新春ジョージ・ムラーツ情報

 新年明けましておめでとうございます!今日の大阪は寒いです!大晦日、K-1の絶叫が響く中でおせちを作ったのも今は昔のTenpus Fugit・・・今週の土曜日はジャズ講座ですよ!もうご予約はされましたか?講座名物、寺井尚之の年頭挨拶も新春初笑いの予感。
 昨日の”エコーズ”はジョージ・ムラーツのお弟子さん、しょうたんこと石川翔太(b)君が遊びに来て2曲ほど演奏してくれました。22歳であの実力はすごいね!・・・今の大学ジャズ研にあそこまで弾けるコがいれば、名声響き渡り、女子部員の憧れの的になるでしょうね。しょうたんは、今年のお盆頃にパスポート更新で帰国予定なので、今度は寺井尚之との本格的なセッションが聴ける予感です。今から楽しみにしましょう!
kg_sumi_shoutan.JPG  ベース三人衆、左から坂田慶治、鷲見和広、石川翔太
 さてお待たせしました、今日はジョージ・ムラーツの新作と噂の新ベースの話題をお伝えします。すでにアニキからはトリビュート・コンサートの時期にお知らせが来ていたのですが、なかなかゆっくりお伝えする暇がなくてごめんね。現在はムラーツ公式HPにも英文で詳細が載っています。
<Coming Soon! ジョージ・ムラーツ 新作リーダー・アルバム >
 ジョージ・ムラーツの新作リーダーアルバムは年末にNJのベネット・スタジオでライブ・レコーディングされました。フォーマットはピアノレスのベース・トリオ!メンバーはかつてOverSeasで共演したこともあるリッチ・ペリー(ts)に加え、ジョン・ゾーンやビル・フリゼールといった”あっち側”の人たちから、ディジー・ガレスピー、メル・ルイスなどこっち側”の人たちまで幅広い守備範囲で活動するジョーイ・バロン(ds)という異色の顔合わせのピアノレス・トリオ!かつてムラーツがジョー・ヘンダースン(ts)3で聴かせた強烈なプレイを思い出しますね!
 もちろん、しょうたんは付き人としてレコーディングに付き合い、物凄い演奏を目の当たりにしたそうです。このライブはアルバムだけでなくDVDとしてもリリース予定なので、最前列で見守るしょうたんもばっちり映っているらしい・・・
 ピアノレス・トリオでジョージ・ムラーツが目論む音楽的指針がどんなものなのか・・・きっとどえらいことを考えているはずです。そしてもうひとつ興味津々なのが、このレコーディングで使用しているムラーツの新しいベースです。
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<ジョージ・ムラーツのNew Baby, B21>
 ムラーツ兄さんが、フランスの名匠パトリック・シャルトンに依頼して、特別なツアー用のコンパクト・ベースをこしらえたことは11月に紹介しましたが、ムラーツ兄さんの楽器は、このB21の進化ヴァージョンというより、ムラーツ+シャルトン・コラボ・モデルと言った方が正しいようですね。
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 「デカい」「傷つきやすい」「安定感がない」と運搬のリスクが三拍子そろったコントラバスという楽器を、世界中を駆け回るベーシスト達のために、21世紀ヴァージョン改良したというB21、僅か12秒でネックの着脱ができて、指板の高さも自由自在、弦楽器の要となる魂柱は1ミリでもずれると鳴りが変わってしまうそうですが、B21ならレンチ一本で簡単に調節可。
本体で一番傷つきやすい個所には、ゴムを埋め込み、f字孔という、あの印象的な二つのホールの形を改良して、楽器が最高に振動するように考えられているらしい・・・・。
 ムラーツのHPに写真が載っていますが、特別ハードケースも非常にコンパクトで通常の海外空路では特別料金がかからないサイズにしつらえてある。さっすがフランス人は細かいね!Très Bien!
<ジョージ・ムラーツの注文とは?>
 ムラーツ兄さんは、こんなB21に更に注文をつけました。それまでにジャズ・ベーシストの為に15台のB21を制作してきたシャルトンも「目からウロコ」の改良版が出来たんです。
 1)魂柱:楽器の中心にあり、不安定な魂柱はツアーの多いベーシストにとって悩みの種、ジョージ・ムラーツは前後から魂柱を固定するという斬新なアイデアを出して、シャルトンがそれを現実化しました。
 2)形状:ムラーツ兄さんの次なる注文は、ベースの不安定な形について。B21はベースが直立している時にネックの着脱を行うので、「それなら独り立ちさせてよ。」ということになり、ボトムの形状がより安定化しました。
 3)サウンド:ジョージ・ムラーツの一番のこだわりが音質であるのは当然!カラフルな色合いとニュアンス、レガートの付き具合など、シャルトンへの要望は数え切れないほどありましたが、結果出来上がったベースのサウンドは世界のジョージ・ムラーツもにんまりするものだったようです。年末のレコーディングに立ち会ったしょうたんも太鼓判でした。
 4)ベースのエッジが「絶対に」痛まないようにしたい! そこでシャルトンはベースのふち飾りとラバー製のプロテクションを組み合わせて、見た目も美しく傷つきにくいデザインを完成!
そのほか、エンドピンがネジなしで、あっという間に調節できる機能や、使用する弦によって変えられる数種類のペグボックス(ベースのてっぺんになるカタツムリみたいな形の糸倉のこと)を開発したり、まさに21世紀型のベースになっているみたい。早く生で聴いてみたいな!
 その結果、ジョージ・ムラーツはシャルトンを「天才」と呼び、弾くのが「楽しい!」「インクレディブル!」と絶賛!シャルトンの工房では、G. Mraz モデルというコラボ版を売り出すことになったそうです。(ご希望の方にはジョージ・ムラーツのサイン入りで出荷できるそうですよ!) *パトリック・シャルトンHP
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 9日(土)のジャズ講座では、おせちに飽きた皆さまの為にビーフストロガノフを仕込んでおきます!
CU

