and suffering. I hope it will be important for you to know that we, in some incomparable way, share your pain.
 So many of us jazz artists have been guests in your country so many times over the years, and remember the hospitality you extended to us, the joyous way you responded to our music, and the many “treasures of the heart” we experienced with you. How can we not have compassion for you?
 We are relieved that many of you who were to the west of the ocean are safe. Please support your brothers and sisters who are struggling to cope with the aftermath of this devastating earthquake and tsunami.
 Our hearts are with you all and we will help you get through this. You will overcome this! Have faith!
 With compassion, determination, hope and music,
Stanley Cowell
Sylvia Cowell
Sunny Cowell
 親愛なる日本の友人、ジャズ・ファンの皆様
 日本が見舞われた大災害に深い哀悼を、また被災地の復活そして被災者皆様のご回復を、家族と共に心よりお祈りいたします。
 かけがえのない人や大切な物を失われた苦しみは、途方もなく大きいと思います。でも、どうか信念をお持ちになってください。日本人の再生力は全世界から尊敬されてきました。今その力を発揮なさってください。このような悲惨な災害が、どれほど辛いことかは、察するに余りありますが、私のみならず、米国のジャズ・ミュージシャン全員が、皆様の痛みや苦しさと共にあります。
 どうか、少しでも苦労を共有させてください。我々ジャズ・アーティストの多くが、長年に渡って、日本の皆様に大変お世話になってきました。日本で受けたもてなしは大切な思い出です。日本の皆様は演奏を心から喜んでくださいますが、それ以上に、「心の宝物」をたくさん頂いてきました。ですから、今回の災害に深い思いを抱かずにはいられないのです。
 西日本は大丈夫であったというのが、私にとってもせめてもの救いです。西日本の皆さん、どうぞあなた方のブラザーやシスター達が、震災の痛手を乗り越える手助けをしてあげてください。
 我々の心はいつも皆様と共にあります。そして我々は復興の手助けをいたします。
 きっと乗り越えることができますよ!信念を持ってがんばってください!
 心よりのお見舞いと固い決意、希望と音楽を込めて。
スタンリー・カウエル
シルビア・カウエル
サニー・カウエル

 スタンリー・カウエル(p)は新主流派を代表するピアニストと言われていますが、赤ん坊の時から、自宅でアート・テイタムの演奏を聴きながら育ちました。寺井尚之は「最もブラックなサウンドを持つ希少なピアニスト」と呼びます。私は、カウエルのライブを観て、「超絶技巧」という言葉の意味するものがわかりました。ヒース・ブラザーズ時代のレコーディングは永遠の愛聴盤です。
stanley_sunny.jpg ’80~’90年代始めは、ソロ、デュオ、J.J.ジョンソン・クインテットなどなど、ほとんど毎年来日し、OverSeasで数え切れないほどコンサートをしました。
 ’80年代に、仙台で演奏し、仙台の街や人が大好きになったそうです。その印象を曲にした“Sendai Send Off”は、繰り返しレコーディングしている愛奏曲、私も何度かOverSeasのライブで聴きました。
 メッセージに名前を連ねているシルヴィアは弁護士の奥さん、サニーはお嬢さん、ヴィオラ奏者、歌手です。最近親子でアルバムを作りました。

海外ジャズメンより:震災お見舞い(3) from George Mraz

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 I have been to Japan many times since 1972 and made many friends there. I always loved the Japanese audiences and was very distressed when I heard the terrible news about the earthquake and tsunami.
 When I saw the devastation on television I could not help myself and had to cry.
 I hope that the resilient people of Japan will be able to overcome this horrible disaster as soon as will be humanly possible and you will all be in my prayers.
George Mraz
 私は1972年以来、幾度となく来日し、おかげで日本の友人がたくさんできました。
 私の演奏を熱心に聴いてくださる日本の皆さんがずっと大好きです。
 今回の地震や津波災害の報道に、私自身ひどく苦悩しています。被災地の惨状をTVで見て、思わず号泣いたしました。
  日本人には不屈の力があると思います。ですから、この困難をきっと乗り越えることができると思っています。人事を尽くし、大きな被害から、早く立ち直られることを願いつつ、祈るような気持ちで一杯です。
 ジョージ・ムラーツ

