エラに宛てたラヴ・レター 『Lady, Be Good… for Ella』

 残暑お見舞い!明日から夏休みという方もいらっしゃるのでしょうね。うらやましいな!
 13日の土曜日はジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」開催です!
 寺井尚之の解説アルバムは先月から続くソニー・ロリンズとのリユニオン盤、『Old Flames』とエラ・フィッツジェラルドへのトリビュート盤、『Lady, Be Good… for Ella』の2枚なので、映写用ファイルは楽勝!とタカをくくっていたら、エラによるオリジナル盤の対訳など作成資料リストを沢山もらって、世間様の夏休みモードと裏腹に慌てふためく週になってしまいました。
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 『Lady, Be Good… for Ella』は、トミー・フラナガンがスイスのプロデューサー、ジャック・ムイヨールに「あなたの好みで何なりとアルバムを作って欲しい。」と乞われ、レギュラー・トリオ(ピーター・ワシントン、ルイス・ナッシュ)の布陣で、闘病中のエラ・フィッツジェラルドに捧げた作品です。エラは糖尿病が悪化し、膝下両足切断の大手術をして入院中でした。病床のエラは、このお見舞いを、大変喜んで、このCDを病室のサイドテーブルにずっと飾っていたそうです。トミー・フラナガンのプレイを誰よりも理解していたエラには、トミーのプレイの一音、一音がメッセージとして聞こえていたに違いありません。
Lady_be_good_for_Ella.jpg またオリジナル盤にはライナー・ノートの代わりに、エラ・フィッツジェラルドに宛てたフラナガンの手紙が添えられています。
 「親愛なるエラ、僕が初めてあなたを伴奏したのは1956年の夏でした・・・」という書き出しで始まる短い公開書簡は、トミーらしい言葉遣いで、病床のエラに対する温かい気持ちが溢れ、行間から、二人が大観衆の前で繰り広げた、数え切れない名演や歓声の残響が漏れ聞こえてくるような名文です。トミーの話し方や書き方に親しんだ不肖私が日本語にしました。名演のサイド・ディッシュになれば嬉しいな!
EllaGershwin.jpg 『Lady, Be Good… for Ella』はガーシュインナンバー、スローな“Oh, Lady Be Good”で始まり、ファースト・テンポの“Oh, Lady Be Good”で終わります。ガーシュインの権威 Lawrence D. Stewartの冊子『Words Upon Music』には、ガーシュインがこの曲に設定したテンポは”(ユーモラスに)やや遅く”でした。ところが、1947年に大ヒットしたエラのスキャット入りヴァージョンは急速で、『ソング・ブック』は指定よりずっとスローで歌っています。当初、ソング・ブックを監修したアイラ・ガーシュインは「余りスローで歌うと歌詞の流れが悪くなる」と反対したのですが、プレイバックを聴いて大満足し、すぐ反対を取り下げたという逸話が書かれています。
 “Oh, Lady Be Good”は、恋人を募集するサビしい紳士の歌、それを女性のエラが歌うとどんな意味になるのでしょう?以前「トミー・フラナガンの足跡を辿る」に登場したキャロル・スローンのバージョンは、どこまでも「女が歌う男の歌」でしたが、土曜日お聞かせするエラの歌は、ある意味スローンよりずっとモダンな新しい歌詞の世界が見えてきます。
 レコーディングしたトミー&エラのコラボからの選曲でなく、あくまでエラの音楽性にこだわってセレクトした『Lady, Be Good for Ella』は、数多ある「トリビュートと銘打つアルバム」とは一線を画す趣味の良さとクオリティがありますね!
 余談ですが、このアルバム録音直後、まだ20代の若手だったトミーのベーシスト、ピーター・ワシントンが、寺井尚之にこのアルバムの○○は、自分の演っていたコード進行で良かったのか?と訊きにきたことがありました。何て真摯なミュージシャンなんでしょう!寺井は「あいつは今にエラいモンになるで!」と言っていたけど、本当に現在は巨匠になりましたね!
 通の方に、ジャズを聴き始めた方に、ジャズを志す若い方、ぜひぜひ、最高の音楽と、寺井尚之の解説を聞いてくださいね!面白くてためになりますよ。
寺井尚之のジャズ講座:「トミー・フラナガンの足跡を辿る」
8月13日(土) 6:30pm-
受講料 ¥2,625
於:Jazz Club OverSeas

 お勧め料理は「加茂なすグラタン」を作る予定です。
CU

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