お盆休みも今日までという方が多いようですね!今年は、夏休みを利用してOverSeasに来られるお客様が多かったです。懐かしい再会♪ 新しいお客様♪ お客様のおかげで、毎日楽しく仕事をすることができました。
一方、本ブログ、「寺井珠重のInterlude」開設以来早5年!!貯金は貯まらないのに、コンテンツが貯まり過ぎ、ここ数か月間、個々のエントリーをアーカイブできなくなってしまいました。検索しても見つからないとお叱りを頂き申し訳ありません。
さて、今回はジャズでなく英語のお話を。先日「トミー・フラナガンの足跡を辿る」で番外鑑賞した『Blues Brothers』のアレサ・フランクリンやキャブ・キャロウエイの名シーン、文句なしに楽しかったですね!監督のジョン・ランディスはマイケル・ジャクソンのPV「スリラー」も監督していて「音楽を見せる」達人!映画の舞台になったシカゴの出身だから、荒唐無稽なストーリーにリアルな街のムードが出ています。
私が印象に残ったのは、ソウルフード食堂のおかみさん(Mrs.マーフィー)役のアレサが、お客を装い亭主をバンドに勧誘して、自分たちを育ててくれた孤児院を救済するためにやって来たジェイク&エルウッド(ブルース・ブラザーズ)の注文を取る短いシーン、”Think”の名唱直前のとても短い会話です。私自身ウエイトレスですから、レストランの会話はいつも興味津々。『Blues Brothers』って、ゴキゲンな音楽の聴けるドタバタ喜劇のように思われているけど、人種のるつぼであるアメリカとその文化を理解するのにうってつけの教材なんですよ。
前半のエルウッドのご注文はこんな感じ。
Mrs.マーフィー: May I help you boys? (お二人さん、ご注文は?)
エルウッド: You got any white bread? (白パンあります?)
Mrs.マーフィー: Yes.
エルウッド: I’ll have some toasted white bread please. (じゃあ、白パンをトーストで)
Mrs.マーフィー: You want butter or jam on that toast, honey? (お兄さん、バター?それともジャム・トースト?)
エルウッド: No ma’am, dry. (いいえ、何もつけずドライでお願いします。)
和訳も不要な簡単イングリッシュ。アメリカのベーカリーで注文する時に役立ちそうです。でも、ここには寓意があります。「白パン (White Bread)」は、中流階級の普通の白人やWASPを表現する隠語なんです。そしてジャムもバターもない「ドライ」は「退屈」っていう意味。ヒップな黒人の経営するソウル・フード食堂にやってきた無骨な白人、エルウッドを食べ物に象徴しているんですね。
一方、兄貴分のジェイクはムショ帰り、言葉は汚いわ、ムサクルシイ肥満体、でもダンスがめちゃくちゃ上手!ヒップなジェイクは、黒人の家庭料理の代名詞、フライド・チキンを注文するんですが、これは日本人の私たちに、「数詞」の面白さを教えてくれる英語教材です。
ジェイク: Got any fried chicken? (フライドチキンある?)
Mrs.マーフィー: Best damn chicken in the state. (うちのチキンは、この州じゃあ一番よ。)
ジェイク: Bring me four fried chickens and a Coke. (それじゃフライトチキンを4つとコークをくれ。)
Mrs.マーフィー: You want chicken wings or chicken legs? (4つって…ウイング?モモ?どの部位にしましょうか?)
ジェイク: Four fried chickens and a Coke. (丸ごと4羽分のフライとコーク。)
エルウッド: And some dry white toast please. (それと白パンのドライ・トーストね。)
・・・
Mrs.マーフィー: Be up in a minute.(すぐにご用意します。)
日本語には、名詞に冠詞も付かないし、単複形もないし、不加算名詞、可算名詞の区別もありません。それは、日本語と英語の「数」に対する意識が根本的に違うせいで、思わぬドツボにはまることも。たとえば、犬が好き、猫ちゃんが好きと言うつもりで、”I like dog!””I like cat!”と冠詞なしの単数形を使うと「犬の肉」「猫の肉」を意味してしまい、思わぬゲテモノ好きと思われるのでご注意ください。
フライド・チキンは、KFCでも1ピース、2ピースと書いてあるでしょう。冠詞のないchikenは、もちろん鶏肉の意味です。なのに”four fried chickens”と複数形で注文するところがオモシロイんです。ジェイクにそう注文されたアレサ、最初は、”four fried chicken wings”や”four fried chicken legs”のつもりだと思うんですが、実は「ニワトリ4羽分丸ごと揚げろ」というとんでもない注文!このやりとり、英語を母国語とする人たちには、最高に笑える会話で、この映画の中でも、最も有名な名台詞で、”Four fried chickens and a Coke”というロックン・ロールバンドもあるらしいです。 映画のシーンを観てない方はこちらをdouzo
!
ジャズ歌詞の対訳を作る時も、冠詞や数詞をはっきり解釈して、正しいニュアンスを出す訳文を作ることが肝要です。逆に英訳をする場合は、単複のない日本語の単語を、原文作者に確認しないと、とんでもない英訳になる危険も・・・
というわけで、夏休みの英語講座でした。
夏休みが終わっても、OverSeasのライブ、引き続き宜しくお願い申し上げます。
CU