gm20.jpg 世界に名だたるベースの巨匠、ジョージ・ムラーツについては、もう、ここでご紹介する必要はないかも知れません。上のメッセージにあるように、来日回数は、数年前に60回まで数えてから、数えることすら止めてしまい、自分でも何度来日しているのかわからないそうです。
 日本のソバが好き、しゃぶしゃぶ大好き、指圧大好きの自称マッサージ・ジャンキー。地震があって一番最初にメールくれたのもジョージ・ムラーツさんでした。東北や関東地方は、私よりもずっと詳しいですから、ニュースを観た時のショックは言い尽くせないでしょう。きっとずっとTVニュースを固唾を呑んで見守っていると思います。
 今日は改めて、被災地に心を込めたメッセージを送ってきてくれました。
 左の写真は、’73年にサド・メルOrch.で来日したときで、東海道新幹線の中のショット、サー・ローランド・ハナ(p)やジミー・ネッパー(tb)、ビリー・ハーパー(ts)も写っています。ジョージ・ムラーツの経歴は彼のHPの経歴ページから不肖私の和訳にリンクがあります。

海外ジャズメンより:震災お見舞い(2) from Jimmy Heath

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 As a Jazz Musician who loves Japan I a m heartbroken by the tragedy that has happened in your country.
 Me and my fellow musicians hope you can survive this awful time and come back stronger. You have our sympathy and condolences to those who lost love ones.
Jimmy Heath and The New York Jazz Family.

ジミー・ヒース(ts)&ニューヨーク・ジャズ・ファミリー。
  日本を愛する一ジャズ・ミュージシャンとして、今回の悲劇に胸が張り裂けるようなショックを受けています。
 私をはじめとする多くのミュージシャンが、日本の皆様がこの苦境を乗り切り、より力強く復興されることを祈っています。
 愛する人や大切なものを失った方々に哀悼の意を表します。

 テナー、ソプラノの巨匠、ジミー・ヒースはいわずと知れたヒース兄弟の一員、兄はMJQのパーシー・ヒース(b)、弟はアルバート・ヒース(ds)の天才一家。
 ディジー・ガレスピー楽団からヒース・ブラザーズまで、ジャズ史の生き証人であり、ジョン・コルトレーンに大きな影響を与えた音楽家としても知られています。昨年伝記が出版されたので抄訳も。

海外ジャズメンより:震災お見舞い(1) from Rufus Reid

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 I am in shock and saddened as the entire world is of this horrific tragedy to hit Japan. Our hearts go out with deep concern to everyone.
 My next concert will be dedicated to the welfare and safety of all the victims.
  Rufus Reid/Jazz Bassist/Composer

 今回の悲劇は、全世界にとって他所事ではありません。僕自身も大きなショックと悲しみに襲われています。僕達の心は被災された皆さんと共にあります。次の僕のコンサートは、被災された全ての方々への福祉と安全に捧げます。
 ジャズ・ベーシスト、作曲家:ルーファス・リード
 
 *ルーファス・リードは、1944年生まれの巨匠ベーシスト、作曲家。
 アーミー・バンドの一員として横田基地に駐留していたこともあって、大の日本贔屓。サド・メルOrch.、ジミー・ヒース(ts,ss)デクスター・ゴードン(ts)やフレディ・ハバート(tp)などとの共演で知られ、トミー・フラナガン(p)トリオとして80年代に来日しています。また日系人ドラマー、アキラ・タナとのコンビ、「タナリード」でも人気を博しました。
 ウィリアム・パターソン大学の学部長に就任以来、大先生の風格、作曲やアメリカ国内のコンサートが多く、来日の機会も減りましたが、一昨年冬、チャールズ・トリバー(tp)ビッグ・バンドでツアーしています。