Years Come and Go

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 12月26日(土)のThe Mainstem(上の写真:寺井尚之、宮本在浩(b)、菅一平(ds))で締めくくりとなった2009年OverSeas、今年もいろいろとお世話になり、ありがとうございました。不況の風が吹き荒れた年を何とか乗り切れたのは、皆さまのおかげと心から感謝しています。
 OverSeasにとって2009年の大収穫は、何といってもThe Mainstemの成長ぶり!レギュラー・トリオならではのタイトなサウンドとダイナミクスが演奏を重ねるごとに大きくなるのを、片隅から楽しめるのはInterlude冥利に尽きました。いつも何か新しいことを目指す寺井尚之に負けない熱意で、しっかりと着いてきてくれた宮本在浩さんと菅一平さん、二人とも音楽的に大きくなりました!手を合わせて拝むのみ。
 演奏を聴いて下さって「楽しかった!」「元気が出たよ!」と喜んで下さったり「おいしかったよ!」とにっこりしてくださった皆さま、御恩は一生忘れません。いつも思うことなのですが、皆さんと同じだけ、あるいはそれ以上にOverSeasも楽しさや元気を頂いています。
 今年こそは「ゆとり」年末をと思っていましたがさにあらず・・・私はやっぱり除夜の鐘までドタバタ・・・It’s Just Another New Year’s Eve、ジャズ講座新刊とトリビュートCDのご案内もまだちゃんと出来ていないテータラクですが、新年にしっかりいたしますので、どうぞよろしく~
 新年初ライブは1月5日(火)より、寺井尚之ジャズピアノ教室は1月4日より始まります。(発表会1月31日)
 2010年は新しい風が吹く予感!
CU

Merry Christmas!

