ジャズ大使たちの夏(2)プロデューサー、ゼヴ・フェルドマンのウルルン日本旅行

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 今年の夏、ゼヴ・フェルドマン(Zev Feldman)というレコード・プロデューサーが来日し大阪の下町と大都会、東京でジャズを愛する人達と交流を深めました。皆さんはゼヴ・フェルドマンさんをご存知ですか?彼の名前を知ったのは1年前、彼が共同プロデュースしたトミー・フラナガンとジャッキー・バイアードの痛快ピアノ・デュオ『The Magic of 2』がきっかけです。 制作は”Resonance レゾナンス”という非営利団体のレコード・レーベル、30年前に録音されたカセット・テープの音源を何年もの歳月をかけて丹念に修復したライブ1162.jpg盤は、当時の演奏写真や、大好きなジャズ評論家、ダン・モーガンスターンによる、知的で心のこもった解説文が付いていて、へえ、今どきこんな誠実なアルバム作りをするところがあるんだ! と驚きました。9月にレゾナンス・レコードが制作したジョン・コルトレーン最晩年のコンサート・ライブ『Offering : 魂の奉納』が、大阪の藤岡靖洋氏発掘の音源であったことから、私が日本語版ブックレットの翻訳をさせてもらうというご縁がありました。

ゼヴさんは、この夏、PRと市場調査を兼ねて来日、東京と大阪のレコード店やジャズ喫茶、ジャズ・クラブなどを訪問し、現場の皆さんと大いに交流を深めました。初めて訪れた国で、ジャズを愛する沢山の同志達と、一プロデューサーの立場を越えて交流したゼヴさんのウルルン日本ジャズ探訪記です。

 

<ジャズ・オタク、ゼヴ・フェルドマン> 

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 ゼヴ・フェルドマンさんは’70年代生まれのロック世代にですが、ご先祖さまにジャズやクラシック音楽家が沢山いて、赤ん坊の時からジャズを聴いて育った。なにしろ、叔父さんがAlvin ‘Abe ‘Aaronというサックス奏者で、レナード・フェザーの初版「エンサイクロペディア・オブ・ジャズ(ジャズ百科joe_sonny964077_10201501417881178_1395526792_o.jpg事典)」人名欄の最初の欄に載っていて、大叔父さんがミルウォーキーを代表するサックス奏者Jodeph Aaron(左:ソニー・ロリンズと)、大叔母さんが、ジャズ創世期に活躍したギタリストという家系。子供の頃から勤勉なゼヴさんも、自らトランペットをたしなむミュージシャン系プロデューサーです。ロック全盛の高校時代には完全なモダンジャズ・オタクとなり、女の子に見向きもせずジャズに浸り、ハリウッド青春映画でよく見る「プロム」にさえも行かなかったというから相当重症だわ。 

<ジャズ大国ニッポン>

  その頃、ゼヴさんは、音質、芸術性、カヴァー・デザインなどあらゆる面でクオリティの高いBlue Noteレーベルのコレクターとなりました。気がつけばBlue Noteコレクションの大半が日本からの輸入盤だった!日本盤には、他の国に見られない「帯」というものがついていて、今でも大切に保管しているそうで、すでにプロデューサー的な視点を持っていたみたいです。同時に、日本人トランペット奏者、日野皓正さんをラジオで聴いて感動、遠い日本への興味がますます湧きました。そんなゼヴさんがバイブルとして大切にしている本が「ジャズ批評」刊行の「The Complete Blue Note Book Tribute to Alfred Lion」と (image enclosed) 「The Prestige Book」の2冊ですから、私の周りにもいらっしゃるコレクター達と一緒! 

<メールボーイからプロデューサーへ!>

boyhood_zev1618284_10203301220115109_313561516_o.jpg  大学に進学して大学FM局のパーソナリティになり、インターンシップでポリグラム・レコードへ。レコード会社の郵便室が彼の出発点でした。ゼヴさんの働き方は、昭和のモーレツ社員とまったく同じで勤勉!どんな仕事も喜んでこなし、上司に「もう家に帰れ」と言われるまで働いた。モーレツ・ポリシーは現在に至るまで不変!だからUS時間の深夜、とんでもない時間にしょっちゅうメールが来ます。

  当然ながら正規採用されたゼヴさんは、営業畑の敏腕マネージャーとなり、ポリグラム、ユニバーサル・ミュージック、コンコード・レコードで手腕を発揮、タワー・レコードなどのメガストアを得意先に抱え、若くして営業部長の座に就きましたが、時代の波が大きく変わりレコード店に行かなくてもCDはネットで買えるように…そして2007年遂にタワー・レコード倒産。ゼヴさんはその影響でレイオフされますが、この挫折があったからこそ、プロデューサーという天職に就くことができた。サム&デイヴやバディ・ガイで名高いR&B系”FUEL 2000″レコードの営業部長と共に、レコーディング・エンジニア兼プロデューサーのジョージ・クラビン創設のNPO法人、レゾナンス・レコードで本格的にプロデューサーとして、ジャズの巨人たちの歴史的レコーディングを発掘しレコードとして保存する仕事に従事しています。最初に手がけた『Bill Evans Live at Art D’Lugoff’s Top of The Gate』、ウエス・モンゴメリーの『Echoes of Indiana Avenue』の2作が併せて6万枚のヒットになり、その後に作ってくれたのがトミー・フラナガン&ジャキー・バイアードの『The Magic of 2』で、今回の日本出張が楽しみで仕方なかった!もう今年の初めから興奮していました。

  彼の膨大な日本探訪日記の断片をここに掲載!