東日本大震災 心よりお見舞い申し上げます。

 東日本大震災、被災地、被災者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 金曜日午後の地震は、大阪震度3ということでしたが、阪神大震災以来揺れました。
 帰宅してから東北地方の様子をニュースで観て、言葉になりません。東北地方はジャズを応援してくださる人が多く、寺井尚之もずいぶんお世話になっています。
 関東の皆さんからも、スーパーに食糧がないとか、交通マヒで5時間かけて帰宅されたとか、滞在先の東京のホテルのエレベーターがストップし、22階の部屋に3回休憩して帰ったとか、色んなお話を伺いましたが、皆さんが、決してグチらずに、しっかり淡々と困難に立ち向かっていらっしゃる姿をみてクールやなあと尊敬するばかり。
 亡父や親戚の多くが電力会社に勤務しており、災害時のインフラ保守に命を賭けて従事されている方のご苦労も、察するに余りあります。
 非力な私が出来ることは、とにかく自分の仕事をしっかりやること。そう思いつつ、今週のトミー・フラナガンへのトリビュート・コンサートに向けて全力を尽くします。出口の見えない状況の中、お店を開けて音楽をお届けできることのありがたさをかみ締めながらがんばります。
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3/25(金)イベント:ジャズ・ヴォーカル、対訳を見ながら楽しもう!

 皆様、お元気ですか?
sakura_buds.jpg 今頃になると、大阪の街に漂うお相撲さんの鬢付け油の香りが恋しいです。今日もなかなか寒いですが、膨らんだ桜のつぼみが可愛い!米国南部のサウスカロライナ州、アイケンという小さな街に住んでいる、私の翻訳アドヴァイザーから、「オラが街の桜が咲いてきたぞ~」と桜メールをもらいました。
 南部生まれの彼のニックネームはWizard of Bop (バップの魔法使い)=略してWOP、長らく枚方に住んでいた常連様で、プロの翻訳家、バリトン・サックス奏者、英訳、和訳の両方で、壁に当たると“Hi, WOB, Help Me!”とメールして、いつもお世話になっています。
 私の歌詞対訳歴も、足掛け14年、最初は「寺井尚之のジャズ講座」でビリー・ホリディを特集したとき、PCなんて持ってなかったからワープロで作った。聴き取りで判らないところは、来日ミュージシャンが遊びに来たときに、ちゃっかり手伝ってもらったり、米人のお客さんが来たら、すかさず意味を教えてもらったり、色々アツかましくやりました。
 今は辞書にない単語や固有名詞も、ネット検索すれば、沢山の情報が瞬時に手に入る!翻訳者にとっては便利な時代になったけど、微妙なニュアンスを受け取るには、ネットだけではだめで、読んで書いて、聞いて話して・・・英語の力だけでなく、日本語力も、それに人生経験や想像力が必要かも知れません。
 歌詞対訳を作っていて一番楽しいのが、ビリー・ホリディとエラ・フィッツジェラルド、何故かと言うと、「歌詞の意味が判ってジャズ・ヴォーカルがすごく楽しかった~」と喜ばれることが多いからです。
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 そのハイライトと言えるのが、ジャズ史を代表する歌手、エラ・フィッツジェラルドの「カーネギー・ホール」と呼ばれる名盤、『Newport Jazz Festival: Live at Carnegie Hall』!
 「トミー・フラナガンの足跡を辿る」で、寺井尚之が三年前に解説していますが、ご要望にお答えして、来る3月25日(金)にアンコール講座を行います!
 エラ・フィッツジェラルドが糖尿病の合併症で視力を損ない休養を余儀なくされた後、意を決して出演したカムバック・コンサート、客席の熱気も凄いですが、名手トミー・フラナガンをバックにエラが会心の歌唱を繰り広げます。
 超一流ミュージシャンにひけを取らない、エラのアドリブの凄いこと!フラナガンのサポートの素晴らしいこと!音楽の歴史に残る名唱です。
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“ジャズ・ヴォーカルを対訳を見ながら楽しもう”
【日時】3月25日(水)7pm~8:45pm 
【講師】トミー・フラナガン唯一の弟子、OverSeasオーナー、 寺井尚之
【受講料】One Drink付 ¥2,500 (税込¥2,625)  要予約