 クリスマス・イブ、皆さんいかがお過ごしですか?ロマンチックなキャンドル・ディナー?ご家族で団欒?こちらはどうかって?イブの夜もちゃんとレッスンしていますよ!
   クリスマス気分とは全く無縁のOverSeasですが、今週も沢山のお客様が来て下さってうれしいです!
zaiko-shoutan2009.JPG  宮本在浩(b)さんと並ぶ青少年は、ジョージ・ムラーツのアシスタントとして芸を盗む傍ら(?)バークリー音楽院で学ぶ”しょうたん”こと石川翔太(b)くん、年末で里帰り中。23日はゲストとして、”Picturesque”を弾いてくれました。弱冠21歳、ダテに留学してなくて、かなり腕が上がってました。寺井は「まだ子供やねんから、何でもどんどんコピーしてとり込んだらええねん。」と言ってます。ボストンで自己アルバムも録音してます。
  しょうたんは年始1月6日(水)のエコーズ初ライブにも来るそうなので、若手の逸材を聴いてみたい方はぜひどうぞ!
soon_kim.JPG こちらは同じ夜に来て下さったフリージャズのアルト奏者、Soon Kimさん。現在はフリーのメッカ、ベルリン在住で、ウォルター・ノリス(p)先生のお友達です。ノリスさんから、「日本に行くならOverSeasに行って挨拶してきて!」と頼まれて、わざわざ来て下さいました。Kimさんは、もう何年も昔に、今は在NYのアルト奏者、東出(あずま いずる)さんがOverSeasで演奏している時に何度か飛び入りで参加してくださっていたそうで、私もなんとなくお顔に見覚えがありました。Kimさん、ノリス先生によろしく~
feast2009.JPG  そして、昨日は寺井尚之ジャズピアノ教室主催の年末パーティ!生徒たちや常連様で、楽しく盛り上がりました。
 ただ宴会やるだけでなく、しっかりジャズ講座も!お題は「White Christmas」、アービング・バーリンの名曲を、ビング・クロスビーのオリジナル・ヴァージョンに始まり、マット・デニスやトニー・ベネット・・・チャーリー・パーカーやトミー・フラナガンのヒップなバージョンの解説をむなぞう副会長が、それから寺井尚之が登場して、クリスマス中に来日していたトミー・フラナガンの色んなエピソードを公開。最後はThe Mainstemのクリスマス・ソング集(!)を聴きながら、皆でスイングしました。
 *不肖私は給食係に専念。
<MENU>

  • オードブル:スタッフド・エッグ、イクラ添
  • チキンのジェノバ・ソース
  • オイル・サーディンのカナッペ
  • シュリンプ・カクテル・カナッペ
  • 生ハムのオープン・サンド
  •       

  • 巻きずし
  • For the Kids:骨なしフライドチキン、串焼きウインナー、ミニミニ・ドーナツ

韓国風蒸し豚プレート
ポテト・サラダ、クリスマス・ケーキ風
アボカド&芝海老のフルーツ・サラダ
和牛焼肉
ホワイト・チキン・カレーのドリア
パスタ:ペスカトーレ
デザート:苺とバナナ、クルミ入りアイスクリーム・ケーキ
 デザートはカワカミさんが当日プレゼントしてくださった苺のおかげで、予想外の豪華さ!お子様にも大人にも喜んでもらえてよかった~!ごちそうは3ラウンドありましたが、2ラウンド目以降は写真撮影する余裕がありませんでした・・・
 と、いうわけで、今年も暮れようとしていますが、年賀状も出来てない・・・
 年末年始に講座本の新刊を読みたい方は、26日までにお申し込みくだされば、なんとか発送できると思いますので、よろしくお願いします!
 今年のライブも後2晩のみ。25日(金)は寺井尚之+宮本在浩(b)デュオ、26日(土)は寺井尚之”The Mainstem”!
 ぜひお越しください!
CU

「トミー・フラナガンの足跡を辿る」新刊できました!

