酷い台風が日本列島を襲った後の秋風はマイナー・ムード。
9月10日(土)のジャズ講座は、トミー・フラナガンとハンク・ジョーンズの火花の散るように激しいライブ・セッション、『Live in Marciac』が登場します。
マルシアックは南仏の小さな村、フォアグラやワインの産地として有名でしたが、1977年に、ジャズのイベントを開催したのが大成功、以来”Jazz in Marciac”はバカンス・シーズンのお祭りとなり、現在では一年中定期的にコンサートを開催しています。
左はこのアルバムが録音された’93年、第16回Jazz in Marciacのポスター。ジェリー・マリガンやチック・コリア、クリントン大統領のアイデアで結成されたベテラン・ジャズメンのバンド、”The Golden Men of Jazz”の名前も見えますね。ウィントン・マルサリスはこのフェスティバルのレギュラー格。今年の目玉はアーマッド・ジャマール(p)、それに日本の上原ひろみさん(p)も人気を博したようです。
トミー・フラナガンもダイアナ夫人も南仏が大好き!友人のフランス人ピアニスト、マーシャル・ソラールが関係していたこともあり、’80年代は何度も出演し、同時開催するアマチュア・コンペの審査員も務めました。
<An Evening with Two Pianists>
この歴史的セッションが行われたのは、1993年8月12日、場所はJazz in Marciacの特設会場、“An Evening with Two Pianists:二人のピアニストの夕べ”と銘打ったコンサートでした。ハンク・ジョーンズはこのフェスティヴァルの間に仏政府から叙勲してマスコミにも大きく取り上げられました。
<マルシアック頂上決戦>
二人は「端正なスタイルと美しいタッチのデトロイト派」として同じカテゴリーでくくられることが多いですが、ハンク・ジョーンズはフラナガンより12歳年上で早くからNYに進出していた。弟たち、エルヴィンやサド・ジョーンズとは親しかったけれど、デトロイト時代は殆ど面識がなく、主にレコードで聴いたアイドルの一人だったそうです。
『Our Delight』(’78)から『Jazz in Marciac』(’93)まで、断続的にデュオ活動した二大巨匠ですが、プライドの高い二人を一緒にピアノの椅子に座らせるのは難しかったのではないでしょうか? 100Gold Fingersでも、何度か一緒に日本ツアーしているけど、この二人のデュオというのは一度も聴いたことがありません。(どこかの公演地でデュオをしたことがあったら教えてください。)
それを実現したのはプロデューサーであるジャック・ミュヤールなのかも知れません。彼はフランス系スイス人で、先月の講座に登場した”Lady Be Good for Ella”のプロデュースもしています。ヨーロッパでは、ノーマン・グランツ主催のJATPの公演のプロモーターとして有名。上品な紳士であり、業界の酸いも甘いも噛み分けたやり手であるという噂です。
左の写真は「Round Midnight Watch」のPR写真、セロニアス・モンクの子息、TSモンクと。
コンサートはトミーとハンクがトリオでそれぞれ演奏した後、デュオ、デュオ+リズムという構成になっています。リズム・チームはドイツの名手、ハイン・ヴァン・デ・ゲイン(b)と米国のアイドリース・ムハマッド(ds)、この夜だけの共演というのが、演る方も聴く方もドキドキ!寺井尚之の解説と共に、ワン・ナイターのスリルを楽しんでくださいね!
フラナガンの熱いプレイの後に登場するハンク・ジョーンズのMCは、この後の展開を予想させるものです。
「みなさんは完璧なピアノ演奏をお聞きなりましたね。あんなものすごい演奏の後に、私は何をやってよいのか・・・もう弾くべき音がないという感じですが、まあ何か、残りものを探して演ってみようと思ってます。(笑)」
先輩らしい温和な語り口とは裏腹にハンクさんの強烈な闘志が隠されているのをヒシヒシと感じます。
最後の二人のピアノ・デュオは「楽しい和気藹々のセッション」なんかではありません。温厚な巨匠と言われる二人の凄まじい闘志のぶつかり合いです。ハリー・ポッターよりもっと凄い、総合格闘技なんてメじゃない!これはジャズの魔法対決と言ってよい位のド迫力です。品格溢れるピアノ・スタイルを汚すことない真剣勝負の美しいこと華麗なこと。南仏の町だからこれほどガチンコで出来たのかもしれません。Our DelightからRelaxin’ at Camarilloまで、歴史に残る名勝負を寺井尚之が実況中継いたします。
ジャズ講座「トミー・フラナガンの足跡を辿る」
9月10日(土)6:30pm-
受講料:2,625yen
於:Jazz Club OverSeas
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