 このコンサートは’73年、エラが歌うのは1920年代にソフィー・タッカーが歌い、サルトルの「嘔吐」に登場した古い歌から、マーヴィン・ゲイのリアル・タイムな反戦歌まで、エラが休養時に選りすぐった感のある名曲揃い。失恋から立ち直ろうとする「Good Morning Heartache」や、恋を謳歌するメドレー、歌舞伎の刃傷沙汰のような「殺人」をテーマにした「Miss Ortis Regrets」など、色んなドラマの集大成!それら全てを、エラは自分の言葉にして歌う。星野哲郎や阿久悠たちが時代を彩る昭和の歌謡曲に負けない共感を覚えるものばかりです。
 映画の字幕を観るつもりで、歌詞を楽しみながら、トミー・フラナガンとエラ・フィッツジェラルドの名コラボを、寺井尚之の名解説でお楽しみください!
 今週のジャズ講座は、’90年、Jazz Club OverSeasでもトミー・フラナガン・ソロ・コンサートを開催した同時期のソロ、『100Gold Fingers』や、フュージョンの大スター、グローヴァー・ワシントンJr.(ts)の『Then and Now』から、聴き応えのあるデュオ2曲、ヴァイブ奏者、ボビー・ハッチャーソンとの『Mirage』など、iスペシャル・ゲスト格の色んなフォーマットでのトミー・フラナガンが楽しみです。
 私はおいしいポークのあばら肉でバーベキュー作ってお待ちしていま~す!
CU
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Evergreen物語(7) :My One & Only Love

 いよいよ大スタンダード登場!今日のテーマは”My One & Only Love”、寺井尚之ジャズピアノ教室ではトニック・マイナーの原理を勉強する課題曲Ⅱでもあります。
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 ミュージシャンが「マイ・ワン」と犬みたいに呼び、時にはアドリブの途中で”Polkadots & Moonbeams”と間違える危険性をはらむ曲、私が出会ったのは、勉強するふりをしてラジオばかり聴いてた高校時代、FMラジオのジャズ番組で聴いたロレツ・アレキサンドリアの『The Great』というアルバムで、ピアノはウィントン・ケリーでした。後にトミー・フラナガン3とリメイクしていることからも、ロレツの十八番であったことが判ります。初めて聴いたロレツ・アレキサンドリアの声は、爽やかでセクシー、当時、英語はまるきり判ってなかったけど、最初の”The very thought of you…”と最後の”My one & only love”だけは聞き取れて、うまい歌手やん!ええ歌や!と、新鮮かつ単純すぎる感動を覚えました。その直後、TVの音楽番組で、司会の藤岡琢也さんが北村英二(cl)さんを紹介した言葉で、ワン&オンリーが「随一無比」を表す決まり文句と知ったけど、受験勉強には何の足しにもならなかった。
lorez_the great.jpg  <img src="http://jazzclub-overseas.com/blog/tamae/assets_c/2011/03/My_one_and_only_love_2-thumb-150×149-1929.jpg" width="150" height="149"

<One & Onlyじゃなかった歌詞>
 歌のお里は、映画や演劇ではなく純粋なポップソング、作曲はイギリス出身のソングライターで、バンドリーダー、ガイ・ウッド、最初はジャック・ローレンスが詞をつけた“Music Beyond the Moon”(’47)という曲だったんです。バリトン・ヴォイスのヴィック・ダモンが人気の出始めた頃レコーディングしたのですが、ヒットはしなかった。
 それから5年後、ガイ・ウッド同様イギリス出身で、同じように作詞作曲どちらも出来るソングライター、ロバート・メリンが歌詞をリニューアル、フランク・シナトラがレコーディングしたら、あっという間に大ヒット、ジャズ・スタンダードになって、今も歌い継がれているんです。つまりMy One & Only Loveは皮肉にもワン&オンリーではなかったというわけ。
 “Music Beyond the Moon”を”My One & Only Love”にしたらヒットしたのはどうしてなのか?必ずしもヴィック・ダモンよりシナトラの方がずっとスターだったから、だけではないように思えます。シナトラのシングル盤ではB面だったし、今もスタンダードとして、ジャズだけでなく、ロッド・スチュワートなど、多くのシンガー、ミュージシャンに受け継がれているというのは、やっぱり、歌詞とメロディとハーモニーが三位一体の魅力を醸し出すからではないでしょうか?
<ラブ・シーンが見える>
FullScale_17_e98ae.jpg 高名なジャズ評論家ベニー・グリーンに「戦後のバラードのうちで最も精巧に作り上げられたバラード」と言わしめた”My One & Only Love”、形式は一般的なA-A-B-A形式ですが、通常聴かせどころとなるサビ(B)の方が、変化に富んだAのパートよりも控え目で、不思議な緊張感を醸し出すところが、洒落た雰囲気の秘密なのかもしれません。
 同様に歌詞も、A-2のパートがパンチラインになっていて、聴く者の心を掴みます。「四月」とか「そよ風」とかラブソングの定番になっている言葉が並ぶA-1から、A-2に入ると、冒頭の“The shadows fall and spread…”から、一気に歌の情景にリアリティが生まれる仕掛けになっている。ところがネット上を閲覧すると、数多ある訳詩の殆どが、このシンプルな節を「周りの景色に長い影が落ちる」と解釈し、「夕暮れになると」とか「夜の帳が下りると」とか、単に「夕方」として日本語訳化されている。そうしてしまうと、リアリティがしぼんでしまい、ありきたりな印象になってしまうのが少し残念です。
 本当は、自分達のシルエットが、「実物よりも長く大きく広がって、恋の不思議なムードも同じように増幅されている」ということを歌っているんです。
 静かな夜、デートの帰り道に、抱き合う自分たちのシルエットが目に入る、思わず気分がたかまって唇を重ねる恋人達、二人の影は重なって…という映画の1シーンのような情景が、たった2つのシラブルから浮かび上がってくるという仕掛け!うまいな...そう思うと、再びロレツの爽やかな色気のある声を思い出しました。男の歌を女が歌う、その効果が最大限に発揮されていますね。
 寺井尚之にとっては、アート・テイタム&ベン・ウェブスターの名演が一番印象的で、Evergreenでも、その辺りが感じられるので、ぜひ聴いてみてください。楽曲や歌詞の良さが判ると、聴くのも楽しいし、演るのもまた楽しいですよね!演奏者たちのために自筆楽譜もお分けしていますが、マイワンはサンプルとして無料でダウンロードできますので、ぜひこの機会に!そして他の譜面もどうぞ!