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 北国は大雪だそうですね。大阪も昨日から寒くなりました!配達に来た八百屋のお兄さんが「さむいてなもんとちゃうわ!今日は震えるで!」と走って行きました。巷は忘年会シーズンで色々お忙しいと思いますが、皆さま、二日酔いは大丈夫すか?
 さて、ジャズ講座の本、「トミー・フラナガンの足跡を辿る」第7巻がやっと出来上がりました。サブタイトルが《エラ・フィッツジェラルドとの黄金時代(その2)》:『Jazz At The Santa Monica Civic』『Newport Jazz Festival Live At Carnegie Hall』、『Montreux ’75』など、ジャズ通でなくても、明日への元気、健康増進のため、サプリメント代わりに毎日聴きたい名盤中の名盤がずらりと並びました!
 世界の都市で公演を重ねて行くうちに、エラ+トミーのコラボがどのように進化していくのか?寺井尚之の解説を読んでいくと、単なる「歌伴」の枠をはるかに越えた、有機的な音楽の変遷を辿ることができます。エラ+トミーのコラボ盤は『Fine & Mellow』以外、全てライブ録音のため、音質の是非を問う意見もありますが、所詮は録音されたもの。内容に比べれば、「音質云々」などDoesn’t Matter!付属の対訳ページで、エラ+トミーならではの歌詞に沿った転調の神業も手に取るように判ります。「喝采こそイノチ!」のエラ・フィッツジェラルド!ノーマン・グランツさん、ありがとう!ライブ盤でよかった~。
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 今回も、エラの歌う歌詞の完全対訳は不肖私が作りました。ご存じのように、エラはすぐ歌詞を忘れることで有名な歌手ですから、確かに「忘れてるな・・・」というのもあります。とはいえ、彼女の歌詞解釈はびっくりするほど深い!「酒とバラの日々」や「ポルカドッツ&ムーンビームズ」など、”ああ、またか・・・”と思うような超スタンダードの歌詞の深さ、コール・ポーター歌曲の強さと優しさは、エラの歌唱を通じて、私も初めて思い知りました。録音を聴きながら対訳を読んでいただくと、かなり楽しめると思います。
 エラ以外にも、新刊の読みどころは一杯!『Newport Jazz Festival Live At Carnegie Hall』のオールスター・ジャム・セッションの楽屋裏でミュージシャン達が交わす会話の下りは、「あんた見てきたんか?」という位、リアルで抱腹絶倒。体育会系ジャズ・ミュージシャンの上下関係を知っている寺井尚之だからこそ語れる裏話が満載。ジャズ・マンの視点から見たバート・バカラックやビートルズなど、当時のポップ・ソングに対する論評も、大変興味深いものがあります。
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 そして、新刊のもう一つの目玉は『Tokyo Recital ( A Day in Tokyo)』の解説。リアルタイムでコンサートを聴いた寺井尚之の思い出、それに44歳という年齢のフラナガンの奏法解説、ベース、ドラムスの動きを明確に解説しながら、”あの”ダイナミックなトリオ演奏を分析していますので、フラナガン・サウンドを目指すミュージシャンは必読です!
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 と、いうわけで、「トミー・フラナガンの足跡を辿る」第7巻新発売。ご希望の方はOverSeasまで。トリビュート・コンサートのCDも併せてご注文ください。
 講座本新刊は、もうしばらくしたら、”ワルティ堂島”さんや、”ジャズの専門店ミムラ”さんにも配達しに行きます。
 明日は忘年会ピークかな?楽しく静かにバップ・ギターを聴いて過ごしたい方は、ぜひ末宗俊郎3を聴きに来てください!
 19日(土)は寺井尚之3”The Mainstem”(要予約)、身も心も温かくなるように、チキンと根菜をたっぷり入れた熱々のクリームシチューを作ってお待ちしています!
CU

第15回トリビュート曲説できました。

  皆さん、先日はトリビュート・コンサートで色々お世話になりました。またトリビュート以降、師走のお忙しい中、横浜フラナガン愛好会幹部が相次いでOverSeasに激励に来てくださいました。
 書記長スドー先生、石井ご夫妻、この場を借りて心よりお礼申し上げます!ほんまにおおきに!
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 さて、師走のドタバタの中、やっと先日のトリビュート・コンサートの曲目説明が出来ました。トリビュートの演目というのはかなり限定されているのですが、どれもこれも深い作品なので曲説の種はつきません。
arthur whetsol fredi washington duke ellington black and tan fantasy.jpg“Black and Tan”より。
 今回は、アンコール:『ELLINGTONIA』の大トリ、“Black and Tan Fantasy”の元になった、デューク・エリントン楽団の短編映画<Black & Tan>の映像をネット上で発見、フラナガンが生まれる前の1929年のもので、デューク・エリントンと彼の楽団にとって初の映画出演です。エリントンの相手役をしているライトスキンの美女は、フレディ・ワシントン、エリントン楽団の名トロンボーン奏者、インディアンの血を引いた二枚目、ローレンス・ブラウンの奥さんで、エリントン楽団を有名にした禁酒法時代のハーレムの名店、「コットン・クラブ」の名華といわれたコーラス・ガール。ブラウン夫妻がハーレムを歩くと、余りのカッコよさに皆が注目したそうです。一説には、余りに白人ぽいのでハリウッドでスターダムに上り損ねたとも言われています。映像からは、初期のエリントン・サウンドの魅力やハーレム・ルネサンスの香りが伺えます。
 トリビュート曲説はこちら。http://jazzclub-overseas.com/tribute_tommy_flanagan/tunes2009nov.html
 トリビュート・コンサートは三枚組CDとして、ご希望の方にお分けしています。詳しくはOverSeasまでお問い合わせください。
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 目が充血して真っ赤になっちゃったので、本日はこれまで。
明日の荒崎3で会いましょう!サングラスかけてるかも・・・(?)
CU

