写真:エラ・フィッツジェラルド&ノーマン・グランツ 於 南仏アンティーブ’64
寺井尚之が、トミー・フラナガンのディスコグラフィーを時系列に辿りながら解説する月例講座、「トミー・フラナガンの足跡を辿る」が始まって早13年。解説の内容も、爆笑度もますますヴァージョン・アップして第二期に突入中。
9月から第一期エラ・フィッツジェラルド共演時代が始まります。トミー・フラナガンとエラ・フィッツジェラルドのレギュラー共演は、2つの時代に大別され、第一期は1963年~65年、第二期は1968~78年、エラの元から独立した後、フラナガンの演奏は円熟期に入ります。
チック・ウェッブ楽団で磨かれた天才バンド・シンガー、エラ・フィッツジェラルドの即興演奏芸術は、一般的な「歌手」の範疇を大きく超越したもので、「引用」フレーズを散りばめるアドリブ技法や、「転調」で3D的歌唱世界を作り上げる様子は、まるでピカソのキュビズム絵画のようです。
というわけで、今後しばらくは毎月エラのアルバムが解説されることになるので、私の「対訳生活」がまた始まります。まずは『Ella at Juan-Les-Pan』(’64)から。
南仏のリゾート地の野外コンサートに併せて、歌詞はどんどんオリジナルから離れて、ほぼ原型をとどめない歌もあるほどです。だからといって、終始行き当たりばったりに変えているわけではなく、ジャズ・ミュージシャンと同じような思考回路で、無限にある音楽の引き出しから、「スイングしていて意味のある」言葉を選んでいるようにも思えます。
その証拠に、現代のブルース研究の第一人者、メンフィス大学教授のデヴィッド・エヴァンスが編纂したブルースの研究所『Ramblin’ on My Mind/ New Perspectives on the Blues』では、エラの歌った”セント・ルイス・ブルース”について、彼女の歌詞やメロディーのどのフレーズが、どの時代の誰のブルースから引用されているかを研究した章があるくらいなのですから。
尤も、歌詞というものは、歌唱要素の一部にすぎません。寺井尚之が私の対訳を使って、様々な角度からエラとフラナガンの芸術を浮き彫りにしてくれるのは、ほんとうに面白い!
また色々こぼれ話を書いていこうと思っています。ご興味があれば、講座にも足を運んでみてくださいね。
「新トミー・フラナガンの足跡を辿る」毎月第二土曜日 18:30- 開講
参加料2500(学割チャージ半額)
CU