<My One & Only Love>
曲: Guy B. Wood/ 詞:Robert Mellin
今回は敢えて原曲の歌詞も日本語の前に掲載しておきました。
Evergreen_cover.JPGのサムネール画像
The very thought of you makes my heart sing
Like an April breeze on the wings of spring
And you appear in all your splendor,
My one and only love.
The shadows fall and spread their mystic charms. 
In the hush of night while you’re in my arms,
I feel your lips so warm and tender, 
My one and only love.

The touch of your hand is like heaven, 
A heaven that I’ve never known.
The blush on your cheek  
Whenever I speak
Tells me that you are my own.

You fill my eager heart with such desire, 
Every kiss you give sets my soul on fire,
I give myself in sweet surrender,
My one and only love.

君への想いに心が躍る、
春の翼に乗って来る四月の風の如く。
やがて輝く君が現れる、
かけがえのない恋人よ。

二人の影は長くなり、
恋の不思議を映し出す、
しんとした夜更け、
君をこの腕に抱き、
交わす唇は温かく優しい、
かけがえのない恋人よ。

その手に触れるだけで夢心地、
初めて知る天国、
話しかけると、
紅く染まる頬が、
君の気持ちを教えてくれる。

君はハートを欲望で満たす、
キスした数だけ心に火がともる。
喜んで降参!
かけがえのない恋人に。


 もうすぐホワイト・デーですね!寺井尚之のEvergreenを聴きながら、二人で影法師を眺めるのはいかがですか?

ジャズを題材にした漫画「坂道のアポロン」でスイング!