Eddie Locke Memorial Service ’09 11.22:もうひとつのトリビュート

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 雨の師走、皆さんいかがお過ごしですか?
 先週のトミー・フラナガン・トリビュートの録音を聴きながら、このエントリーを書いています。繰り返し聴く価値のあるプレイですね。CDにいたしますので、ご希望の方はOverSeasまでお申し込みください。
 ところで、先週のトリビュートの当日に、ショーン・スミス(b)さんから、先日Interludeで告知したエディ・ロックさん(ds)のお別れ会の資料がどっさり届いていました。もちろん故人をしのぶ厳粛な会ですから、当日の写真などは残念ながらありません。
 Eddie Locke Memorial Service は、去る11月22日に行われました。場所は、ジャズ牧師としてNY市民に敬愛されたゲンぜル神父在籍中のジャズ礼拝にエディさんが頻繁に出演し、特にゆかりの深いSt.ピーターズ教会。トミー・フラナガンはもちろん、ジャズメンの音楽葬は、宗教に関係なく、ほとんどがこの会場で行われています。
 NYから帰ってきているベーシスト、銀太こと田中祐太くんが参列してきたので、会場の雰囲気も伺うことができました。
 式次第は、故人を偲ぶスピーチとライブが交互に行われる形式。銀太君の話では、会場は超満員で、ミュージシャン達のスピーチは、湿っぽくなりすぎず、何度か会場が爆笑するようなエピソードが織り込まれていたそうです。「坊やからたたき上げ」のドラマー人生で得た知識を、懸命に後輩たちに伝えたエディさんの人柄に沿う集まりになったようです。
 この会のオーガナイザーは同郷デトロイト出身のバリー・ハリス(p)とビル・シャーラップ&リニー・ロスネス(p)夫妻とクレジットされていますが、実質的には、エディさんを父親のように慕っていたショーン・スミス(b)、ビル・シャーラップ(p)、ジョン・ゴードン(ts)の三人が尽力したようです。
 彼らのおかげで、当日の会場にはオリヴァー・ジャクソン(ds)とボードビル・チームや、亡くなるまで仕えたボス、コールマン・ホーキンス(ts)や、ロイ・エルドリッジ(tp)との貴重な写真が多数展示され、プログラムは、エディさんの十八番”Caravan”を詠った詩(セバスチャン・マシューズ作)や、名トランペット奏者、ウォーレン・ヴァシェによる心のこもった追悼文が掲載されていて、大変充実したものでした。
bop_locke.JPG  ボードビル時代のエディさんとオリバー・ジャクソン(ds)は、「やすきよ」みたい!こういうキャリアが後のCaravanのソロにもジャイブ音楽のアルバムにも活きてるんだ!
eddie_hawk.JPG  コールマン・ホーキンス(ts)と。親分とイチの子分か?かっこいい!こういう貴重な写真は全てコロンビア大の図書館に収蔵されているらしい。
eddie_sir_roland.JPGコールマン・ホーキンス組か、デトロイト組か?サー・ローランド・ハナ(p)と!
 追悼演奏は、ショーン、ビル・シャーラップ(p)、ジョン・ゴードン(ts)のトリオが”For All We Know”を演奏したほか、今や大御所ピアニストになったリチャード・ワイアンズ(p)が”I Remember You”、マイク・ルドン(p)が、ポール・ウエスト(b)、ルイス・ヘイズ(ds)のトリオで”There Will Never Be Another You”、そのほかにもタルド・ハマー(p)、リロイ・ウィリアムズ(ds)、ジョン・バンチ(p)など、有名ミュージシャンの心の籠ったライブがあり、葬儀委員長バリー・ハリス(p)と彼のクワイヤーがトリを取ったそうです。
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<Goodbye Eddie Locke (抄訳)> by ウォーレン・ヴァシェ(tp, cor,flh)
 エディ・ロック、やることがなんでも派手で、実際よりも、ずっと大きくぶっきらぼうに見えるタイプの男。演奏、笑い方、教えぶり、叱り方、何をするにしても手加減なし、人間性を100%ぶつけた。・・・
 我々はよく一緒に仕事をしたが、彼は、初対面の人に話しかける名人で、誰とでもすぐに友達になる名人だったので、私は彼を、「外務省高官」と呼んだ。世界中どんな場所にツアーしても、新しい友人を見つけ、愛され慕われながら、長く付き合った。・・・
 エディは私の子供たちを愛してくれた。子供らはエディを「じいちゃん」と呼び、彼のあの話し方をそっくり真似したもんだ。
 また私の世界にぽっかり大きな穴が空いちゃったよ。エディ・ロックのような人間がいなくなった穴を埋めることなんて無理だ。できることは、ぽっかり空いた穴を意識するたびに、そこに長らくあった友情と、エディがくれた霊感を思い出すことだけさ。
 さよなら、じいちゃん。寂しいよ。だけど、ちくしょう!絶対あんたを忘れるもんか!