=大阪編=

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藤岡さん邸

 

大阪では、コンコード時代からお付き合いの藤岡靖洋氏のコルトレーン・ハウスに滞在。回転寿司や串かつを楽しんだ後、大阪の老舗ジャズ・クラブ、ロイヤル・ホースさんへ。

sawano20140826_203246-2.jpg澤野工房さん

 

 新世界のジャズの名所「澤野工房」さんでは、伝説の澤野由明、稔兄弟とご対面!履物屋さんで特大サイズの下駄もゲットして、CDともに大感激!

 夕方は下駄と作務衣でばっちりドレスアップしてOverSeasにご来店でした。

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ライトハウスさん

 日本橋、老舗レコード店「ライトハウス」さんを訪問、自分のプロデュースした作品が沢山店頭に並んでいるのを観て大感激!コレクター魂を刺激され CDを買い込むうちに、いつのまにかゼヴさんを囲んで大宴会に!杯を重ねるうちに沢山の友達ができたそうです。ジャズに乾杯!

 

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OverSeas

 作務衣と下駄でドレスアップしたZevさん、ホスト役の藤岡さんと共に、OverSeasにご来店! 寺井尚之と宮本在浩(b)によるトミー・フラナガンゆかりの音楽をゆっくり楽しんでくれました。フラナガンやサー・ローランド・ハナが今も生きるジャズ・スポット、当店の様子をフェイスブックを見て、ずっと来たかったらしい。音楽を真剣に聴いて下さってありがとうございました。初対面なのに、長年の友人みたいな人でした。

 

 =東京編=

 

koyama_kiyosi_zev.jpg Zevさんは、児山さんとこれからもぜひお付き合いしたい、とのことでしたので、児山さんと懇意な方がおられたら、どうぞ伝えてくださいね。

東京でのハイライトは、NHK-FMのジャズ番組「ジャズ・トゥナイト」にゲスト出演したこと!

 長年尊敬する児山紀芳さんの番組ですから歓びもひとしお!児山さんが制作したサラ・ヴォーンやローランド・カークなどのコンプリート・ボックス盤はゼヴさんがポリグラム時代に営業を担当した作品です。尊敬する児山さんと一緒にラジオ出演できて本当に光栄だと興奮気味。

 ON AIRは11/1(土)23時~です。NHKFM 『JAZZ Tonight』Check it!

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タワー・レコード

 東京でのもう一つの感動が日本のタワー・レコード!少年時代のゼヴさんには宝の山、業界で働くようになってからは、親しい上得意さまで、弟さんの職場でもありました。それだけに、2006年に米国のタワーが倒産した時のショックは計り知れないものがありました。あれから10年近く経った今でも、タワー新宿店の賑いぶりは、タイムスリップしたようだった。ゼヴさんは、タワーよ、米国に復活を!と強く願っております。

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東京が世界に誇るディスクユニオンJazz Tokyo、そしてタワー・レコードではCD大人買い!
 現場の方々とも親交を深めました。

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shopping20140829_220208-2.jpg 日本でのお買い物のごく一部!

 盟友、キングインターナショナルの関口滋子さんのご案内で念願の「ジャズ喫茶」デビュー!ジャズ通のゼヴさんも知らなかったアート・ペッパー&ソニー・スティットのアトラス盤に感動。ひたすら無言で鑑賞するという「日本流」もめちゃくちゃ馴染めたそうです。

 

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「足跡講座」でお馴染みの後藤誠氏の案内で、神保町のジャズ喫茶「The Adirondack Cafe」さんでは、ジャズ界の名士、滝沢理さんと親交を深め、名物のハンバーガーに舌鼓!

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 最終日はキングインターナショナルの仲間たちと東京ドームで千葉ロッテ+日ハムの野球観戦、日本野球の熱い応援にびっくり!

 疲れもみせず次の寄港地香港に旅立って行きました。

 

 MI0002075955.jpg目下、ゼヴさんは、レッド・ガーランドの未発表レコーディングと、名プロデューサー、ドン・シュリッテンが’70年代に主催したザナドゥ・レコード(Xanadu)の再発プロジェクトに東奔西走中です。私達が大好きなジミー・ヒースの名盤『Picture of Heath』が再発されるとは嬉しい限りです!

 「来年も日本に行けるよう、モーレツに仕事するから待っててね!」ビヴァリーヒルズに優雅な事務所を構えながらも、ゼヴ・フェルドマンはなぜか昭和の香りのするプロデューサーでした!

CU

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