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 ジャズ・クラブの片隅で楽しいのは、お客様のおかげで、思いがけず無縁の世界に出会うこと。
 先週末、寺井尚之The Mainstemは、初めてのお客様のご予約を何組かいただいたのですが、その内、東京から来られるはずの皆さんがラスト・セットが始まっても現れません。以前、神奈川県からバスに乗って来たK君も、渋滞のためにOverSeasに辿りついたのは演奏が終わってからだった・・・
 そんな気の毒なことになったらどないしょう・・・とヤキモキしていたら、一曲終わった頃にそ~っと扉が開いて6人のお客様が静か~に入って来られました。
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 タッド・ダメロンの”Smooth As the Wind”やベニー・ゴルソンの”Stablemates”など、いつもどおりストレート・アヘッドな選曲でしたが、とっても熱心に聴いて下さって、お店の中にいい感じのヴァイブレーションが満ちました。
 寺井尚之は、アンコールがかかると、ふくよかなタッチで“Body & Soul”をじっくり聴かせ、弾丸スピードの “Caraven”で締めくくりました。熱いインスピレーションを送ってくださったお客様全員へのプレゼントですね!
 演奏が終わった後、ミュージシャンに「感動しました!」と挨拶してくださったのは、漫画家の小玉ユキさんだったと、お帰りになってから知りました。小玉さんの人気コミック「坂道のアポロン」の第7巻発刊に際し、サイン会&原画展開催で来阪の折、たった1泊の忙しいスケジュールを縫って寺井尚之の演奏を聴きに来てくださったのだそうです。
junk_dou.JPG もう数十年、アメリカ人の友達に(半ば無理やり)読まされた「クレヨンしんちゃん」以外、漫画を読む余裕はありませんでしたが、一気に興味津々!昨日、原画展開催中の梅田ジュンク堂に行って来ました。安藤忠雄デザインのモダンな建築で、中に入るとNYのBarnes & Nobleがもっとすっきりしたようなゆったりした空間、小玉さんの作品はIFに平積みしてあり、すぐに購入、一気に読みました。「講座本」もこんなところに置いてあればなあ・・・
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 小玉さんの人気コミック、「坂道のアポロン」は、なんとジャズをテーマにした作品。’60年代の九州、海辺の町を舞台に、高校生達が、様々な問題を抱えながら、ジャズのプレイを通じて、成長していく青春群像。
 クラシックしか知らなかったピアニストの薫がジャズの洗礼を受けるのが”Moarnin'”だったり、ドラマーの千太郎が”Satin Doll”を口笛しながら薫とバイクに乗っている絵の吹きだしに「おりてこい、デューク・エリントン・・・」なんて書いてあると、思わずにやりとしてしまいます。作品に登場する曲は、案外骨太のものが多いし、九州弁の科白が、ストーリーにマッチしてます。
&nbsp原画展を拝見して、繊細な画風にも親近感を持ちました。ヒロインの律子ちゃんは、小玉ユキさんご自身とそっくり!
 「坂道のアポロン」を読んで、若い人がジャズに親しんでくれれば最高です!トミー・フラナガンや寺井尚之が登場するとすれば、どんなキャラクターになるのかな?なんて色々想像しながら、次の巻が出版されるのが楽しみになってしまいました。
 読み進むと、第7巻のScene 33の扉絵は”Caravan”でした。小玉さんのオーラを寺井尚之が感知したのかも知れませんね!
 原画展は梅田ジュンク堂で28日まで開催中!
 明日のThe Mainstemは、どんな曲、どんな出会いが待っているのかな?私はビーフストロガノフ作って待ってます。
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ジョージ・シアリングを悼む