Warren Vache
( ウォーレン・ヴァシェは自分のHPのトップにもエディさんへの追悼文を掲載していました。)
 ショーン・スミスさん、お疲れ様!良いトリビュートが出来てよかったですね!
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 では、私はこれからトリビュート・コンサートの曲説を書こう!
明日のライブ、鉄人デュオでお会いしましょう。
CU

田中祐太(b)帰国中!

yuta_ari.jpg左:銀太くん、右:今北有俊
 師走になってから暖かい大阪です。皆さまいかがお過ごしですか?
 6月からNY修行中の「銀太」こと田中祐太(b)が一時帰国中です。現在Yuta Tanakaは、日本が誇るバップ・ドラマー、田井中福司さんと活動中、46丁目の「Swing 46」 や、ウエスト・ヴィレッジの「Garage」などに出演しているそうです。
 今夜は、今北有俊(ds)と元祖SFTリユニオン!サー・ローランド・ハナのベーシストだった青森英雄氏にクラシックの基礎を指導してもらっているだけあって、フォームもぐっとよくなりました。
   「銀太」くんは、12月5日(土)にもう一度OverSeasに出演して7日に帰国するそうです。
ぜひお越しください!
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CU

寺井尚之より:「トリビュート」御礼

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 トリビュート・コンサートに多数来ていただいて、誠にありがとうございました。
 師匠が亡くなった悲しみが先に立った第一回から、師匠の偉大な業績を讃え、後世に伝えようとがんばってきて、十五回目のトリビュートを演ることができました。
 これも、常に満席になるほどの多くのお客様の応援があるからこそと感謝しています。
 次回、第十六回目のトリビュート・コンサートは2010年3月27日(土)です。万障繰り合わせてご参加ください。
ありがとうございました。
寺井尚之
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速報:第15回トリビュート・コンサート

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 3月と11月にお送りする”Tribute to Tommy Flanagan”を11月28日(土)に開催しました。
 お忙しい中駆けつけてくださった常連様、初めてのお客様、2時間半の長丁場、最後までお付き合い下さってありがとうございます!それに沢山の激励メールや、差し入れ、お供えなどなど、心より感謝しています!
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第15回トリビュート・コンサート曲目

1. Out of This World (Johnny Mercer / Harold Arlen) 
2. Smooth As the Wind (Tadd Dameron)
3. Minor Mishap (Tommy Flanagan)
4. Embraceable You(Ira& George Gershwin)~Quasimodo(Charlie Parker)
5. Easy Living ( Ralph Rainger /Leo Robin)
6. Rachel’s Rondo(Tommy Flanagan)
7. Sunset and the Mockingbird (Duke Ellington)
8. Tin Tin Deo (Chano Pozo,Gill Fuller,Dizzy Gillespie)
曲説
1. That Tired Routine Called Love (Matt Dennis)
2. Beyond the Bluebird (Tommy Flanagan)
3. Mean What You Say (Thad Jones)
4. Thelonica (Tommy Flanagan) ~Mean Streets (Tommy Flanagan)
5. If You Could See Me Now (Tadd Dameron)
6. Eclypso (Tommy Flanagan)
7. Dalarna (Tommy Flanagan)
8. Our Delight (Tadd Dameron)