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 トミー・フラナガンと親交のあった巨匠、ジョージ・シアリングが2月14日、亡くなった。Interludeを読みにきてくださっている方なら、「バードランドの子守唄」の作曲家としてより、戦後一大ブームを巻き起こした、「シアリング・サウンド」よりも、’70年代以降にMPSやコンコード・レーベルに遺したリーダー作や、10年間コンビを組んだメル・トーメ(vo)との共演盤、それにフレンチ・ホルンの名手、バリー・タックウエルとオーケストラを擁し、シアリング自身がアレンジしたコール・ポーター集などの作品に、より心打たれた方が多いのではないでしょうか?
GeorgeShearingTuckwell2.jpg ギャラが破格であることと、日本が盲導犬の入国を認めない為に、晩年まで来日公演が叶わなかった。NYで、ジャズ・ピアニストが沢山集まるパーティに行ったときも、ツアー中でシアリングは欠席してた。やっと生で初めて観れたのは’87年のコンコード・ジャズフェスティバル、ピアノを撫でるように弾く。そのタッチのきれいなこと、音の粒立ち、趣味の良さ、洒落ていて、ストレートで、全てが超一流!笑みを絶やさず、さり気なく連発する神業にだんだん怖くなり、ゾ~ッと鳥肌が立ちました。
<Sir George Shearing>
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 英国女王からナイトの称号”サー”を戴いたジョージ・シアリングは、決して裕福でない境遇に育った。1919年、ロンドンの下町生まれ、チェルシー・ブリッジのあるバターシーという地区で、父親は石炭を運ぶ労働者、母は鉄道列車の掃除婦、子沢山の家庭で、中絶を失敗したためか、過度の飲酒のせいか判らないが、末っ子のジョージは生まれたときから盲目であったと言います。
 盲学校で音楽を学び、点字譜面で音楽理論と演奏を習得、卒業後は英国のパブから出発して、ヨーロッパに来る米国のジャズメンの間で有名になり、ジャズのメッカ、NY52番街へ。サラ・ヴォーンの幕間のピアニストが、スター街道の出発点だったそうです。
 「シアリング・サウンド」で一世を風靡た、クインテットは、盲目だと何かに付けて旅がしにくいサー・ジョージのために、超豪華なキャンピングカーを特注し、全米をツアーした。
<天才はボーダレス>
sir-george-shearing-wife-ellie-lee-massachusetts.jpgサー・ジョージはPCや最新オーディオ機器が大好きだった。エリー夫人と。Eメールというものが出来始めたとき、家の中で2階から下にいる奥さんにメールすると茶目っ気たっぷりにラジオで言ってたことがある。
 ’70年代以降のシアリングの演奏解釈は、国境や音楽ジャンルを悠然と網羅するボーダレスなもの、ベートーベンのピアノ・ソナタ「月光」からコール・ポーターの「Night & Day」が始まったり、ブラームスの「間奏曲」をヴァースにして「Taking a Chance on Love」演ったりするのだけど、トミー・フラナガンが「How High the Moon」にヨハン・シュトラウスを入れても、殆ど気づかないの同じで、何の違和感もなかった。
 ちょうどその頃、シアリングは欧米でクラシックを盛んに演奏していたらしい。子供の頃何気なくTVの音楽番組を観ていたら、N響でタクトを振っていた日本人指揮者が、「最近感銘を受けた音楽は」?と訊かれ、こんなことを言っていたのを、今でもよく覚えています。
 「このあいだロンドンのロイヤルアルバート・ホールで、あっちのジャズ・ピアニストと共演したんですよ。 ジョージ・シャーリング(!)って人なんだ。ドビュッシー演ったんだけど、それがものすごい演奏でね。オーケストラ全員総毛立っちゃった・・・」

 今、若い人に「ジョージ・シアリング知ってる?」て聞いても、「知らない」っていう人が多い。
 私が、何となく翻訳を始めた大昔、大好きなホイットニー・バリエットがシアリングについて書いた「Bob’s Your Uncle(これでキマリ!)」というエッセイを日本語に作ったことがあったので、ブログにアップしようと思ったのですが、今読むと、直したい箇所が余りに一杯で躊躇。なにしろ、PCも知らない、ネットもない時代だったし、今ならもっとわかりやすく書いたのに・・・と負け惜しみ。
 皆さんがシアリングのことをもっと知りたいなら、いつか紹介したいと思います。

3/19(土) Tribute to Tommy Flanagan開催のお知らせ

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 先日の積雪が嘘のように生暖かい大阪です。
 皆様いかがお過ごしですか?
 昔から関西は、奈良時代から東大寺で続く「お水取り」が終わらないと春は来ないと言われています。トミー・フラナガン・ファンの春の儀式と言えば誕生月のトリビュート・コンサート!
 今年は3月19日(土)に開催いたします。
 トミー・フラナガンが遺した数々の名演目、3月、4月は春と言っても、ジャズクラブが盛り上がる夜は毛皮が要るほど寒かったNYの街。でも、フラナガンのスプリング・ソングを聴くと、花の香りが漂いました。そんな情景を思い出しながら、寺井尚之The Mainstemの演奏を、皆様とご一緒に楽しみたいです!
 トミー・フラナガンをまだお聴きになったことがない方も大歓迎、勿論「通」の皆様も心よりお待ちしています。
 春らしい御料理も作っておきますので、飲みながら、食べながら、法事の気分でトミー・フラナガンを一緒に偲びましょう!
tribute_mainstem.JPG日時:2011年 3月19日(土)
会場:Jazz Club OverSeas 
〒541-0052大阪市中央区安土町1-7-20、新トヤマビル1F
TEL 06-6262-3940
チケットお問い合わせ先:info@jazzclub-overseas.com
出演:寺井尚之(p)トリオ ”The Mainstem” :宮本在浩(b)、菅一平(ds)
演奏時間:7pm-/8:30pm-(入替なし)
前売りチケット3,150yen(税込、座席指定)
当日 3,675yen(税込、座席指定)