Come Sunday (Duke Ellington) ~With Malice Towards None (Tom McIntosh)
Ellingtonia: エリントン・メドレー
 Warm Valley (Duke Ellington)
 ~Chelsea Bridge (Billy Strayhorn)
 ~Passion Flower (Billy Strayhorn)
 ~Black & Tan Fantasy (Duke Ellington)

 トリビュート・コンサートのプログラムは、生前フラナガンがライブで聴かせた名曲、名メドレーを集めた特別なもの。いわば「歌舞伎十八番」!今回もデトロイト・ハード・バップの根幹(Mainstem)を象徴するようなレパートリーが並びました。フラナガン音楽をよく知っている方も、初めてジャズを聴かれる方も、お楽しみいただけたようで、とても嬉しいです。HP掲示板にも沢山メッセージありがとうございました。
teraiP1020916.JPG  コンサートのひと月前から、猛稽古に明け暮れた寺井尚之(p)、その気迫を真正面から受け止めて、同じテンションで、しっかり支えてくれた宮本在浩(b)、菅一平(ds)のThe Mainstemの演奏は、これまでのトリビュート史上、最高だったのではないかな。
 お客様の掛け声も最高!アンコールのメドレーで、「With Malice・・・」や「チェルシー・ブリッジ」が始まると、拍手が湧いて、OverSeasのお客様ってすごいな!と今更ながら誇りに思いました。
 演奏後、寺井尚之は「師匠へのリスペクトがあるからこそ・・・」と言っていた。口で言うのは簡単だけど、人生を賭けて「リスペクト」を貫こうとすると、多くの犠牲を伴う。トミー・フラナガンが亡くなった夜、涙で奏した”Easy Living”は、10年の歳月を経て、いっそう優しく切ない。現在は寺井の人生を象徴するレパートリーになったのかもしれません。
 年2回のトリビュート・コンサートは私にとっても「節目」の行事、想いは一杯ですが、お客様には、「楽しかった!」と思ってもらえれば、すごく幸せです。そして、トリビュートをきっかけにトミー・フラナガンや寺井尚之の演奏に一層興味を持っていただければ、もう最高です。
 次回のトリビュート・コンサートは、来年、3月27日(土)予定。誕生月のトリビュートは、きっと、また違った色合いになるでしょう。
 明日からトリビュート曲目解説に取り掛かりますので、出来上がったらお知らせします。
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BRAVO!
CU

トミー・フラナガンの思い出:「七つの子」

musculine_fingers_tribute.JPG  土曜日はいよいよ15回目のトリビュート・コンサート!
寺井尚之はトリビュート・コンサートに向けてAll Day Longの稽古・・・指先の筋肉が膨れ上がってます。
zaiko_ippei.JPG The Mainstem、ベースのザイコウさんは、今週はOverSeasにフル出場!万全のコンディションを期します。
 ドラムの一平さんは、火曜日に、元トミー・フラナガン3のメンバー、ピーター・ワシントン(b)、ケニー・ワシントン(ds)のコンサート(ベニー・グリーン4)に行き、トリビュートのチラシを見せて二人に「おひかえなすって!」と仁義を切って来ました。

 ケニーとピーターは、現在ジャズ界最高のリズム・チーム、二人とも若い時から物凄い勉強家でした。今は押しも押されもしない巨匠ですね!
 トリビュート・コンサートは、大変込み合っていますが、現在少しだけ残席があります。来ようかなと思って下さったらまずお電話で残席をお確かめください。(OverSeas TEL 06-6262-3940)
 お薦めメニューは、「黒毛和牛の赤ワイン煮」と、冬の限定メニュー、「ポーク・ビーンズ」、黒豚と北海道の大きくておいしい白花豆を柔らかく煮込んだアメリカの家庭料理です。演奏を聴きながら、ぜひご賞味ください。
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<私が観たフラナガンの稽古>
 トミー・フラナガンは、インタビューで「私はもう稽古(practice)はしていない。」と語っていました。でもそれは、「指を動かす」プラクティスなのでは?例えば、「指慣らしに、バルトークのミクロコスモスを弾く。」と言ったりするのは「粋じゃない」と思っていたからでしょう。
 自宅の居間にあるスタインウエイと、その周りにも「稽古三昧」の状況証拠が一杯あった。寺井尚之には、「稽古は『頭』でするもんや。」と常々言ってましたし、先輩のハンク・ジョーンズさえ、ツアーに折りたたみ式のキーボードを携行し、ホテルの部屋で稽古していると言っていたのを覚えています。
 フラナガンが「頭」でやるという稽古がどういうものなのか?今日は、滅多に見れないその姿についてお話したいと思います。
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 それは ’97年、10人のピアニストが集まる楽しいコンサート「100Gold Fingers」のツアー中、ラッキーなことに、オフ日を大阪公演の前日に設定してもらい、OverSeasでトミーのソロ・コンサートをした夜のことでした。
 その日、トミーは寺井にこんな相談をしました。
 “今回の「Gold Fingers」では、出演者が順番で、何か日本の曲を一曲演奏する企画になっていて、明日が私の番なんだ。「五木の子守唄」を演ったらどうかと言われているんだが、日本の曲はよく知らない。ヒサユキ、譜面を書いてくれないか・・・”
 寺井は即座に言いました。
 “師匠、五木の子守唄もええけど、ヘレン・メリルがもう歌ってるし、マイナー・チューンやし、大阪の土地柄に合わんのちゃいますか?師匠が演るならジャズで先例がなく、しかも、皆が知ってる曲がええわ。そうや!”七つの子”はどやろ?絶対、お客さんは大喜びですわ!」
 OverSeasコンサートの終演後、トミーは晩御飯を食べながら、ヒサユキの書いた「七つの子」の譜面を見て、山に残した可愛い子供を想って鳴くカラスの歌詞の意味を頭に入れています。元グリークラブのG先生がボーイソプラノ(?)で「カ~ラ~ス、なぜ鳴くの~♪」歌うと、目を丸くしてたっけ・・・
photo6.jpg そしてデザートを楽しんで一段落してから、トミーは譜面と共に、ピアノに向いました。初めて弾く「七つの子」に寺井尚之も興味津々!
 フラナガンはまずイントロから弾き始めました。子供がいる山に戻ろうとするカラスの大きな羽ばたきを思わせるオーケストラ的な前奏です。テーマに入ると、何人ものストリングスに負けない左手の分厚いパターン、初めて弾いてみる曲なんて信じられません。トミー・フラナガンの頭の中には、画家のデッサンのようなものが、すでに何パターンも出来ていたんです!虹色に変幻するヴォイシングは、ブルージーになったり、印象派的になったり、・・・色んなヴァージョンの「七つの子」が、あっという間に出来上がっていきました。途中で、”バイバイ・ブラックバード”を入れてみたりして、「七つの子」と遊ぶトミーの顔つきは「芸術家の産みの苦しみ」なんてどこ吹く風のポーカーフェイス。ただ、たくさんのヴァージョンを作るだけでなく、どの演奏解釈にも、大きな夕空や、鳥の羽ばたき、家族や故郷への憧憬が色んな形で表現されているのが、何よりすごいことでした。
 深夜、ホテルまでの車中、ゴキゲンで鼻歌を歌ってる巨匠に、私は思わず言いました。「トミー、さっき私は『神の御業(The works of God)』を観ました。あなたは天才です!」
 トミーは少し鼻を膨らませてから、いつもと変わらない淡々とした口調でつぶやいたのを覚えてます。「わたしは常にそうあるよう努力してる。」って。
 さて、翌日の大阪公演はシンフォニー・ホール、寺井が楽屋見舞に行くと、トミーはピアノ付きの一番大きい楽屋で「七つの子」を練習中、傍らにはジュニア・マンスがいました。ピアノの上に何があったと思います?森永のチョコボールが、譜面の上に、ちょこんと置いてあったんですって!
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では、トリビュート・コンサートでCU!